ひなたでゆるり

読書のコトとちょっぴり日々のコトブログ

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『ロマンス』柳広司

ロマンス
ロマンス
柳広司/文藝春秋
ロシア人の血を引く子爵・麻倉清彬は、殺人容疑をかけられた親友・多岐川嘉人に上野のカフェーに呼び出される。それが全ての事件のはじまりだった。華族社会で起きた殺人事件と共産主義活動家の摘発。そして、禁断の恋…。退廃と享楽に彩られた帝都の華族社会で混血の子爵・麻倉清彬が辿りついた衝撃の真実。

昭和初期の華族社会、その光と影、帝都独特の雰囲気が作品を彩り色香に酔いました。
上野のカフェーで起きた殺人事件から始まる物語の結末とは。犯人の真意とは。
ロシア人の血を引く子爵・麻倉清彬、幼なじみで親友の多岐川嘉人、その妹万里子。
各々が抱える思惑が闇で蠢き、やがてそれが光にさらされたとき、その本当の意味を知るとき、
あまりに切々としていて悲しくやるせない。
清彬のクールで端正な彼の顔に隠された真の闇の深さにぐっと迫るものがあります。
春から錦繍の秋へと巡る季節の中で時代に翻弄された彼らの物語。
素晴らしい、傑作です。

読了日:2011年5月13日
かりさ | 著者別や・ら・わ行(柳広司) | comments(0) | trackbacks(1) | 

『ダブル・ジョーカー』柳 広司

ダブル・ジョーカー
ダブル・ジョーカー
柳 広司/角川書店
結城率いるD機関にライバル出現。その名も風機関。同じ組織にスペアはいらない。食うか、食われるか。「躊躇なく殺せ、潔く死ね」を徹底的に叩き込まれた風機関がD機関を追い落としにかかるが……。
ジョーカー・ゲーム』ですっかり結城中佐に恋してしまって、とにかく早くこの続きが読みたい!シリーズ化して欲しい!と切に願っていて、それが予想以上に早く叶ったものだからそれはそれはわくわくと高揚感に包まれながら読みました。
何といってもまた結城中佐に会える!ともう乙女な気持ちで読み始めましたけれど、このお話しはもっと男臭く、実は意外に人間臭いドラマ。乙女心は一旦しまって異能のスパイたちの姿を追いました。

「ダブル・ジョーカー」「蠅の王」「仏印作戦」「柩」「ブラックバード」の5編。
最も好きなのは表題作の「ダブル・ジョーカー」。
「柩」は結城中佐の過去が読めて嬉しい。常に冷徹な彼が見せる、ぽっと温かさが点る瞬間にくぅぅぅと悶絶。
「ブラックバード」は結城中佐の「とらわれるな」という言葉が鋭く突き刺さる読後感。
何事にも完璧なD機関のメンバーがふと見せた、とある感情が人間らしさを感じさせて切なくもありました。

前作から結城中佐にもっと前面に出てほしいと思ってましたが、いや彼の輪郭はこのくらい曖昧でいいのだな、と。彼の存在感がどれほど圧倒的なのか知らしめるためにこの描き方が最も効果的なのだ、と今回しみじみ感じました。

第二次世界大戦を背景に任務を遂行するD機関の続きを読みたい。切に切に願います。

読了日:2009年9月16日

関連記事
『ジョーカー・ゲーム』柳広司(2009.01.19)
かりさ | 著者別や・ら・わ行(柳広司) | comments(4) | trackbacks(1) | 

『ジョーカー・ゲーム』柳広司

ジョーカー・ゲーム
ジョーカー・ゲーム
柳広司/角川書店
結城中佐の発案で陸軍内に設立されたスパイ養成学校“D機関”。「スパイとは“見えない存在”であること」「殺人及び自死は最悪の選択肢」。これが、結城が訓練生に叩き込んだ戒律だった。軍隊組織の信条を真っ向から否定する“D機関”の存在は、当然、猛反発を招いた。だが、頭脳明晰、実行力でも群を抜く「魔王」―結城中佐は、魔術師の如き手さばきで諜報戦の成果を挙げ、陸軍内の敵をも出し抜いてゆく。東京、横浜、上海、ロンドンで繰り広げられる最高にスタイリッシュなスパイ・ミステリー。
「ジョーカー・ゲーム」「幽霊」「ロビンソン」「魔都」「XX」5編の連作短編集。

"死ぬな。殺すな。とらわれるな。"
やや、魔王・結城中佐に思いっきり惚れちゃいました。
(森美夏さんの装丁イラストもカッコいいし!)
彼が登場するだけでテンション上がって嬉しくなって、何だか違う方向で読んでしまいましたけどまぁ大概そうやって萌えで読んでいるんでいいとしよう。
いやもう森さんの描く結城中佐見てしまったら、「木島日記」とか「北神伝綺」とか思い出しちゃってあの独特な妖しい雰囲気がむんむん(笑)
たったこの表紙だけでここまで惹きつける画力がすごいです。

陸軍の教えとは正反対の教育をするスパイ養成機関・D機関。
壮絶な訓練を受けてスパイとして日本だけでなく各国へ使命を受けて遂行する。決して自分の素姓を明かすことなく、幽霊のごとく。
D機関の人物たちも様々な角度から描けてより彼らに寄り添うことが出来たし、個々が抱える内情もいろいろ複雑でそれがまたこの作品を盛り上げるというか。
そして彼らに絡んでくる結城中佐のね、クールさがもうもうっ!カッコ良くて冷静に読んでいるつもりがいつの間にか熱くなってしまうという。
結城中佐の過去がまた壮絶でそこに思いを馳せるとますます興味が湧いて、これはもう是非その過去を描きつつ大掛かりな長編を切望するわけであります。

「ロビンソン」が秀逸。「ロビンソン」みたいな話をもっと壮大にして長編にしてもらいたい。
「魔都」と「XX」も好き。「XX」のラストシーン、結城中佐のとある所作についついじ〜んと熱くなってしまいました。

D機関の話を是非ともまた読みたい。もちろん結城中佐を前面に出してもらって。

"とらわれるな"…くぅ〜カッコいい!最高!

読了日:2009年1月15日
かりさ | 著者別や・ら・わ行(柳広司) | comments(4) | trackbacks(5) | 

『漱石先生の事件簿 猫の巻』柳広司

漱石先生の事件簿―猫の巻 (ミステリーYA!)
漱石先生の事件簿 猫の巻
柳広司/理論社
「吾輩は猫である」には、こんな謎が隠されていた! マイペースな人たちと名なしの猫が繰り広げるドタバタ喜劇。先生の家に居候する少年が語る6つの事件とは? 漱石の物語世界がよみがえる、連作ミステリー短編集。
このGW中、実家に帰省する際「さて、何をお供に連れて行こうか」と考えた。で、次に読む候補になっていた本書を持っていくことにした。次に読むって決めていたしね。の理由の他にもう一つ。実家には猫がいて、そのカレの気配を感じながら時々邪魔されながら読むのもいいかもなーなんて思ったからである。
で、ほくほくと帰省した。が、ヤツは外出中だった。なんと、また家出したのか。
赤ん坊の頃から家の中で飼いならされて外へ出ることはとんとなかったカレなのだが、数年前飼い主(両親)の隙を突いて玄関から逃げていった。それからとんと帰ってこなくなった。どこかで死んでしまったんではないかとさすがにそう考えざるを得ないくらい長い外出だった。ある日ひょっこり帰ってきた。傷だらけで血だらけでお腹すかせてボロボロになって。こんな思いをしたんだからもう外へ出たいなどと思わないだろう、やれやれと誰もがそっと胸を撫で下ろした。ところが。やはり外の空気は相当美味かったとみえる。カレはまた外出した。それが4月のこと。冬に膀胱炎になってだいぶ弱っていた体がようやく復活した頃である。病み上がりといえば病み上がりのそんな体でまだ寒さ厳しい4月の夜空を果たしてどう過ごしているのやら。もしかしたら今度こそ…と誰もが不安を感じ始めた頃カレはまたひょっこり帰ってきた。お腹すかせて。大体家の中でのほほんと育った猫に狩りが出来るわけがなく、結局「ヒャッホーッ♪」と飛び出したはいいが、餌は取れないわ、ケンカに巻き込まれるわ散々な目にあったわけで。なのに。そういえば帰ってきたのだろうか。うんともすんとも実家から言ってこない。ちょっと心配になってきたぞ。

…とまぁ、一体何の話しをしていたのだろうか。実家の猫の家出話しにこんなに長々と。
とにかく猫がいなかったのでちょっとばかり期待外れだったけれど、本書は期待外れなどということはなくむしろ充分堪能出来た。「これ!めちゃくちゃ面白い!」とか興奮するほどではないにしても面白い。
本書は夏目漱石のデビュー作『吾輩は猫である』を舞台に猫の視点を書生の「僕」に変えて、そこで起こる日常系ミステリを描く。これがまた漱石先生を始め、登場人物たちの可笑しなエピソード満載でついにんまりと。で、探偵役でも大活躍の書生くんがなかなかの観察眼の持ち主でいやはや面白いったら面白い。
だが、面白いと喜ぶばかりではないこの作品の時代背景にあるもの、その先の歴史、それを読者は知っているからこそにやにやと笑ってばかりはいられないのである。が、そんな不穏な空気が漂っていながらもそこは奇人漱石先生や迷亭氏や寒月さんなどへんてこりんな仲間たちのドタバタ喜劇が和らげてくれている。またイラストがこの雰囲気に実に良く合っていて、この漱石先生を見るだけでも「ぷぷぷ」と和んでしまうんである。

さて、夏目漱石である。何がきっかけだったかもう記憶の遠くの遠くのほう〜に放り込まれて今引っ張り出そうとしてもどこにあるかさっぱりなのだが、どうしてか中学生の頃漱石が好きで文庫を買ってはつらつら読んでいた。で、その頃から持っていた文庫が数冊ほどあったはずなのだが、引越しの時見かけたのは『門』と『草枕』の2冊だった。おかしい。どこへいったのやら。
十代の頃読んだきりなので内容をきちんと覚えているかといえば自信はなく、特にデビュー作である『吾輩は猫である』は読んだはずなのに内容はほとんど、いやもう正直に全部と言ってしまおう、覚えていなかったりする。なんとなんと。とても恥ずかしい告白だが。

実は柳さん初読みで、こんなに面白いのなら他の作品もさぞ面白かろうと早速読みたい病が出てきてしまったようである。その前に『吾輩は猫である』をもう一度きちんと読み直してみたい。それだけでなく夏目漱石の作品に久しぶりに触れてみたい。そうふつふつと思わせてくれる作品であった。

読了日:2007年5月4日

関連サイト:理論社ミステリーYA!


ちなみに。
夏目漱石が登場するミステリーで好きなのが島田荘司の『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』。
漱石から見たホームズ&ワトスンがあの御手洗と石岡を見ているような、そんな感じを受けたのを覚えています。ここに描かれる漱石がつかみどころ無くて、それがまた漱石という人を表しているような。神経質さが良く出ています。ミステリーのほうは、それは島田さんですからもう何ら心配することなく、大いに堪能出来ますぞ。
かりさ | 著者別や・ら・わ行(柳広司) | comments(6) | trackbacks(3) |