鬼の跫音 道尾秀介/角川書店
鈴虫だけが知っている、過去の完全犯罪。蝶に導かれて赴いた村で起きた猟奇殺人事件。心の中に生まれた鬼が、私を追いかけてくる。もう絶対に逃げ切れないところまで…。「鈴虫」「冬の鬼」など、全6篇を収録した短篇集。
「鈴虫」「ケモノ」「よいぎつね」「箱詰めの文字」「冬の鬼」「悪意の顔」6編の短編集。
道尾秀介という作家にずっと興味を惹かれながらもなかなか作品に触れる機会がなかったのですが、昨年アンソロジー「
Story Seller」に収録されている道尾さんの「光の箱」を読んで見事にやられてしまいまして、いや〜巧い!惚れた!なんてやってたんですがじゃぁ刊行されている多数の作品のどれから読もうか、などと迷っているうちに月日は流れ…。
今回初の短編集が出るということでこれを機会にと手にとってみました。その前に装丁の何とも言えない雰囲気に惚れてしまったんですが。
読み始めてすぐ文章のフォントの違和感を感じ、どうにも落ち着かない気持ちのまま道尾さんの紡ぐ世界に誘われます。その世界はミステリよりもホラーの色合いが濃く、淡々と語られる静けさの中に狂気や恐怖が織り込まれて非現実な感覚が襲いました。
それぞれの物語に繋がりがあるわけではなく独立したものであるのですが、共通したキーワードと不吉な予感のする鴉の存在が全体に行き渡る負のエネルギーをさらに強くし恐怖感を揺さぶるのです。
物語のどれもが負のほうへ向かいその行きつく先に待ちうけるものを見たときの恐ろしさはたまりません。漂う陰湿な雰囲気がひたひたとまとわりつき、いつの間にか包まれて戻れなくなるような妙な心地良さみたいなものも感じて…いや〜すっかり堪能しました。
どれもこれも好きなのですが特に「ケモノ」が凄い。どこかに何かを落としたような違和感を感じながら読み進み、その正体を知った時の…!戦慄が凄まじいです。
他「箱詰めの文字」「冬の鬼」などお気に入り。
道尾ワールドに酔いしれました。
読了日:2009年2月6日
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