ひなたでゆるり

読書のコトとちょっぴり日々のコトブログ

スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

スポンサードリンク | - | - | - | 

『MAMA』紅玉いづき

MAMA (電撃文庫 こ 10-2)
MAMA
紅玉いづき/電撃文庫
これは、孤独な人喰いの魔物と、彼のママになろうとした少女の、儚くも愛しい歪んだ愛の物語。第13回電撃小説大賞"大賞"受賞『ミミズクと夜の王』の紅玉いづきが贈る、二つ目の"人喰い物語"。

感想というものは読み終えてすぐ書くべきだわ。
時間が経ってしまうとどうしても散漫になってしまう。
とても素敵なお話しで、読んで心を揺らされた分自分の中で作られた結晶をつぶさに拾い集め言葉にして綴りたいのに、時間を経ていくうちにそれらが消えてなくなってしまう。
失われたものを再度生むべく再読してみました。ということで、以下感想。

確かな魔力を持つサルバドールという魔術師集団。その生粋の血筋を持つトトという少女と人喰いの魔物のお話。
何をやっても落ちこぼれで、魔術師の血筋に生まれながらも才能は一向に芽を出さず、目立たぬ日陰を歩む少女トトが出会った人喰いの魔王。サルバドールによって封印されていた魔物が数百年の眠りから覚める。魔物がトトと交わした契約、それによって魔物は封印から解かれ、少女は片耳を失った。それと引き換えに得た強力な魔力。
落ちこぼれて孤独の中を生きる少女がやがて成長したとき、果たして天真爛漫に育つでしょうか。愛されているという確信を持たぬまま、猜疑心を抱えたまま育った彼女はやはり孤独であり、同じく孤独である魔物と二人寄り添い生きていきます。
どんな形であろうともそれが歪んでいようともこれは愛であり、その愛の形を魔物が最上の形で表したとき、切なくとも温かなものが流れてきます。
前作『ミミズクと夜の王』とはまた異なった人喰いの、あるいは愛の、物語です。

そして「MAMA」の後日談的お話し「AND」。これが良かった!「AND」のために「MAMA」がある、と書いてしまうのはきっとどうかと思いながら書いてしまいますけど、母親というもの、子への深い愛、自分の命と引き換えにしても子の命を願う思い。同じ母親として呼応するものがあり過ぎてもう涙止め処なく、でした。
そう、そこに閉じ込められた思いは少年のものではなく少年の母のもの。それは強い強い思い。
そしてダミアンを思うミレイニアの優しさ。ここにも愛がしっかり描かれていました。
トトのその後、トトの生んだ子、そしてお気に入りのティーラン。彼女らのその後が読めて嬉しかった。

紅玉さんのあとがきはいつも好き。今度はどんな物語を読ませてもらえるのか、今からまた楽しみに待つことにします。
それにしてもカラスさんのイラストの素晴らしいこと!物語と雰囲気の良く合うイラストでこれを楽しめるからラノベは好きなんだよなぁ、と心から堪能したのでありました。
かりさ | 著者別か行(紅玉いづき) | comments(6) | trackbacks(3) | 

『ミミズクと夜の王』紅玉いづき

4840237158
ミミズクと夜の王
紅玉いづき/電撃文庫
死にたがりやのミミズクと、人間嫌いの夜の王。全ての始まりは、美しい月夜だった。―それは、絶望の果てからはじまる、小さな少女の崩壊と再生の物語。
第13回電撃小説大賞受賞作品

泣きました。それはさめざめと泣くようなものではなく、もっと搾り出すように嗚咽するような泣き方。こんなにまっすぐに真摯に訴えかけてくるものに揺らがない心がありましょうか。漆黒の闇に浮かぶ美しい月の夜。そこで出会ったミミズクと夜の王。崩壊した心にもうなにも鳴り響かない絶望の淵にいた少女・ミミズクはその身を夜の王に差し出そうとする。「あたしのこと、食べてくれませんかぁ」と。
そこに至るまでの少女の生き様はその容姿からして容易に知れます。それがどんな仕打ちを受け、どんな扱いを受けてきたかも。人の優しさや温かさ、抱きしめられること、愛し愛されるということさえも知らずに育った少女の再生を描く物語です。
ファンタジーというよりも御伽噺としたほうがしっくりくる綺麗なお話し。

このまま森の中で話しが展開していくのかと思うと世界はどんどん広がりを見せます。そこで少し読み手をハラハラとさせます。そこからこの先がどうなってゆくのか見届けずにはいられない気持ちが高まって、どんどん引き込まれてしまうのです。それは強い力で。抗うことなんて出来ないくらいの吸引力。
通常ライトノベルは文中にイラストが差し挟まれてそのイラストも共に楽しめるのですが、この作品にはそのイラストが一切ありません。表紙の闇に包まれた森に浮かぶ満月と少女の姿、群生する赤い花のイラストのみで読み手はその想像力の中で物語を読み進めていきます。読み手それぞれがここにある世界とキャラクター像を生み出すのです。だからこそ感情を込めてこの世界に入り込めるのでしょう。

ミミズクに初めて生まれる感情、夜の王の不器用な愛情表現、それが表され相手の心に響く時生まれる感情。それがあまりにもまばゆく輝くものだから胸いっぱいになって涙が止まりませんでした。ミミズクを優しく包むのは夜の王ばかりではありません。その彼らも精一杯ミミズクを愛し慈しみこれからもずっと見守り続けるのでしょう。

今こうして書いているだけでも胸いっぱいで涙が出てきてしまいます。私もまだこんな綺麗な物語に泣けるんだなぁ、汚れきってはいないんだなぁ、と感慨深く思いました。とかく理想を追い求めた話に人は強がりを吐いてそんな綺麗ごとを、と背を向けがちです。世の中そうそう上手いこといくはずはないと思いもします。けれどもその胸にまっすぐ飛び込んでくるものをやっぱり受け止めずにはいられないのです。
私はミミズクの姿を見て同じように愛を一切受けずに育つ子供達のことを考えてもいました。それを思うたびに痛む心が、ここでさらにさらに切り裂かれるような痛みを持って疼くようでした。流した涙の理由にはそれらの強い憤りと哀しみがあります。

少し感想が横道にそれてしまいましたが…とっても素敵なお話しです。イラストが時に押し付けがましいのだ、とライトノベルを敬遠している方にこそ是非手にとって欲しいと思います。「ライトノベルと侮るなかれ」とは良く言うセリフなんですが、この作品こそそのセリフが相応しいのです。

読了日:2007年2月15日
かりさ | 著者別か行(紅玉いづき) | comments(20) | trackbacks(9) |