ひなたでゆるり

読書のコトとちょっぴり日々のコトブログ

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『エデン』近藤史恵

エデン
エデン
近藤史恵/新潮社
あれから三年―。白石誓は、たった一人の日本人選手として、ツール・ド・フランスの舞台に立っていた。だが、すぐさま彼は、チームの存亡を賭けた駆け引きに巻き込まれ、外からは見えないプロスポーツの深淵を知る。そしてまた惨劇が…。ここは本当に「楽園」なのだろうか?過酷なレースを走り抜けた白石誓が見出した結論とは。

前作のミステリ色とは違い、今作はロードレースのスポーツとしての魅力が満載で堪能しました。とにかくめくるページが止まらないのですもの。
独特で複雑なスポーツだからこそ、その心情のせめぎ合いがどう転がっていくのか先が気になって仕方ありませんでした。
チームの解散という一大事を抱えながらのレースの臨場感の緊迫さがぐっと迫ってきて興奮。
さらに大きく柔軟に成長した(でもいい意味で頑固者よね)チカの姿が眩しくて彼の今後のレース生活が充実しますように、祈らずにいられませんでした。

読了日:2010年4月26日
かりさ | 著者別か行(近藤史恵) | comments(4) | trackbacks(3) | 

『サクリファイス』近藤史恵

サクリファイス
サクリファイス
近藤史恵/新潮社
ただ、あの人を勝たせるために走る。それが、僕のすべてだ。
勝つことを義務づけられた〈エース〉と、それをサポートする〈アシスト〉が、冷酷に分担された世界、自転車ロードレース。初めて抜擢された海外遠征で、僕は思いも寄らない悲劇に遭遇する。それは、単なる事故のはずだった――。二転三転する〈真相〉、リフレインの度に重きを増すテーマ、押し寄せる感動! 青春ミステリの逸品。

一体本当の真実はどこにあるのか。二転三転する真相に一向に見えてこないゴールにただただすがりつくように文字を追って、そうして…彼の本当の思いが分かった時、全ての真実が明かされたとき、止め処なく溢れるものを抑えられませんでした。

エースとアシスト。アシストはただエースを勝たせるために自分を犠牲にします。エースのために渾身の力を出して逃げます。その力はゴールに向けてあるのではなく、あくまでもエースのためのもの。このキッパリと役割の分かれた過酷なスポーツの世界にすっかり魅せられました。
本作はアシストをする、いわゆる裏方の役である人間が主人公。でも、読み終えて真の主人公は別にいたことを痛いほどに知らされます。
何故彼がそれほどまでに勝つことにこだわったのか、その思いに触れた時、そしてタイトルの意味を知ったとき、衝撃の大きさもありましたが、痛みと辛さも同時に襲いました。

自転車ロードレースものをミステリ作家の近藤さんが書く。このことに始めはピンとこなかったものの、中盤からの選手の深層心理を見事に使ってミステリ仕立てにしていく過程はたまらなく快感でありました。読者の予想をはるかに裏切り最後にドンッと真実を突きつける。その衝撃は息を呑むほどであり、と同時に感情を大きく揺さぶられて自身をコントロールすることが出来なくなりました。見事です。
そしてもうひとつ、自転車レースって戦略が面白い競技なのですね。その戦略をあれこれ推理しながら読む(もう見るという感覚でしたけど)。これが実に面白い。
実際にロードレース見たらもう絶対面白いでしょう。リアルで、いやリアルは無理だろうからせめて映像ででもレースを見てみたい!そんな思いを強くしています。

自転車ロードレース全くの初心者でもわかりやすく基礎知識を交え、レースの臨場感、選手個々の心理、チーム内の空気感、どれをとっても無駄なく美しく端正。

ああ、すごく好き。これ。好きっていうか大好き。いや好きって言葉じゃまだ足りないくらい。そのくらい好き。

読了日:2008年6月19日


雑誌「Story Seller」に『サクリファイス』の外伝「プロトンの中の孤独」が収録されています。『サクリファイス』を読み終えてすぐこちらも読みました。素敵でした〜。
かりさ | 著者別か行(近藤史恵) | comments(16) | trackbacks(6) | 

『凍える島』近藤史恵

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凍える島
近藤史恵/創元推理文庫
得意客ぐるみ慰安旅行としゃれこんだ喫茶店〈北斎屋〉の一行は、瀬戸内海の真ん中に浮かぶS島へ。かつて新興宗教の聖地だった島に、波瀾含みのメンバー構成の男女八人が降り立つ。退屈する間もなく起こった惨事にバカンス気分は霧消し、やがて第二の犠牲者が……。孤島テーマをモダンに演出し新境地を拓いた、第四回鮎川哲也賞受賞作。
喫茶店<北斎屋>を友人と切り盛りする、店長のあやめ。お得意さまとその連れの一行で慰安旅行と相成る。行き先は瀬戸内海に浮かぶS島。真夏の微睡みを満喫するはずだった…のに。
読み終えたとき、なぜか震えが止まりませんでした。静かなる戦慄と共に本を閉じました。人を愛するということを全身全霊をかけて、この身を捧げる覚悟でと、いう人もいるのでしょうけど、これはすごいですね。恋愛がミステリィと絡んでいます。様々な愛の形がもたらした悲劇。ちょっと生々しいこと書いていますが、これを読んだらそんなこともサラッと言えるくらいになれます。本当に。清々しい文体が全体を綺麗に包んでいます。乳白色のイメージです。カタカナ遣いがとても美しく、これらがカラカラと乾いた音を立てて先へ先へと誘ってくれるようです。設定は夏なのだけど、冷たい寒い感覚です。

読了日:1999年10月5日
かりさ | 著者別か行(近藤史恵) | comments(8) | trackbacks(1) |