ひなたでゆるり

読書のコトとちょっぴり日々のコトブログ

スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

スポンサードリンク | - | - | - | 

『なかよし小鳩組』荻原浩

4087752429
なかよし小鳩組
荻原浩/集英社
倒産寸前の広告代理店に大仕事が舞い込んだ。ところが依頼主はちょっとタチの悪い筋の方で…。気持ち良く笑えて、泣けるユーモア小説。
デビュー作『オロロ畑でつかまえて』の続編。続編と聞いて気になる舞台は…ユニバーサル広告社。大好きなあの面々にまた会える!それだけでわくわくです。
社長であり甘党の石井、アル中気味でバツイチの杉山、ロック(パンク?)歌手としてメジャーデビューを夢見る村崎、結婚願望の強い(苗字のせい?)猪熊。倒産寸前のこの会社に夢のようなビッグな仕事が舞い込んだ。期待に胸膨らませて依頼主に会ってみると…小鳩組と名乗る表向きは建設会社、その実は何とヤクザさんだった。

相変わらずのユーモアさなのだけど、『オロロ畑でつかまえて』とは違う悲哀も込められている。杉山の娘・早苗が今回は活き活きと描かれている。その娘を思う杉山の気持ちにぐっときて、泣けてしまった。自業自得とはいえやはり切ない。自分の過去を後悔することは少なからず誰でもあるだろうけど、杉山の場合はそれがあまりにも大きすぎてそこから脱却するにも時間がかかっている。今回はそこから脱却すべく、杉山自ら奮闘する。
娘を思う父親の心境って複雑だよな。どこまで触れていいのか迷いながら接するもどかしさがまたいいのかもしれない。夫も娘に対してそんな思いをしていくのだろうか。そういえば、父も私に対して微妙な接し方だったな。大人になった今でも照れながら話す様子がちょっと微笑ましくて嬉しい。
だが、杉山は娘の早苗とずっと暮らしていけるわけではない。新しい父親に気を遣ってもう会わないほうがいいのかもしれない、と思い悩む。ユーモアさの中に織り込まれるこの切ない感情。これがこの作品をさらに魅力的にしているのかもしれない。
魅力的といえば、今回登場する小鳩組の面々。いわゆるヤクザさんたち。極道の彼らにも一人一人人生があり、生活があり、背負うものがある。その一人一人にスポットを当ててみるとこれまた魅力的な人物ばかりなのだ。例えば河田。そのスキンヘッドのつるつる頭はどうやら理由があるらしい。偶然手にしたカツラを捨てずにポケットにしのばせている。きっと時々頭に乗せているんだろう。ぷぷぷ。そして我が子を思う彼も父親である。
そしてそして、今回猪熊さんの驚愕の事実が判明!前作ではさほどカラーの強いキャラでなかったのだけど、ここでは一変。彼女のこれまでの人生を思うとき、何とも愛おしい気持ちで彼女を見つめてしまうのです。結婚願望が強い理由はその苗字ゆえなのかとされていましたけど、どうやらそれだけではなさそう。
お気に入りの村崎も今回はセリフが多くて(笑)私としてはほくほく。村崎視点で今度は書いてくれないかしら(ん〜あり得ないか)。

こういう作品、やっぱり読んでいて気持ち良い。これからも積極的に読みたいものです。

読了日:2005年9月15日
かりさ | 著者別あ行(荻原浩) | comments(2) | trackbacks(3) | 

荻原浩作品MyBest3

トラキチさんの「My Best Books!」、荻原浩さんのマイベスに参加です。
投票期間延長のおかげで滑り込み投票してきましたー。(延長に感謝しています、トラキチさん)今日『なかよし小鳩組』を読了。後ほど感想を書きますが、とりあえずこちらの記事からアップします。現在読了しているのは…『オロロ畑でつかまえて』『なかよし小鳩組』
『神様からひと言』『明日の記憶』の4冊。3位までを決めるのはさほど悩まなかったのですが、2位と3位の順番にかなり迷いました。以下結果。

荻原浩作品マイベスト3

1位『明日の記憶』
4334924468
明日の記憶

いろいろと先々のことを考えさせてくれた作品。荻原さん=ユーモア小説なんて勝手に決め付けていましたが、こちらはそのユーモアさは微塵もない作品。それ故に痛々しく辛い読後感。けれども作品の重さの分だけ沁み入る深さも大きかったです。

2位『なかよし小鳩組』
4087752429
なかよし小鳩組

大笑いさせてもらった『オロロ畑でつかまえて』の続編。ユニバーサル広告社の面々にまた会えるのが嬉しくてそれだけでも楽しめた作品。新たな登場人物たちも何故か妙に憎めなくて愛らしいキャラクター。いや〜面白いです。

3位『神様からひと言』
4334738427
神様からひと言

笑いと皮肉を込めたユーモア痛快小説。スカッと爽やか(?)な読後感で充分楽しめました。人物の描き方にも魅力があるんですよねぇ。

初荻原作品で記念すべき『オロロ畑でつかまえて』は3位以内に入らなかったのですが、こちらも愛すべキャラクターたちに魅せられました。
荻原さんの作品全てに追いつくにはまだ時間がかかりそうですが、是非制覇したい作家さんです。
かりさ | 著者別あ行(荻原浩) | comments(0) | trackbacks(3) | 

『明日の記憶』荻原浩

4334924468
明日の記憶
荻原浩/光文社
知っているはずの言葉がとっさに出てこない。物忘れ、頭痛、不眠、目眩――告げられた病名は若年性アルツハイマー。どんなにメモでポケットを膨らませても確実に失われていく記憶。そして悲しくもほのかな光が見える感動の結末。
ぽっかり空いた穴に忍び入るこの虚無感をどうする術もなく、ただただやるせなさだけが漂う読後感。決してこの中の話しは他人事ではなく、いずれ我が身にも家族にも襲ってくるかもしれないのだ。その恐怖感は読むごとに増し、主人公佐伯とその妻・枝実子の計り知れない苦悩は痛々しく辛い。
若年性アルツハイマー。物忘れが激しくなった、と自覚し始めた佐伯に診断された病名。物忘れどころではない、いずれ人格破壊が起き、死に至る。
広告マンとして一線で働く佐伯に襲う記憶障害。人の名前を忘れる、顔を忘れる、重要な会議、先方の約束、相手企業の場所等々…当たり前にあるはずの記憶が曖昧になり、その記憶が果たして本当なのかどうかさえ自信を失う。それでも病気を受け入れることが出来ず、周囲に悟られないよう必死の努力をする。忘れないよう逐一メモを取り、その増え続ける膨大なメモをポケットに隠す。無駄な努力と分かっていても認めることが出来ない。この辺りの葛藤は読んでいて辛い。
年をとってくれば「あの人の名前、ほら、何だっけ?」「あの映画に出ていたあの俳優の名前何だっけ?」まず人の名前が出てこない。それでも必死に手繰り寄せていけばちゃんと解答に結びつく。それでも昔はすらすら出てきた海外スターの名前がスッと出てこなくなった時のショックは忘れられない。今では悲しいかな、そんなこと日常茶飯事ですっかり慣れっこになってしまった。以前の職業柄、人の名前はすぐに覚え決して忘れないことが自慢だったのに、今では自慢にもならないくらい覚えづらく忘れやすい。しかしこれは単に物忘れなのだ。アルツハイマーはもっと深刻でたった2、3分前に話した事柄を忘れてしまう。忘れるというよりも記憶に残していない。だから同じ質問をする。同じ話しをする。この話ししたっけ?などのレベルではなく、全く覚えていないのだ。これは怖い。これを自分に置き換えてみたり、夫に置き換えてみたりして読むともう身につまされて読むのが辛くなる。

昨日投票所へ向かう際、夫と並んで歩きながら考えた。これから先どちらかが先に逝き、どちらかが残されるのだな。もしかしたらその前にどちらかが痴呆症になって相手を忘れてしまうかもしれない。そういう将来を覚悟しなくてはならないのだ、と。今こうして若々しく元気にいられることの何と幸せなことか。平凡でも互いに健康でいるということ、それだけでも贅沢なことなのかもしれない。

黄金色に包まれる二人の姿は神々しく美しい。ただその先にあるものの壮絶な戦いの幕開けでもある。本を閉じ表紙の後姿の写真に胸が痛んだ。広がるばかりの虚無感はしばらくこの胸に留まり続けるだろう。

読了日:2005年9月12日
かりさ | 著者別あ行(荻原浩) | comments(18) | trackbacks(11) | 

『神様からひと言』荻原浩

4334738427
神様からひと言
荻原浩/光文社文庫
会社に「人質」取られてますか? 佐倉凉平、9月12日付けで総務部お客様相談室へ異動。不本意な異動、でも辞められない。痛快、切なさを描いた、会社員物語。
"会社に人質取られてますか?"サラリーマン・OLならば誰もが一度は頷いてしまうだろうこの問いかけ。本書を読めば賛同してしまう箇所の何と多いことか。

冒頭から引き込まれます。ええ?一体なんの会議をしているの?製品番号が飛び交いその番号から製品名が一体何なのか興味津々。それが明らかになったときの笑い…ぷぷぷっ。すでにここから読み手の心を鷲づかみ。荻原さんの罠にはまってゆくのです。
さて、その販売会議に出席していた佐倉凉平は中途採用で「球川食品」に入社したばかり。会議上でトラブルをやらかしてしまう。クビか?左遷か?結果はクビ同然のクレーム処理係り。自暴自棄な凉平はしかしある事情で会社を辞められない。
この辺りの葛藤は読んでいるこちらも胃が痛くなるほど。そのクレーム処理に明け暮れる日々と平行して凉平の過去やプライベートも明かされていきます。まさに人間ドラマ。喜怒哀楽の詰まった1冊です。
終盤に向けて気持ち良いくらいに綺麗にまとまっていき、ラストは「あぁ!もうこれだからなぁ!」と唸ってしまうのです。ちょうど解説に書かれているとおりの言葉そのものです。天晴れ−デビュー作の『オロロ畑でつかまえて』といい、本作もまさにこの言葉がピッタリ。
「神様からひと言」の意味をしっかりと噛み締めながら、清々しく読み終えることの気持ち良さ。こういう読後感も悪くないな、と新たな楽しみににんまり。

読了日:2005年8月5日
かりさ | 著者別あ行(荻原浩) | comments(4) | trackbacks(5) | 

『オロロ畑でつかまえて』荻原浩

4087473732
オロロ畑でつかまえて
荻原浩/集英社
人口わずか三百人。主な産物はカンピョウ、ヘラチョンペ、オロロ豆。超過疎化にあえぐ日本の秘境・大牛郡牛穴村が、村の起死回生を賭けて立ち上がった!ところが手を組んだ相手は倒産寸前のプロダクション、ユニバーサル広告社。この最弱タッグによる、やぶれかぶれの村おこし大作戦『牛穴村 新発売キャンペーン』が、今始まる―。
第十回小説すばる新人賞受賞作。スカッと爽やかな読後感…最高!本を読みながら泣くことは多いけれど、笑うことはそれに比べたらはるかに少ない。そんな私が笑えた作品。荻原氏初の作品。そして荻原氏デビュー作。

ユーモア小説なんだそうです。へぇ〜どんなんだろ?と紐解いたが最後もう止まりません。足し引きなしの綺麗なまとまりにそりゃぁもう惚れこみました。これが荻原氏定評のユーモアさなんだ、とひたすら感動。
そして笑いだけでない、都会と田舎の違い…純真さというものが大きく描かれています。都会に住んでいたら大概は純真さなんて失わされます。純粋に人を信じることが出来ずついつい疑ってしまう。損得で人の価値を決め、常に自分の位置を確認し、そこから転じないよう踏ん張っている。それに比べて牛穴村の面々の何と素朴なことか。素朴って言葉は言いようによってはバカにしている言葉になるけれども、ここではいかにそれが魅力的であるかがある女性の身を持って知ることになる。所詮人は見かけでしか人を判断しない。その人それぞれの内面に隠された魅力を見ようともしない。本書は笑えるだけでなく、ちょっとしんみりそんなことを考えさせられる部分もしっかり描かれている。

米田慎一の奥さん・マリアンさんの「自分ん家の庭で見つからねものは、どこ行ったって見つからね」にハッとさせられる。牛穴のみんなはしみじみこの言葉を噛み締めただろう。ただやはり無茶でもやってみるべきなのだ。踏み止まっていたままだったらその言葉に思い知らされることはなかっただろうから。
さて、実は実はの大どんでん返しを迎えます。牛穴村はさらなる騒ぎに巻き込まれることになるんでしょう。実にうまい!最高!となるわけです。
1作で早くも惚れ惚れ。しばらくは荻原作品を追いかけようと思います。

読了日:2005年8月2日
かりさ | 著者別あ行(荻原浩) | comments(6) | trackbacks(5) |