ひなたでゆるり

読書のコトとちょっぴり日々のコトブログ

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『遠い水平線』アントニオ・タブッキ

遠い水平線 (白水Uブックス―海外小説の誘惑)
遠い水平線
アントニオ・タブッキ/須賀敦子 訳/白水社
ある夜運びこまれた身元不明の男の他殺死体。死体置場の番人スピーノは、不思議な思いにかられて男の正体の探索を始める。断片的にたどられる男の生の軌跡、港町の街角に見え隠れする水平線――。遊戯性と深遠な哲学性が同居する、『インド夜想曲』の作者タブッキの小説宇宙の真髄。

タブッキの不思議な感覚世界に揺らめき溺れました。
天と地の境目にうっすらと引かれる水平線。
くっきりと分かれているようで、けれどもその境目は淡く消え入りそうに曖昧で…
この作品の現実と幻想の境目でも行きつ戻りつその交わりのところでふわふわ漂ってました。

ある夜他殺死体で運ばれた男の正体を探索し始めた、死体置き場の番人スピーノ。
その探索の先に到達する結末とは。
結末を迎えても気持ちの波紋は広がり続け、その謎と意味を模索しているところ。
とりわけ夢の話や最後の場面が印象的。
終始曖昧模糊で謎めいていてふんわりした読後感。

読了日:2012年4月13日
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『ノディエ幻想短篇集』シャルル・ノディエ

ノディエ幻想短篇集 (岩波文庫)
ノディエ幻想短篇集
シャルル・ノディエ/岩波文庫
夢と狂気の領域に文学の世界を切り拓き、フランス幻想文学の祖とあおがれるノディエ(1780‐1844)の傑作アンソロジー。入れ子のようにつぎつぎと重なってゆく悪夢を描いて読む者を感覚の迷路へと引きずりこむ「スマラ(夜の霊)」、愛すべき妖精と美しい人妻の哀しい恋の物語「トリルビー」など6篇を精選。


なんて魅惑的な幻想物語なのだろう。
狂人、怪物、亡霊、妖精…人間世界にあり得ないもの、見えるはずのないものの存在が幻想世界をより狂気に導き特異なものにしている。
現実の中の悪夢と幻想、夢の中の夢、という入れ子の感覚に迷い、幻惑されてゆくのが心地良い。
幻視者であったノディエの描く光と闇、現実と悪夢、狂人の棲む幻想世界から離れがたくいつまでもゆらゆら漂い、時にその深さに溺れるのです。

「夜の一時の幻」「スマラ(夜の霊)」「青靴下のジャン=フランソワ」が好き。

読了日:2012年1月11日
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『最初の刑事』ケイト・サマースケイル

最初の刑事: ウィッチャー警部とロード・ヒル・ハウス殺人事件
最初の刑事: ウィッチャー警部とロード・ヒル・ハウス殺人事件
ケイト・サマースケイル
1860年、ヴィクトリア朝時代の英国。6月のある朝、のどかな村にたたずむ屋敷の敷地で、当主の3歳の息子が惨殺死体となって発見された。
ヴィクトリア朝英国を揺るがし、後に数々の探偵小説が生まれるもととなった幼児殺害事件の驚くべき真相とは。
当時の特異な世相をも迫真の筆致で描き出す圧巻のノンフィクション。

ヴィクトリア朝英国で起きた幼児惨殺事件。後に数々の探偵小説が生まれるもとになった事件の顛末と真相。
フィクションながらまるでミステリや探偵小説を読んでいるかのような充実感に満ちており、
その吸引力は圧倒的。
事件の起きたケント家での複雑な家庭環境と人間関係、当時の警察機関の体質、
この時代の背景が写真や資料によって興味深く描かれます。
その先に待ち受ける真相と犯人とは。

事件の真相は加熱する報道や「探偵熱」に浮かされた人々によって数奇な運命に翻弄されるのです。
最後の胸突かれる文章は秀逸で深い余韻を残します。

読了日:2011年7月13日
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『盗まれっ子』キース・ドノヒュー

盗まれっ子
盗まれっ子
キース・ドノヒュー著/田口 俊樹訳
何年も待ちつづけてきてようやく人間の子供に戻ったヘンリー・デイ。
ある日突然、ホブゴブリン(子鬼)として生きることになったエニデイ。
森の中の魔的な世界と現実の世界、子供時代の記憶と大人の時間、幸福と孤独。
立場を取り替えられたふたりの少年が過去と決別し、自分の人生を見つけるまでの姿を鮮やかに描き出す。

取り替え子伝説を題材に描いた物語。
ある日突然ホブゴブリンとして生きることになったエニデイ。
何年も待ち続けて人間の子に戻ったヘンリー。
彼らの視点から交互に物語は綴られていきます。
人間の子に戻ってなお試練と苦悩に苛まれるヘンリーと、森の中で厳しい孤独を生きるエニデイ。
これまでの記憶や感性が徐々に薄れ、現在の運命を人生を受け入れて成長していく姿は痛々しくも力強く逞しい。

好きなのは森の魅惑的な世界と奇妙で愛らしい妖精たちの場面。
おぞましく残酷な物語のはずなのに、温かく煌めきに満ち溢れた自己探求と彼らの成長物語。

読了日:2011年7月7日
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『犯罪』フェルディナント・フォン・シーラッハ

犯罪
犯罪
フェルディナント・フォン・シーラッハ著/酒寄進一訳/東京創元社
一生愛しつづけると誓った妻を殺めた老医師。兄を救うため法廷中を騙そうとする犯罪者一家の息子。羊の目を恐れ、眼球をくり抜き続ける伯爵家の御曹司。彫像『棘を抜く少年』の棘に取り憑かれた博物館警備員。エチオピアの寒村を豊かにした、心やさしき銀行強盗。―魔に魅入られ、世界の不条理に翻弄される犯罪者たち。高名な刑事事件弁護士である著者が現実の事件に材を得て、異様な罪を犯した人間たちの哀しさ、愛おしさを鮮やかに描きあげた珠玉の連作短篇集。

彼らは何故犯罪を犯さねばならなかったのか。それも常人には理解出来ない異様な犯罪を。
弁護士である「私」が出会った実際の事件を元に綴った11の犯罪文学。
事件はいかにして起きたか。犯人の生い立ちから淡々にけれども丁寧に綴られていきます。
凄惨な場面、暴かれていく人間の本性…憎むべき犯罪のはずなのに彼らの人生の語りを読むにつれ、愛おしささえ感じてしまう。
シンプルな文章と訥々とした語りの中に著者の真摯な気持ちが感じ取れて、魅了されます。
その引き込まれ感は圧巻。

「棘」が特に秀逸でずっと胸に突き刺さったままなのです。
他「ハリネズミ」「緑」「エチオピアの男」も印象的でした。
訳者の酒寄さんによれば、第二作の翻訳準備に入られているとのことでこれは楽しみ!
そして新作の中編小説のことや『犯罪』の映画化のこと、これからますます期待が込められます。

読了日:2011年6月27日
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『ヒュペルボレオス極北神怪譚』クラーク・アシュトン・スミス

ヒュペルボレオス極北神怪譚 (創元推理文庫)
ヒュペルボレオス極北神怪譚
 クラーク・アシュトン・スミス/創元推理文庫
邪神シァトッグアが地底に潜み、魔物が跋扈する超古代大陸ヒュペルボレオス。栄華を誇る首都コムモリオムが放棄されるまでの奇怪な顛末を描く「アタムマウスの遺書」、異端の魔術師エイボンと宿敵の対決が思わぬ結末を迎える「土星への扉」他、アトランティス最後の島ポセイドニスの逸話も併載する。『ゾティーク幻妖怪異譚』に続き、美と頽廃の詩人による23の綺想を収める傑作集。

地球最後の大陸ゾティークの幻妖怪異物語に続く、超古代大陸ヒュペルボレオスとアトランティスの物語。
今作もスミスの幻妖世界に心地良く浸りました。
綴られる幻想怪奇な世界は詩的で澱みなく、言葉の美しさにうっとりと心酔。

地底に潜む古代の邪神、魔物や妖術師が跋扈する世界、ギリシア神話に登場する土地ヒュペルボレオスにまつわる創造世界。異郷の物語も堪能しました。
お気に入りは魔術師エイボンに絡む物語。特に「土星への扉」が好き。
第三作品集(こちらのタイトルも素敵)が楽しみ♪
そして今作も東逸子さんの表紙画が素晴らしく美しい。

読了日:2011年6月7日
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『ゾティーク幻妖怪異譚』クラーク・アシュトン・スミス

ゾティーク幻妖怪異譚 (創元推理文庫)
ゾティーク幻妖怪異譚
クラーク・アシュトン・スミス/東京創元社
朧な太陽のもと、魔術や降霊術が横行する地球最後の大陸ゾティーク。ブラッドベリ、ムアコックに影響を与えたことでも知られる異才が、細密かつ色鮮やかな描写で創りあげた美と頽廃の終末世界の物語を、本邦初となる全篇収録の決定版で贈る。地獄の王にそむいた妖術師の復讐譚「暗黒の魔像」、失った鳥を求める波瀾の航海を描く滑稽譚「エウウォラン王の航海」他全17篇を収める。

<<収録作>>
「ゾティーク」「降霊術師の帝国」「拷問者の島」「死体安置所の神」「暗黒の魔像」
「エウウォラン王の航海」「地下納骨所に巣を張るもの」「墓の落とし子」「ウルアの妖術」
「クセートゥラ」「最後の象形文字」「ナートの降霊術」「プトゥームの黒人の大修道院長」
「イラロタの死」「アドムファの庭園」「蟹の支配者」「モルテュッラ」の17篇。

詩人である著者が紡ぎ創り上げた、地球最後の大陸ゾティークの物語。
幻想怪奇の中に妖しく艷めく世界。終末世界で大きく存在し、支配するのは魔術や降霊術。
暗黒的退廃的世界をここまで色鮮やかに艶美に感じるのはどうしてでしょう。
たまらなく魅了されます。
ゾティークへと誘う冒頭の詩から心地良く惹き込まれます。

「降霊術師の帝国」「エウウォラン王の航海」「ウルアの妖術」「最後の象形文字」
「アドムファの庭園」がお気に入り。
解説も読み応えあり。東逸子さんの表紙絵が素敵です。

読了日:2011年6月5日
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『ねじまき少女』パオロ・バチガルピ

ねじまき少女 上 (ハヤカワ文庫SF) ねじまき少女 下 (ハヤカワ文庫SF)
ねじまき少女(上)
ねじまき少女(下) パオロ・バチガルピ/ハヤカワ書房
石油が枯渇し、エネルギー構造が激変した近未来のバンコク。遺伝子組替動物を使役させエネルギーを取り出す工場を経営するアンダースン・レイクは、ある日、市場で奇妙な外見と芳醇な味を持つ果物ンガウを手にする。ンガウの調査を始めたアンダースンは、ある夜、クラブで踊る少女型アンドロイドのエミコに出会う。彼とねじまき少女エミコとの出会いは、世界の運命を大きく変えていった。
聖なる都市バンコクは、環境省の白シャツ隊隊長ジェイディーの失脚後、一触即発の状態にあった。カロリー企業に対する王国最後の砦〈種子バンク〉を管理する環境省と、カロリー企業との協調路線をとる通産省の利害は激しく対立していた。そして、新人類の都へと旅立つことを夢見るエミコが、その想いのあまり取った行動により、首都は未曾有の危機に陥っていった。

タイトルに強烈に惹かれて手にしましたが、SF読みでない私に果たしてここに紡がれた世界観を理解出来るのかしら?と不安だったのですが、そんな不安はどこへやらこの入口に立ち扉を開けた瞬間にあっという間に呑み込まれてしまいました。
枯渇した石油の代わりに主たるエネルギー構造・新型ゼンマイ、植物病に侵された穀物の耐病性を持つ遺伝子作物を生み出すカロリー企業…近未来のバンコクの混沌とした世界に生きる人々。
主たる人物たちの語りが順に紡がれ交わる時、さらなる不穏な蠢き。

ここに悪夢のように描かれる異質な世界が違和感なくするりと入り込んだのは(見慣れない単語等の説明書きが一切ないに関わらず)、混沌とした中での権力争いも、エネルギー源を失い、伝染病に怯える都市の姿が現在の日本においてリアルに迫ったことと、それ以上に運命に翻弄されながらも生命力に溢れた者らの強かさに魅了されたからだと。
結局最後に笑うのは誰なのか。
次々と語りと視点が切り替わるごとに増す、高揚感と爽快感がたまらない。最高でした。

読了日:2011年6月1日 2日
かりさ | 海外小説 | comments(2) | trackbacks(0) | 

『幽霊船』リチャード・ミドルトン

幽霊船(魔法の本棚)
幽霊船
リチャード・ミドルトン/国書刊行会
ある嵐の日、かぶ畑の真ん中に錨をおろした幽霊船が平和な村にもたらした大騒動…。黄金を惜しむように言葉を惜しみ、数篇の珠玉の傑作を遺して異郷の地に倒れた「最後の世紀末作家」ミドルトンの名短篇集。

<<収録作>>
「幽霊船」「ブライトン街道で」「羊飼いの息子」「棺桶屋」「奇術師」「逝けるエドワード」
「月の子たち」「園生の鳥」「誰か言ふべき」「屋根の上の魚」「小さな悲劇」「詩人の寓話」
「ある本の物語」「超人の伝記」「高貴の血脈」「警官の魂」「幼い日のドラマ」「新入生」
「大芸術家」「雨降りの日」

何となく幻想怪奇な作風かなと思っていましたが、最初の「幽霊船」でおや?ちょっと違うぞ?と。
なかなか愉快な物語にすっかり惹き込まれあれよと無我夢中で次々と読む読む。
いや〜大変満足な読書時間を過ごせました。

幻想的で詩的な物語が大変魅力的で惜しむらくは作品を多く残さずに命を絶ってしまったこと。
もう少し命の終わりを自ら選択することを待っていたら…これは考えても詮無い事だけれどやはり惜しい。
「幽霊船」「ブライトン街道で」「棺桶屋」「奇術師」が殊更に素晴らしくお気に入り。
「幽霊船」のような作品をもっと読みたかった。

読了日:2011年5月31日
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『ゾラン・ジフコヴィッチの不思議な物語』ゾラン・ジフコヴィッチ

ゾラン・ジフコヴィッチの不思議な物語 (Zoran Zivkovic's Impossible Stories)
ゾラン・ジフコヴィッチの不思議な物語
ゾラン・ジフコヴィッチ/山田順子訳/黒田藩プレス
近年大注目の旧ユーゴスラビア・ベオグラード出身の現代作家、ゾラン・ジフコヴィッチ(Živković)による摩訶不思議なストーリーを集めた傑作選。

めくるめく物語の巧妙な仕掛けに酔いました。
タイトルの『不思議な物語』とあるように実に不思議なお話3編が収録されています。

一見シンプルな文章の中に織り成される不思議な味わい。
そこに奇妙で幻想的な要素が加味されて読むほどに味わい深くその深さにどはまりしていくのです。
入れ子式に複雑に入り組んだ物語「ティーショップ」、幻想的世界に迷いこむ「火事」(この結末がまた妙で惹き込まれる)、SFのようなミステリーのような奇妙な味わい「換気口」…ジフコヴィッチの独創世界にすっかり絡め取られ抜け出せなくなってしまい、読み終えてまだ浸っていたくてまた読み返して…を繰り返してしまう。

一番のお気に入りは「ティーショップ」。
カフェが舞台で物語の冒頭はなかなか可愛らしい感じで進むのですけど、だんだんと物語の様相が変化してきてこの物語の行先にドキドキします。
よくよく考えみれば怖いよなぁ、怖いよね。

まだまだ未訳の作品が沢山でもっともっと読みたい。
特に『図書館』という作品に一番興味あり、です。

読了日:2011年5月9日

★黒田藩プレス本書紹介ページ⇒ゾラン・ジフコヴィッチの不思議な物語
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