ひなたでゆるり

読書のコトとちょっぴり日々のコトブログ

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『螢坂』北森鴻

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螢坂
北森 鴻/講談社
恋の思い出が残る坂はどこに消えたのか。幻の焼酎の秘密とは…。旨いビールと粋な肴で柔らかくほぐされる謎。 三軒茶屋にひっそりと佇むバー「香菜里屋」のマスターが探偵役のシリーズ第3弾。03年刊「桜宵」に続く連作集。

「螢坂」「猫に恩返し」「雪待人」「双貌」「孤拳」5編の連作短編集。昨日の『桜宵』の後また一気に読了しました。『花の下にて春死なむ』『桜宵』に続くシリーズ3作目です。ほっこりと灯火をさしてくれたかのような仄かな温かみのある読後感。少し涙滲ませながら本を閉じました。お馴染みの面々に新たな人物を加えることでまた味が出る。それを温かく迎える「香菜里屋」のマスター工藤さんと工藤さんの作り出す料理たち。胃が満たされる幸福感というのは全てを活に導く力を得ます。「香菜里屋」の酒と料理たちの描写を読んでいるだけでもおなかいっぱい。それに加えてミステリです。最高のシリーズ。

今回はほろりとさせてくれるお話しがいくつか。特に「双貌」「孤拳」はしんと沁み入るミステリ。「双貌」はなかなかに心憎くちょっと惑わされました。工藤さんの解く謎は「ズバリ」ではなくわりと曖昧。そこが読み手にさらなる想像をさせてくれる。そこからまた深みが増すのかもしれません。

「香菜里屋」に一度行ってみたいと思いながらも別のことを考えるに、「香菜里屋」のように疲れた心を癒し、その胸のうちを自然に吐露出来るような料理や空間を私も作ろうと思ったこと。自然に足が向くような家庭を…と読みながら思ったのでした。今夜は美味しい料理を作ろう。

読了日:2005年1月13日
かりさ | 著者別か行(北森鴻) | comments(0) | trackbacks(0) | 

『桜宵』北森鴻

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桜宵
北森 鴻/講談社
バー「香菜里屋」に集う人々をめぐる事件。東京・三軒茶屋の路地裏にひっそりと佇むバー「香菜里屋」のマスターが探偵役のシリーズ第2弾。日本推理作家協会賞受賞の「花の下にて春死なむ」に続く連作集。

「十五周年」「桜宵」「犬のお告げ」「旅人の真実」「約束」5編の連作短編集。再び「香菜里屋」シリーズを読むことが出来て嬉しい。今回も「香菜里屋」に集うお客たちの抱える謎をマスターの工藤さんが控えめながら鮮やかに解いていきます。酒に美味しい料理に謎解き、最高じゃないですか。こちらまでも舌鼓を打ってしまうほど素敵な作品でした。

前作『花の下にて春死なむ』を読んでから数年経っていますが、「香菜里屋」の温かみがよみがえり、懐かしさを覚えながら読みました。それとは反して訪れるお客が持ち込むその謎が寒々しく内には凄まじいものを孕み救いようのない絶望感も漂っている。その相反する妙がスパイスとなっていつまでも消えずに私の中に残っていました。
その時々に工藤さんの料理が箸休めとなって登場し、ホッと一息つかせてくれる。この料理たちも行間から香りが立ち込めるような錯覚を覚えるくらい
美味しそうに描かれていて、読みながら「ああ〜食べたいっ」と叫んでおりました(笑)

5編の中でも好きなのは表題作でもある「桜宵」。美しいです。

読了日:2005年1月12日
かりさ | 著者別か行(北森鴻) | comments(4) | trackbacks(2) | 

『花の下にて春死なむ』北森鴻

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花の下にて春死なむ
北森 鴻/講談社文庫
年老いた俳人・片岡草魚がひっそりと死んだ。草魚が残した句帳には死ぬ直前まで書き残した俳句と、日記が。彼の知られざる人生をひも解こうと飯島七緒は旅に出る。
「花の下にて春死なむ」「家族写真」「終の棲み家」「殺人者の赤い手」
「七皿は多すぎる」「魚の交わり」の6編収録。連作短編集。
第52回日本推理作家協会および連作短編集部門受賞作

初北森作品にこれを選びました。初めて読む作家さんはやはり少し躊躇します。自分の感性に合うかどうか不安なのかもしれません。そんな少しの不安を(でもそれが楽しみに摩り替わる瞬間がたまらなく良い) 抱きながら読み始めました。読了後しみじみと余韻に浸りながら本を閉じました。最初の不安は杞憂でした。

何といっても料理の描写が素晴らしく、それだけでも美味しい作品。そして普段の生活に潜む何気ないミステリィが淡々と語られていく。その背景にあるもの、根底に潜むもの、闇の部分が明るみになる時、何とも切ない気持ちが滲みます。日常ミステリィという言葉は今や珍しくはなくなっていますけど、私が認識する日常ミステリィとはまた違った印象でした。

中でも最初の「花の下にて春死なむ」と最後の「魚の交わり」は好き。男と女であるがゆえの艶かしい部分というのにくすぐられます。この一つ一つの短編を点で繋ぐのが、三軒茶屋にあるビアバー「香菜里屋」。そこのマスター工藤が作る料理や、ビールへのこだわりなど非常に楽しめます。切なかったり、哀しかったりの負の感情を押し隠しながら生きてゆく人間模様。折りしもそんな感情から抜け出せない時に読みました。そしてそこから脱する道が開けたのも確かです。いい出会いをしました。

読了日:2002年4月13日
かりさ | 著者別か行(北森鴻) | comments(0) | trackbacks(1) |