ひなたでゆるり

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『絵で見る十字軍物語』塩野七生

絵で見る十字軍物語
絵で見る十字軍物語
塩野七生/新潮社
21世紀にもつながるキリスト教vs.イスラム教、対立の原点。聖地奪還のための大遠征はどう始まり、どう戦われ、どう破綻したのか。美しく精緻な版画に付した簡潔な短文で描かれる十字軍史、最高の入門書。

まさに絵で見ながら十字軍史を辿るとても美しく贅沢な書。
これから長きにわたり書かれる『十字軍物語』への序曲として大変楽しめました。
挿絵画家ギュスターヴ・ドレの絵に塩野さんの簡潔な説明文、地図も添えられて1ページ1ページじっくりと向き合えます。
とにかくドレの絵が殊更に美しい。
気がつくと本引き寄せて読み耽ってしまうほど魅入ってしまいます。
特に「サラディン、登場」の颯爽たる場面は素晴らしく惹き込まれてしまう。

強き闘う女、重なり合う屍たちのその表情、時に凄惨に時に神々しく、光と闇のそれぞれの美しさ。
さあ『十字軍物語』へ一歩踏み出すとしましょう。

読了日:2010年10月5日

【関連サイト】
十字軍物語シリーズ(『十字軍物語』(全4冊)) 新潮社
かりさ | 著者別さ行(その他) | comments(0) | trackbacks(0) | 

『チューバはうたう』瀬川深

チューバはうたう―mit Tuba
チューバはうたう
瀬川深/筑摩書房
チューバ。でかい、重い、音がやたらと低い。この世に楽器はあまたあるのに、なんで私はこんなものを吹いているんだろう──。チューバのごとくでかく、不器用で無愛想な女子が、いつしかこの楽器の音に魅せられ、音楽にのめりこんでいく。そして訪れる奇跡の夜! 音楽のようにうねる文体が選考委員からも絶賛された受賞作に、渾身の書き下ろし作品「飛天の瞳」「百万の星の孤独」を併せて収録。

「チューバはうたう」「飛天の瞳」「百万の星の孤独」3編の短編集。

いや〜とても良かったです。
表題作の「チューバはうたう」は主人公の変わりゆくさまが劇的。
とはいえ、物語はとても淡々としているのだけど次第に沸々と湧く情熱が、それが湧き起る場面が素晴らしく良い。
こちらまで興奮してしまいましたわ。
次男が吹奏楽部に所属していて彼はパーカッションなのでなんら関係のない楽器ですが、チューバ担当が次男の同級の女子。なかなか複雑な思いでチューバを吹いているようですが、その思いと主人公の心の声が重なって思い入れ強く読みました。
片田舎の中学時代の思い出…彼女もきっとそんな風に今を思い返す時があるのかも、と思うと胸いっぱいになりました。
チューバ吹きってめちゃくちゃカッコ良いんですわ。特に女の子が吹いていると。羨ましいくらいに。

もう1編「百万の星の孤独」、遠く存在する星たちに思いを馳せる人々。
これは秀逸。好きです。
ここに登場する、赤瀬川怜仁が読んでいた本って未読なんですが、星ってことで興味があります。

読了日:2009年4月8日
かりさ | 著者別さ行(その他) | comments(0) | trackbacks(0) | 

『ねむり姫』澁澤龍彦

ねむり姫
ねむり姫
澁澤 龍彦/アートン
なんの前ぶれもなく、眠るがごとくに珠名姫がみまかったと思われたのは彼女の14歳の年であった。夜のように深い昏睡の底で、姫はそのとき深海魚の夢のような夢を見ていた…。短編を幻想的な大人の絵本につくり上げる。

澁澤さんの紡ぐ幻想世界と、野村さんの美しいオブジェが見事に融合された本です。
なにものにも染まっていない乳白色の世界が広がりそれはあまりに濃厚でむせ返るほど。
眠り続けるお姫様の夢は昏々と深く深く沈みゆき、一緒に落ちてゆく感覚。
美しいです。

読了日:2009年3月6日
かりさ | 著者別さ行(その他) | comments(0) | trackbacks(0) | 

『庵堂三兄弟の聖職』真藤順丈

庵堂三兄弟の聖職
庵堂三兄弟の聖職
真藤順丈/角川書店
庵堂家は代々、遺体から箸や孫の手、バッグから花火まで、あらゆる製品を作り出す「遺工」を家業としてきた。長男の正太郎は父の跡を継いだが、能力の限界を感じつつある。次男の久就は都会生活で生きる実感を失いつつあり、三男の毅巳は暴走しがちな自分をやや持て余しながら長兄を手伝っている。父親の七回忌を目前に久就が帰省し、久しぶりに三兄弟が集まった。かつてなく難しい依頼も舞い込み、ますます騒がしくなった工房、それぞれの思いを抱く三兄弟の行方は?
第15回日本ホラー小説大賞大賞受賞作。

ホラー小説大賞受賞作ということで、もっとどろどろしたグロテスクで恐ろしいものを想像していたんですが(だから少し腰が引けていたのですが)、恐怖感というものは一切なく、むしろ好意的にするすると淀みなく読みました。
いちいち長男・正太郎の仕事ぶりを事細かに想像してしまうとちょっとあれなんですが、その行為の向こうには優しく温かな故人への思いがあってそちらのほうに気持ちが寄り添い愛を感じてしまいました。
聖職とはまさに!です。

読み終えてじんわりしみじみ出来て読後感も良かったです。
次男はもっとはちゃめちゃな人格を勝手に想像してましたが…。
それでもこの三兄弟好き。続編を是非書いて欲しいわぁ。

読了日:2008年11月3日
かりさ | 著者別さ行(その他) | comments(0) | trackbacks(0) | 

『100万分の1の恋人』榊邦彦

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100万分の1の恋人
榊 邦彦/新潮社
livedoor BOOKS 書誌データ / 書評を書く
「私は、0.0001%の運命を背負って生きているの」――大学院で曾根崎心中を専攻する僕に、幼馴染の恋人はある秘密を打ちあけた。サヨナラを言えば、2人は幸せになれるかもしれない……それでも僕の心はこう叫ぶ。絶対に、彼女じゃなければ、ダメなんだ。今すぐ大好きな人に会いに行きたくなる、極純のラブストーリー。
第二回新潮エンターテインメント新人賞受賞作。
もしかするとここに引用した帯の紹介文で手に取った人は誤解を受けるかもしれない。難病を背負った恋人との切ないやり取り、号泣もののラブストーリー、なんて思ってしまうかもしれない。読めば分かる。ラブストーリーなどという言葉では語りつくせない深い深いものがここにはある。泣かせようなどと同情的なものは一切なく、真摯に病気に向かい合う恋人とその家族の物語。

普通に恋愛して、その恋愛の先に結婚を意識して、家族を作ってつつがなく幸福に暮らしていくことを、それを当然のこととして未来図を描いていたのに。その恋人から遺伝率50%の難病であることを告げられたら。告げられたらどうなるだろうか。ここではその苦悩が切々としかし淡々と綴られる。この静かな流れが逆に深刻なものとして読み手も受け止めていく。そうしてもしもこれが自分だったら、恋人だったら、夫だったら、子供だったら…。必ず当てはめていくだろう。けれどもそこに答えは絶対見つからない。当事者でさえそれは答えのないどこまでも続く道なのだ。
黒か白か。裏か表か。発症するかしないか、これは地獄の宣告であろう。

暮らしの中で何か一つでも気がかりが生じるとずっとそのことが気になって、一時忘れてもまた考え塞ぎこんでしまう。それが数日続くだけでも私は参ってしまうのに、これがずっとずっと何年もいや一生続くのかと思うと…想像出来ない。それを思うと彼らの苦悩は計り知れない。恋人・ミサキと一緒に背負って生きていくことを選択するか、否か。ある程度の未来像を描いていただけにそれがひび割れてゆっくりゆっくりと剥がれ落ちていくさまが見えるようで、苦しい。そのひび割れは綺麗に修正することが出来ないかもしれないけれど、それでもこの人と人生を歩きたいという気持ち、反して恋人の発病のことや遺伝性のこと、子供への影響、果ては家族に留まらず自分の親戚にまで及ぶ影響力などを考えてしまう恐怖感。この狭間で揺らぐ主人公の心情が起伏無く淡々としていることにかえって戸惑いと悩みの深さを感じられて、逆に迫ってくるものがあった。そこに作者の誠実さが見えて好感を持った。

しかし、遺伝子検査を受けず「灰色の私を生きる」と言うミサキと、ミサキの病に対して真摯に受け止めようとゆっくりながらも理解を深めようと努力する主人公の温度差みたいなものが大きく感じられて、私はミサキに対して不誠実さを感じずにはいられなかったのは正直ある。…でも、もし黒だったら。陽性だったら。その怖い気持ちも確かに分かる。もう一方で灰色だからこそ未来がもしかしたらあるんじゃないか、とも思う。私もその間で揺らいでずいぶんと考えながら読むこととなった。

読みながら深い思考の中に沈んでみたり、家族のあり方や身近の大切な人を思ったり。いろんな意味でも読んで良かったと思う。しみじみと思う。

読了日:2007年4月16日
かりさ | 著者別さ行(その他) | comments(6) | trackbacks(4) | 

『スラムオンライン』桜坂洋

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スラムオンライン
桜坂洋/ハヤカワ文庫
Aボタンをクリック。ぼくはテツオになる−現実への違和感を抱えた大学1年の坂上悦郎はオンライン対戦格闘ゲーム<バーサス・タウン>のカラテ使い・テツオとして最強の格闘家をめざしていた。
いつもと変わらぬかきわりの青空、バーサス・タウンはいつも晴れている。ターコイズブルーの空にバターロールのような雲が浮かんでいる。頂点へと上るため今日もテツオは戦う。バーチャルの世界で。
リアルの世界とバーチャルの世界を比べたら社会や他人との煩わしい関わりよりも、自分の都合良く世界が回り現実よりもはるかに刺激のあるゲームの世界のほうが居心地が良いのかもしれない。そうしてバーチャルに飲み込まれ帰ってこれなくなる。本書はその狭間で揺れる青年の成長を描いているのだろうと思う。視点が曖昧ゆえ感じるものは読み手それぞれ違うだろうし、賛否両論ありそうな作品。面白いと感じる人もいればどこが?って人もいそうですね。私は肯定的なんです。リアルもバーチャルもわかるから。だから主人公悦郎の気持ちもわかるし、恋人(に発展しそうな段階ですが)布美子の気持ちもわかる。
面白かったのは、悦郎が彼の誕生日にディナーの予約をした布美子に「その日は予定がある」と断り、まさか別の女と…とショックを受ける布美子に「そうじゃない」と言いながらその理由を言えずますます誤解を受けてしまう場面。その日はバーサス・タウン最強の格闘家を決める武闘会があったのだ。もちろん最強をめざすために戦い続けてきた悦郎にとっては絶対はずせない訳。でもそれを布美子がわかってくれるか自信もない。「なにそれ?」と一蹴されるのを恐れている。自分の時間も大事、布美子も大切、ここでも狭間に揺れる男の子の不器用な恋愛が描かれていて実に微笑ましい。

ゲームってものすごい魔力があって、はまりだすとなかなか抜けられない。私もゲーム大好きだし、一時は(FF7やFF8の時代は特に)はまりにはまって現実に戻る時間のほうが少なかったくらい。ゲームをしない人には異様な生活だと思う。健全じゃないと思う。でもやっている本人はその過程いかにプレイするか、宝箱を一つ残さず開けるか、イベントを見逃さないようにするか、すごく重要なことでありどれか一つでも欠けたらそりゃぁもうショックで立ち直れないくらい。ただここで言っているゲームはゲーム機対自分のプレイなので、本書の舞台であるオンラインゲームとは異なりますが。ちなみに私はオンラインゲームは苦手です。ゲームで誰だかわからない人間と会話したり戦ったりなんて面倒だし煩わしい。だからもっと内に篭った陰湿タイプなのかも(笑)

バーチャル世界に行きっぱなしになりそうな悦郎はやがて布美子によってリアルの世界の楽しさも感じられるようになります。その辺りの変化が唐突でちょっと無理があるのですが、それでも二人の未来の先が明るそうで微笑ましい。人間がなぜ惹かれあうのか、違うタイプの悦郎と布美子が何故分かり合えないと感じながら惹かれてしまうのか、この辺りの記述は感動するくらい素敵な言葉が待っています。大学生よりは対人関係の経験も嫌と言うほど思い知らされている私も納得しながら読みました。
また布美子が悦郎がはまる世界を理解しようと懸命なのもいじらしく可愛い。そう、女は男を振り回すだけじゃなく、男の世界も理解してあげようと努力しなくてはね。
本書は読み方によっては深く掘り下げることの出来るなかなか深い作品なのです。

読了日:2005年7月14日
かりさ | 著者別さ行(その他) | comments(0) | trackbacks(1) | 

『ふたたびの虹』柴田よしき

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ふたたびの虹
柴田よしき/祥伝社
旬の素材を扱う小粋な小料理屋「ばんざい屋」。オフィス街という土地柄、独身のサラリーマンやOLに密かな人気があったが、女将の吉永には他人に明かせない過去が…。女将を取り巻く人々との心の触れ合いを描く。 [bk1の内容紹介]

光沢のあるピンクがかった装丁。その綺麗な印象のまんま最後まで惹きつけてくれます。いや、内容は決して綺麗事ではありません。主人公の女将自ら過去を背負って生きています。それを温かい目差しで見守る古道具屋の主人・清水。この二人の間柄というのが微笑ましい。酸いも甘いもかみ分けてきた、いい年をした二人なのだけどその初々しさがなんとも良い。そして小料理屋「ばんざい屋」を訪れるお客たちと女将とのやり取り、交流が生き生きと描かれています。そこには人間の苦しみ、辛さ、善きこと、悪しきこと、色んな感情が交錯する。女将との過去と絶妙に絡んできて、実に上手いです。登場する旬の材料や料理なども粋に描かれています。

人に想われること、ほのかな愛情、恋愛っていいなぁと思わせてくれました。恋愛ミステリー。連作集です。

読了日:2001年10月10日
かりさ | 著者別さ行(その他) | comments(6) | trackbacks(4) | 

『そら色の窓』佐々木美穂

そら色の窓
そら色の窓
佐々木美穂/PHP研究所
日々の美しい色に気づいたら、あなたの暮らしはもっと素敵になる。空をみて、月をみて、うれしいと思う…。そんな毎日のできごとを綴ったエッセイ。
『そら色の窓』読了。
イラストレーター・佐々木美穂さんのエッセイ。抽象的だけど温かなイラストは見るたび心をほっこりさせてくれます。日々の彩りをきちんと感じ取って自分の糧にする。出来そうでなかなか出来ないことを佐々木さんはサラリと美しくこなすのです。毎日をバタバタと過ごしている私にはただただ憧れの世界なのですが、2つ共感することがありました。
それは「空の色」と「冬の朝」。「空の色」は佐々木さんと同じく5階(佐々木さんは6階ですが)から空が見えるということ。「冬の朝」は紅茶好きだけど冬はなぜかコーヒーが恋しくなる。私の場合は娘片腕に抱っこして立ちながらインスタントコーヒーを飲むという何とも恥ずかしい光景なのですけれども…。そんな慌しい毎日をもう少し丁寧に暮らそうと思わせてくれた一冊でした。
かりさ | 著者別さ行(その他) | comments(0) | trackbacks(0) | 

『コズミック−世紀末探偵神話』清涼院流水

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コズミック―世紀末探偵神話
清涼院流水/講談社ノベルス
−今年、1200個の密室で、1200人が殺される。誰にも止めることはできない−1994年元日、マスコミ各社、警察庁、日本探偵倶楽部に、犯罪予告状が送られた・・・狂気の幕開け。
えーっとですね・・・結論からいいますと、私はこの作品非常に相性が悪かったです。とにかく周りでは賛否両論の嵐。さて、一体どんな感想を自分が持つのか、その辺に興味を持ち読んでみました。読んでみたんですけど、一体作者が何を言いたいのか良く理解できず、場面場面の切り換えなどにもついていけず、とにかく読むのに時間がかかりました。その上手く読み進めないもどかしさが常にあり焦燥感との戦い。そんな思いしてまで、読まなくても・・・との声が聞こえてきそうですが、いいえ!意地でも読みましたっ。もうこうなりゃ、何が何でも読んでやる〜状態で。
とか、書いていますが内容的には意表をついていて、面白い。キャラクター設定もはまりこめる要素有り。全体的にコミックという感が強かったです。突飛な発想は作者の天才がゆえに、凡人の私には理解しがたかったに違いありません。

読了日:1999年10月4日
かりさ | 著者別さ行(その他) | comments(0) | trackbacks(0) |