ひなたでゆるり

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『モドキ』ほしおさなえ

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モドキ
ほしおさなえ/角川書店
世界には、特別な人とそうじゃない人がいる。特別な人だけが輝いて、愛されて、記憶される。でも、そうじゃない人は…?郊外のマンションに暮らす主婦が覗いたウェブサイト。そこに掲載されていた写真の中のミニチュアの女性は、自分とそっくりの顔をしていた。これは偶然?それとも…。密かに売買されるその人間もどきを巡り、切なく危うい物語が始まる。

こ、これは…何と表現したものか。SFっぽくもあり、幻想ぽくもあり。ホラーにしては色が弱いかな。ま、B級ホラーといったところか。とにかくものすごく好みな作品。
いや〜まさかこんなに良いとは思わなかった。本を開き目に飛び込んだ世界は不思議な設定であり、歪んだ愛に溢れている。決して満たされる事のないいろんな愛がここには存在する。

次々と変わる場面や視点に最初は戸惑うが次第にその役割が見えてくる。初めから不穏な雰囲気は漂わせていたものの、驚きの展開にどんどん目が離せなくなる。
マツナガの歪んだ愛、マツナガが愛するアミという人形(人形なのだが…この人形は生きている。ね、変でしょう?)。それはそれは大事に愛でるのだ。それを複雑な心境で見つめるカホもまたとんでもない愛に巻き込まれていく。愛に飢える者もいる。自分を愛して欲しい、理解して欲しい、それを渇望するあまり自分を失う者。歪みきった愛がやがて到達する場所とは。

人間の体から自分のコピーが皮膚を通してにょきにょき出てくる。痛くも痒くもないらしい。実に奇妙な話しである。そんな小さな人間でつい思い出してしまうのは「南くんの恋人」(私が思い出すのは深田恭子&二宮和也ではなく、高橋由美子&武田真治のほう)。あんな小さな女の子と生活を共にするようになるなんてもしかしたら憧れる男性がいるんじゃないだろうか、なんて思いながらドラマを見ていた覚えがある。独占欲が強い男なんて特に。いや、男に限らず女にだってきっとあるんだろう。それは人形を愛でる感覚とは別物なはずだ。

後半に向かうにつれて謎が解かれる安堵感と、理不尽な恐怖感が混ざり合い不思議な感覚が襲う。が、それは決して拒否反応ではなく、むしろ恍惚にも似た感覚である。この心地良さは何だろう。ストンと綺麗に着地しない曖昧さがさらに胸を逆立て、架空の話しを現実に置き換えて恐怖に浸ってみる。そのぞくぞく感がたまらない。
タイトルの「モドキ」が全てを語る。この世界のどこかでそれは増殖しているだろうか。自分と似た顔のそれがもしかしたら存在しているだろうか。
この世に不思議なことは……ありそうで怖い。
満たされない愛に痛々しく叫ぶそれぞれの心が切なく虚しい。

読了日:2006年8月1日


もう〜大絶賛の面白さでした。もしかしたら描写的に気持ち悪さを感じる人もいるかな?とは思いますが…。
作中に登場する「科学レスキュー911」という番組は地味ながらマニアックな匂いがぷんぷんで興味をそそられます。いや〜ぜひ見てみたいなぁ。でも昔ならばそんな番組ありそうだけど、今はどうだろう?いろいろと問題が出そうな内容ではあるかな。
読み終えて見るタイトルと表紙の意味が深く、またしみじみと世界に入りこんでしまいます。かなり好きな世界観でした。気になる方は是非!
かりさ | 著者別は行(ほしおさなえ) | comments(4) | trackbacks(3) |