本を読むわたし 華恵/筑摩書房
「ずっと本と一緒だった。だから大切な思い出は、必ず本と結びついている」 4歳から14歳までに出会った本を手がかりに、その時々の自分を振り返って描写していくセルフ・ポートレート。
華恵さんの『
小学生日記』があまりに素敵で、その華恵さんの感性に惚れ込んでしまった私は積んであった本書を紐解くことにする。
「I Like Me!」「Deputy Dan and the Bank Robbers」「Goodnight Moon」「Madaline」「Yo!Yes?」「Green Eggs and Ham」「きつねの話「てぶくろを買いに」
「きつねとぶどう」「はせがわくんきらいや」「ぼっこ」「シューマン」「小さき者へ」「ココナッツ」「卒業」「非色」これらの15冊と華恵さんの出会い、それにまつわる思い出たちを綴った作品。
『小学生日記』にもちらりと登場する本も再登場して嬉しい。実に克明にその本との出会い、その本にまつわる華恵さんの思い出が綴られる。1冊1冊大事に愛しみながら読む様子が伝わり、同じ本好きならばきっと華恵さんの姿勢に共感することだろう。そして私が尊敬する部分はそのキラキラした好奇心の芽がぐんぐん育っていること。自分が読みたい!と思った本は躊躇することなく手に取りその世界に踏み出す。そこから華恵さんの感性はどんどん花開いて美しく咲かせるのだろう。
例えば。私も子供の頃から本は好きで図書館に通いつめ借りられるだけの冊数を借り、放課後友達の誘いを断ってまでもその本と戯れることに喜びを感じていたほどだったけれど、華恵さんのように分け隔てなく本を選ぶことは出来なかった。どうしてもカラーの似たような作品を選んでいたように記憶している。冒険が出来ない性格はもうこの頃からだったのだなぁ、と本書を読んで改めて感じてしまった。
華恵さんがお母さんと図書館や書店に出かける様子が私と息子、今だったら娘、その日常に重なってとてもとても共感しながら読むことが出来た。でも!アメリカの図書館では30冊ほども本を借りられるの!?すごい!うらやましい!…まぁ羨ましがってもそんなに読めるはずもない私なのだが(10冊借りたって結局はひぃひぃ言っているのに)。
自由の国アメリカで育ち、自己を何ら制限されることなく表現し、発揮することが出来た国から、保守的な日本という国に移り住むようになってからの華恵さんの苦悩と、そこで出会う本たち、その本に支えられて悩みの日々を乗り越える様子、そんな華恵さんの全てが愛おしくてたまらない。
特にアメリカのグランパ、グランマとの少し切ない思い出を語る「Deputy Dan and the Bank Robbers」、クラスメイトだったさっちゃんの思い出を書いた「はせがわくんきらいや」や、華恵さんのおじいちゃんとのことを書いた「卒業」、フミ子さんとの思い出や、"ハナエと俺とは、見てきたものがあまりにもちがうんだよ"というモトイの言葉が鋭く突き刺さる「非色」などが秀逸。
「卒業」では実際に私も読んだ時の感情が溢れてしまったのと、老いていくおじいちゃんの姿、それを温かく見つめる華恵さんの様子についこみ上げてくるものを抑えられなかった。
もちろん他にも華恵さんならではのまっすぐな目線で紡がれた文章がぐっと迫ってきて圧倒される。
華恵さんのその好奇心がむくむくと感性を磨き、そうして今輝きを放ち始めているのだな、と。それはあまりにも眩しく、いくつも年上の私が華恵さんから教えられることの多さに少々縮こまってしまうのだけれど、そこを壁にせずに素直に受け入れること、そこから私も学んで磨いていくこと、それを自然にスルリとこなすこと、そんなことを彼女から教えられた。
華恵さん、あなたのおかげでいつしか忘れていた、少女の頃溢れんばかりにあった本への愛情を思い出すことが出来ました。もっともっといろんな本に出会いたい。そこから広がる自分の感性を見ていきたい。そんな風に貪欲に背表紙をひたすら追っていたあの頃の自分を思い出しました。いつの間にか薄れて忘れかけていたその頃の自分、誰かの後を追うことしか出来なくなってしまった自分、でもそれじゃぁ面白くない。ふつふつとまたあの頃の思いが湧き上がってきています。
華恵さんの本を読んで本当に良かった。大切な忘れられない本になりました。
読了日:2007年7月4日
ずっとずっと華恵さんの作品が気になっていました。
webちくまで連載されている華恵さんの文章に惹かれていたからです。ある日本書『本を読むわたし』のサイン本を手にすることが出来ました。それから読む機会が得られず(気持ちもそちらに向かず)ずっと積んだままにしていたのですが、今回『小学生日記』を読み、それから思い出したようにですが読むことが出来ました。
華恵さんの類稀なる感性に触れて大いに刺激を受けました。とても良かった。
『小学生日記』とあわせて大好きな作品になりました。
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