ひなたでゆるり

読書のコトとちょっぴり日々のコトブログ

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『月と蟹』道尾秀介

月と蟹
月と蟹
道尾秀介/文藝春秋
「ヤドカミ様、僕の願いを叶えて」。行き場のない思いを込めた他愛ない儀式がやがて……。子供たちの切実な心が胸に迫る俊英の傑作!第144回直木賞受賞作品。

思春期の子供たちの抱える闇が、やがて怪物のように蠢き黒く大きく育っていくさまが不気味で心が凍えるようだった。
叫び続けている断末魔が体の中で膨らんでいつ破裂してしまうのだろうか、と彼らの行先を案じた。
行き場のない思いをヤドカミ様に託す儀式が残酷で不気味でただただ哀しい。

揺らめく不安定な心理描写が殊更上手く見事に気持ちを囚われた。
慎一の祖父・昭三の存在が圧巻。少年たちの鬱屈さが目立ちますが、
屈託ない子供の冒険心、自然の描写なども読ませてくれて暗く重たさに彩られながらも
仄かな光に救われた。

春也の心情も読みたかった。

読了日:2011年9月7日
かりさ | 著者別ま行(道尾秀介) | comments(0) | trackbacks(0) | 

『光媒の花』道尾秀介

光媒の花
光媒の花
道尾秀介/集英社
もう、駄目だと思った。それでも世界は、続いていた―少女は無限の想像力でこの世界を生き延び、少年はたった一つの思い出にしがみつく。一匹の蝶が見た悲しみの先に広がる光景とは…渾身の連作群像劇。

「隠れ鬼」「虫送り」「冬の蝶」「春の蝶」「風媒花」「遠い光」6編の短篇集。

影絵のような背景に黄金の光。
ひらひら舞う蝶に導かれてゆく物語は、仄暗い過去を背負ったそれぞれの鬱々したものだったり、葛藤だったり後悔の念に苛まれている。
けれども心の闇にほんの一筋でも希望の光が、優しくそよぐ風が感じられて救われます。
人物の心の機微が見事で切々と伝わりますし、何気なくそこにある自然の描写が実に美しく描かれていてハッとさせられました。
密やかに繋がり巡る物語。

「虫送り」「冬の蝶」「春の蝶」の流れがとても好き。
そして最後の「遠い光」にそれまで流れていた哀しみの色合いが和らいでさっと光が射しました。

読了日:2010年7月12日

もしかしたら道尾作品の中では異色になるのかもしれませんが、哀しく美しい物語たちに酔いました。
…そういえば既読の道尾作品って短篇集だけのような気がする。
ミステリ好きとしてこれはいかんなぁ。バリバリのミステリ作品も読まねば(何冊か積んでます(汗))
かりさ | 著者別ま行(道尾秀介) | comments(2) | trackbacks(3) | 

『鬼の跫音』道尾秀介

鬼の跫音
鬼の跫音
道尾秀介/角川書店
鈴虫だけが知っている、過去の完全犯罪。蝶に導かれて赴いた村で起きた猟奇殺人事件。心の中に生まれた鬼が、私を追いかけてくる。もう絶対に逃げ切れないところまで…。「鈴虫」「冬の鬼」など、全6篇を収録した短篇集。
「鈴虫」「ケモノ」「よいぎつね」「箱詰めの文字」「冬の鬼」「悪意の顔」6編の短編集。

道尾秀介という作家にずっと興味を惹かれながらもなかなか作品に触れる機会がなかったのですが、昨年アンソロジー「Story Seller」に収録されている道尾さんの「光の箱」を読んで見事にやられてしまいまして、いや〜巧い!惚れた!なんてやってたんですがじゃぁ刊行されている多数の作品のどれから読もうか、などと迷っているうちに月日は流れ…。
今回初の短編集が出るということでこれを機会にと手にとってみました。その前に装丁の何とも言えない雰囲気に惚れてしまったんですが。

読み始めてすぐ文章のフォントの違和感を感じ、どうにも落ち着かない気持ちのまま道尾さんの紡ぐ世界に誘われます。その世界はミステリよりもホラーの色合いが濃く、淡々と語られる静けさの中に狂気や恐怖が織り込まれて非現実な感覚が襲いました。
それぞれの物語に繋がりがあるわけではなく独立したものであるのですが、共通したキーワードと不吉な予感のする鴉の存在が全体に行き渡る負のエネルギーをさらに強くし恐怖感を揺さぶるのです。
物語のどれもが負のほうへ向かいその行きつく先に待ちうけるものを見たときの恐ろしさはたまりません。漂う陰湿な雰囲気がひたひたとまとわりつき、いつの間にか包まれて戻れなくなるような妙な心地良さみたいなものも感じて…いや〜すっかり堪能しました。

どれもこれも好きなのですが特に「ケモノ」が凄い。どこかに何かを落としたような違和感を感じながら読み進み、その正体を知った時の…!戦慄が凄まじいです。
他「箱詰めの文字」「冬の鬼」などお気に入り。
道尾ワールドに酔いしれました。

読了日:2009年2月6日
かりさ | 著者別ま行(道尾秀介) | comments(2) | trackbacks(1) |