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『プラネタリウムのあとで』梨屋アリエ

プラネタリウムのあとで
プラネタリウムのあとで
梨屋アリエ/講談社
闇夜にきらめく美しくて、切ない四つの恋物語。
心の中に小石を作ってしまう少女、体が膨張する少年、吸脂鬼に脂肪を吸われる乙女、自分の抜け殻を咀嚼する異母姉…。別世界へ誘う珠玉の4編。
初めて出会った梨屋さんの作品はその世界観に驚くと同時にすっかりしっかり梨屋さんの虜になってしまった。だって!これは一筋縄じゃいかない世界ではないか!まさかこうくるとはなぁ。SFとまではいかないけれどファンタジー色を帯びた内容。ここに登場する少年少女はみな何かしらのモノやコトを抱えている。けれどもそれが突出しているわけではなくごく自然に綴られ読み手にも何ら違和感を与えず、その心情を擬人化して描いてみせる。それの面白いこと。先入観なしに読むとその不思議さにさらにはまる。

登場人物と同世代の少年少女が読んだら共感するんだろうな、と思う。試しに思春期の頃の自分を思い返しいろいろと当てはめてみる。けれどもいろんなものをバラバラと落としてしまった自分にはその頃からは無駄に増えてしまったものや、逆に欠けてしまったものがあまりにも多く、結局途方に暮れるばかりだった。大人の目線で見るしかなくなった自分が少し哀れでもあった。

「笑う石姫」「地球少女」「痩せても美しくなるとは限らない」「好き。とは違う、好き」4編の短編集。思春期と一括りにするのは簡単だけれども、その個人個人抱えているものは多様していて、その心の闇の色濃かったり深さだったりは目に見えない。いつももやもや霧の中を歩いているようで手でかいてもかいてもそれは一向に晴れなくて、この先自分の進むべき道が見えなくて途方に暮れてしまったり、大人になることへの恐れや嫌悪感なども増してくる。子供から大人へ変化しつつあるその途上にいる子らは悩むことにまた悩み、けれどもそれをぶつける術を持たない。梨屋さんはそんな多感期な子供たちの心を形にして描いてみせる。
中でも「笑う石姫」が切なく描かれていて、ああ、これが子供なんだ。とその無力さをしみじみ感じてしまう。人を好きになるって幸せでスイーツみたいに甘くて…なんてことが実は幻想なんだってことも同時にわかってしまう痛々しさ。でもそうせざるを得なかった彼女の気持ちがとてもとても切ない。

梨屋さんの作品は思った以上に相性が良く、他作品も是非追いかけたい。楽しみ。

読了日:2007年4月12日
かりさ | 著者別な行(梨屋アリエ) | comments(0) | trackbacks(0) |