ひなたでゆるり

読書のコトとちょっぴり日々のコトブログ

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『秘密の花園』三浦しをん

秘密の花園
秘密の花園
三浦しをん/マガジンハウス
幼い頃に受けた性的いたずらによるトラウマを抱える那由多、教師との不倫に悩む淑子、那由多にひそかな思いを寄せる翠。カトリック系女子高に通う17歳の3人の少女たちが織りなす心理&青春小説。

多感な年頃って自分の世界がとても狭くて、だからこそ抱える闇の深さにはまって
底のない沼に落ちたかのような絶望感に陥ってしまう。
世界はもっともっと広くて自分のそんな闇なんて本当にちっぽけなんだって気がつくのは
一体いつだったろうか(ああでも那由多の場合はちっぽけでないけど)。

那由多、翠、淑子、3人の心の奥に潜む秘密。
那由多と翠の関係性が特に良くてかなり好き。
男が決して入り込めない女子同士の、妙に確立した世界観がこの二人にあって
読んでいてうっとりするくらい良かった。
あとがき冒頭の小さなお話が可愛い。

読了日:2011年9月6日
かりさ | 著者別ま行(三浦しをん) | comments(0) | trackbacks(0) | 

『まほろ駅前多田便利軒』三浦しをん

まほろ駅前多田便利軒
まほろ駅前多田便利軒
三浦しをん/文藝春秋
東京のはずれに位置する“まほろ市”。この街の駅前でひっそり営まれる便利屋稼業。今日の依頼人は何をもちこんでくるのか。痛快無比。開巷有益。
やがて切ない便利屋物語。
本当に今更なんですけど、やっとやっと読みました。
直木賞を受賞されたときすぐに読めれば良かったのですが、何となく、何となく遠ざけてまして。きらびやかなものをまとってしまった作品はどうしても手に取りづらいというか、これはもう自分の全く持って勝手な性質と言いましょうか、まぁそんなもんがジャマしましてですね、読めずじまいでありました。
で、何で読もうかと思ったかと言いますと、これまた勝手なものなんですが続編「まほろ駅前番外地」が連載開始されたというのを知ったから。知ったら何だか急に読みたくなって図書館に駆け込んだらタイミング悪く貸出中で予約入れて少し待ってようやく読めることになりました。

ま、そんなこんなでいそいそと読み始めました。予言するおばあちゃんが出てきて「??」な状態でしたが次第に意味が分かってきてふむふむと読み進んでみたら、まぁ気持ち良いくらいにぐいぐい引き込まれてしまいました。
多田と行天のコンビを取り巻く面々、依頼人たち、ひょんなことで巻き込まれる事件の数々、いちいちが面白くすっかり堪能。
だからといってドタバタの楽しい小説ってわけではなくこの作品の根底にはとても切ない痛々しい事実が沈んでいて、多田と行天の抱える暗闇の意味が明らかにされるごとにこちらの想像を遥かに超えた真実がドンと突きつけられて何だかもう痛い。かつては幸せだったはずの多田の現在の姿。その過去に一体何があったのかそれはのらりくらりとかわされて一向に明らかにされません。でも後半のある人物との出会いによって、その人物の抱えるものに絡めながら少しずつ露見されていきます。そのタイミングが実に絶妙なのです。

多田は便利軒に転がり込むように居ついた行天を迷惑がりながらも次第に拠り所にしていきます。それは前半の多田の心の揺れ動きで見えてきます。
「だれかの内心の動きを推測してみるのは、ひさしぶりのことだった。他人と一緒に生活することの、わずらわしさと面映いようなわずかな喜びを思い出した」
という文章が印象的。きっとそれは行天も同じ。
多田は行天に過去を叩きつけることによって過去の柵から少しでも開放されたのかもしれません。完全に逃れることが出来なくとも、自分の過去を共有してくれる人がいてくれるというのは意外にも楽になるものです。
この作品は再生の物語ですね。幸福の再生。そう、どんな辛いことがあっても、その辛さが一向に立ち去らずいつまでもぐずぐずと居座っていても、いつかは再生するのだと思います。そうであって欲しい。

最後に…チワワのハナちゃんが可愛かったなぁ。
かりさ | 著者別ま行(三浦しをん) | comments(6) | trackbacks(5) | 

『風が強く吹いている』三浦しをん

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風が強く吹いている
三浦しをん/新潮社
奇跡のような出会いから、清瀬灰二と蔵原走は無謀にも陸上とかけ離れていた者たちと箱根駅伝に挑む。それぞれの「頂上」めざして…。長距離を走る(=生きる)ために必要な真の「強さ」を謳いあげた、超ストレートな青春小説。

何かもうありきたりの言葉で申し訳ないのだが、一言「感動した!」。これに尽きる。
ひとつの目標に向かってひたすら努力する姿はどんな場面でも胸を打つ。こうして今感想を書いている時もボタボタと涙を落とし感動に咽ぶのだ。良くぞ書いてくれた!としをんさんに感謝してしまうくらいに。

寛政大学4年の清瀬灰二が長年温めてきた計画。新入生蔵原走との運命的な出会いによってそれがついに始動した。おんぼろ学生寮・竹青荘の住人が10人揃ったと同時に。
「俺たちみんなで、頂点を目指そう」
「目指すは箱根駅伝だ」
ほとんどが陸上素人な面々を前に清瀬はそう宣言するのだ。素っ頓狂なことを。無茶だろーっ!と思う。誰もが思う。でも彼らは目指すのだ、頂点を。あり得ない設定なのだけど、そう思いながら引き込まれてしまうのは魅力的に描かれている竹青荘の住人の面々。中でも清瀬と王子が大のお気に入り。天真爛漫な双子も可愛い。清瀬の計画に文句を垂れながらも脱落することなく共に歩む。いや、走る。清瀬のきめ細やかな性格と包容力と力強さ。そうならざるを得なかった挫折を経験することでさらに大きな人間になっていったんだろうなぁ、と清瀬を思うと切なくなる。だからこそみんな清瀬に信頼を寄せて一緒に頂点を目指そうと一丸になれたんだろう。
孤高だった走も徐々に頑なだったものを解きほぐし走るという意味を理解していく。走りを追求しながらも「何故走るのか」の疑問を抱えて、それに鬱屈しながら走ってきた走が見たもの、感じたもの、それと一体化していくさまはどこまでも美しくさらなる高みに向う。清瀬との出会いが走を変え、また清瀬は走の救世主となった。

箱根駅伝本番がとにかく圧巻。ここに足を踏み入れたらもう読み手も走らざるを得ない。ゴールに向かってひたすら。だって止まらないもの。彼らと一喜一憂しながら一体感を感じながら読み進んでしまうもの。
その臨場感がさらに感動を呼ぶ。特に王子、神童、ユキの場面では涙が止まらず。
運動とは無縁の中で生きてきて、二次元の女の子にしか興味がないマンガ命の王子。マンガ以外は無関心で動じない性格が可笑しくて可愛くて(実際まつげバッサバサの美男子だもの〜)、その王子が必死に走るさまは感動もの。足が遅くたって努力すればこんなにも頑張れるんだってことを証明してみせるのだから。あんなに他人に無関心だった王子が。
神童の場面ではこれまで見てきた箱根でのさまざまな苦難の場面が思い出され、それと重なって感極まってしまった。ユキの鬱屈したものが取り払われる瞬間や走のことを思いながら、それを体感しながらの独白はあまりに優しくそれがまたじぃんときてうるうる。

しをんさんの筆運びはなんて滑らかなのだろう。書き手がこれほど澱みなくするすると書くと読み手も気持ち良い。もう王道そのものの流れだけれど、これがやっぱり気持ち良いんだよなぁ。
とても好きな場面に留学生ムサが暗闇の湯船の水面に映る朧月をすくってみせるというのがある。とても美しく綺麗で心穏やかになる。そんな日常の何気ない場面も丁寧に描かれていて、だからこそ登場人物に愛着が湧き読み終えてなおこんなにも心強く惹かれ続けているのだろう。

それにしても、だ。悔やまれるのはもっと早くに読んで今年の箱根駅伝に備えるべきだった。こんな中途半端どころか的外れの時期に読むなんて。悔やまれるではないか。年末に読んでおくべきだったなぁ。とりあえず先は長いが今年の年末にまた読み返して気持ちを盛り上げて、来年の箱根駅伝を見る!そう力強く宣言しておこう。

読了日:2007年1月30日
かりさ | 著者別ま行(三浦しをん) | comments(35) | trackbacks(14) | 

『月魚』三浦しをん

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月魚
三浦しをん/角川文庫
夢を見ることも、野心もすべてあの夏の日に生まれた。
『無窮堂』は古書業界では名の知れた老舗。その三代目に当たる真志喜と「せどり屋」と呼ばれるやくざ者の父を持つ太一は幼い頃から兄弟のように育つ。ある夏の午後に起きた事件が二人の関係を変えてしまう…。
なんと艶やかで官能的な世界でしょうか。古書店という妖かしい舞台だけでも歓喜に震えます。いや、読む前まではこの作品、誤解していました。美男2人が登場する話し、という予備知識があったため勝手にあれやこれや想像していたのです(笑)(美少年と書きたいところですが、20代の彼らはすでに少年ではないですね)ここにある2人はそんな直接的なものではなくもっと奥の深い複雑な基に成り立っている関係なのでした。だからこそ妄想めいた思いを抱きながら膨らませながら読むことになってしまうのですが…。この2人を縛り付ける過去が明らかになるにつれ、ますますそれが結びつきを深くしているのだろうと思う。決して分かつことの出来ない強い繋がり。もうすでにそれは呪縛と化している。夜の無窮堂が美しい。ラストの幻想的な描写にしんみり感動しました。

「水底の魚」に続く2編目「水に沈んだ私の村」も好き。宇佐美の語る水に沈んだ村。今は無きものへの思いは切ない。作中作の"無窮館"がかなりのお気に入り。

そして文庫書き下ろしの「名前のないもの」は本への愛着、執着に同感しながら読みました。ここにあるものとは異なるかもしれませんが、本が増えていくのは本への愛だけでなく執着しているからなんですよね。だから手放せない。捨てられない。例え意を決して売ったとしても手放してしまった罪悪感ばかりが残り、以後ずっとそれに苦しめられることになるのです。それを埋めるかのようにまた新たに執着の素を増やしてしまうのです。

黴臭い独特な空間古書店がたまらなく好きって人も、そうでない人も楽しめる1冊。古書業界のことも楽しみながら読めます。出来ることならばもう少し古書を深く描いた続編を熱望します!

読了日:2005年4月14日
かりさ | 著者別ま行(三浦しをん) | comments(8) | trackbacks(5) |