ひなたでゆるり

読書のコトとちょっぴり日々のコトブログ

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『失はれる物語』乙一

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失はれる物語
乙一/角川文庫
目覚めると、私は闇の中にいた。交通事故により全身不随のうえ音も視覚も、五感の全てを奪われていたのだ。残ったのは右腕の皮膚感覚のみ。ピアニストの妻はその腕を鍵盤に見立て、日日の想いを演奏で伝えることを思いつく。それは、永劫の囚人となった私の唯一の救いとなるが…。表題作のほか、「Calling You」「傷」など傑作短篇5作とリリカルな怪作「ボクの賢いパンツくん」、書き下ろし最新作「ウソカノ」の2作を初収録。

「Calling You」「失はれる物語」「傷」「手を握る泥棒の物語」「しあわせは子猫のかたち」「ボクの賢いパンツくん」「マリアの指」「ウソカノ」8編収録。

『失はれる物語』は宝玉な短編を詰め込んだ秀逸作である。しかも単行本の装丁はそれはそれは美しく、特殊加工したカバーの手触りも最高。書店で見かけるたび滲んだ青色を見る度、うっとりしていた。しかしながら単行本が出た時収録されている作品たちはすでにライトノベルで既読だったため買うのを見送った。乙一作品は必ず買っていたのに、だ。何故か。たぶんにスニーカー文庫の乙一作品は羽住都さんの挿絵があって初めてひとつの作品だったわけである。それに馴染んでいる者としては『失はれる物語』が別物として歩き出してしまうようで複雑な思いを抱いたのだろう。なんとせせこましい人間であったことか。今思えばやっぱり買っておくべきだった、いや買わずとも読んでおくべきだった。というのもそこでプイッと見送ってしまった私はそこに収録されていた書き下ろし「マリアの指」を読まずにいた。なんと今回初読である。そしてあまりの秀逸さにまたほぅっとため息をついたのであった。
再読はめったにしない私だが、今回収録作を読み返した。改めて乙一さんの才能を再確認した次第。当時共感したり感動した部分に今また心動かされたり、当時はサラッと読んだ箇所に妙にこだわってしまったり、時を経て読み返すのはなかなか悪くない。その間少なからず変化した自分をも再確認出来るのだし。

初収録の「ボクの賢いパンツくん」「ウソカノ」の2編も『失はれる物語』に相応しい。
こんな小さなお話しだって乙一テイストがちゃんと織り込まれているのだから。「ウソカノ」はそういう意味でしたか!と遅ればせながら納得。特にお気に入りはやはり大好きな「しあわせは子猫のかたち」や表題作の「失われた物語」、そして「マリアの指」。

ここに共通するのは「喪失感」。失われてゆく感覚というものがこんなにも切ないものなのか、とまた読んでしんみりするのである。

読了日:2006年10月20日

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7/4:購入本(2006/7/5)
『夏と花火と私の死体』感想(2000/6)
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『さみしさの周波数』感想(2003/2/2)


乙一作品でオススメは?と聞かれると『夏と花火と私の死体』と『失踪HOLIDAY』(角川スニーカー文庫)と答えます。『失踪HOLIDAY』に収録されている「しあわせは子猫のかたち」が大好きで大好きで未だに泣ける私にとってベスト作品だから。そう、本書『失はれる物語』にも収録されている1編です。表題作の「失踪HOLIDAY」も秀逸なのですよ。たぶん雰囲気が『失はれる物語』とは違ったものなので収録されなかったのでしょうけど、是非『失踪HOLIDAY』も読んでみて欲しいです。スニーカー文庫は羽住都さんの挿絵を楽しみながら読めるのでいいんですよね〜。
当時は買いそびれた単行本、いずれ機会があったら手に入れようと思います。やっぱりあの装丁は素晴らしく美しいものー。
かりさ | 著者別あ行(乙一) | comments(8) | trackbacks(1) | 

『銃とチョコレート』乙一

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銃とチョコレート
乙一/講談社ミステリーランド
少年リンツの住む国で富豪の家から金貨や宝石が盗まれる事件が多発。現場に残されたカードには「GODIVA」の文字が。はたして名探偵ロイズは、怪盗ゴディバをつかまえることができるのか!?

乙一さん、やはりあなたはすごい。これこそ子供に読ませたいミステリである。

これまで何度か違和感を持って読んでいたミステリランドシリーズだったが、初めて違和感なくスルリと入り込み、気がついたら没頭していた。かつて少女だった私、私はその少女に戻ってその頃の自分の目線になって読んでいた。
ご飯を食べるのも惜しんで、寝るのも惜しんで、習い事の帰り道でさえ本を開き読みながら歩いたあの頃の私。小学生の頃の私。そう、この作品、完全に自分は子供に戻って当時味わったわくわく感を持って読んでいたのである。

名探偵と怪盗もの、である。が、ただの名探偵VS怪盗ものではない。そこには細かな仕掛けが施されており、それらがパタンパタンと謎という空間に埋まっていきラスト綺麗に一枚の絵に仕上がる。そしてにやりとさせる演出も忘れない。登場人物の名前にも仕掛けがあるのだから。そして「銃とチョコレート」というタイトルや装丁が素晴らしいではないか。凝りに凝った作品をこうして堪能できる幸せ。時間を忘れて没頭出来るほどの面白い本を読める幸せ。この本を手に取ることの出来る子供はもっともっと幸せ。早速私はこの幸福感を共有すべく、息子達に読ませてみようとわくわくしているのである。

いやいやそれにしても「そうだったのか!」という驚きがこんなにも気持ち良く来ると、もう天晴れですな。それはきっと大人も子供も変わりはないはず。
どんなに不利な立場に立たされていてもきっといつかは…と希望の光が差し込む作品でもある。その間には理不尽なことも、裏切られることも、悲しいことも盛り沢山なのだけど。リンツの冒険と共に読み手も成長する物語。少々(いやかなり…)高価ではあるが、後悔はさせない作品である。乙一好きな方は見逃してはいけませんぞ。

そして相変わらず乙一さんのあとがきは秀逸なのであった。

読了日:2006年6月3日
かりさ | 著者別あ行(乙一) | comments(13) | trackbacks(11) | 

『GOTH -リストカット事件』乙一

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GOTH―リストカット事件
乙一/角川書店
森野が拾ってきたのは、連続殺人鬼の日記だった。学校の図書館で僕らは、次の土曜日の午後、まだ発見されていない被害者の死体を見物に行くことを決めた…。触れれば切れるようなセンシティヴ・ミステリー。

いやー、満足、満足。ホラーとは違う猟奇的な暗い雰囲気抜群。泣ける作品もいいけれど、こういうほうが本領発揮という感じがします。ジャンル的には新境地なんじゃないでしょうか。是非とも次回作があるのなら楽しみにしたいところです。そうだなぁ一番好きなものといったら「暗黒系」かな。

読了日:2002年8月31日
かりさ | 著者別あ行(乙一) | comments(2) | trackbacks(4) | 

『死にぞこないの青』乙一/幻冬舎文庫


死にぞこないの青
乙一/幻冬舎文庫

飼育係になりたいがために嘘をついてしまったマサオは、大好きだった羽田先生から嫌われてしまう。先生は、他の誰かが宿題を忘れてきたり授業中騒いでいても、全部マサオのせいにするようになった。クラスメイトまでもがマサオいじめに興じるある日、彼の前に「死にぞこない」の男の子が現われた。書き下ろし長編小説。[bk1の内容紹介]
僕を助けてくれるのは、人間ではない。(帯より)

恐がりで自分に自信の持てない小学生マサオ。新学期、新任でやってきた羽田先生。快活でみんなの人気を集める羽田先生の姿を眩しく思うマサオ。しかし、マサオの身に予期せぬいじめが起きはじめる。そこに突然現れた少年。彼は一体誰なんだろう…。
最初の段階で痛々しく躊躇しそうでしたが、先が気になって気になって一気に読みました。痛々しくて辛くてやるせない思い。しかしその半面で納得させられるものもありました。次はどんな世界を紡ぎだすのでしょう。

読了日:2001年10月20日
かりさ | 著者別あ行(乙一) | comments(0) | trackbacks(0) | 

『暗黒童話』乙一

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暗黒童話
乙一/集英社
ある日、私は片目を失った。そして、その日までの記憶も。眼球移植を受けた私の頭に、時折激しい痛みと共に見知らぬ映像がよぎる。その映像の源を求めて旅に出た私を待っていたものは…。著者初の長編ホラー。
ある日、片目と共に記憶まで失ってしまった菜深。眼球を移植してもなお、記憶は戻らぬまま…。そんなある日移植した眼球が熱を持ち、不思議な現象が。その眼球が見せる映像を求めて菜深は旅に出る。
ミステリィの要素も入ったホラーもの。わりにグロイ描写があるものの、そこはしっかり乙一さんの独特な味が散りばめられています。一番伝えたかったことはこれだったんだな、と自己分析してラストを読んだとき、涙しました。優しい目線で話は進んでいきます。そしてハラハラドキドキもさせてくれます。乙一さん初の長編作品ですが大成功。あとがきは秀逸です。

読了日:2001年10月20日
かりさ | 著者別あ行(乙一) | comments(2) | trackbacks(1) | 

『ZOO』乙一

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ZOO
乙一/集英社
毎日届く恋人の腐乱死体の写真。彼女を殺したのは誰? 「犯人探し」に奔走する男を描く表題作ほか、書き下ろしを含む全10編を収録。ホラー短編集。

『ZOO』読了。短編集です。今回は色合いが様々な作品が集結。一番好きなのは「陽だまりの詩」。もうボロボロ泣きました。あまりにも淋しい。それに反してきらびやかな陽だまりの光景…余計に哀愁を増していました。「カザリとヨーコ」などもなかなかお気に入り。しかし似た色合いを持つ「SEVEN ROOMS」は何度読んでも読後感の気持ち悪さがまとわりついて消化出来ません。「陽だまりの詩」以外はダークな彩りの作品が揃っていて本来(せつないと称されるほうではなく、暗黒の) の乙一氏が楽しめました。 (日記より抜粋)

読了日:2003年8月25日
かりさ | 著者別あ行(乙一) | comments(9) | trackbacks(7) | 

『さみしさの周波数』乙一

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さみしさの周波数
乙一/角川スニーカー文庫
「お前ら、いつか結婚するぜ」そんな未来を予言されたのは小学生のころ。それきり僕は彼女と眼を合わせることができなくなった。しかし、やりたいことが見つからず、高校を出ても迷走するばかりの僕にとって、彼女を思う時間だけが灯火になった…“未来予報”。ちょっとした金を盗むため、旅館の壁に穴を開けて手を入れた男は、とんでもないものを掴んでしまう“手を握る泥棒の物語”。他2篇を収録
いつもの「せつない」と称される雰囲気ではなく、どちらかというと今までの感情の起伏が今回はなし。淡々と痛々しく漂う感覚。一番好きなのは「フィルムの中の少女」。そして「失はれた物語」の重々しさからあとがきへと流れる重さが軽くならず、乙一という作家の叫びをそのまんま聞いたような痛々しさをもって本を閉じました。そこまでカラーを持続させることが氏の意図だとしてもやっぱり痛みを感じずにはいられませんでした。社会に関われば色んな軋轢の中で精神が疲れ、社会から遠ざかって組織に組み込まれないフリーな生活をすればしたで焦燥感や不安との闘い、生きているということは大半が辛いということ。しみじみ感じました。

読了日:2003年2月2日
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『きみにしか聞こえない-CALLING YOU-』乙一

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きみにしか聞こえない―CALLING YOU
乙一/角川スニーカー文庫
私はケータイを持ってない。なぜなら、私には友達がいないから。だから毎日空想をして、憧れ続けていたある日。頭の中に鳴り響いた美しいメロディ。それは、同じさみしさを抱えた少年からのSOSだった……。
『きみにしか聞こえない-CALLING YOU-』 表題作「きみにしか聞こえない」はグッときてしまい、電車の中では非常に危なかったです。ついホロリときそうでした。「傷-KIZ/KIDS-」も痛々しい話し。「華歌」は少し今までとは趣向の違う作品でした。でもきっとある意味で驚かされます。どれも何かを抱えながら生きていて、それを分かち合える、吐き出せる拠り所がない者たちが登場しています。それを優しい眼差しで見つめる著者の気持ちが全面に溢れています。乾きを潤してくれるそんな作品たちです。 (日記より抜粋)

読了日:2001年6月14日
かりさ | 著者別あ行(乙一) | comments(2) | trackbacks(2) | 

『失踪HOLIDAY』乙一


失踪HOLIDAY
乙一/角川スニーカー文庫

「しあわせは子猫のかたち」… うまく生きられない「僕」とやさしい幽霊の切ない一瞬…すごく素敵です。乙一さんの優しさが伝わってラストちょっとホロリとしちゃいます。孤独の中で生きる主人公。自分のペースを乱されることを何よりも嫌い、人との交流を自ら線引きしてしまう。自分に通じるところがあって、共感を持ちました。その主人公が段々変化してゆく様が何とも悲しいく切ない。共演(?)している子猫が可愛いいです。乙一氏の作品の中で今のところこれが一番好きです。切なさが優しく心に浸透していくかのようです。

「失踪HOLIDAY」… 心からやすらげる場所を求める果敢で無敵な女の子の物語… 乙一さんにしてはスピード感のある楽しい作品。やられたっ!と歓声あげちゃいました。こちらでもちょっとキュンとしちゃうような、胸の奥底で何かが疼くような感覚を覚えました。やはりこちらも孤独感を常に感じている女の子の葛藤(でも葛藤と感じさせない底抜けに明るく愛らしいキャラなんですが…)。無駄が無い文章だから飽きさせない、そして読了後には余韻を感じさせてくれる。もう天才ですな。今回はホラー系ではありません。ですから思いっきり切なく痛快に駆け抜けてください。そして乙一さんの楽しい面が見られるあとがきで締めくくりましょう。早くも次作が待ち遠しいです。

読了日:2001年1月13日
かりさ | 著者別あ行(乙一) | comments(2) | trackbacks(1) | 

『夏と花火と私の死体』乙一

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夏と花火と私の死体
乙一/集英社文庫
九歳の夏休み、少女は殺された。あまりに無邪気な殺人者によって、あっけなく―。こうして、ひとつの死体をめぐる、幼い兄妹の悪夢のような四日間の冒険が始まった。早熟な才能・乙一のデビュー作。解説:小野不由美(あらすじより)
久しぶりにものすごい衝撃を受けました。最後の最後でやられたっ!という衝撃度です。素晴らしい。ジャンルとしてはホラー&幻想になるようですが、どちらの要素も持ち合わせている、ちょっと不思議なお話。

小学生が主人公というのも新鮮ですし、その記述方法がまた変わっています。あっけなく殺されてしまった少女、それを殺害してしまった妹、かばう兄。小学生という未熟な子供を設定したところに物語の怖さを重複させているのかもしれません。淡々と作業をやってのける子供の様子にゾッとします。そしてラストに待ち受けるもの…とにかく読んでみてください。

同収録作『優子』も美しい話です。が、もちろん不思議な怖さも兼ね備えています。静かな怖さです。これを書いた当時の著者の年齢にビックリ!

読了:2000年6月
かりさ | 著者別あ行(乙一) | comments(10) | trackbacks(3) |