ひなたでゆるり

読書のコトとちょっぴり日々のコトブログ

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『蟋蟀』栗田有起

蟋蟀(こおろぎ)
蟋蟀
栗田有起/筑摩書房
魅力が暴走している!?
生き物をテーマにした10の物語集。手を握ったひとの未来が見える占い師の身に起こったこととは?(サラブレッド) 優秀でかわいい秘書は、研究室に大きな水槽を持ち込んだ(あほろーとる)。夫の出世で住むことになった社宅には不思議なサークル活動が(猫語教室)。などなど、面白さてんこ盛りの栗田有起ワールド。
泣いて、笑って、びっくりして、しみじみして、夢中になって、幸せになる。
ああ、栗田さんの世界だ。このへんてこりんでユニークな世界に今回も魅了されました。突き放されそうで、でもすぅ〜と寄り添いぴたりと肌に吸いつく感覚がとても心地良い。
ずっと漂っていたい気分。

何となくね、川上弘美さんの『神様』を思い起こさせて、『神様』が大好きでたまらない私なので同じ匂いのする『蟋蟀』はこれまでの栗田作品のナンバーワンになる、かも。
ああ、でも『オテルモル』も好きだしなぁ、『ハミザベス』の「豆姉妹」も最高だしなぁ、順位なんてやっぱり決められないけどまぁ1番好き!って言えちゃうくらい好き、ってことです。つまりは。

どれもこれも好きなんですが、表題作の「蟋蟀」は秀逸!素晴らしい!
だって主人公の好きな女がね、そうとは思わなかったし、この女性がねとっても素敵な人でその背中は哀しみすら感じるのだけど、でも強い。強烈に惹かれます。
そして「ユニコーン」。私だったらこの体にどんな生き物(あるいは物とか)が宿っているのだろう。それはどんな様子でいるのだろう。なんてつい思ってしまった。
彼女の中に宿る馬、あるいは突如登場したあの美しい生き物、ハッとさせられる登場シーンが神々しくて魅せられる。

そうして他に虜になったものは「アリクイ」「猫語教室」「鮫島婦人」、そして「サラブレッド」の馬絵さん(笑)
馬絵さん可愛いなぁ。馬絵さんが登場したあたりから一気に栗田ワールドに染まりだして「おおっ!こ、これぞ!!」と興奮してしまったほど。
馬絵さんの人生を思うとすごく悲しいのだけど、でもいつかいつか願いが叶うといいね。

読了日:2009年1月20日
かりさ | 著者別か行(栗田有起) | comments(2) | trackbacks(2) | 

『オテルモル』栗田有起

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オテルモル
栗田有起/集英社
しあわせな眠りを提供する不思議なホテルの物語。
チェックイン、日没後。チェックアウト、日の出まで。最良の眠りを提供するホテルのフロントに職を得た「誘眠顔」の希里。閉鎖された家族関係にも変化が…。日常からほんの少し乖離した世界の物語。
オテル・ド・モル・ドルモン・ビアン…地下13階建ての会員制契約型宿泊施設。最高の眠り、最良の夢を提供するホテル。眠りが浅く、悪夢にうなされる方にピッタリのホテル。あ〜こんなホテルの会員になりたい、始終そう思いながら読みました。

はっきり言って私は夜に強いです。孤独癖もあります。あ、私ならここに就職出来る!でもいらいらはしょっちゅうするな、一日ずっといらいらし通しだもんなぁ。などとすっかり栗田さんワールドに入り込む私。読むごとに独特な世界に魅入られ、しばらくはぼぅっと浸ってしまう。そんな魔力(魅力?)が栗田さんの作品にはあります。

事情により就職活動していた本田希里は、見事オテルでの就職を果たします。その彼女の生い立ちは実に切ない。ある仕打ちを受けてもなお乱すことなく生活しているところが返って痛々しい。プツンと壊れる場面は切なさが増す。
双子の妹、沙衣の壮絶なまでの生き方に振り回されてきた家族は今やバラバラ。希里は姪である(沙衣の娘。その出産にまつわる話しがまたきゅぅっとなる)美亜とその父親との3人暮らし。沙衣は現在療養中。両親はそれに付きっきりの日々。希里や沙衣の夫のこと、沙衣の療養の理由など明らかになるにつれてあまりにも暗く彩られた背景に愕然とする。でもそのまま真っ逆さまに堕ちていかないのは明るくほんわかした優しさみたいなものが、暗い背景をさらに包んでいるからなのかな、と思う。微笑ましさが救ってくれているのでしょう。やがて平穏な日々が彼らに訪れるであろう予感を残しながら終えていくほんのり幸福感。

今回は長編でしたが、え?これで終わっちゃうの?と物足りなさを感じました。つまりもっと栗田さんの文体に触れていたかったのです。オテルのお客様のこと、希里の上司である外山さんのこと、沙衣の夫・西村さんの本音などまだまだ知りたかった。
眠るのが勿体無くてついつい夜更かしな生活が定着しているのですが(つまりは安眠が出来ない故の抵抗)、眠りって大事なんだなぁと思う。今夜はいつもより早めに横になり眠りを貪ってみたい。

読了日:2005年7月23日
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『お縫い子テルミー』栗田有起

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お縫い子テルミー
栗田有起/集英社
恋は自由を奪うけれど、恋しい人のいない世界は住みづらい。叶わぬ恋におちてしまった仕立て屋・テルミーの切なくも前向きな姿を描いた「お縫い子テルミー」と「ABARE・DAICO」の2作を収録。
驚いた。『ハミザベス』からこんなにも化けるものか。特に「ABARE・DAICO」が秀逸。素晴らしいです。あ、順番にいきましょうかね。

お縫い子テルミー
「一針入魂 お縫い子テルミー」な16歳の鈴木照美は流しの仕立て屋。自分の家を持たずその時のお客さんのところに居候させてもらい生きている…何とも奇抜なお話し。流しの仕立て屋?まずここからして面白い発想。そしてシナイちゃんへの片思い。男は知っているけど恋するのは初めてな(これがまたすごい話しなんですけど…)テルミー。その叶わぬ恋に苦しむテルミーが切なく愛おしい。私も布好きなので、これ!という布に出会うともうこれをどうしてくれようか…と愛しくてたまらなくなるのです。でもテルミーと違うのはええいっ!と鋏を入れられないこと。しばらく眺めて寝かせてようやく決心して鋏を入れ、形にするのです。で、端切れは同じように捨てられない。パッチワークにするため一枚の布を切り刻み、そっから端切れが出て、また違うパッチワークの作品に仕上げてみたりする。これがもうたまらなく好きな作業。もう好きっていうんじゃなくほとんど生活の一部、私の人生の一部になっている。パッチワークはテルミーのような洋裁とは違うけど、手縫いというところでは共通点があり、そして一針一針への思いも共感出来てもう途中から思いっきり入り込んで読んでいました。
ありそうでなさそうな物語の発想が栗田有起さん独特ですね。やー、私この独特な世界に溶け込んでしまったみたいです。

ABARE・DAICO
小学5年生の小松誠二が主人公。体操着を失くしてしまい途方にくれる。母親に言いたくても母子家庭ゆえに苦労している母にはとても打ち明けられない。さて、悩んだ末に彼が起こした行動とは?その先に待っている事件とは?これは表題作よりも秀逸な作品(と私は絶賛する)。ひと夏の体験って子供を成長させ、これからの人生の礎にもなると思うのだけど、まさにこの小松くんのひと夏は確かな成長の種になったんだろうなぁ。妙に大人びているところもなかなか面白い。
少年の心をとても良く描いています。暗そうに思える設定なのだけど、そんな暗さは微塵も感じさせず真夏の太陽のように明るくカラッとした印象。それでいて爽やかな読後感。読みながら何故か舞城王太郎さんの文章を思い出していました。リズミカルな文章がそう思わせたのかもしれません。
栗田さんの作品は『ハミザベス』収録の「豆姉妹」でも感じましたが、表題作よりももう一編のお話しが秀作なんですよねぇ。迷いなく潔い文章がなかなか心地良いです。

ところで、うちにも小学5年生の息子がいます。でも明らかに同じ年とは思えません(笑)小松くん、あんたはすごいよ。

読了日:2005年7月1日
かりさ | 著者別か行(栗田有起) | comments(8) | trackbacks(7) | 

『ハミザベス』栗田有起

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ハミザベス
栗田有起/集英社
20歳目前のまちるは母と二人暮らし。死んだと聞いていた父が、今度は本当に死に、マンションの一室とハムスターが転がり込んできた。明かされる出生の秘密と淡い悲しみ。
第26回すばる文学賞受賞作
初めて表紙を見たときあれ?と思った。江國香織さんの『ホテルカクタス』のイラストに似ている!確認したらやはり佐々木敦子さんが担当されていました。この螺旋階段の描き方、ゆらゆら目眩を起こしそうな妙な歪み具合が好きです。

さて、『ハミザベス』。タイトルに?と思ったのですがそういうことですか〜。ここで登場するあかつきさんという女性がなかなか素敵。ちょっと不思議な人なのだけどそれはちゃんと後半で明かされる。そしてまちるの父という人も不思議な人だったのだ。この辺りはちょっと笑える。こういう発想するのか!って。いやいやかなーり好きですよ、こういうの。淡々としてそうなんだけど所々ふっと笑みがこぼれるところもありユーモア溢れる作品。

ユーモアといえば同収録の「豆姉妹」は実にユニーク。お姉さんが突然看護師を辞めて転身するんですよ。その転身先がそうくるか!という職業(職業なんですかね、これも)。こういうストーリーをサラリと書いてみせるさり気なさがこの作家の才能なのか。
初栗田作品だったので、一体どんな作風なのかドキドキしましたがかなり好みな作家さんです。注目ですよー。

読了日:2005年6月30日
かりさ | 著者別か行(栗田有起) | comments(4) | trackbacks(6) |