ひなたでゆるり

読書のコトとちょっぴり日々のコトブログ

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『パスタマシーンの幽霊』川上弘美

パスタマシーンの幽霊
パスタマシーンの幽霊
川上弘美/マガジンハウス
一篇が10ページ前後の短篇が22篇収められている。おなじみの、アン子とおかまの修三ちゃんも再登場。新たな主人公、誠子さんとコロボックルの山口さんの恋の行方にも注目だ。深刻な感情がユーモアに転換され、そのあとに〈しん〉とした淋しさが残る名品22篇。

ちっちゃなお話22篇。
川上さんの短いお話にぎゅっと凝縮された独特のスパイスが効いていて大好きです。
アン子とおかまの修三ちゃん(豆の話とかいいわぁ)、コロボックル山口さんと誠子さんの恋の行方、表題作「パスタマシーンの幽霊」のおばあちゃんとの対話。
ユーモアの中にしみじみしんと静かに響く感覚が本当にもう何とも言えない愛おしさなのです。

『ざらざら』の続編だったのですね。
『ざらざら』も読まねば。

読了日:2010年4月30日
かりさ | 著者別か行(川上弘美) | comments(0) | trackbacks(0) | 

『此処彼処』川上弘美

此処 彼処 (ここ かしこ)
此処彼処
川上弘美/日本経済新聞社
本書のテーマは自分の場所である。それは、浅草、鶴巻温泉、銀座、琵琶湖といった地理上の場所であったり、近所のマーケット、好きな居酒屋、好きな旅館、好きな抜け道、好きなお花見の場所、思い出の大学寮、電話ボックスといった著者が「属している(いた)」と思われる場所であったり、新婚旅行で訪れた地や思わぬ拾いモノ(誰かの臼歯、骨董のメガネフレームなど)をした場所であったり。
川上弘美さんの作品を手に取るのは何年振りだろうか。そんなことをふっと思いながら手に取った。淡い色合いのカバーに此処彼処のタイトル。そこにちょこんとのっかる小鳥。
「此処彼処」というタイトルにも惹かれたけれど、この小鳥にも心惹かれて読むことにした。

川上さんのどんなお話しがここに閉じ込められているのだろう、といそいそ本を開いたらば、これはエッセイだった。
あ、川上さんのエッセイ。これは非常に興味深い。川上さんの作品の数々は、ほんわかした彩りの中にも時々ちくっと刺す毒がなかなか辛辣であり、ただやわらかなだけでなくその毒さ加減に魅力を感じている私としては川上さんの真の姿というものを知りたくて、だからわくわくと読み進んだ。
最初の1月「彼処」がとても良い。近所の公園。その「すわりどころ」でゆったりと過ごす時間。そのゆるやかなまどろむような時間がこちらにもきちんと伝わってくる。
そうしてあちこちの、川上さんの思い出の場所だったり、好きな場所だったり、苦手な場所だったりを綴る。そのどれもがさらりと心地良く書かれていて気持ちよくさくさくと読むことが出来る。ほほぅ〜、へぇ〜、なんていろんな感情を呼び寄せながら夢中になって読む。

中でも印象的だったり、共感したのは、3月「関東」4月「246号」7月「長崎」。
「関東」はもう二度と会うことはないだろうその人とのことを読んで、ちょびっと切なくなったりして、人との出会いってこんなちょこっと出会って、もう二度と会わないってこと多々あって、そういえば、あの人どうしているのかなぁなんて、時々思い返してキュンとなることもある。きっともう二度と会うことのない(住所も知らないし、きっともう接点もない)でも確かにあの時あの時間あの場所で数時間一緒に過ごし、おしゃべりもしたあの人とかこの人とかのことを思い出してしまった。ちょっと切なくなった。
「246号」は"どうして社会生活においては、どう考えても気が合うはずのない人間同士が、何かしらの必要により、合い寄って共に過ごさなければならない羽目に陥ってしまうんだろう。"という文章に同じく何回もこれを反芻していた自分を思って共感してしまった。
学生の頃や社会人の頃はそれでも必要なときだけ寄り合っていれば良かったのであって、プライベートにまで関わることもなかったけれど、子を産み、子を育て、幼稚園へ入れて、そこから関わってくるお母さん同士の付き合いってのがねぇ、これがなかなか手ごわいのであって。人付き合いというのは難しいもんです。でも、いいもんでもあるのだ。こういう苦い思い出だったりは結構いつまでもこびり付いているのであって、その時沈む心を持て余しながら歩いた場所は今でも鮮やかに思い出されて、ああ、あの当時の若かりし自分を愛おしく思ったりもして。うん。
「長崎」。これはもうお腹がすくと怒りっぽくなる、という部分に共感。全く同じ。自分も食に関しては意地汚いのであった。大概体調が悪いときは空腹の時であって、こういうときは心細くて見放された感が強く押し寄せてきて、だんだんと腹が立ってきて八つ当たりしたりなんかして。人間として小さいよなぁ、と腹いっぱい食べた後に必ず反省するのだけど。おばちゃんのおむすび、沁みただろうなぁ、と感慨深く読んだ。

心地良い読書は心を充実させる。そうして穏やかな眠りにつける。
今まで場所についてぼんやりと描いていた川上さんの、場所をハッキリと輪郭をとって書かれた本書「此処彼処」も、だからどうということはなく今までどおりの川上さんの色合いで描かれていてとても穏やかに読み終えた。

読了日:2008年2月14日
かりさ | 著者別か行(川上弘美) | comments(0) | trackbacks(0) | 

『古道具 中野商店』川上弘美

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古道具 中野商店
川上弘美/新潮社
「好きをつきつめると、からっぽの世界にいってしまうんだな。」 学生街の小さな店に集う人たちの、なんともじれったい恋。世代をこえた友情。どこかあやしい常連たち…。なつかしさと幸福感にみちた長篇小説。
数年ぶりに川上さんの作品に触れた。ちょっぴり作風が変わったのかな?いつもならば川上さん独特のイキモノが出てくるのだけど、今回は実に人間くさいお話し。けれどもほのぼのした雰囲気はしっかり漂わせていて安心して読むことが出来ました。

骨董屋ではない、その名の通り古道具を扱う店主中野さん、姉のマサヨさん、タケオくん、そしてヒトミ。その他の脇役たちも活き活きとこの世界に生きていてそんな彼らを優しく穏やかに見つめる自分を意識しながら読むこの充実感。川上さんの描く男の子がとにかく魅力的。この作品でいうとタケオ。完全な男に成りきっていない少年から男になる前の男の子、あるいはそういう雰囲気のある男性。『神様』収録の「星の光は昔の光」に出てくる男の子をふと思い出したりしていました(タケオとえび男は全然違いますけど。何となくふと思い出したのです)。そのタケオが男に変わっていく様がきゅっと切なく、一体私はいくつの娘なんだ、って恥ずかしくなるくらいドキドキしていました。そう、ヒトミの気持ちになって、目になってタケオを見ていたんだなぁ…。

川上さんの文章は決して綺麗ごとなんかじゃなく、ともすれば行間に封じ込めてしまうような生々しい描写もサラリと書いてみせる。潔く、清々しいのにほんわかじんわりの不思議な文章。久しぶりに触れたら、気持ちのどこかがほかほかしてきた。もっと丁寧に生きよう、そんな風に思いながら本を閉じた。

読了日:2005年6月19日
かりさ | 著者別か行(川上弘美) | comments(6) | trackbacks(11) | 

『パレード』川上弘美/絵・吉富貴子

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パレード
川上弘美/平凡社
夏の午後、畳に寝そべって、ツキコさんがセンセイに物語る、淡く切ない少女の頃の「昔のはなし」。「センセイの鞄」のふたりが過ごした、遠いこだまのような時間、もうひとつの物語。
『センセイの鞄』を読む前、『パレード』は『センセイの鞄』の続編だと思っていた。けれどもこれは"もうひとつの物語"だった。

これぞ川上さんの世界!と嬉しくなるくらい色んなイキモノが登場。中でも天狗は可愛い。そういえば私も子供のころ何かのイキモノがそばにいたことがあった。あれは夢だったか現実だったか。大概夢の世界にふわふわしていた少女だったので、未だにあの頃は現実世界だったのか、夢の世界だったか、はたまた空想上のものだったかわからずじまいである。川上さんの作品はこういう大人になって忘れてしまったことを思い起こさせてくれる名人なのである。

とにかくもセンセイとツキコさんの初夏の生活の一部。二人でそうめんをゆがいて薬味の用意をして…その薬味の彩りも美しい。食後にごろんとして眠り、まどろみながら昔の話をしてみる。センセイとツキコさんのこういう時間の流れも読むことが出来て何だかホッとした。
大人になってしまったけれどまた何かのイキモノが見えたりしないものだろうか…。

読了日:2002年12月4日
かりさ | 著者別か行(川上弘美) | comments(6) | trackbacks(4) | 

『センセイの鞄』川上弘美

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センセイの鞄
川上弘美/平凡社
鞄の中には何がある? 「センセイ」は私の高校時代の古文の先生。10数年ぶりに再会したセンセイとわたしが、過ごした、あわあわと、そして色濃く流れゆく日々。長篇恋愛小説。 [bk1の内容紹介]
好きなヒトの名前をただ呼ぶだけで安心するという事。そして相手も自分の名前を呼んでくれるという事。温かなやわらかなものが気持ちを満たす。

『神様』の川上さんがまた素敵な話しを書いたらしい。今度は恋愛小説。それも異色の。 …そんな話しを聞いてからずいぶん経ってようやく読むことが出来た。
ツキコさんとセンセイの静かなる、しかしとても暖かな時の流れ。かつての教師と生徒という間柄が時を経て再会し、共に居酒屋で黙々と時々ぽつぽつと会話を交わしながら手酌しで酒を飲み、旬の食材をつつく。生徒だったツキコさんは40歳にほど近くなり、教師だったセンセイは定年退職。燃え上がるような恋はここには存在しない。互いを気にしながらも普通に生活し、たまに会って酒を飲み、お互い干渉しない。しかし確実に二人それぞれの今まで何気に過ごしていた生活に変化が起きてくる。その変化に対するセンセイとツキコの対応の仕方が違っていてそれを読み手がまたどう感じるかなのだろうか。そもそも人を好きになるのに理由はほとんどない。もちろん何かしら惹かれる要素があってそれが好きになり、恋になり、お互いの持ち合わせているものを少しずつ相手にどうかな、こうかな、と試行錯誤しながら見せていく。そこには相手を繋ぎとめるための努力もあるだろう。しかしどちらかが負担になったりしたらその恋はもう苦痛という言葉に変化していってしまう。この二人の間には無理がない。ツキコさんは色々と思い悩んだり、センセイから距離を置いてみたりしているけれど、その点センセイは実に自然。相手に強要しない。見返りも求めない。

しかし私は読んでいてどうしても違和感をぬぐえなかった。まだ40近い年齢でもないし、センセイと同じ年代の男性は周りにいないし、いたとしても接点がない。どうにもこの二人のイメージがつかみにくかった。それでも恋は年齢や生活環境に関係なく発生するものなのである。そして恋という一つの言葉には実にいろんな形があるのだなぁ、としみじみ感じながら読んだ。たぶん文中にもあったように、私も年の離れた男女が並んで歩いていたり、食事をしていたりしたら自然な眼差しで見ることは出来ない。下世話な想像もしてしまう。そういう痛い視線を感じながらもなお、それぞれに発生した温かな形を二人で大切にくるみながら互いに見せ合いながら、二人の形に育てていくんだろう。しかし私はツキコさんの同級生、小島孝とツキコさんのぎこちない様子も結構好きだったりする。

今は遠く離れて生活しているヒトに想いを馳せながら本を閉じた。

読了日:2002年12月4日
かりさ | 著者別か行(川上弘美) | comments(0) | trackbacks(4) | 

『神様』川上弘美

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神様
川上弘美/中央公論社
四季折々に現れる不思議な生き物たちとのうららでせつなくちょっぴりおかしな9の物語。ドゥ・マゴ賞、女流文学賞受賞。デビュー短篇「神様」収録。
第9回紫式部文学賞受賞 第9回ドゥマゴ文学賞受賞
−四季おりおりに現れる不思議な「生き物」たちとのうららでせつない9つの物語−
初っぱなから何てふんわかしてポカポカして温かいのだろうと、何だか泣きたくなってきました。日常のささくれだった心にやんわり染み込んでくるような感覚。何とも言えない温かさに満ちています。

表題作「神様」は不思議なお話。くまの折り目正しい礼儀さ、ちょっとずれたおかしさ、温かさ、包容力、あぁいいですねぇ。ふんわかほんわか空に浮かぶ真っ白な雲にのって遠くどこかに流れて行きたい、流されて行きたいそんな感じがしました。他の作品達も素晴らしい。

この著者の感性は素晴らしいです。この方は幸せに満ちているのでしょうね。それがあって、この温かさがある。素敵です。幸せとは何でしょう?自分が幸せだったらそれでいいのでしょうか?きっとそれだけではないのでしょう。周りの人も幸せの渦に溶け込ませてあげられるくらい、自分の幸せが確立されていないとこうまで読む側に与える事は出来ないのかも知れません。一概に幸せだから周りも…とは限りませんが、何だか今のワタシはそんな風に受け止めてしまいました。著者のあまりにもピュアな文体に触れて、ワタシの中で何かが弾けて生まれたような気がします。

読了本:2000年1月16日
かりさ | 著者別か行(川上弘美) | comments(7) | trackbacks(3) |