ひなたでゆるり

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『セーフサイダー』宮崎誉子

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セーフサイダー
宮崎誉子/リトル・モア
俺にもしも耳がなかったら、きっと幸福だったに違いない。俺にもしも耳がなかったら、きっと不幸だったに違いない。疾走する書き下ろし5篇を収録した第2小説集。

1作目『世界の終わり』よりもパワーアップした弾けっぷりが最高。いや〜かなり良い。いや、最高に良い。『世界の終わり』では感じなかったどす黒さがいい具合に彩られていて大満足。
ほとんど脚本じゃないかと見間違うような会話文で成り立っていてその分スピード感があり読みやすい。読みやすくても会話文じゃぁ人物の状況が掴み難いのでは?とお思いになるだろう。が、そんなものは些末な心配事と払拭してよろしい。会話のドタバタさの中にちゃーんと状況が読み取れるようになっているのだ。見事である。

「セーフサイダー(A面)」「アウトライダー(B面)」「耳説(RAINDROPS★Remix)」「永遠の隙間」「韻&音」5編の短編集。内3編が連作短編。
連作短編が秀逸である。主人公ヒロキとその姉の会話がポンポンリズム良く進み、読み手を飽きさせない。だがそのうち他愛もない姉弟の会話や生活がこのまま変化なく流れていくのだろうか、と余計なお世話だが心配になってくる。が、あることをきっかけにそれまでの明るさが一気に暗い闇に落とされ、その日常はガラリと変容する。そうしてどす黒さが徐々に徐々に沁みゆくように浸透し腐食していくのだ。
ヒロキの語りが彼の身に起こることによってどんどん歪んでいく。そのさまが凄まじく目が離せない。突き放したような終わり方はザックリ抉られたような痛々しさを感じる。これが実に良い。好みと言ったほうが正しいか。

ここでも仕事する女子がさまざまな理不尽な目にあったり、悩んだり考えたり決断をしたりと成長する証がみられる。働くって楽じゃないよー辛いよーなんで毎日同じことを続けていられるんだよー。そんな彼女たちの心の叫びがひしひしと伝わる。
ある程度働いて、見切りをつけて辞めて。生活のためにまたバイトを探して…って職を転々とすることは飽きっぽく実がなくて軽そうに見えるのだが、私は彼女達が自分に正直で潔く生きているように見えて逆に眩しい。「辞めます」って言うのは結構勇気のいることで、私はその一言がなかなか言えず結局ずるずると辛い気持ちを押し殺してその結果血尿が出続けて痛くて高熱が出ても仕事に行って、挙句に腎盂腎炎になって入院しちゃったりとか、そんなの自分を痛めつけてどうすんだよ!なんて自分で自分を叱咤して。情けなくて病院のベッドで泣き暮らして。ああ20歳そこそこの自分に彼女達ほどの強さがあったなら今も再発を恐れるほどの病気にならずに済んだのに、って…何を私は書き連ねているのだろうか。何だが訳のわからないことをぐだぐだ書いてしまったが、まぁそんな気弱などうしようもない自分も今じゃ図々しくなったもんだなぁとしみじみ思ってみたりする。無理して頑張っていた自分もアホちゃうか、と思うがそれでも愛しい若かりし頃の私なのだ。

「…娑婆の空気は、うめぇなぁ…」
仕事を辞めてしみじみこう呟く主人公の言葉がつんと沁みて泣きそうになった。

読了日:2007年2月3日
かりさ | 著者別ま行(宮崎誉子) | comments(2) | trackbacks(0) | 

『世界の終わり』宮崎誉子

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世界の終わり
宮崎誉子/リトルモア
生きるってナンダロウ?ナンダロウって疑問はナンダロウ?希望と絶望は紙一重。秘かに、心の中に革命を感じる。「ストーリーノベル大賞」受賞作家の、初小説集。受賞作『世界の終わり』他、全四篇を収録。

「文藝」(2007年春号)に収録されていた宮崎さんの「至極真剣」をつい先頃読んだ。元々気になる作家であったから期待を持って読んだ。読み進むうちになかなか好みな文体であることを感じて高揚しながら読んだものである。これはちょっと追いかけてみようかな、と思わせてくれたもんだから早速デビュー作『世界の終わり』を紐解いた。

「世界の終わり」「マンネリズム」「スモーキン・ピンク」「ライム☆スター」4編の短編集。どれも宮崎さんの独特な文体が楽しませる。特に「世界の終わり」は秀逸。
びゅんびゅん突き進むハイスピードなテンポ、ひたすら流れゆく言葉の羅列、詩的な文体。改行の多い文章に一見読みやすいと思わせるが、これがなかなか手強い。ちょっと油断すると今の誰のセリフだったっけ?とわからなくなる。ボケてるんじゃないの?と突っ込まれそうだが、それはやんわり否定させていただく。

いきなり友人の自殺から始まる。自殺した友人から手紙が届く。たぶん生きている人間全てが陥る生きることへの絶望に取り込まれてしまう。自分を傷つけることで何かが見つかるんだろうか。傷つけた分だけ絶望感は増すばかりなのに。
生きるってナンダロウ?ナンダロウって疑問はナンダロウ?
わからないから死ぬまで探し続けるのかな。
生きるってナンダロウ?本当にナンダロウ?はて?しかし宮崎さんはこう投げかけて読者にはて?と立ち止まらせて考えさせる猶予は与えない。次々と場面が切り替わりストーリーはどんどこ展開していくのだ。それが実に小気味良い。毒気がありそうでさほどでもないという肩すかしはあるがその「さほどでもなさ」があのラストに繋がるのだな、と思うと妙に清々しさを感じて晴れやかな気分になる。とても前向きになる。

好きな言葉が散らばっていて拾い集めるのが楽しい。ところどころで出会う言葉にハッとさせられる。そんな時ついにやりと笑みを浮かべてしまうのだ。例えばコレ。
おいしいお菓子は女を幸せにする。
不味いお菓子は、女を男にして舌うちさせる。
ははぁ〜ん、なるほど。言い得て妙である。

居場所が見つからず職を転々とする主人公達の等身大の姿はしかし暗さを微塵も感じさせない。誰よりも悩み、考え、模索しながらその瞳はちゃんと前を見据えて力強く一歩を踏み出す。ほわんとやわらかなものに包まれるような読後感。それは意外性を持って読者を導く。どこへ連れ去られるのかわからない不安はいつしか取り払われ、著者の巧みなテンポできちんと着地点へ降り立つ。そこに気がついたとき、その計算された構成に惚れ惚れしてしまうのだ。

読了日:2007年2月1日

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1/27:購入本(「文藝」)


表題作「世界の終わり」で第3回リトルモア・ストリートノベル大賞受賞されたのが1998年。ここに収録されている「世界の終わり」「マンネリズム」「スモーキン・ピンク」は1999年、「ライム☆スター」は2002年に発表されています。それから私が出会った「至極真剣」までの間3冊刊行されていますが、この間の文体の変化も非常に興味あります。というのも「至極真剣」で受けた印象と『世界の終わり』で受ける印象が微妙に違っていたから。もちろん年月を経て文章の雰囲気も変わっていきますよね。そんな変化がどのようになされたのか、今とっても興味があって他の作品を早く紐解きたい!とわくわくしているところです。
『世界の終わり』を読んで「うん、好きだなぁこういうの。」と好印象を持ちました。何となくですが、宮崎作品に毒気やアクの強さを勝手に想像していたのですが、感想にも書いたように毒気がありそうでないというものが、想像と違って新鮮でした。
「世界の終わり」の主人公が好きだという(宮崎さんも?)ミッシェル・ガン・エレファントは聴いたことがないし、「スモーキン・ピンク」の参照マンガ作品となっている岡崎京子さんの『Pink』は読んだことがないしで、完全にこの世界を理解出来ていないかもしれません。それが少し残念でしたがでもきっと影響なく読めます。
もっともっと追いかけていきたい作家さんです。
かりさ | 著者別ま行(宮崎誉子) | comments(0) | trackbacks(0) |