ひなたでゆるり

読書のコトとちょっぴり日々のコトブログ

『こちらあみ子』今村夏子

こちらあみ子
こちらあみ子
今村夏子/筑摩書房
少女の目に映る世界を鮮やかに描いた第26回太宰治賞受賞作。書き下ろし作品『ピクニック』を収録。

あみ子、と呼んでそっと抱きしめたくなる。
あの子と遊ぶための色褪せたトランシーバーをあみ子はまだ大切にしているだろうか。
「こちらあみ子。おーとーせよ」と発する言葉に誰かが応えてくれているだろうか。
悪気はない、わかってはいても人を苛立たせ、家族の輪も壊してしまうあみ子の言動は、ただのお話とは割り切れないぼんやりした痛みを伴う。
改題される前の「あたらしい娘」のタイトルが知らせてくれるように、母の気持ちが痛いほど伝わって、でもどうしようもなくてただただきゅっと胸が締め付けられる。
あみ子の世界。全てが愛おしい。

もう一編「ピクニック」も不思議な七瀬の雰囲気が不思議であわあわしていて周りがいつの間にか取り込まれるさまが良かった。好感。
装丁の土屋仁応さんの作品の儚い美しさが、あみ子の純真で透明なイメージにぴったりでとても素敵。
見返しのデザインも綺麗です。

読了日:2011年11月18日
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『六つの星星』川上未映子

六つの星星
六つの星星
川上未映子/文藝春秋
精神分析、生物学、文学、哲学をめぐって、第一線と語りつくす。川上未映子の思考の軌跡。

精神科医・斎藤環、生物学者・福岡伸一、作家・松浦理英子、歌人・種村弘、
作家・多和田葉子、哲学者・永井均…知の最前線6人とのめくるめく対話集。

作家・川上未映子さんの魅力がさらに大きく膨らんだだけでなく、対話された方々のお話も深い知識と見識に満ち溢れていて、大変豊かな読書時間をいただけました。
川上さんの好奇心の旺盛さ、そこから得る知識の方向性、独特の感性が対話の中で見事に表され感嘆しました。
中でも一番好きなのは生物学者・福岡伸一氏との対話。
「入れ子」から「蚊柱」「動的平衡」…もっと読んでいたくなるくらい興味深い話。
同じ女流作家である、多和田葉子さんとの対話も奥深い。
六つの星星…無限の宇宙のように対話は果てしなく終わりがない。
私の狭い世界の入り口を開いてくれた本。一読でなく何度でもおさらいしたい本。

最も私の気持ちをガツンとさせてくれたのが、斎藤環さんのお話に出てくる「マゾヒスティック・コントロール」。献身的な母親を持つと、娘が母親への罪悪感によって縛られるというお話。
私の母との関係性が見事に書かれていて一瞬息苦しくなったほど。
その後、ああそうか、そういうことだったんだ、とそれまでの呪縛みたいなものがゆるやかに解きほぐされた。
だから私にとってこの対話集は神様みたいな本。
ありがとう、ありがとう。

★福岡伸一さんの著書にとても興味があるので覚書。
『ルリボシカミキリの青』『生物と無生物のあいだ』『動的平衡』『世界は分けてもわからない』

読了日:2011年11月11日
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「キューピッドとプシケー」

キューピッドとプシケー
キューピッドとプシケー

ウォルター・ペーター著/エロール・ル・カイン絵/柴 鉄也 訳/ほるぷ出版
昔、ある都に。王さまに王妃さまが住んでいました。ふたりの間には、美しい3人の娘がありましたが、なかでも、末娘プシケーの美しさはとても言葉ではいいあらわせないほど。人びとは女神ヴィーナスをうやまうことを忘れ、プシケーに祈りをささげるようになりました。それを知ったヴィーナスは大いに怒り、息子の恋の神キューピッドにいいつけ、プシケーの恋のどれいとするよう、たくらむのでした。有名なギリシャ神話を素材にした、華麗な愛の物語。

綺羅びやかで眩い多彩な世界。
見れば見るほどその色の魔術にうっとりしてしまうエロール・ル・カインですが、
こちらの作品は色のないモノクロの世界。これがとても美しく素晴らしい。
見れば見るほど心惹かれ虜になってしまいます。
まさに芸術作品!という一冊。

ギリシャ神話を素材にした美しい娘プシケーと恋の神キューピッドの愛の物語。
ル・カインの絵とウォルター・ペーターの物語世界が見事に融合されて美しい幻想世界に。
これは是非とも手元に置きたいと気持ち高めるのです。

読了日:2011年11月10日
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「まほうつかいのむすめ」

まほうつかいのむすめ
まほうつかいのむすめ

アントニア・バーバー著/エロール・ル・カイン絵/中川千尋 訳/ほるぷ出版

ル・カインのいつも見慣れた彩色とは少し異なり、東洋と西洋が絡みあったかのような美しい絵と、しんみり優しい話。
まほうつかいと娘が親子であることに最初は違和感を感じたのですが、読み進んで違和感の正体がわかりました。
むすめが成長していくごとに知識を欲することにまほうつかいはどんな気持ちだったのでしょうか。
やがて手を離れていくことも覚悟していたはずなのに。
むすめが本を読み、新しい世界を知る喜びに満ちている絵がとても素敵。
本読みならばここは大いに共感する場面ですね。
ル・カインの多才さにも感銘する素晴らしい作品です。

読了日:2011年11月6日
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「いばらひめ」

いばらひめ―グリム童話より
いばらひめ
グリム童話/エロール・ル・カイン絵/やがわ すみこ 訳/ほるぷ出版

エロール・ル・カインの幻想的で美しい絵と矢川澄子さんの優しい調べの文章は、何度読んでも気持ちがときめいてしまいます。
表紙絵にもなっている仙人たちとの宴の様子は殊更美しく、カインのきめ細やかで豊かな色彩は秀逸。
原画で見ることが出来たらどんなにか幸せでしょうか。
文章の周り枠の絵も淡い色調でちょっとレトロな感じで可愛らしい。
ボーダーで部屋に飾りたい、壁紙でも可愛いかも、なんてあれこれ想像してすることのなんて幸福な時間。
大切にしたい作品。いつか手元に置きたいです。

読了日:2011年11月6日

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「おどる12人のおひめさま」

おどる12人のおひめさま―グリム童話
おどる12人のおひめさま
グリム童話/エロール・ル・カイン絵/やがわすみこ 訳/ほるぷ出版

昔のとある国のお話。
12人の美しいお姫様たちが眠りにつき夜が明けると、どうしたわけかお姫様たちの靴は一晩踊り明かしたかのようにぼろぼろ。何故なのでしょうか。
この不思議な謎は解き明かされるのでしょうか。

エロール・ル・カインの美しい絵と矢川澄子さんの優しい文章が物語をより一層幻想的世界に創り上げています。
お姫様たちの優雅な様子、夜の綺羅びやかな世界、きめ細やかに世界観を描いているさまは何度見ても惚れぼれします。
お姫様のドレスもそれは豪華で素晴らしく、色彩やデザインについと魅入ってしまいます。
ただただ美しい。

読了日:2011年11月6日
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「空がレースにみえるとき」

空がレースにみえるとき (ほるぷ海外秀作絵本)
空がレースにみえるとき

エリノア・ランダー・ホロウィッツ著/バーバラ・クーニー絵/白石かずこ 訳/ほるぷ出版

ああ!なんて素敵な絵本!とてもとても好きです。
バーバラ・クーニーの幻想的で美しい絵と、エリノア・ランダー・ホロウィッツのリズミカルで詩的な文章が素晴らしくうっとりと酔いました。

ビムロスの夜を知っていますか?
全部がふしぎの世界のむらさきに変わり、薄靄の夜、空がレースにみえるの。
特別のパーティにも参加出来るんだわ。ビムロスの夜に起きる不思議な出来事。
ページをめくる度にふんわり優しい文章が物語に誘ってくれます。
そしてビムロスの幻想的な場面は見惚れてしまうほどの美しさ。
水彩、色鉛筆、クレヨンの優しく淡い世界。

読了日:2011年11月5日
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「ラストリゾート」

ラストリゾート
ラストリゾート

J.パトリック・ルイス著/ロベルト・インノチェンティ絵/青山南 訳/BL出版
長い道をぬけ、だれも通らないような崖をすぎ、わたしが行き着いたさきは、海辺にたつホテル「ラストリゾート」。扉をあけると、いきなり、鳥の声がひびきわたった。「迷いびとのかた!宿帳にお名前を!」想像力をなくした画家が体験する、不思議なリゾート・ホテルの物語。2003年ボローニャ・ラガッツィ賞フィクション部門特別賞作品。

ただそこにあるだけで存在感ある絵本。飾っておきたくなる美しい表紙。

想像力をなくしてしまった画家が辿り着いたリゾート・ホテルでの不思議な日々。
あらゆる既存のお話が出てきてそちらも楽しめました。
ここからまた新しい出会いが出来そうな素敵な絵本。
さて画家は想像力を取り戻せたでしょうか?

あとがきにとても丁寧に物語に登場する人物たちのことが書かれています。
中でも詩人と木の上にすわる紳士が気になりました。
是非とも手元に置きたい絵本。

読了日2011年11月5日
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「百年の家」

百年の家 (講談社の翻訳絵本)
百年の家

J.パトリック・ルイス著/ロベルト・インノチェンティ絵/長田弘 訳/講談社
100年の家がみつめてきた人々の毎日。2008年に国際アンデルセン賞画家賞を受賞したインノチェンティの新作。家を通してみつめる100年の歳月をことばの世界と細密な絵の世界が融合させた傑作。

何度も何度も読んで眺めてお話に酔って。これはなかなか離れ難い絵本。
とにかく絵が素晴らしい。

その時代時代の背景や雰囲気が家の色合いによって鮮やかに伝わってきます。
100年の歴史の中で人間と共に築き上げやがて朽ちてゆく。
一軒の古い家が自分の歴史を繙き語っていきます。
家と共に日々をつなぎ営む人々の喜びも悲しみも機織られ紡がれてゆく。
雨風から守り優しく見守りその役割を終えてゆく家の姿は静かに胸を打ちます。

愛しさに満ちた絵本。大切な一冊になりました。

読了日:2011年11月5日
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「ギャシュリークラムのちびっ子たち―または遠出のあとで」

ギャシュリークラムのちびっ子たち―または遠出のあとで
ギャシュリークラムのちびっ子たち―または遠出のあとで

エドワード・ゴーリー/柴田元幸 訳/河出書房新社
AからZまでが名前の頭文字についた子どもたち。登場と同時に次々と怪我や死に遭う。ただそれだけの、あっけなくも悲惨な話が、マザーグース風の2行ずつ脚韻を踏んだ軽快なテンポのうたに乗って進む、エドワード・ゴーリーの代表作。

完全大人のための絵本。
娘と借りに行ってこっそりこの絵本は抜き出して夜中に読んだ。

ゴーリーの緻密な線画によって創りあげられた世界観。
アルファベットブックになっていて順番に子供たちが悲惨な最期を迎えてゆく。
このちびっ子たちが一体どんな悪いことをしたの?いいえ、悪さなんてしていないのです
(もしかしたら一人や二人はいけないことをしてしまったのかもしれないけれど)。
もの凄く凄惨なお話なのに何故か可笑しみも漂う、ゴーリーワールド全開な絵本。

読み終えて私の中の闇の本棚にそぅっと仕舞った。

読了日:2011年11月5日
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