ひなたでゆるり

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『ふたりの距離の概算』米澤穂信

ふたりの距離の概算
ふたりの距離の概算
米澤穂信/角川書店
春を迎え、奉太郎たち古典部に新入生・大日向友子が仮入部することに。だが彼女は本入部直前、急に辞めると告げてきた。入部締切日のマラソン大会で、奉太郎は長距離を走りながら新入生の心変わりの真相を推理する!

古典部シリーズ5作目。
高校2年生に進級した古典部面々の成長、学生ならではの青春という爽やかさを感じながらも、ここは米澤さん独特のビターさもしっかり味わえて大変読み応えありました。
今回はマラソン大会という舞台で、ゴールまでの距離と彼女ら二人の距離を上手く絡めて描かれていていや〜お見事。
大きな謎解きの結末はとても寂しいものであったけれど、それぞれが確実に成長している姿を見られるのは嬉しい。
小さな日常ミステリも楽しめました。
奉太郎バースデーのシーンがあらゆる面でお気に入り。
タイトルが秀逸です。ああ、早くも次作が気になります。

読了日:2010年6月30日
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『儚い羊たちの祝宴』米澤穂信

儚い羊たちの祝宴
儚い羊たちの祝宴
米澤穂信/新潮社
ミステリの醍醐味と言えば、終盤のどんでん返し。中でも、「最後の一撃」と呼ばれる、ラストで鮮やかに真相を引っ繰り返す技は、短編の華であり至芸でもある。本書は、更にその上をいく、「ラスト一行の衝撃」に徹底的にこだわった連作集。
「身内に不幸がありまして」「北の館の罪人」「山荘秘聞」「 玉野五十鈴の誉れ」「儚い羊たちの晩餐」5編の短編集。
表紙の真っ黒さと同様、暗黒なお話達でございました。
これがもう素晴らしくいい!かなりのお気に入りです。
「ラスト一行の衝撃」とかでしたっけ?紹介文。
確かにラストで「うおおおっ」というのはありますけど、最後のオチが衝撃さというよりもじわじわとそう、じわじわと侵食されていくようでそこがまた何とも言えない心地良さ。
もう一度読み返したい衝動に駆られて読み返すとこれがまたいい効果を成してさらに楽しめるという。

お気に入りは「北の館の罪人」「玉野五十鈴の誉れ」「儚い羊たちの晩餐」。

★以下、ネタばれはしないつもりですが、もしかすると先入観を与える表現をしてしまうかもしれませんので、未読の方はご注意下さいませ★
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『遠まわりする雛』米澤穂信

遠まわりする雛
遠まわりする雛
米澤穂信/角川書店
神山高校で噂される怪談話、放課後の教室に流れてきた奇妙な校内放送、魔耶花が里志のために作ったチョコの消失事件――〈省エネ少年〉折木奉太郎たち古典部のメンバーが遭遇する数々の謎。入部直後から春休みまで、古典部を過ぎゆく一年間を描いた短編集。
『氷菓』『愚者のエンドロール』『クドリャフカの順番』に続く古典部シリーズ4作目。
「やるべきことなら手短に」「大罪を犯す」「正体見たり」「心あたりのある者は」「あきましておめでとう」「手作りチョコレート事件」「遠まわりする雛」7編の連作短編集。

おお、待っておりましたよ。古典部シリーズ。新作は連作短編集。高校入学から翌年の春休みまでの1年間が時系列順に収録。時系列順は大変ありがたい。
時系列に流れていくことによって、この1年間で個々の心がどう変化していったか、その関係性がどう変化していったか、手に取るように分かってきます。1年という時が彼らにもたらしたもの、それがラストで鮮やかに描かれます。何というか、衝撃です。

「やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければいけないことなら手短に。」そんな省エネ主義者の折木奉太郎が、同じ部員である千反田えるの「気になります」発言によって不本意ながらも探偵役として活躍する(あくまでも本人は消極的に)古典部シリーズの短編はこれまた日常の謎を(主に高校で発端する謎を)堪能させてくれています。
1編1編はわりあいと地味なんですが、これが全体を通してみますと実に上手くまとまっています。読み進むうちに「あのあれがここにこう出てくるか!」てな具合にいちいち合点がいって気持ちの良いこと。米澤さんの上手さが引き立っていてさすが、と感動すらしてしまいます。
そして前3作ではここまでは見られなかったであろう登場人物面々の心情が明かされて実に興味深い。特に「手作りチョコレート事件」の福部里志の伊原摩耶花に対するものとかこの辺はチョコレートにかけてなかなかビターに、いやもっと苦いブラック並みに描かれていて読後の苦々しいったら。
そうして表題作「遠まわりする雛」のラストでは衝撃の展開でありますよ。まさか古典部シリーズでこんな雰囲気になるとは思わなかったので、しばしポカンとしてしまいました。
ややや、これはこの先どんな展開になっていくのか楽しみになってきましたぞ。

中でも「心あたりのある者は」「手作りチョコレート事件」「遠まわりする雛」がお気に入り。
「心あたりのある者は」は実にシンプルながらその推理の妄想っぷりが天晴れ。どんどん大仰になっていく推理ぶりにこっちは嘘か誠か果たしてその真相は!?ともう興味津々なのですけど、後日明かされる真実にこれはもうお見事!と気持ち良い結末。上手い。
「手作りチョコレート事件」は里志の気持ちがドーンと重たく突きつけられてそのブラックさにしばし思考を巡らせる。ふむ、そういうことだったか。ところでメッセージ「ふるえる哀をこめて」に笑ってしまいました。お姉さん最高!
もうひとつ好きなのが天文部。何やら楽しげでしたけど(笑)。あの、もうちょっと彼らのマニアックそうな会話を聞きたいんですけどー。
「遠まわりする雛」はタイトルだけ読んだら「はて?何のことか?」とこっからもう謎なんですが、雛って雛祭りの雛でしたか。しかも「生き雛祭り」。
この生き雛祭りって飛騨高山の一宮水無神社で実際に行われているのですね。米澤さんは岐阜出身でいらっしゃるからこの祭りも良くご存知なのでしょう(でしょう、って勝手に決め付けてますけど)。祭りの準備の様子などとてもリアルでした。あ、てことは舞台の神山市は岐阜高山市になるのでしょうか。

ここであのラストを描いたということはこれからはただの青春ミステリーでなくなるわけで。ここに愛や恋が交ざるということは物語はより色濃く光と影を作るのです。
これはますます興味深くなりました。
古典部の面々が今後どうなっていくのか…「気になります」。
かりさ | 著者別や・ら・わ行(米澤穂信) | comments(18) | trackbacks(11) | 

ユリイカ 特集:米澤穂信

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ユリイカ
第39巻第4号―詩と批評/青土社

さて引越しも落ち着いてぼちぼち読書でも〜といきたいところですが、なかなかエンジンがかかりませぬ。これはどうしたことだ、と呆然とするもエンジンがかからないのならばいたし方あるまい。そこでぼちぼちとユリイカを読んでいます。特集が米澤穂信さんということで迷わず購入したものです。ええ、見てください!表紙は小市民シリーズでおなじみの片山さんでありますよ。ああ、かわゆい。ほのぼのする。

ということでぼちぼちと読んでいるんですが…ややや!これはなかなか読み応えありますぞ。これはだらだらぼちぼちなんていう生半可な姿勢で読むのは勿体無い。もっとこう思考をめぐらせて読むくらいの、頭の回路を切り替えねばならないくらいの内容であります。
笠井潔さんや滝本竜彦さんとの対談は読み応え充分。

笠井さんとの対談の中で米澤さんは「思春期の全能感」ということをおっしゃっています。あ、なるほど、と思うわけです。そして全能感の裏返しとして無能感という言葉も出されています。『氷菓』から作品を読んでいて米澤さんの創り出す世界や雰囲気がこうであらねばならない〜という読者の勝手な思い込みが『ボトルネック』で見事に覆されてしまった。米澤さんの新境地なのか!とこれまた勝手に思い込んでしまったわけですが、この全能感、無能感という言葉を読んだことで実は米澤作品の流れには何ら変化はなく、むしろ米澤さんのテーマに沿ったその総括としてあの『ボトルネック』が生まれたのだと(解釈が間違っていたらすみません)。そう思うとますます米澤さんが今度仕掛けていくものが楽しみになってきました。笠井さんとの対談はあまり読み込んでしまうと未読作品の先入観を与えられてしまいそうで(北山さんや道尾さん作品は未読だし、麻耶さんは実は1作目で挫折…ちょっと受け入れられない作風でした。清涼院氏も然り)後半はざっと大まかに読んだ程度。

他米澤さんへの批評もじつにじつに興味深く、読んでいてその論考の奥深さにただただ驚くばかりです。こういった批評というのは実に面白いものです。また違った局面でその作家を見ることが出来ますから。何にしてもこれからも期待大の作家・米澤穂信さんなのであります。

もうひとつ。ここに掲載されている短編が実に面白い。これもシリーズ化してもらえないだろうかと早くも楽しみにしているのでした(シリーズ化するかもわからぬのに勝手にまた突っ走っています)。だってちらほらとそんなニオイがプンプンするんですものー。完全に描いていない部分がこれから先続編として明かされていく、みたいな書き方をしているような気がしてならないのです。思い込み、かもしれんが。

さらにもうひとつ。米澤作品は『さよなら妖精』だけが未読だったりします。サイン本を予約購入して大事にし過ぎたようです(笑)いつでも読めるという油断が積読本の山をにょきにょき増やすことになるんですが…。近々紐解くことにしましょう。ええ。
かりさ | 著者別や・ら・わ行(米澤穂信) | comments(2) | trackbacks(0) | 

『ボトルネック』米澤穂信

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ボトルネック
米澤穂信/新潮社
恋人を弔うため東尋坊に来ていた僕は、強い眩暈に襲われ、そのまま崖下へ落ちてしまった。―はずだった。ところが、気づけば見慣れた金沢の街中にいる。不可解な想いを胸に自宅へ戻ると、存在しないはずの「姉」に出迎えられた。どうやらここは、「僕の産まれなかった世界」らしい。

爽やかな青空を薄雲が覆い隠すような鬱々とした読後感。その雲がさっと風に吹かれればあるはずの青空がここでは一向に見えない。その薄雲が思ったよりも分厚く、もうこのままたれ込めた雲の下をただひたすら歩き続けねばならぬのか、と不安だけが襲う。青春とはかくも爽やかであれ、とは言わない。苦渋に満ちた青春だってあるだろう。だか彼がこんな仕打ちを受ける理由はどこにもないはずだ。その理由があれば多少は納得出来たであろうに。

人間の根底にあるもの、そしてもしかしたら本質なもの。人の幸福を望むよりも不幸をつい望んでしまうこと。表向きは善良そうな顔をしても、その顔の皮一枚剥がしたら悪の顔が隠されていること。それが人間の本質なのだ、と言われても私は否定出来ない。思い当たることが確かにあるはずで、これからもそんな自分を感じる事もあるだろう。それに嫌悪感を感じつつもほくそ笑む自分がいることを否めないだろう。ここにはその不幸があからさまに描かれ、読み手をひたすら打ちのめす。これが作者の思惑通りなのだとしたら、作者もまたその歪みの精神が頭をもたげたのであろうか。

自分の生まれなかったもう一つの世界。この世界で生きる生まれなかったはずの姉。その世界に降り立ちそこの住人たちの今を知る。姉と対話しそこから得た真実の何と残酷なことか。悪意を感じずにはいられないが、敢えてここまで描いたことはかえって潔さを感じる。不自然に軌道修正させるよりも、この霞の中を晴らすことなくトーンを保ったまま描ききった作者にむしろ賞賛を与えたい。

全体的にざわざわした不安感漂う感覚。中でも川守という子供の登場は謎めいていてゾクッとさせる。彼(いや彼女かな?)の語るモンスターは、どの人間にも必ず巣食っているある感情になぞらえていて、それがあのときに語られることによってこの作品のサスペンス度はさらに高まる。

鬱々としたものを抱えながら、下がりかけていた精神状態がさらに加速を増して下降してゆこうとも、それでもこの作品を傑作だと思ってしまう私はきっと歪みきっているのだろう。

読了日:2006年10月4日


衝撃作です。米澤さんといえば青春ミステリものを多く書いている作家さん。その米澤さんが『犬はどこだ』を出した時、その今までにないビターな味わいに衝撃を受けつつも「こんなものも書けるんだ〜(失礼)」と新鮮な気持ちで読みました。そう、あのラストでも衝撃だったんですよ、米澤作品としては。しかしこの『ボトルネック』はその比ではありません。もっともっと衝撃的なものを用意していました。爽やか青春ものを書く作家さん、と固定化されつつあるのを払拭させたかったのでしょうか。青春ものは青春ものでもこれまでの作風とは全く異なります。確かに小説で良くある爽やかな青春なんてのは現実ではなかなかないのが事実。青春とは年を重ねて振り返ってみて初めて青春と言えるのであり、現在進行形で青春を生きている者は、その若さゆえに経験値の少ない中模索状態に生きているのであり、自身の存在さえも否定し壊したがることもままあるのですよね。
そんな負の部分を丸裸のまま描き、さらに救いの手も差し伸べない。ひたすら残酷な後味の悪い仕上げ方にこれは冒険したなー、とただひたすら驚いたのです。
特に川守少年(少女かな。自分では少年と勝手に決めつけていますが)の場面は普通に怖かった。絶妙なタイミングでこれを出すのかーとゾクゾク。

こんな作品を書く米澤さんも新鮮で好きですが、次作はスッキリ晴れ上がる青空を見るような爽やかなものを読みたいです。切に、切に。
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『夏期限定トロピカルパフェ事件』米澤穂信

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夏期限定トロピカルパフェ事件
米澤穂信/創元推理文庫
小市民たるもの、日々を平穏に過ごす生活態度を獲得せんと希求し、それを妨げる事々に対しては断固として回避の立場を取るべし。賢しらに名探偵を気取るなどもってのほか。諦念と儀礼的無関心を心の中で育んで、そしていつか掴むんだ、あの小市民の星を!そんな高校二年生・小鳩君の、この夏の運命を左右するのは“小佐内スイーツセレクション・夏”!?待望のシリーズ第二弾。

訳あって「小市民」を目指す小鳩くんと小佐内さんがまたやってきた!果たして気になる小佐内さんの過去は暴かれるのか!?

うおーっ!スイーツ好きにはたまりませんな、このシリーズ。しかも前回の「いちごタルト事件」よりスイーツ度が数倍バージョンアップしているではないか。甘いもの控え中の私には読書中、大変過酷であったのだ。いえね、ここ最近の体脂肪率の数字のやばさに苦渋の結果ほんの少し控えることを決意したのだ。なのに小佐内さんったら「小佐内スイーツセレクション・夏」なんて作っちゃって!もうもう、我慢できないじゃないかー。ってことで、身悶えておりました(あ、決意は脆くも崩れ去りました。早速スイーツ買いこんでしまったもの)。

…とそんなことはどうでもいいこと。
今回の「トロピカルパフェ」は「いちごタルト」よりもさらにさらに楽しめる内容。何と言うか大掛かりな仕掛けにラスト「!!!」てな具合。小市民の星を掴もうと互いに誓い合った二人はちゃんとそれを貫き通すことが出来るのか。いやいや、それはあり得ないでしょう。だとしたら一体今度はどんな事件が起きるのか、それがささやかな事件だとしてもわくわく度は高まるのである。そしてささやかであると思ったものが、実はとんでもない仕掛けが施されていたとは!相変わらず騙されやすい私は今回もまんまと騙されてしまったのである。
それは次々と登場するスイーツに気を取られたから…とは言い訳に過ぎぬ。

それにしても米澤さん独特のこの手法は何と言えばいいのだろうか。バラバラに思えた短編が、休止符に思えた短編が、それでも油断はならぬのだ。短編のようでいて実は…(それは読んで驚いて欲しい。是非!)。そこここに米澤さんの趣向が凝らされていて心憎いったらありゃしない。決して派手なミステリではない、けれどもこうして読者をたんと楽しませてくれるのだ。

さてさて、小佐内さんの過去が分かるどころかますます謎は深まり、おまけにこの先どうなってしまうのかさらにさらに気になる部分が増してしまったということで、早く秋期限定を出してください!米澤さん。次はモンブランか?それとも??

現在私の頭の中ではシャルロットのことでいっぱい。うう、食べてみたい…。

読了日:2006年5月23日

関連記事
『春期限定いちごタルト事件』感想(2005/2/19)


このシリーズの装画を描かれている片山若子さん。そのイラストの雰囲気といい、水彩で彩る色使いといい、まさにツボにはまってとても癒されています。片山さんのサイトに時々お邪魔してアップされているイラストを見てはぽっぽっと心を温めております。
片山若子さんのサイトはこちら→渋皮栗
かりさ | 著者別や・ら・わ行(米澤穂信) | comments(18) | trackbacks(8) | 

『犬はどこだ』米澤穂信

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犬はどこだ
米澤穂信/東京創元社
犬捜し専門の仕事を始めたはずなのに、依頼は失踪人捜しと古文書の解読。しかも調査の過程で、ふたつはなぜか微妙にクロスして−。いったいこの事件の全体像は? 犬捜し専門(希望)、25歳の私立探偵・紺屋、最初の事件。

うわわわー、このゾクゾクする後味感。たまりませんっ(絶賛)。
米澤氏6作目の本書は今までのほのぼのした作風とは違い、ビターな味わい。主人公の年齢層もぐっと上がっています。落ち着いた味のある内容にしっくり相性良い満足感。米澤さん作品の見方がまた変わったかも。

銀行に就職し、都会での順風満帆なスタートを切った紺屋長一郎。しかし彼を待っていたのはあまりにも酷い仕打ちだった。その突然襲った病気によりやむを得ず退職せざるを得なくなり、失意の末生まれ故郷に戻る。心機一転とまで完全回復はしていないものの、新しい事業を始めることに。その名も「紺屋S&R(SEARCH & RESCUE)」。調査業ならぬペット捜し。運良く(?)開業初日から依頼が舞い込むものの、ペット捜しではなく依頼主の孫捜し。ほどなくして2件目の依頼も受けることになる。こちらもペットがらみとは程遠い古文書の解読。気の進まぬまま受けることになった2件の調査、結果は如何に?
この2つ、微妙に交差していて、でも行き違いばかりでなかなか当人達がそれに気がつかないのは何とも歯がゆい。あちこちに散らばったものも一向にかき集める気配なく、もどかしい。もどかしいが、ちゃんととっ散らかしたものを綺麗に拾い集めて見せるのだ。見せておいて一捻り加える。気味悪さを残して…。

人生の挫折にくたびれた感の紺屋と、探偵に憧れる高校の後輩・半田平吉ことハンペー。この2人の温度差がなかなか面白い。中でも2人の掛け合いではにんまりする会話が。「そっち、かよ」って今の私もそっちを最初に想像してしまった(笑)
何となくずれた2人ではあるが、この行き違いもそれはそれで楽しめる。
紺屋の妹夫婦ももっと前面に出て欲しいくらい魅力的。たぶんシリーズ化されるだろうから、この次は梓と共に梓の夫であり、喫茶店のマスター・友春にも数多く登場してもらいたい。是非彼に珈琲のことを語らせてあげて欲しいなぁ。そして、チャット仲間のGENも気になるところ。一体何者?こちらもいずれは明らかになるのだろうか。こんな風にキャラクターに愛情を持ってしまう描き方はさすがなのだ。

犬捜し専門の私立探偵・紺屋がこの次どんなケースの依頼を受け調査・解決していくのか、今から期待大。

読了日:2005年9月20日
かりさ | 著者別や・ら・わ行(米澤穂信) | comments(26) | trackbacks(14) | 

『クドリャフカの順番―「十文字」事件』米澤穂信

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クドリャフカの順番―「十文字」事件
米澤穂信/角川書店
待望の文化祭。だが、折木奉太郎が所属する古典部では大問題が。手違いで文集を作りすぎてしまったのだ。古典部の知名度を上げて文集の完売を目指すため、奉太郎たちは学内で起きた連続盗難事件の謎に挑むことに!
古典部シリーズ3作目。ライトノベルの2作から飛躍して今回はハードカバーからの刊行。素晴らしい…。素直に嬉しいことなのだけど、ハードカバーになってページ数が増えたことによって心なしかライトノベルの時にあった清々しさ、爽快さみたいなものが欠けてしまっているのを感じました。でも最後まで読めば納得です。それは爽快さなどを求めるような話しではないから。ちょっとほろ苦い味付けになっていてそれが彼らにはまた必要なんだな、と思わせてくれる…そんな物語。

前作『愚者のエンドロール』の感想では「シリーズを追わなくても特に問題なし」と書きましたが、本書ではやはり順番に読んだほうが良い、と実感。特に『愚者のエンドロール』からの連続性が強いので気になる方は『氷菓』→『愚者のエンドロール』→『クドリャフカの順番』の順に読むことをオススメします。そしてあまり間を開けずに一気にいってしまったほうが良いでしょう。正直、『愚者のエンドロール』は『氷菓』を読んでから数年経っていたのでその「氷菓」事件がどんなだったのか忘れてしまっていました(汗)

いよいよ文化祭当日を迎えることとなった古典部メンバー。しかし彼らにはまた問題が発生。はてさてこの山積みの問題、解決することが出来るんでしょうか。今回はメンバー4人それぞれの視点から語られていきます。これが後半で功を成すことになるのです。あれれ?と違和感を感じたときにはもう読者側は上手い具合にはめこまれているんでしょう。
今回も殺人は起きませんが、妙なことが文化祭で起きます。やがてこれを「十文字」事件として犯人探しが始まるわけなんですが…。
羨望という言葉があります。この言葉はやっかいで、生きているうちに何度これが生まれるやら。その度に自分の小ささを思い知らされることになる。自分では努力しても出来ないこと、人よりも頑張ってやっと表現できることを、いともたやすくやってのける(しかも本人はそれを特に重きに置いていない)人間には羨望を覚えます。そして自分の力の無さを思い知らされて筆を折ってしまいたくなることも。そういう諦めを幾度となく経験して大人になっていく。そんな自分の経験と重ね合わせて読んでいたらちょっとしんみりしてしまいました。

読了日:2005年7月29日
かりさ | 著者別や・ら・わ行(米澤穂信) | comments(10) | trackbacks(8) | 

『愚者のエンドロール』米澤穂信

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愚者のエンドロール
米澤穂信/角川スニーカー文庫
文化祭の準備に追われる古典部のメンバーが、先輩から見せられた自主映画。廃屋で起きたショッキングな殺人シーンで途切れたその映像に隠された真意とは!?

前作である『氷菓』の続編になります。と言ってもシリーズというだけでこれから読み始めても問題なし。ただ前作がちょこちょこ出てくるので読んでないと気にはなるかも。そして読んでいればラストでにんまり、ある箇所(何てことない部分ですが)を思い返してまたまたにんまり出来ます。
『氷菓』から大好きな神山高校古典部メンバーが今回も登場。そして新たなキャラクターがこれまた魅力的。"女帝"と呼ばれている入須冬実、ちょっと風変わりな沢木口美崎。この人のミステリー観にはぶっ飛んだ(笑)これ言っちゃうか、とある意味開眼させられた(笑)さて、今回も血みどろな殺人は起きません。それでも魅せるものが充分あるのはキャラクターの魅力もあるけれども、ミステリーとは?を心から楽しませてくれるからだろうと思う。

盛大に行われる文化祭にクラスで参加したいということでビデオ映画を自主制作した2年F組。仮称をミステリーと決め、撮影に入ったが、脚本担当が結末を書かずして病に倒れてしまう。映画の舞台は廃村。ラストでは廃屋の密室内で少年が腕を切り落とされて死んでいた。誰が殺したのか?果たして密室のトリックは?未完のままで終わっている撮影を続行させるためにもトリックを解決せねばならない。依頼により結末を推理することになった古典部メンバーの推理とは。
「やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければいけないことなら手短に」の"省エネ"スタイルを持つ無気力人間・折木奉太郎は嫌々ながらも自分の価値というものを試してみようと推理に乗り出す。その推理やいかに?

3年前『氷菓』を借りて読んだらなかなか良くて刊行されたばかりの本書を購入。…したのですが、何故か放りっぱなしで3年間積んでました(笑)先日図書館から借りてきた米澤さんの新作『クドリャフカの順番』を読もうと本を開いたら「千反田」の名前。あれ?もしかして古典部シリーズなのか?!ということで慌てて本棚の奥のほうで燻っていた『愚者のエンドロール』を引っ張り出してきたのでした。やっと読みましたよー。
そうえばつい最近『氷菓』と共に復刊されましたね。表紙はどちらかというとイラストのほうが好きですが、復刊のほうが『クドリャフカ〜』の表紙イメージに合っていて並べるといい感じかもしれません。
本書、アントニー・バークリーの『毒入りチョコレート事件』に敬意を表して書かれたのだそう。残念ながら未読なのでどう本書に沿っているのかわかりませんが、『毒入りチョコレート〜』のあらすじを読むと"六名の会員が、同一事件に対して示した六様の推理と解決策"とある。なるほどーそういう意味ね。今回の一つの未完成作品のトリックを数人で推理し、解決するというのがなかなか面白かったので(自分もじっくり推理出来た。けど至らず…奉太郎の結論だってそういう解決法があるのか!とビックリしましたし。まだまだですね(汗))、このバークリーの作品も是非読んでみようと思っています。やっぱり古典ものは読んでおくべきですね。こういう時「ああ、あの話しね!」とスムーズにいくと格好良いですもんね〜。

ライトノベルの枠を超えて3作目はハードカバー。これはとても嬉しい。年齢問わず読んで欲しい作品です。

読了日:2005年7月28日

【追記】
その後『毒入りチョコレート事件』読了。
『毒入りチョコレート事件』感想(2006/3/17)
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『春期限定いちごタルト事件』米澤穂信

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春期限定いちごタルト事件
米澤穂信/創元推理文庫

なんて可愛いミステリ本でしょうか。読み終えるのがもったいなくて大事に大事にちびちびと読んでました。小市民を目指す小鳩くんと小佐内さんが可愛らしい。小市民という言葉自体は身近な人が良く使うので(夫ですが(笑))大して珍しい言葉ではないけれども、何故に小市民?との疑問を持たせながら読ませる、というのはなかなかに面白い試みです。ミステリといってもライトノベル的な雰囲気のあるものなので非常に軽く読めます。さらりとした爽快感のある作品。何故小市民を目指すのかそれに到ることになった経緯はちょこっと明かされていますが、輪郭がぼやけていてどうも納得いかない。小佐内さんの過去が気になるよ〜。てことで続編希望。

米澤氏の作品は『氷菓』のみ読了。『愚者のエンドロール』は積読のまんま。探し出して読んでみようかな。

読了日:2005年2月19日

関連記事
『愚者のエンドロール』感想(2005/7/28)
『夏期限定トロピカルパフェ事件』(2006/5/23)
かりさ | 著者別や・ら・わ行(米澤穂信) | comments(10) | trackbacks(5) |