ひなたでゆるり

読書のコトとちょっぴり日々のコトブログ

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『殺す手紙』ポール・アルテ

殺す手紙〔ハヤカワ・ミステリ1840〕 (ハヤカワ・ポケット・ミステリー)
殺す手紙
ポール・アルテ/平岡敦訳/早川書房
La Lerttre qui tue(1992)
空襲の焼け跡にある空き家へ行き、指定の時刻ちょうどにランタンを灯してほしい。そして何が起こっても、決して逆らってはいけない……親友からラルフに届いた奇妙な手紙。友の正気を疑いつつも、事情があるものと察したラルフは指示通り夜の町へ出た。だが問題の空き家に警官が踏み込んで来たのを皮切りに、あっという間に事件の連続に巻き込まれてしまう。奇妙なパーティーに紛れ込み、空襲で死んだ自分の妻を見かけ、ついには殺人事件が! 密室不可能犯罪の巨匠が新機軸に挑んだ、巻き込まれ型サスペンスの傑作

ポール・アルテ初読みです。
テンポ良くまたストーリーも分かりやすく大変読みやすい。
友人からの不可解な手紙、奇妙なパーティー、殺人事件、死んだはずの妻の姿…
あれよと追われる身となった主人公と共に謎の解明に向かって疾走する感がたまらなく心地良い。
謎が全て解明されたと油断していたら…二転三転するさまが華麗なのです。
そんな華麗で鮮やかさの後に訪れるのは、晴れやかな空を浸食するかの黒い雲のように暗く陰鬱とした彩り。
サスペンスなハラハラドキドキは薄いもののリズミカルな展開に満足でした。
次はツイスト博士シリーズを読みたい。

読了日:2010年12月18日
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『愛おしい骨』キャロル・オコンネル

愛おしい骨 (創元推理文庫)
愛おしい骨
キャロル・オコンネル著/務台夏子訳/東京創元社
十七歳の兄と十五歳の弟。ふたりは森へ行き、戻ってきたのは兄ひとりだった。二十年ぶりに帰郷したオーレンを迎えたのは、時が止まったかのように保たれた家。誰かが玄関先に、死んだ弟の骨をひとつずつ置いてゆく。何が起きているのか。次第に明らかになる、町の人々の秘められた顔。迫力のストーリーテリングと卓越した人物造形。

17歳の兄と15歳の弟、森に二人で入り兄のみ戻ってきた過去、20年ぶりに帰郷した兄を待っていたのは夜ごと実家の玄関先に置かれてゆく、あの日失踪した弟の骨という奇妙な出来事。
再び動き出した事件の謎の真相が、奇妙で奇怪な町の住人たちの証言によって光に曝されていきます。

一体どれが真相なのか、誰の言葉が真実なのか。
読み手も大いに揺さぶられます。
ラストに向けての疾走感に引き寄せられ一気に読み進みました。
だからこそその後の静けさが沁みます。
鬱屈、屈折、秘密…闇抱えた者達。
オコンネルの独特過ぎる人物造形に唸りました。

読了日:2010年11月30日
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『魔王の足跡』ノーマン・ベロウ

魔王の足跡 世界探偵小説全集 (43)
魔王の足跡
ノーマン・ベロウ 武藤崇恵・訳/国書刊行会
The Footprints of Satan 1950
ある雪の朝、英国の田舎町ウィンチャムに謎の足跡が出現した。まっさらな新雪に覆われた道の中央に突如現れた蹄の足跡を辿る一行は、野原の真ん中に立つ一本のオークの木へ行き着き、大枝からぶら下がった男の死体を発見する。蹄の足跡はそこでぷっつりと途切れ、足跡の主はそこから虚空へ飛び立ったとしか思えない状況だった。しかも、問題の木には、昔魔女が縛り首になったという伝説があるという。怪奇趣味満点の不可能犯罪派ノーマン・ベロウ、本邦初紹介。

国書刊行会の「世界探偵小説全集」が以前から気になっていたんですが、ようやく読み始めることが出来そう。最初に選んだのは『魔王の足跡』。
ノーマン・ベロウという作家自体知らなかったのですが、読んでみてすごく自分好みであることが判明!
これは是非とも他の作品も読みたいわぁ、と思うものの、残念ながら20作品あるうち邦訳されているのはこの1冊のみなのです。どうやらシリーズらしいのです。
本書の中にも「主教の剣」(The Bishop's Sword 1948)をめぐる事件がちらっと紹介されています。どんな事件だったのか、どう解決したのかすごく気になりますよ。
どうやら海外でもノーマン・ベロウが再評価されているようなので、この流れで日本でも邦訳されてどんどん刊行して欲しいなぁ、と思うのは他のミステリファンもきっと切望しているはずと思います。

さて、本書の事件。
怪奇趣味の不可能犯罪派であるノーマン・ベロウならではの事件の始まり。
「1855年2月8日、悪魔が英国に降り立った。デヴォン州各地で不可思議な蹄の足跡が多数目撃されたのである。」で始まるまえがきからぐいぐい引き込まれていきます。
それから一世紀後のある雪の朝、英国の田舎町ウィンチャムに悪魔が再び舞い降りたのか?!という類似した不可思議な現象が。
雪の上の悪魔の足跡を追うとその先の野原に立つ大木の枝にぶら下がる男の死体。
その木には昔魔女が縛り首になったという伝説もある、曰くつきの大木。
人間でも、動物でもない、蹄の形をした足跡の正体は一体何なのか、何故男は死なねばならなかったのか?自殺?他殺?他殺ならばそこまで誰がどうやって運んだ?
もう足跡自体が怪奇現象なのですから、まずはその正体について延々と推理されていきます。悪魔の仕業?というテーマがこれでもかと延々推理され、その盛り上げようといったら!どこまでも続いていくのでさぞうんざり?なのかと思いきやこれがまた面白く、楽しいったら!一体どうやってこれを終結させていくのか疑問に思いつつ読み進むと、第二の事件が起こって。

「魔王の足跡」という不可能犯罪をどう成立させるのだろうかと途中疑問だらけでしたが、目立たぬけれど重要な伏線をきちんと拾い、いくつかのトリックを成立させていくさまは「なるほど!」と気持ち良く納得させてくれていやはや上手い(多少の強引さはむしろ新鮮ですらあるのです)。

一番のお気に入りは怪奇現象研究家のエミー・フォーブズ。こういった怪奇幻想ものに怪奇現象研究家って一番怪しげ?と思いがちですが、実は一番まともなのが彼女だったりして、彼女のいちいちの言葉に妙に納得してしまう。
ミス・フォーブズがスミス警部に(えっと、このスミス警部がシリーズのレギュラーであるようで、そうすると主役はスミス警部、になるのかな)語る言葉がいちいちごもっともで、もしかしたら彼女こそが探偵役にふさわしいのでは?と思ってしまったほど。
最後の最後まで凛とした言葉にハッとさせられたり。お気に入りキャラです。

読了日:2010年1月31日

【関連記事】世界探偵小説全集リスト

【ノーマン・ベロウ作品リスト】
1.The Smokers of Hashish(1934)
2.Oil Under the Window(1936)
3.The Secret Dancer(1936)
4.It Howls at Night(1937)
5.One Thrilling Night(1937)
6.The Terror in the Fog(1938)
7.Fingers for Ransom(1939)
8.Murder in the Melody(1940)
9.Ghost House(1940)
10.Words Have Wings(1946)
11.The Three Tiers of Fantasy(1947)
12.The Singing Room(1948)
13.The Bishop's Sword(1948)
14.The Spaniard's Thumb(1949)
15.Don't Go Out After Dark(1950)
16.The Foorprints of Satan(1950) 『魔王の足跡』
17.The Eleventh Plague(1953)
18.Don't Jump,Mr.Boland!(1954)
19.The Lady's in Danger(1955)
20.The Claws of the Cougar(1957)
21.The Ghost House(1979) (9.Ghost House(1949)の全面改稿版)
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『プリーストリー氏の問題』A・B・コックス

プリーストリー氏の問題 (晶文社ミステリ)
プリーストリー氏の問題
A・B・コックス 小林晋・訳/晶文社
退屈な人生を送っていたプリーストリー氏は、見知らぬ美女と手錠でつながれ、殺人犯として逃げ回るはめに…。抱腹絶倒のスクリューボール・コメディ。

バークリー別名義作品ということでどんなトリックが?ミステリが?と読み始めましたが、ミステリ云々というよりもユーモアたっぷりな展開にすっかり楽しく一気読み。
ちょっとした犯罪学の実験のつもりが思わぬ大事件へと発展していくさまは喜劇を見ているかのよう。

さえない独身男・プリーストリーの身に降りかかる予想外の事態。
友人から放たれた一言(冒頭から「君はキャベツか!このカブ野郎!ペポカボチャのカタツムリ野郎だ!」と散々な言われよう)、犯罪学を趣味とする友人達の思いつき、謎の美女からのSOS、或る屋敷への泥棒計画、殺人犯となって謎の美女と手錠に繋がれての逃走(まさに表紙イラストのようなことになっているのでした)。
プリーストリーにとって幸か不幸かの羽目になるわけですが、いや不幸に決まっている事態なのですけど、その後の展開が決して不幸なだけでないことが読んでいてにんまり笑顔になること間違いなしなのです。
何の取り柄もなく活気のない人生でも、心優しく誠実な性格はやがて彼にとって良き方向へと向かわせてくれるのです。
どこまでも誠実なプリーストリーとローラのやりとりがほのぼの微笑ましくて好き。
お洒落でロマンチックなラブコメディ+ミステリです。

読了日:2010年1月29日

【関連記事】
晶文社ミステリリスト
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『狡猾なる死神よ』サラ・スチュアート・テイラー

狡猾なる死神よ (創元推理文庫)
狡猾なる死神よ
サラ・スチュアート・テイラー/創元推理文庫
書評/ミステリ・サスペンス
それは奇妙なモニュメントだった。舟の中に横たわる若い女の裸体。見下ろす死神のまなざしはやさしく、骨の口もとには愛しげな微笑すら漂っている。墓石の芸術という、一風変わった研究をしているスウィーニーは、友人の誘いで、そのモニュメントのあるかつての芸術家村を訪れる。だが墓石の謎を追う彼女の行く手に、殺人事件が立ちはだかる。死と象徴に満ちた新シリーズ開幕。
芸術史家スウィーニー・シリーズ第一弾。
ハーバード大学芸術・建築史学科助教授のスウィーニー・セント・ジョージが主人公。
彼女の研究のテーマが墓石の芸術。一風変わったミステリなんですが、いやはやこれがなかなか面白くて夢中で読みました。

今回彼女の興味を惹いた墓石は1890年に18歳で亡くなった少女メアリー・デンホルムのもの。死神のもとで舟の中に横たわる裸体の少女の姿が彫刻されたその墓はどことなく奇妙。それは当時の墓石芸術とは合致しないラファエル前派の影響が色濃く見られるものだったから。この墓石の作者は不明ということからもその奇妙さが際立ちます。この少女メアリーの死因も溺死と伝えられているものの殺人の可能性が…。
この謎に興味を持ったスウィーニーは現地へと向かいそこでさらなる殺人事件に巻き込まれるというミステリの中にもサスペンスが含まれた非常に興味深い作品。

今回の墓石の歴史、美術、文学を紐解くにつれ、ヴィクトリア朝時代の雰囲気を漂わせてきてそれだけでも気持ちが高揚してきます。
辛い過去を背負った主人公を巻き込む連続殺人事件の謎、主人公の恋心、その行方がどうなっていくのかハラハラしながら読みました。メアリーの墓の真実とは、連続殺人の謎とは、揺れるスウィーニーの淡い恋の行方は。見事な着地に大満足です。
切なく悲しい色に彩られたミステリ。

訳者あとがきによればスウィーニー・シリーズは現在4作書かれているとか。ぜひ2作目以降も翻訳してもらって続編を読みたいです。切に。

読了日:2009年3月15日
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『大鴉の啼く冬』アン・クリーヴス

大鴉の啼く冬 (創元推理文庫 M ク 13-1)
大鴉の啼く冬
アン・クリーヴス 玉木 亨・訳/創元推理文庫
新年を迎えたシェトランド島。孤独な老人マグナスを深夜に訪れた黒髪の少女キャサリンは、4日後の朝、大鴉の舞い飛ぶ雪原で死んでいた。真っ赤なマフラーで首を絞められて。住人の誰もが顔見知りの小さな町で、誰が、なぜ彼女を殺したのか? 8年前の少女失踪事件との奇妙な共通項とは?CWA最優秀長編賞受賞作。
読み終えたのは昨年の10月で今更の感想なんですが…大好きなミステリですのでちゃんと感想を残しておこうと記憶を辿りながら、またちょこちょこ再読しながら書いております。

舞台は英国最北にあるシェトランド島。
凍てつく元日の深夜、老人の家を訪れた二人の少女。孤独な老人マグナスにとってそれは数年ぶりの訪問者。ある事件をきっかけに彼の元を訪れる者がいなくなってから彼の孤独感はいかほどだったか、マグナスの独白によってやがて読者に知らされます。
そしてこの小さな町で起きた最悪の事件。
老人を訪れた少女の一人が死体となって発見されるのです。一体誰か殺したのか。彼女は何故殺されてしまったのか。

この町にとって忌まわしき8年前に起きた少女失踪事件との関連性があるのか、失踪した少女はどこに消えてしまったのか。この2つの事件の謎を絡めて犯人を推理していくのですが…いやはやまさかまさかの展開でありました。この犯人は思い至らなかったわ。
犯人が分かってみればああそうか、理由は確かに納得出来るかもしれない、と思ってしまうのだから勝手なことであるけれど、しかし上手いなぁと感心するわけです。

小さな町という舞台設定と(しかも冬の厳しい環境の中であることと)、3人称で語られる多視点であることが読み手を見事に惑わし魅惑する。
寒々しい冬の描写、その一面真っ白な雪の原野に差す赤。その上を飛び交う大鴉の黒。
これから起こる不穏さを感じさせながらもとても美しい色彩描写に、つい魅了されてしまいます。
物悲しい物語の終わりは静かで深い余韻を与えていつまでも消えません。

読了日:2008年10月25日
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