MAMA 紅玉いづき/電撃文庫
これは、孤独な人喰いの魔物と、彼のママになろうとした少女の、儚くも愛しい歪んだ愛の物語。第13回電撃小説大賞"大賞"受賞『ミミズクと夜の王』の紅玉いづきが贈る、二つ目の"人喰い物語"。
感想というものは読み終えてすぐ書くべきだわ。
時間が経ってしまうとどうしても散漫になってしまう。
とても素敵なお話しで、読んで心を揺らされた分自分の中で作られた結晶をつぶさに拾い集め言葉にして綴りたいのに、時間を経ていくうちにそれらが消えてなくなってしまう。
失われたものを再度生むべく再読してみました。ということで、以下感想。
確かな魔力を持つサルバドールという魔術師集団。その生粋の血筋を持つトトという少女と人喰いの魔物のお話。
何をやっても落ちこぼれで、魔術師の血筋に生まれながらも才能は一向に芽を出さず、目立たぬ日陰を歩む少女トトが出会った人喰いの魔王。サルバドールによって封印されていた魔物が数百年の眠りから覚める。魔物がトトと交わした契約、それによって魔物は封印から解かれ、少女は片耳を失った。それと引き換えに得た強力な魔力。
落ちこぼれて孤独の中を生きる少女がやがて成長したとき、果たして天真爛漫に育つでしょうか。愛されているという確信を持たぬまま、猜疑心を抱えたまま育った彼女はやはり孤独であり、同じく孤独である魔物と二人寄り添い生きていきます。
どんな形であろうともそれが歪んでいようともこれは愛であり、その愛の形を魔物が最上の形で表したとき、切なくとも温かなものが流れてきます。
前作『
ミミズクと夜の王』とはまた異なった人喰いの、あるいは愛の、物語です。
そして「MAMA」の後日談的お話し「AND」。これが良かった!「AND」のために「MAMA」がある、と書いてしまうのはきっとどうかと思いながら書いてしまいますけど、母親というもの、子への深い愛、自分の命と引き換えにしても子の命を願う思い。同じ母親として呼応するものがあり過ぎてもう涙止め処なく、でした。
そう、そこに閉じ込められた思いは少年のものではなく少年の母のもの。それは強い強い思い。
そしてダミアンを思うミレイニアの優しさ。ここにも愛がしっかり描かれていました。
トトのその後、トトの生んだ子、そしてお気に入りのティーラン。彼女らのその後が読めて嬉しかった。
紅玉さんのあとがきはいつも好き。今度はどんな物語を読ませてもらえるのか、今からまた楽しみに待つことにします。
それにしてもカラスさんのイラストの素晴らしいこと!物語と雰囲気の良く合うイラストでこれを楽しめるからラノベは好きなんだよなぁ、と心から堪能したのでありました。
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