ホルモー六景 万城目学/角川書店
このごろ都にはやるもの、恋文、凡ちゃん、二人静。四神見える学舎の、威信を賭けます若人ら、負けて雄叫びなるものかと、今日も京にて狂になり、励むは御存知、是れ「ホルモー」。
「鴨川(小)ホルモー」「ローマ風の休日」「もっちゃん」「同志社大学黄竜陣」「丸の内サミット」「長持の恋」6編の連作短編集。
『
鴨川ホルモー』の続編、というか番外編な短編集。それもただの短編ではなく恋の短編集なのでありました。
『鴨川ホルモー』の如く抱腹絶倒なお話しばかりを予想していましたら、これが見事に裏切られまして。それはそれは素敵なお話しが詰まっていて、特にラストの「長持の恋」は泣かずにはおれず、しんみり泣くというどころではなく涙がボタボタ落ちて鼻水も垂れるというくらいのひどいありさま。うわー泣かされるとは思わなかった。不意打ちだ。ああ。
初っ端からあの高村(要注意人物!彼には注意せよ!さもなくばゲラゲラ笑いの刑に処せられる)が登場して「ううう、やばい」と身を引き締めるもゲラゲラほどではなくクスクスに留まってホッと安心したのも、次には別の章で泣かされるという、高村には本当に油断ならない。でも彼へのイメージは変なヤツ、から実は優しい素敵な人、に見事に変わってこれはもう素晴らしいくらいに華麗に私の中でイメージチェンジしたのでありました。
「鴨川(小)ホルモー」
オニが街中をわらわら歩く様子とか、ちんまり待機している姿とか、いちいち想像してうふうふしてみたり、「鴨川の等間隔カップル」って?とこっちは想像出来ずにポカン。
彰子と定子の決闘はさぞ迫力あっただろうな。鬼語のところ定子には悪いけど笑っちゃいました。でも二人静、カッコいい。
「ローマ風の休日」
凡ちゃんの才能とか(おお〜ここでも発揮されてましたか)数学のことを話す情熱さとか、裏話的に読めたのはすごく嬉しい。楠木ふみのファンとしては(笑)
不器用な凡ちゃんを同じバイトで働く年下の男の子(高校生)の視点から描かれています。その凡ちゃんが実に可愛い。『鴨川ホルモー』の裏話、うふうふと楽しませてもらいました。
「もっちゃん」
もっちゃんは切ないなぁ。最初もっちゃんなんて人いたかしら?なんてとんちんかんなこと考えてましたけど、ええ全然違う方です。あの方です。とっても有名な方。
安倍が出てくるのでちょっと錯覚してしまいました。
読んでいくうちにもっちゃんの作品を読みたくなってここにも登場する作品を久しぶりに再読。もっちゃんの小説は詩的で美しい。繊細な硝子細工のような。
そういえばもっちゃん(まだ読んでない方のために本人の名を伏せましょう。読めばわかりますが)のある作品の碑が三重県松阪市松阪城址にあるのですよね(←これで分かってしまうかも)。三重に在住していた時に行っておけば良かった、と今になって後悔。
何だかもっちゃんの話しで熱くなってしまった。
この「もっちゃん」はすごく上手い。大好き。
「同志社大学黄竜陣」
こちらもなかなか壮大なお話しでありました。ここでの主役・巴ちゃんの元彼が芦屋満!なんとまぁ面白いところに繋がってました。
同志社大学の開校にまつわる話しや、そこに眠る黄龍のこと、すっかり堪能していました。さあ、黄龍はよみがえるのかどうか!?
「長持の恋」
泣きました。ボロボロ泣きました。そんな、そんなことって。そうして素敵なラスト。思わずキュンとしてしまったではないか。なんと可愛いのを用意してくれていたんでしょうか。しかもこの「長持の恋」が最後のお話し。最後だから余韻に浸れてなお良し。
時空を超えた恋。そして衝撃の事実。感動のラスト。一番好きなお話し。
いやはや「ホルモーとは何ぞや?」な妙なお話からこんなキュンとさせてくれる恋物語も書けてしまうんだなぁ、万城目さんったら。
とにかくサラッと流れていくようでいてけれども実に緻密に物語の構成が成されていて、これはもう唸りっぱなし。それでこちらの感情も揺さぶられてしまうのだからホント、油断出来ません。素敵すぎてうっとりしてしまいます。
ということで、お気に入りは「ローマ風の休日」「もっちゃん」「長持の恋」。
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