理由あって冬に出る 似鳥鶏/創元推理文庫
某市立高校の芸術棟にはフルートを吹く幽霊が出るらしい――吹奏楽部は来る送別演奏会のため練習を行わなくてはならないのだが、幽霊の噂に怯えた部員が練習に来なくなってしまった。にわか高校生探偵団が解明した幽霊騒ぎの真相とは?
第16回鮎川哲也賞に佳作入選したコミカルなミステリ。
「理由あって冬に出る」というタイトルと、表紙イラストに惹かれて買ってからちょこっと時間が経ってしまったのだけれども、ようやく読む読む。
何故「理由あって冬に出る」のか?その本当の理由を知って思わずにんまり。タイトルが実に上手い。エピローグの有無について賛否両論なようだけど、このタイトルを考えたらあのエピローグはなくてはならないはずで、あのブラックさは私にとってはむしろ好意にすら感じてしまって、だから少し消化不足な結末と感じながらもあれはあれでやっぱりいい、うん好き、と結構な満足感を得て読み終えたのであった。
読み終えて改めて表紙イラストを見てこの雑然としたがらくたを…とか考えるともうもう上手いよ、実に上手いよ、とさらにさらににやにや。
これはもう読み終えて初めて得る満足感、ですな。
本格ミステリを読んでもいちいちトリック読みをしない私はそのトリックが大掛かりであったり、緻密であったりして、解決されるまで訳が分からん…というちんぷんかんぷんな状態でトリックを知ったときのあの騙された感だったり驚きだったりが素直にやってきて、だからこそその度に新鮮な気持ちで読むのだけれど、本書のトリックはそんな私でも解けてしまう優しさでそこがまた「おおおっ」と満足感を得られて、だからミステリ読みでない人でも本書はするんと気持ち良く入り込める、はず。
ほのぼのした学園ものに幽霊出現という怪談もの、しかもミステリが織り込まれて幾らかでも陰湿になっていくはずなのだけど、登場人物たちの飄々とした雰囲気がライトな読み物となって読みやすく好感を持てる。
そこに安心して読んでいくと…後ほどハッとしたことが待っていて私なんぞはそこのどんでん返しにうふうふと嬉しくほくそ笑む、というわけ。
幽霊事件の結末や如何に。そしてさらなる結末を用意してくれた作者に拍手。
もしもこの続編が出るとしたら探偵役の伊神さんを出して欲しいなぁ。でも彼は高校3年生だからもう卒業か。その辺上手いこと設定して伊神と葉山のコンビものを是非また書いて欲しいわ、とこっそり望むのである。
それにしても似鳥さん、めっちゃ面白い人だわぁ、とあとがき読んでにんまり。もうラストからにやにやが止まらないのでありました。
読了日:2008年2月18日
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