ひなたでゆるり

読書のコトとちょっぴり日々のコトブログ

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『茗荷谷の猫』木内昇

茗荷谷の猫
茗荷谷の猫
木内昇/平凡社
新種の桜造りに心傾ける植木職人、乱歩に惹かれ、世間から逃れ続ける四十男、開戦前の浅草で新しい映画を夢見る青年――。幕末の江戸から昭和の東京を舞台に、百年の時を超えて、名もなき9人の夢や挫折が交錯し、廻り合う。切なくも不思議な連作物語集。

はらはらと舞い散る桜のように儚くも、人の命はその時代、その土地に確かに存在し出会い別れまた廻り来る。
生を受けた時代をその今を懸命に生きる姿、移ろう時代が確かに繋がっている。
ゆるやかに繋がってゆく話のひとつひとつがとても良く、はっとさせられることもあり、しみじみ深々と感じ入ったのでした。

「染井の桜」「仲之町の大入道」「隠れる」「てのひら」がお気に入り。
「ぽけっとの、深く」ではとある場面で胸が締め付けられじんわりと。
柔らかく包まれる読後感。
染井吉野であろうか桜の表紙が美しく読後の余韻に浸りながら眺めている。

読了日:2011年10月2日


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『アカシア騎士団』金井美恵子

アカシア騎士団 (1976年)
アカシア騎士団
金井美恵子/新潮社

古書店で購入し、手元に届いてからというもの何度も愛でているところ。
古書という古めかしく漂う香り、程良くセピア色に染められたページの色合い、
儚く細いフォントのかたち、そしてここに紡がれる金井さんの16編の短編たち。
なんて甘美で耽美な幻想世界。

夢か現かの揺らめき。読んでいる間も読み終えてからも濃厚なため息に自分で溺れてしまいそう。
読み終えてまだここから立ち去りがたくもう一度物語をなぞり浸り溺れるのです。

あとがきにかえた「ペネロペーの機織り」金井さんの創作世界を読めて嬉しい。
幸福な読書時間でした。

読了日:2011年8月23日
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『おかしな本棚』クラフト・エヴィング商會

おかしな本棚
おかしな本棚
クラフト・エヴィング商會/ 朝日新聞出版
本棚についての、本棚をめぐる、本棚のあれこれを考える本。背中が語るとっておきの本の話。

ああ、なんと本好きの心をくすぐってくれるんでしょうか。本への愛おしさがより一層増します。
そして他人の本棚をのぞくことの快楽さと言ったら!
久しぶりのクラフト・エヴィング商會作品じっくり堪能しました。
その背表紙をじぃっと見つめ、読んだ本ならば共感し、未知の世界ならばこの本の中に広がる世界を妄想し、ああ、妄想するだけでは足らずこれは是非とも読みたい!と気持ち高めてゆくのです。

それにしても古書の佇まいの美しいこと。
色褪せてあめ色になった古書を見ると胸がうずいてきます。
その歴史に思いを馳せることもまた幸福なひととき。

『クラウド・コレクター』好きとしましては「Clouds Note」に心ときめくのでした。

読了日:2011年5月8日
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『とびらをあければ魔法の時間』朽木 祥

とびらをあければ魔法の時間 (新・童話の海)
とびらをあければ魔法の時間
朽木祥・著/高橋和枝・絵/ポプラ社
おちこんだり、かなしいことがあったとき、元気をくれるすてきな場所「すずめいろ堂」。すずめいろ堂の魔法の時間には、心がわくわくおどりだすような、ふしぎなことがおこります。

可愛らしいお話でした〜素敵!
女の子の迷えること、行き詰った焦り、しんと落ち込んだ気持ちなどがとても綺麗な言葉で表現されていて心地良い。
"すずめいろどき"に出会った不思議な本屋「すずめいろ堂」で起こる魔法の時間を私もわくわくとさせてもらいました。
子供の頃夢中で読んだ本の世界。
その時は本当に本の中のモノたちが飛び出て、いや自分が本の世界に入り込んでいたかのような幸福感を味わっていたのを思い出しました。
それがどれほど自分を救ってくれたか、ってことも。
大人にも訪れる"すずめいろどき"、今でも私は本に救われている。

読了日:2010年12月11日
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『わたしのプリン』川島えつこ

わたしのプリン (ポプラ物語館)
わたしのプリン
川島えつこ 著/植田真 絵/ポプラ社
11歳年下の妹が生まれた夜、ゆりは、ラッコのぬいぐるみのプリンと、ふたたび話ができるようになった。少女の繊細な心の世界と成長を、しなやかな筆致で透明感豊かに描いたファンタジー。

ラッコのぬいぐるみを抱っこして星空を見上げる少女。可愛らしい装丁に惹かれます。
10才の少女ゆりの成長と揺れる心の機微を繊細に描くファンタジー。

生まれたばかりの妹への優しい目線を見せながら、赤ちゃん中心の生活への変化に寂しさも感じるゆり。
妹への複雑な思い、存在したはずだったあの子のこと、お母さんとの大切な時間、四つ葉ちゃん、ほのかな恋心、そしてわたしのプリン…ゆりの成長とそれを温かく見守る家族の1年。

しなやかで瑞々しい少女の語りと姿が健気でギュッとしたくなりました。
あったかい読後です。

読了日:2010年6月28日
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『ニコルの塔』小森香折

ニコルの塔
ニコルの塔
小森香折・著/こみねゆら・絵/BL出版
寄宿舎と授業塔を往復する、単調だけれど静かな生活。だがニコルは、自分がニコルではないことに気づいてしまった。修道院学校の忌まわしい秘密とは? ミステリアス・ファンタジー。第5回ちゅうでん児童文学賞大賞受賞。

灰色の背景に、「ニコルの塔」と題された物語、見事に引き(惹き)込まれました。
寄宿舎と授業塔を往復するだけの単調で静かな日々、地球のマントに刺繍する12人の乙女たち。
それはまるで籠の中の小鳥のよう。
そんな閉じられた世界が開かれた時が、この物語の本当の入り口であり、始まりなのです。
物語の真実、そこから広がる新たな世界。
どこか寂しくしんと静かなこみねさんのイラストと小森さんのファンタジーによって読み手の想像もさらに広がります。バロの3枚の絵から創り出されたファンタジー。
たまらなく好き。幸せな読書時間でした。

読了日:2009年10月30日
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『イギリス海岸―イーハトーヴ短篇集』木村紅美

イギリス海岸―イーハトーヴ短篇集 (ダ・ヴィンチブックス)
イギリス海岸―イーハトーヴ短篇集
木村紅美/メディアファクトリー
宮沢賢治、イギリス海岸、光原社の中庭、ホームスパン、北上川、小岩井農場のソフトクリーム、双子のサイロ、じゃじゃ麺、遠野の風、雪の浄土ヶ浜…イーハトーヴをめぐる六つの物語。

宮沢賢治の地、岩手を舞台にした連作短編集。
始めの「福田パン」を読んでからつるつると心地良く物語に入り込み、舞台である岩手にすっかり魅せられました。
岩手の地に馴染んでいく翠と早々と岩手から離れ東京で暮らす梢の双子と彼女らを巡る物語はとてもとても静かで淡々としていてここに流れる空気も澄み切っていて。
私は翠のお話しがとても気に入って彼女が幸せになれればいいなぁ、と思いながら読みました。
「中庭」の翠が淡く高揚する感じとか、でも失望感を滲ませたりとか、寂しい気持ちがどうしようもなく支配する感覚がたまらなく良かった。

花巻の宮沢賢治記念館を訪れたのは20年前の修学旅行で、1度きり。
そのときの風景はすっかり忘れてしまったけれど、記念館の様子は今でも鮮やかに思い出されるほど素敵な空間でした。
また行きたい。そしてイギリス海岸にも。ぜひとも。

★追記(10/2)★
イギリス海岸と言えば、今年賢治の命日9月21日に一日限定で復活したのですよね。
北上川に沈んでいたイギリス海岸が当時の風景で再現されているのをニュースで見たとき、当時賢治が見て名づけた白い海岸が(実際は川岸なんだけど)、白亜の海岸がとても美しく輝いていて感動的な気持ちになりました。
一日限定でも復活したことは嬉しいことです。

読了日:2009年8月31日

【木村紅美作品感想記事】
『風化する女』木村紅美(2009.8.4)
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『風化する女』木村紅美

風化する女
風化する女
木村紅美/文藝春秋
突然亡くなったれい子さんには、別の顔があった。私はその謎を探るべく、れい子さんになり代わろうとした。文學界新人賞受賞作。

「風化する女」、「海行き」、ともに都会での現実的な日常生活から回想とともに旅する。

孤独死した会社の先輩であるれい子さんを辿る旅、回想を交えての「わたし」の彼女への思いはとても温かく救われる。一方で孤独、死、という言葉がポトンと心に重しが落ちて、また風化というタイトルも切実で。
「海行き」の女友達2人が男友達に会いに田舎へ帰る旅。学生時代の思い出を語りながら思いながらの場面がとても良い。

私の昔を知る友達に会いたくなってしまったなぁ。
ちゃんと私を覚えていてくれているだろうか、なんてしんみりしてしまった。

読了日:2009年6月10日

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『裁縫師』小池昌代

裁縫師
裁縫師
小池昌代/角川書店
広大なお屋敷の鬱蒼とした庭の離れに、アトリエを構えるひとりの裁縫師。彼は、富豪のお抱えとも、息子だとも、愛人だとも噂されていた。ある日、9歳の「わたし」は、自分の服をあつらえてもらうために、母に連れられて裁縫師のもとを訪れる。採寸され、数日後にひとりアトリエを訪れた「わたし」だったが…。禁断の恋に身を任せる幼女を描いた「裁縫師」ほか、詩情とエロティシズムあふれる新感覚短篇5篇を収めた珠玉の小説集。

静謐な世界に時折漂うエロチックな感覚。
「裁縫師」の遠く甘い記憶の断片、生々しく体に記された刻印。
少女だって女が開花する瞬間があるということ、それは燃え上がるような熱を帯びながらも淡々と静かに綴られる。

5編ともそれぞれどこかで失くしてしまった記憶を呼び覚まされるようなひりひりとした感覚をもって読みました。「裁縫師」「左手」「野ばら」が好き。

読了日:2009年4月23日
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『踊るジョーカー―名探偵 音野順の事件簿』北山猛邦

踊るジョーカー―名探偵 音野順の事件簿
踊るジョーカー―名探偵 音野順の事件簿
北山猛邦/東京創元社
推理作家の白瀬は、とっても気弱な友人・音野順が秘める謎解きの才能を見込んで、仕事場の一角に探偵事務所を開いた。今日も白瀬は泣き言をいう音野をなだめつつ、お弁当のおにぎりを持った名探偵を事件現場へ連れてゆく。
「踊るジョーカー」「時間泥棒」「見えないダイイング・メッセージ」「毒入りバレンタイン・チョコ」「ゆきだるまが殺しにやってくる」5編の連作短編集。

お恥ずかしながら北山さん作品初めてであります。
メフィスト賞受賞作『「クロック城」殺人事件』が出たとき、読みたいっ!と思いながらその機会を得られぬまま時は過ぎ、片山さんの表紙に惹かれて『少年検閲官』を読みたいっ!と思いながらこれまた果たせず、今回も可愛らしい片山さんの表紙に惹かれて読みたいっ!と気持ち高めて…ええ、今度はサクサクと読みました。
いや〜コミカルでキュートなミステリ、キャラクターの愛らしさにすっかり楽しみました。ひきこもりで気弱な音野くん、これがなかなかの名探偵ぶり。助手で作家でもある白瀬とのコンビが絶妙でした。

舞い込んでくる事件や謎の数々が日常系でありながら本格の様相もあって、さてこの謎一体どう着地するのかするのかわくわく感もありますし、そのトリックが独特で新鮮。
さっき音野くんの名探偵ぶり、と書きましたが、最初は名探偵ぶりなんてこれっぽっちも思わせてくれないのです。なんたってひきこもりで気弱で、舞い込む事件や謎にも消極的なのですから。なら安楽椅子探偵なのか?と言ったらそうではない。嫌々ながらもちゃんと現場に赴き丁寧に調べた結果、見事に推理してみせるのです。その性格なので鮮やかに解決!という雰囲気ではないのですが、見事な推理ぶりでして次第にそんな音野くんの探偵ぶりに期待を込めてしまう。
もうちょっと自信持って!堂々と!なんてついつい声かけながら読んでましたけど。
反対に助手の白瀬は(一応ワトソン役)そんな音野くんを温かく見守りつつ何とか社会に適応出来るように探偵という仕事を与えてお仕事もせっせと受けていきます。
いつ作家の仕事をしているのだ?という疑問がちらりと過りますが、そんなお話しももしかしたら続編で書かれていたりするかなぁ、と勝手に想像してみたり。
シリーズ化するかどうかわかりませんが、何となくそんな予感がしますの。
そうしたら私のお気に入り、音野くんの兄・要をもうちょっと登場させて彼の名探偵編なんてのを書いて欲しいわ。

ほのぼのとしたミステリ、という雰囲気ではありますが独特なトリックが本格ミステリとして楽しませてくれます。
「踊るジョーカー」「ゆきだるまが殺しにやってくる」がお気に入りでした。

読了日:2009年2月3日
かりさ | 著者別か行(その他) | comments(4) | trackbacks(1) |