ひなたでゆるり

読書のコトとちょっぴり日々のコトブログ

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『ゆず、香る』有川浩

ほっと文庫 ゆず、香る
ゆず、香る(ほっと文庫)
有川浩/バンダイ

冒頭からゆずの香りが感じられて、ふわふわと体を心地良く包んでいく。
互いにきっと想いは繋がっているんじゃないかと仄かに感じている。
あの時一歩踏み出せたら二人の関係はもっと近寄っていたのだろうか。
学生から社会人へと時が流れてなお、今の関係が壊れてしまうことを
恐れるあまりこれ以上歩み寄れない。
そんな恋に臆する二人が何とも切なくて愛おしくて。
それでも有川さんさすがです、こんなに素敵な贈り物を用意してくれていたなんて。

ゆずの入浴剤に添えられた生産地。うまいなぁ。素敵だ。
ゆずの香りに包まれて、ほろり。

★うちの近所ではなぜかとんと見かけない、ほっと文庫。
絶望的な気持ちになっていましたら、読み友さんが送って下さいました!
嬉しくて嬉しくて大切に読みました。感謝でいっぱいです。
そしてこんなに素敵な恋の物語、ゆずの香りの入浴剤。贅沢なひととき。
ほっと文庫とは本当に良く考えたなぁ。しみじみ感じ入っています。

読了日:2011年9月4日
かりさ | 著者別あ行(有川浩) | comments(0) | trackbacks(0) | 

『植物図鑑』有川浩

植物図鑑
植物図鑑
有川浩/角川書店
ある日、道ばたに落ちていた彼。「お嬢さん、よかったら俺を拾ってくれませんか?咬みません。躾のできたよい子です」「―あらやだ。けっこういい男」楽しくて美味しい道草が、やがて二人の恋になる―。

ほろ酔い加減の帰り道、行き倒れた男子一人。
「よかったら俺を拾ってくれませんか?」って可愛い男の子に言われちゃったら…。
そりゃ不審者丸出しだし、怪しすぎるんだけど、このイツキくんが良く出来た子で。
悶絶ラブも楽しめますが、この作品まさに「植物図鑑」として堪能出来ます。

私、東京で生まれ育ちましたが、自宅から土手がすぐそばだったことで子供の頃は雑草にまみれて遊んでました。シロツメクサで花かんむりとか良く作ってたなぁ。
四つ葉のクローバーなんかも結構確保率高かったり。
そんな日常も大人になったらすっかり遠ざかって。
子供が出来て公園やお散歩をするようになるとまた子供と同じ目線で植物を見る機会が増えるんですよね。
足元も見ないでせかせか仕事していた頃からゆったり自然の空気を感じる生活。
それだけでぐっと心身ともに健康的でいられる気がします。
さやかもイツキくんによって少しずつ変わっていく過程が可愛い。まさに恋する乙女。

いや〜読んでいて子供の頃の自分が懐かしくてキュンとなってしまった。
ちょっと視線を足元に落とせば自然はそこここに。植物図鑑片手にお散歩もいいかも。

道端で、公園で健気に咲く名も知らない愛らしい花。
お散歩の度に娘が摘んでくれる紫の小花。
「ニワゼキショウ」という名前だったのね!と初めて知りました。
これは大収穫!お散歩で見かけるあの花、この花いろいろの名が気になり始めています。

読了日:2009年10月3日
かりさ | 著者別あ行(有川浩) | comments(8) | trackbacks(5) | 

『三匹のおっさん』有川浩

三匹のおっさん
三匹のおっさん
有川浩/文藝春秋
「三匹のおっさん」とは…定年退職後、近所のゲーセンに再就職した剣道の達人キヨ。柔道家で居酒屋「酔いどれ鯨」の元亭主シゲ。機械をいじらせたら無敵の頭脳派、工場経営者ノリ。孫と娘の高校生コンビも手伝って、詐欺に痴漢に動物虐待…身近な悪を成敗。
いや〜正直おっさんの話でしょ、3人のおっさんでしょ、おっさんの物語かぁ…なんて思ったらあまり意欲的でなかったのです。この作品に。
でも読まず嫌いはいけません。有川さんだったら面白くないはずはないのは分かっているけれど、いやはやこれは痛快な素敵なお話しでした。なぜ今まで読まなかった!と激しく自分にツッコミ。

今の時代還暦を迎えた方ってお年寄りじゃないです。ものすごく若々しい。まだまだ戦力としていけるのに、と気持ちは充分あれど定年という区切りをつけられて、はい、では隠居いたしますなんて寂しすぎる。
そんなおっさん3人が世にはびこる悪を斬る。有川さん曰く「現代版時代劇」。悪人を成敗するところなんておっさんだったことを忘れるくらいカッコ良い。

そして有川さんといえば恋愛もちゃんと忘れていません。悶絶並みのベタ甘ではなかったけれど淡い綿菓子のようなふんわりとした可愛らしい恋が読めて幸せでした〜。

読了日:2009年9月26日
かりさ | 著者別あ行(有川浩) | comments(4) | trackbacks(4) | 

『フリーター、家を買う。』有川浩

フリーター、家を買う。
フリーター、家を買う。
有川浩/幻冬舎
「母さん死ぬな―」へなちょこ25歳がいざ一念発起!?崩壊しかかった家族の再生と「カッコ悪すぎな俺」の成長を描く、勇気と希望の結晶。
ずいぶんと重たくダークな物語の入口に戸惑いつつもすごく感情移入して読んでました。
有川さんの作品はいつもいつも気持ちをぐわぁっと持っていかれてぐるぐる渦巻くのですが、今回は半端ないくらい感情揺さぶられました。
読み手それぞれ肩入れするキャラがいるかと思いますが、主婦である私の場合誠治の家庭事情や母の病は突き刺さるものが。
主婦は主婦なりに戦っているんだよなぁ。でもなかなかそれ分かってくれないし、吐露すれば愚痴とかになるし。
溜めこむと自分がどうなっちゃうのだろうか、とすごく怖かった。

誠治の(まぁちょっとだけど誠一も)見違えるほどの成長ぶりが眩しい。
そして千葉ちゃんと豊川くん!いや〜彼らの登場は救いでした。
千葉ちゃんの「間に合っている」って言葉、素敵!ぐっときちゃいましたわ。
豊川君目線の番外編が面白くて、今度は彼視点の続編なんかいいんじゃない?なんて。

読了日:2009年9月17日
かりさ | 著者別あ行(有川浩) | comments(2) | trackbacks(1) | 

『別冊図書館戦争1』有川浩

別冊図書館戦争 1 (1)
別冊図書館戦争1
有川浩/アスキー・メディアワークス
『図書館戦争』スピンアウト・別冊シリーズ第一弾!武闘派バカップル恋人期間の紆余曲折アソート!
覚悟はしていました。砂糖菓子ほどの甘さももう慣れっこになっているつもりでした。
でも、それがとんでもない間違いであったことを後悔しても時すでに遅しーっ!
結果、とろとろに溶けてしまいましたよ。
興味津々に身を乗り出し読んだかと思えば、「ぎゃーっ!」と赤面して仰け反り身悶え。
これを何度も繰り返してようやく読み終えました。ようやく、とは気持ちの問題でして実際には1日で読み終えてしまったんですが。何だかんだ言いながら私も結構こういうの好きなのか!?と自問してみたりして。答えは…如何に。

いい年した女がいちいち恋愛初心者の彼らに悶える図は自分で客観的に見ても恥ずかしいのですけど、もっともっと恥ずかしい人たちがここにいますから、もうたまりません。
でも確かに恋愛って幸せも喜びもあるけれど、反面常に不安が付きまとっているんですよね。この幸せがいつか終わってしまう不安、好きな人がいつか離れてしまうんじゃないかという不安。それはもうきっと恋した人ならばうんうんと大いに頷くことでしょう。
そしてあの山猿とまで称された郁がなんとも可愛くなっております。そしてその郁を可愛くした堂上がこれまたくぅ〜っと胸ときめくカッコ良さ。
これだけ大事にされたらもう女としたら最高でしょう。

今作では良化隊との絡みよりも人物に焦点を当てていてそのそれぞれの恋愛模様が描かれています。そして今回の主人公は郁と堂上。『図書館革命』のその後、あのラストに至るまでの紆余曲折が描かれています。正に紆余曲折。よくもまぁこんだけいろいろとやらかすなぁ、ってくらい盛り沢山な内容になっています。そのどれもこれもが読んでいるこっちが恥ずかしくて赤面してしまうくらいのもので、帯の「恋愛成分が苦手な方はご健康のために購入をお控えください。」は非常に適切なかつ丁寧な案内であることに読み始めて納得するのでありました。

図書館で日常的に起こる事件も各章ごとに描かれており、そのどれもがやはり考えさせられるものであり、ベタ甘ではあるけれどここはやっぱり有川さん、ただじゃ物は書かないよ、って粋なとこが好き。中でも4章「こらえる声」は衝撃でした。今や日常のニュースでも良く聞く問題ではありますが、その衝撃度は息を呑むほどでありましてあやうく私まで泣きそうになりました。リアルに響いてくるのは同じ母親として、男の子を育てた(しかもかなりのわんぱく坊や)者として気持ちは分かる、分かるけど…と理解の出来ない行動に胸が苦しくなりました。また男の子の気持ちを思うと。で、最後にまた泣きそうになりました。最初の感情とはまた違ったモノの。

それにしても名言があちこちに散らばっています(主に堂上)。それをかき集めて一人堂上萌えしていたい気持ちが高まります。変態です。
だって、あんなことこんなこと恋する乙女にしたらもう嬉しいことを、さらっと言ってくれちゃっているんですもの。そしてどんだけ愛されているか、大事にされているか、それが手に取るように分かるんですもの(郁には伝わらない部分があるようですが、それは郁だから(笑)そこがまた可愛いところ)。柴崎がちょっと羨ましい発言するの、分かります。

さて、次は誰のお話しが読めるんでしょうか。それを今から少々慄きながらも興味を持って…いや、楽しみに待つことにしましょう。
もうちょっとやそっとじゃ仰け反らないぞ!…たぶん。
かりさ | 著者別あ行(有川浩) | comments(14) | trackbacks(6) | 

『図書館革命』有川浩

図書館革命
図書館革命
有川浩/メディアワークス
「メディア良化法」が成立・施行され、超法規的検閲に対抗するため、図書隊が「狩られる本」を守っている現代。ある日、敦賀原子力発電所が深夜に大規模な襲撃を受けた…。図書館戦争シリーズの完結編。
ああ、残すところあと1冊。これで彼らともお別れ。寂しいなぁ。
などと寂しがりながら読み始めたらそんなしんみりは一気に忘れ去り、今までに無い吸引力で引っ張られ引き摺られ作者じゃないけどこっちもボロボロになりながら一気読み。
あまりに素敵なラストが用意されていて清々しい気持ちで読み終えて、はたと気がついたら寂しい気持ちなんてどこへやら。作者のあとがき読んで有川さんと全く同じ気持ちでスッキリと読み終えることが出来ましたわ。
ここから感想に入りますが、少々(いや、かなり)興奮気味でありまして物語のネタばれはしないよう心がけてはおりますが、なんせ興奮気味でありますのでポロッと吐いてしまうやもしれません。また先入観を与えてしまう恐れもありますので、どうか!未読の方はその辺ご容赦を。

まず冒頭からダイナミック。ここから何が待ち受けているか少々不安を覚えながら読み進めるとその不安はこれまでにないくらいの大打撃となって図書隊面々と作家・当麻蔵人を巻き込んでいきます。
ま、それはちょっと置いておいて。
そんな冒頭から一変。甘い甘い場面が展開されておりまして。キャー!とこっちまで恥ずかしがりながら読んでましたよ。郁ったら女になったのねぇ、こんなに乙女になっちゃってもうもう読んでいるこっちが赤面してしまうわ!とそれはそれは悶えておりました。
けれども、カミツレデート実現して良かったねぇ、とほのぼのしていたのも束の間、一気に不穏な空気に包まれてそこからノンストップ!次々と襲う難問にもうページ繰る手を止められず。これ、アクション映画として映像化したらさぞ見応えあるだろうなぁ、自衛隊と図書館の協力で撮影したら絶対面白い図になるなぁ、などと頭のこっちで考えつつ、中盤からの堂上・郁・当麻からもう目が離せませんでした。
思いがけない展開に次ぐ展開。容赦ない良化委員からの襲撃。前作の感想で「良化委員側の言い分もあるはず」だなんて書いたけど、それ撤回!彼らに何の言い分があるものか、こんなやつら蹴散らしてしまえぇぇ!ともんのすごく熱くなってまして。そのくらい最終巻である「革命」はすごかった。秀逸でした。
(そうそう、大型書店の店長さん!店長さんにはもういちいち感動してしまって…。なんて機転の利く人なんだ!と。彼のおかげでどんなにか郁たちが助けられたことか。)

またこれまでのキャラがとても活きていて、それぞれの味がちゃんと最高の形で読み手に差し出されて、こちらは「美味でございますぅ〜」と堪能し、大満足。
特に柴崎はカッコ良かったなぁ。彼女の聡明さが存分に描かれていて気持ちよかった。手塚との今後も良いものとして期待できそうだし。手塚はねぇ、最初のイメージとはどんどんかけ離れて今じゃ可愛い男の子そのもの、ですな。その手塚の兄も今回はさらに聡いところを見せてくれてそれが憎まれ役から少し和らいだ形となって、うん、いい具合に風向きが変わってきたな、と安堵。まぁ彼のやり方は相変わらずエゴの元に成り立っているんだけどそこも彼の味、として受け入れることが出来たのは読み手である私も成長したか。それにしても手塚兄、爆弾抱えていたその大変さを露ほども見せないところなんぞその強い精神には逆に感心してしまう。
そしてやはり一番素敵だったのは稲嶺顧問であります。良化委員に放った稲嶺顧問のあの言葉。かなり強烈に響いて思わずぐっときてしまいました。その穏やかな人柄に隠された、いや隠さざるを得なかったその強固な精神。それを改めて見せられて凄みを感じました。忘れられない印象的な場面。

今回は作家狩りという言葉に恐怖心を抱いてしまいましたが、それ以上に怖かったのはたとえ作家狩りが起きても本を読まない者にとっては関心事ではないということ。
玄田の「本を読まない人間にとって当麻先生の事件は他人事だ」という言葉は重たく、また核心をついていて、だからしばしこれを反芻し考えてしまう。
本を読まない人にとったら本狩りとか作家狩りとかもしかしたら些末なものなのかもしれない。作家の一人くらい、って思うかもしれない。何よりもこれが恐怖で、また考えさせられたこと。
だからその後に続く「奇貨は俺たちが取るぞ」という言葉、その提案、実行は天晴れ!と拍手もの。玄田はもちろんすごいが、これを書いている有川さんがもう素晴らしくて、このシリーズ読んでいて何度「上手いなぁ」と思ったかしれない。今回はその上手さを特に実感して読んだものだからもう気持ち良いこと。有川さんだから大好き。

さて、忘れてはなりませんね。郁&堂上のこと。
これは一体何のお仕置きですか!?と問いたくなるくらいそれはそれは甘い砂糖菓子を食べさせられて、胸焼けしてしまいそうな展開がこれでもか、と待っていてその度にきゃぁきゃぁ恥ずかしがっていましたけど、さぁこの二人の結末は…。まさかまさかこんな素敵なラストを用意されていたなんて!今までのどうしてくれようかってくらい悶えさせられてましたけど、それも許せちゃうくらいの。
だからね、寂しくなかったの。読み終えたときの気持ちが清々しかったの。

この「図書館」シリーズで私たちが普段気にも留めてなかったこと、自分に関わりのないことには徹底して無関心だったこと、知らないってこんなにも怖いことなんだってことをいろんな形で教えてくれました。それを押し付けがましくなくまた飾らずストレートにぶち込んでくる有川さんにさらにさらに惚れ惚れ。もう有川さんが作家になってくれて良かった、って心から思いますもん。これは大袈裟でなく。
そしてそして徒花スクモさんのイラストも素晴らしかった。表紙が毎回楽しくどこにどんな伏線が描かれているかじっくり見ていました。
…ああ、でも寂しくない、って書いたけどやっぱり寂しいな。相変わらず彼らはドタバタやっているんでしょうけどね(笑)

4月には『別冊 図書館戦争』が出るそうで、こちらも楽しみ♪
(調べたら「別冊 図書館戦争機廚辰討覆辰討董△△蕁もしかしてシリーズ化?)
4月10日スタートのアニメ「図書館戦争」も当然見ますぞ!

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かりさ | 著者別あ行(有川浩) | comments(18) | trackbacks(9) | 

『図書館危機』有川浩

図書館危機
図書館危機
有川浩/メディアワークス
王子様、ついに発覚! 山猿ヒロイン大混乱! 玄田のもとには揉め事相談、出るか伝家の宝刀・反則殺法! そして、山猿ヒロイン故郷へ帰る!? 終始喧嘩腰で「図書館戦争」シリーズ第3弾、またまた推参!

前作『図書館内乱』のラストで「ええーっ!どうなっちゃうの!!は、早く続きを…」と身悶え、パタンッと倒れ伏してから数ヶ月、念願の3作目『図書館危機』が出ていそいそと買い、いそいそと読み始めたものの数ページ読んだところで止まってしまってから早1年。
え!?もう1年経ったのか!と軽くショックを感じながらこんなにも間を空けてしまって、さてまた何の支障もなく入り込めるのかどうかいささかの不安を感じながら読み直してみたらば。そんな杞憂どっから生まれていたの?ってくらい、ふふんと鼻で笑っちゃうくらいなんてことなくつるつる一気読み。
昨年はいろいろ気忙しいことが山積みでだからこんなに気持ち良く入り込めなくて今読んだというのは実にいい時期だったのかも。とにかくまた図書館シリーズを堪能することが出来て嬉しい。

郁のドタバタが少々苦手な私としては彼女のはらはらな展開がもう心臓に悪くて胸押さえながら読んだものだけどいや〜成長するものだわね、考えるより即行動の彼女もちゃんと学習して立派に成長してましたわ。それにホッとして胸を撫で下ろし安心して読めたかどうかといったらそれは否、でありまして。
いつになく激しい攻防戦にこれはもう痛みが激しく、これは架空のお話しでリアルじゃないんだから、と頭でわかっていてももしもこれから先こんな社会になってしまったら、実際に行われるようになってしまったら…なんて読みながら憤るよりもむしろ闘う彼らの姿が痛々しく息苦しくなってしまった。
狩る側と守る側、そのどちらも使命感を持って任務を遂行するだけでその志が高ければ高いほど痛々しさが増してどうしようもなかった。
そして図書隊VSメディア良化部隊の攻防戦を読んでいて引っ掛かりを感じてしまったのもごく自然なことなんではないかと思うのだけど…この作品ではあくまでも視点は守る側であり、狩る側「良化委員」の視点では一切語られず、だから読み手は両天秤にかけることすら叶わない。当然ながら良化側にも言い分はあるわけでそれは至極全うなものとして語られるはずで読み手の性質によってどちら側に傾くかそこから議論が生まれることも面白い試みなんじゃないか、とちらっと考えてしまうのも正直なところだけどこれはきっと有川さんの意図することであって、徹底して片面側だけに視点を当てることによってエンタメとしてより面白さを増しているのかも、しれないなぁ、とこれは勝手な解釈。
善悪をはっきり分けることによって正義感というものはより色濃く浮かび上がるのだから。だからその正義が勝ったときの高揚感というものは気持ち良く巡るのだから。

今作で一番興味を持って読んだ放送禁止用語。まさかそうだったの?!これって作品上だけのこと?と調べたらやはりリアルにそうみたいで。時代背景によるものとしても実際にその職業で生活している人もいて、その仕事に誇りをもっているわけで。それを提起する有川さんのメッセージを真摯に受け止め読みました。

そして稲嶺司令の勇退。彼が登場すると場の雰囲気がガラッと変わって身が引き締まる思いがします。彼の歴史を辿るたびに熱い思いが溢れてきます。徽章の印、カミツレの由来もだから頷けます。勇退の日に手にした花。そこに込められたさまざまな思い。とてもいいラストでした。
もう一人、玄田。この人の頼れる豪快さには本当に惚れるのだけど(こういう男気のあるタイプには弱いのだ)、惚れながらもちょこっとはらはらしてしまうのも正直なところで、今回ばかりははらはらを通り越して息が止まりそうになってしまった。止まりそう、というか実際あの瞬間は止まってたかも。でもね、大変な事態にはなったけどこれで愛する人折口さんとの気持ちがまた通じ合えたことだし、良かったかな(いや、良くないなやっぱり。あんな無茶しないで欲しいよ)。

さて、ここでは書かずにおれないでしょう、郁&堂上。もう読みなれたはずなのにさらに恥ずかしい展開を書いてくれちゃうものだからもう〜悶えっぱなし。しかし堂上よ、あれは恥ずかしいぞ。「…ぽん」って、もう書くのもまた身悶えてしまうけど、体がむず痒くなってしまうけど、あれはねぇ「ひぃぃぃ!」と引いてしまいましたわ。もう好きにしてくれ、郁とどうにでもなってくれ、と少々自棄になりながらもまぁこの二人の今後を楽しみに最終巻を読むことにしよう。

最初に郁の成長ぶりを書きましたけど、もう一人成長した人と言えば手塚。兄と関わることすら拒絶していた手塚がある人のために譲歩することを学んで実行していく。譲歩というほど打ち解けはしないけどあれは彼にとったらものすごく勇気のいることでそれを出来たということはどれほどの強い思いを彼女に向けているかということで、郁&堂上よりもむしろ手塚たちを応援してしまいたくなるほど素直じゃないけど何となく風向きがいい方向に吹き始める微笑ましさを感じつつ、さてこの二人の行く末もいかに?とやっぱり身悶えながらもラブはいいわねぇ、と本を閉じいそいそと『図書館革命』を開くのでありました。
さて、カミツレデートは実現するのだろうか?

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かりさ | 著者別あ行(有川浩) | comments(16) | trackbacks(9) | 

『阪急電車』有川浩

阪急電車
阪急電車
有川浩/幻冬舎
恋の始まり、別れの兆し、そして途中下車…。8駅から成る、片道わずか15分間の阪急電鉄今津線で、駅ごとに乗り降りする乗客の物語。電車は、人数分の人生を乗せて、どこまでもは続かない線路を走っていく―片道わずか15分。そのとき、物語が動き出す。
阪急電車というとチョコレート色のレトロでかわいい電車、というイメージ。
今や高校生、中学生に成長した息子たち、幼児の頃は電車オタク!というくらいの電車好きで毎日毎日飽きもせず電車ブックを眺めていて、当然のことながら付き合わされる私も自然に名前など詳しくなっていくわけですが(今はもうすっかり忘れちゃいましたけど)、新幹線好きな彼らをよそに私が惹かれたのが阪急電車のレトロな佇まい。
チョコレート色がかわいくて、またその写真の図がチョコ色電車と繊細に揺れるコスモスの組み合わせでこれがまぁなんとも素敵で良く眺めていたもんです。

その、阪急電車今津線に乗り合わせる面々の個々の恋愛を描いた『阪急電車』。
いや〜これがとっても素敵でした。読みながらドキドキ、キュンキュン、忙しく胸の鼓動を高鳴らせておりました。有川さん、いつもながらいい仕事してます。しかもこの構成が上手くて読んでいてこれほど心地良いとは。この本に費やす時間のなんと充実していることか。
ちょこちょこ読むつもりが見事に引き込まれてしまって一気読み、でした。
ローカルな(と書いちゃっていいの、かな?)今津線を舞台にしたことで乗客同士がよりぐっと接近して出会いの可能性も大きくする、この設定が実に上手い。

往路でポツポツ置かれた素材を折り返しから以降、復路でどう料理されていくのか、それが楽しみで楽しみで、それがまぁこちらの「こうなるといいな」という思い通りに進むものだから嬉しくて嬉しくてにやにやが止まらなくて、そうこうするうちにえっちゃんと彼氏のところで(復路の部分ね)何故だかぽろぽろ涙が出てきちゃって止まらなくなったり。アホな彼氏だけど優しいなぁ、こんな大事にされるってえっちゃん幸せだなぁ、なんて思ったらもうツボに入ってしまったんでしょう、止め処なく、でした。
ゴンちゃんの可愛らしさにも思わずくぅ〜っ!なんて可愛いんだ!と悶えたり。
他の登場人物にも思い入れあって、書きたいのだけどここはぐっとこらえて(笑)

有川さんはスイートだけでなく、ビターもちゃんと用意しています。中州に描かれた「生」という文字。私も「生」だったら「生ビール」と即座に思ってしまう人ですが、この「生」にはとある願い、祈りが込められていたのですね。

これからの私の人生で今津線に乗ることがあるかどうかわかりませんが、もしもそれが叶ったらこの片道15分窓からの風景を飽くことなく眺めてみたい。チョコレート色の電車がなじむ風景がどんなだか見てみたい。
そして気の向くまま駅に降り立って散歩してみてもいいかな。

読了日:2008年2月19日
かりさ | 著者別あ行(有川浩) | comments(22) | trackbacks(16) | 

『クジラの彼』有川浩

4048737430
クジラの彼
有川浩/角川書店
「沈む」んじゃなくて「潜る」。潜水艦とクジラと同じだから。
人数あわせのために合コンに呼ばれた聡子。そこで出会った冬原は潜水艦乗りだった。いつ出かけてしまうか、いつ帰ってくるのかわからない。そんな彼とのレンアイには、いつも大きな海が横たわる。恋愛小説作品集。

いくつになっても身悶えるようなベタ甘ラブロマが好きなんだなーと今回改めて実感。いい年した大人が…なんて誰が決めるんだ!好きだっていいじゃないか!あんたも好きなら隠さずガンガン読めばいいさ、と妙に力んで読んでしまった。あ〜良かった!素敵だった。

「クジラの彼」「ロールアウト」「国防レンアイ」「有能な彼女」「脱柵エレジー」「ファターパイロットの君」6編の短編集。
自衛官の恋愛を描いた本書、実は個人的ににんまりする部分もあったり(笑)。有事には家族や恋人のことよりも国防優先で駆けつけねばならない自衛官との恋愛は確かに覚悟と勇気が必要なのかも。会いたいときに会えない、いますぐそばに来て欲しいと願ってもなかなか叶わない。特に表題作「クジラの彼」や「有能な彼女」のような潜水艦乗りとの恋愛はかなりきつそう。でもその分強く繋がれた糸はなかなか切れることはなく。そんな互いの愛の深さとか、不器用ながらもその愛を精一杯育む様とかいちいち感動して読んでいた。その愛の形はさまざまでそのどれもが素敵で「あ〜恋っていいなぁ」としみじみ。
自衛官だって普通に恋愛するものね。ただちょっと一般人とは違った恋愛経験が出来るのかも。

有川さんの開き直りっぷりが実に小気味良い作品。その甘さは想像以上。
いや、この甘さは悪くない。むしろ大歓迎。有川さん今後もついて行きますわ!

読了日:2007年3月8日


有川さんがあとがきに書かれていた『星へ行く船』。懐かしさのあまりおおーっ!と声に出してました。コバルトの中でもお気に入りだった作品。私もあゆみちゃんと太一郎さんにドキドキしておりました(私は有川さんよりちょびっと年上です)。あま〜いラブロマ好きは思えばあの頃から何ら変わっていませんわ。まぁあの頃よりは多少経験アリな今だから恋愛の奥深さにさらに酔いしれることが出来るんでしょうけどね。
かりさ | 著者別あ行(有川浩) | comments(10) | trackbacks(12) | 

『レインツリーの国』有川浩

4103018712
レインツリーの国
有川浩/新潮社
きっかけは「忘れられない本」そこから始まったメールの交換。あなたを想う。心が揺れる。でも、会うことはできません。ごめんなさい。かたくなに会うのを拒む彼女には、ある理由があった―。青春恋愛小説に、新スタンダード。

『図書館内乱』のエピソードで登場する本、『レインツリーの国』。『図書館内乱』の中で重要な道具として扱われた本が実際に刊行。有川さんにしては珍しく飛び道具なしの純粋なラブストーリー。それは純粋すぎるくらいなのだけれども、思わず読んでいて二人を応援したくなってくる一途な愛がここにはある。

『図書館内乱』を先に読んでいればここに登場するヒロインの抱える問題がどんなものかわかっているから、感情移入もしやすい。現にここに感情移入しまくりの人間が一人。だってどういう展開になってどう落ちるのかある程度は読めてしまうもの。それでも感情を揺さぶられて私はおいおいと号泣してしまったのだ。何でこんなに泣いてんの?と訳が分からん自分がいながらも実際は涙と鼻水でひどいことになっているのだから、余計訳分からん。「もう〜これめちゃくちゃ良かったわ〜」「絶対いいから読んでみて!」なんていう大げさな感動を得たわけではない。なのに沁み入るものがある。決してヒロインの障害に同情しているわけではない。事実ここでは同情させてやろう、という描き方はしていないのだから。

ひょんなきっかけ…本当に何気ないきっかけで自分の価値観を人生でさえも変えてしまうことがある。ネットでの関係性が希薄であると問われる一方でネットによって繋がりを強くし結ばれることだってある。たまたま昔夢中になった小説の誰かの感想を読みたくなってタイトル名を検索し、たまたまヒットしたサイトを訪れ、そこの管理者の感想に強く共感し、この人に自分の思いを聞いてもらいたい、それだけで送信した一通のメールから繋がる縁もある。メールのやり取りをしていくうちにこのモニタの向こうにいる人物を勝手に思い描くようになる。次第に会いたい気持ちが高まる。会うことを提案するが意外にも相手は拒む。何故?じゃぁ電話だけでも…そこはスルーされ結局は会うことを承諾してもらう。実際に会った、その人のタイプも好みだった、お互いどうやら思いは一緒らしい。しかし…その相手の抱える問題が思いのほか深刻なものだったら?予想もしない重たさだったら?それでも芽生えた恋を育てる事は出来るだろうか。戸惑いつつもそれでも好きだという気持ち、けれども好きなだけでは乗り越えられない壁。その壁を打ち破るかのように文字対文字でぶつかり合う場面はただただ息を呑む。二人の姿はあまりに真面目で真っ直ぐでそして互いに一途で…胸を打つ。

『図書館内乱』のコラボ本ではあるけれど、こちら単体で読んでも全く問題なし。むしろこちらを先に読んでから『〜内乱』でもいいかもしれない。そのほうが数倍楽しめることだろう。この二人の今後も見てみたいな。純粋にそう思う。

読了日:2006年10月5日


全然関係ない話し。ここに登場する伸行が関西弁をしゃべるんですが(メールも関西弁!)それがすごく良くて、ときめいてました(笑)あの、方言っていいですよね。何で?って言われると上手く言えないのですけど、まぁなんとなく。地方に来てすごく思うのは方言があるとすぐ馴れ合えるような、そんな結束力みたいなもの。それがちょっと羨ましい。東京離れて何が辛いってこういう疎外感なんです。一人だけ標準語だと場が何となく違ってくるような。相手はみんなそうは思っていないようなのだけど、私はそう感じてしまう。そんな孤立感をヒロイン・ひとみが感じていることと一緒にするのは筋違いかな、と思いながらそんな時の自分とひとみを重ねていたりしていました。何とも言いようのない苦い思いが広がるのをどうにも抑えられずにいます。ああ、でもそんなことはひとみに比べたら些細な事だな。うん。

純粋な恋愛小説だけど、それだけじゃない。認識を変えさせてくれることは確か。なぜ有川さんがここまで熱意を込めてこの作品を書いたかはちゃんとここで分かりますので、それも含めて読んでみてください。素敵な作品を書いてくれた有川さんに感謝。
そして…ちゃんと落ちのあるところでにんまり。さすがだ!
かりさ | 著者別あ行(有川浩) | comments(27) | trackbacks(18) |