山白朝子短篇集 死者のための音楽 山白朝子/メディアファクトリー
これは愛の短篇集だ。
6篇の怪談短編に、書き下ろし作品を加えた愛と哀しみの短編集。幻想的な異界への境界と、親と子を描いた叙情的な物語。
美しい装丁に魅せられる。作品『死者のための音楽』も実に美しい世界だった。
怪談ということで内容もじわじわと迫る怖さがある。その怖さは読んでいてすぐに実感するのではなく、読み終えてから静かに浸透するような、まさにじんわりとくる怖さ。
が、怖いはずなのだけれど、なぜか温かな優しいものに包まれるような不思議な感覚。
読み進むごとにその温かさや優しさが気持ちを潤し、それが涙となるような。読み終えて気がついたら泣きそうになっていた。
「長い旅のはじまり」「井戸を下りる」「黄金工場」「未完の像」「鬼物語」「鳥とファフロッキーズ現象について」「死者のための音楽」の7編からなる短編集。
私の中では「鬼物語」「鳥とファフロッキーズ現象について」「死者のための音楽」の3編が秀逸。目に見えない、形にならない、生きるものの想いというものが溢れていてその思いやりや愛が幻想的な文章と見事に混ざり合ってそれは美しい作品に仕上がっている。
静謐な世界に流れ来るレクイエムとはどんな調べなのだろうか。死者の、あるいは残された者の心に優しく奏でる調べ。
愛する者と死に別れるということ、その悲しさ、切なさがここに綴られる。
ホラーや怪談にジャンル分けされてしまうのだろうけど、そんな既存のジャンルに括れない新しい作風。これは今後どんな作品を読ませてくれるのかかなりの期待度を持って次作を待ってしまう。気が早い?いや、読んだら皆同じ気持ちのはず。きっと。
読了:2007年12月
年末に読んだものをようやく感想書きました。
ああ、こういう質の高い幻想文学(と勝手に決め付けていますけど)を読めたことに幸せを感じています。
著者の山白さん、覆面作家ということで当然ながら正体は明かされていませんが、一方では乙一さんではないか、という声もありまして。そう!確かに読むと乙一作品の雰囲気を醸しています。これはあの作品を彷彿とさせるなぁ、といちいち思いながら読んでいたのはもしかしたらいい読み方ではなかったかもしれませんが、でも思っちゃうものは仕方がない。
果たして山白朝子=乙一なんだろうか?と始めは気になったものの、読み終えたらどうでも良くなりました(笑)たとえこれが乙一さんの新作だったとしても、全く別の作家さんだとしても、この作品が秀逸なことに変わりありません。
傑作です。是非気になっている方は読んでみて!とオススメいたします。強く。
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