ひなたでゆるり

読書のコトとちょっぴり日々のコトブログ

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『からまる』千早茜

からまる
からまる
千早茜/角川書店
心を惑わせる女と揺らぐ男。そして二人をとりまく、無脊椎動物のように現代を泳ぐ男女たち。愛情とは何か。性とは何か。驚異の新人が妖艶な筆致で描く、7つの連作短編集。

ふわふわと心許ない男女の関係を無脊椎動物のように例えて描く人間模様。
7人の見えぬけど絡まる糸を手繰り寄せていく描き方がとても好き。

これまでの千早さんの幻想的な妖しく毒のある雰囲気とは異なる作風でしたが、こちらも乾いているようで内に秘めた熱っぽさがとてもリアル。
多角的に視覚を変えることで、それぞれの痛みや孤独感が切々と感じられ読んでいて切なくなってしまいました。
残りの人生どれほどの出会いがあるか、繋がっては途切れてゆく糸がどれほど残ってゆくのか…
そんなことをしみじみ感じました。

読了日:2011年5月20日

【千早茜読了本】
『魚神』(2009.2.6)
『おとぎのかけら』(2010.9.30)
かりさ | 著者別た行(千早茜) | comments(0) | trackbacks(0) | 

『おとぎのかけら 新釈西洋童話集』千早茜

おとぎのかけら 新釈西洋童話集
おとぎのかけら 新釈西洋童話集
千早 茜/集英社
本当に幸せなのは誰か?現代のおとぎ話7篇。
シンデレラ、白雪姫、みにくいアヒルの子など代表的西洋童話を現代日本に置き換えた短篇集。童話の結末に疑問を抱く著者が見つけた、それぞれのハッピーエンドとは?

七つの西洋童話をモチーフに現代風に紡いだ短編集。
慣れ親しんだおとぎの国の遠い世界のお話は、確かに現実的でない。
どこか安心して読めてしまう。そこがぬるい、と書かれる千早さんの紡いだお話たちの何と苛烈で容赦ないこと。
冷ややかでぞくぞくした感覚なのだけど、一方で恐怖と絶望感がねっとり絡みつく生ぬるい嫌さもあってその相反する感覚が絶妙なのです。
いつの間にかモチーフになった物語を忘れ、新たに息吹いたお話に夢中になってしまう。
いやはや千早さんの紡ぐ世界は素敵。美しい装丁本の中に仕込まれた毒の味は大変美味でありました。

「カドミウム・レッド」「凍りついた眼」が好み。この中では異色の「金の指輪」も良かった。
「白梅虫」はぞわぞわ感が凄まじい。「アマリリス」のさやちゃんのエピソードはいいなぁ。
毒々しさの中にも美しさだったり、恐怖だったり、救いようのない絶望感だったり、さまざまな味わいがあって堪能しました。

読了日:2010年9月13日
かりさ | 著者別た行(千早茜) | comments(2) | trackbacks(1) | 

『魚神』千早茜

魚神
魚神
千早茜/集英社
生ぬるい水に囲まれた孤島。ここにはかつて、政府によって造られた一大遊廓があった。捨て子の姉弟、白亜とスケキヨ。白亜は廓に売られ、スケキヨは薬売りとして暗躍している。美貌の姉弟のたましいは、惹きあい、そして避けあう。ふたりが再び寄り添うとき、島にも変化が…。第21回小説すばる新人賞受賞作。
深い眠りから目覚める前の心地よい微睡みを味わうように、白亜とスケキヨの世界にとっぷりと浸りました。いつまでも目覚めたくないと抗うように終わりを迎えるのがとても惜しかった。いつまでもとろとろと絡まれていたかった。とても心地の良い時間でありました。
遊郭という場所の甘く濃密な色香と腐臭漂う島の空気が混ざり合いそれは不可思議な妖艶さを増します。そこで織りなす島の独特な世界が読み手をとろりと溶かすように魅惑させていくのです。

かつては一大遊郭が栄えたという閉ざされた孤島。夢を見ているような幻視の世界。運命を定められた姉弟の引き裂かれる悲しみは想像を超える痛々しさ。互いに強く惹かれ合い求め合いながら、身を焦がす思いを心の片隅にしまい込むのですが、常にその影を追い求める情念さにこちらまでもが切なくなってしまいます。
白亜をめぐる男たちも魅力的。スケキヨのように儚げな中性的な男性も素敵ですが、私はより男らしさやその生々しさをまとった剃刀男の存在が圧倒的でした。白亜と剃刀男の出会い、再会、そして…その関係性が進むごとに官能的な匂いが立ち込めて何ともいえぬ思いが生まれ出てうっとりしていました。
そういう意味でも萌え要素充分あり、なのです。

新人作家とは思えない完成された世界観と文章力に違和感なくするんと入りこみ、すっかり酔いしれました。千早さんの次なる作品が早くも待ち遠しいです。

読了日:2009年2月5日
かりさ | 著者別た行(千早茜) | comments(8) | trackbacks(3) |