ひなたでゆるり

読書のコトとちょっぴり日々のコトブログ

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『夜行観覧車』湊かなえ

夜行観覧車
夜行観覧車
湊なかえ/双葉社
父親が被害者で母親が加害者--。高級住宅地に住むエリート一家で起きたセンセーショナルな事件。遺されたこどもたちは、どのように生きていくのか。その家族と向かいに住む家族の視点から、事件の動機と真相が明らかになる。『告白』の著者が描く、衝撃の「家族」小説。

いつもの湊さんの容赦なく奈落に突き落とすような、ただただ闇の中に立ち尽くすような感じではなく、ほんの一筋でも光射すような救いがあったのが印象的。
それでもいや〜な感覚がまとわりつくのは湊さん独特で良い。
「どうしてこんなことになってしまったのだろう」各人の自問と抱える深い闇や鬱屈が突き刺さります。
家族とは強いようで脆く壊れやすい。けれども断ち切れないのもまた家族。
もがきながらなおも家族であろうとする姿が痛々しくもあり、再生への希望も見える。

残された者が生きていくための防衛として選んだ「真相」が遣りきれない。
坂道病というのがなるほどなぁ、と。
家族でも互いに抱える闇に気がつかずすれ違うところがやけにリアルで。
我が家ではこんな衝突はなかったけれど、でも子供たちはどれほどの鬱屈したものを抱えているのだろうか、と改めて感じてしまった。

この町に観覧車が完成する頃彼らの暮らしは…観覧車は希望を見るか、さらなる絶望を見るのか。

読了日:2010年6月5日
かりさ | 著者別ま行(湊かなえ) | comments(0) | trackbacks(0) | 

『少女』湊かなえ

少女 (ハヤカワ・ミステリワールド)
少女
湊かなえ/早川書房
高2の夏休み前、由紀と敦子は転入生の紫織から衝撃的な話を聞く。少女たちの無垢な好奇心から始まった夏が、複雑な因果の果てにむかえた衝撃の結末とは?
前作と比較するのはあまり意味がないことなのですが、ちょうど前作『告白』を読み終えてすぐ『少女』を読んだので自然作品の雰囲気を比べて読んでしまいました。
『告白』とはまた雰囲気の違う作品に仕上がっていて、衝撃度はないものの悪意の強さは『少女』のほうが色濃いかもしれません。

作品の枠は少女の友情物語であるけれど覗き込んでみれば悪意の色濃いこと。読後はじわじわと負の感情に包まれていきます。
少女期の繊細さや孤独感、虚栄心の強さなどといったものに、「死」への好奇心を絡め少女の内面の移ろいを彼女らに語らせる。そこにはほのぼのとした和みを感じさせながら、実はその裏で蠢く真実を明かしていくのです。ひとつひとつの点が繋がった時うっすらと感じていた悪意のさまが漆黒に塗られていきます。

少女特有の友達と濃密に繋がりたいという固執した所有欲が強ければ強いほどその間には憎しみも生じて次第に軋みだすものです。そんな中で悩む少女たちの複雑な心理が時に痛々しく伝わってきます。そして狭い社会の中で息苦しさを堪えて生きるよりは…と少なすぎる選択肢を選んでしまう孤独感に苛まれた子供が物語の中だけでなく、実際に少なからず存在するんだってこともひしひしと思わされました。

さて、早くも湊さんの次作が楽しみです。
ずっとこの路線でいくのかな。徹底的にいくのかな。

読了日:2009年1月29日
かりさ | 著者別ま行(湊かなえ) | comments(2) | trackbacks(4) | 

『告白』湊かなえ

告白
告白
湊かなえ/双葉社
我が子を校内で亡くした女性教師が、終業式のHRで犯人である少年を指し示す。ひとつの事件をモノローグ形式で「級友」「犯人」「犯人の家族」から、それぞれ語らせ真相に迫る。
結局、人の憎しみはどこまでも続く底なしのように到達点はない。
ひたすら憎み続けることで己を律していたとしたら制裁を終えたときの虚無感はいかほどだろうか、自ら復讐を果たすという労力はきっと並大抵ではないはずだけど、それも憎しみの深さが力となって動かすのだろうか。いざ自分が女教師と同じ立場になった時、あるいは生徒の母となった時、自分だったら…と思うとそこに答えはあるはずはなく空回りするばかりなのだけど、やはり考えずにはいられません。ぐるぐると。
物語と言ってしまえばそれまでなのですが、妙に現実に起きたさまざまな事を盛り込んでいるものだからそこから生じるリアル感は相当なもの。見事に引き込まれました。

第1章の「聖職者」が実に秀逸、そして衝撃。この1章を読んでしまったらもうやめられないのですよね、その先の個々の語りが気になって気になって。
1人称の語りで各章が進行していくあたりは少し物足りなさを感じたものの、それぞれの告白によってだんだんと絡まった糸が解きほぐされていきます。そして腑に落ちたな、と思ったら最後の衝撃を与える。それは凄まじい勢いを持って。
読み終える頃にはここに漂う陰鬱さにすっかり慣れてきたと思ったら…いやはや容赦ありません。

陰鬱さと後味の悪さは相当なものですが、こういうものを題材にした場合、それはもうどこまでもダークな世界でしかないし、元々救いようのないやりきれないものなのですから衝撃ではあるけれど納得は出来るかも。
淡々ながらも静かなる断末魔が聞こえてくるようでそれがやりきれませんでした。

読了日:2009年1月28日
かりさ | 著者別ま行(湊かなえ) | comments(2) | trackbacks(7) |