ひなたでゆるり

読書のコトとちょっぴり日々のコトブログ

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『東京バンドワゴン』小路幸也

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東京バンドワゴン
小路幸也/集英社
下町の老舗古書店「東京バンドワゴン」。ちょっと風変わりな四世代の大家族が、転がりこんでくる事件を解決する。おかしくて、時に切なく優しい、下町情緒あふれる春夏秋冬の物語。

さて、「東京バンドワゴン」と聞いて何を想像するだろうか。バンドワゴンである。勝手な想像なのだが何か劇団の名前かと思っていた。劇団かぁ(←もう劇団話しと決め付けている)ちょっと興味は湧かないが小路さんの作品だしなー(小路さんは2作品読んでいるがどれも好きである)と図書館から借りてみた。
読み始めた。あれ?これ古本屋が舞台だったのか。古本屋ならば話しは別。絶対面白いはず。小路さんだし。そうなったらもう一気読みである。語り手である堀田サチのやわらかな優しい語りに引き寄せられ、東京下町人情物語を堪能したのである。

いや〜面白かった!小路さんってこういうのも書くのかぁ〜と驚きながらも新鮮な気持ちで読んだ。正直最初に書かれている登場人物の多さに辟易したものの、そんな不安はどこへやら。ちょいと複雑な事情を抱えつつも、わいわい賑やかな家族たちにすっかり溶け込んでしまっていた。
何といってもお気に入りは我南人(「がなと」と読む)である。伝説のロッカー、らしい。ロックンローラーを愛する男、60歳である。「LOVEだねぇ」と語る彼はとっても素敵なんである。時々?なこともあるが、それも全て魅力のうち。飄々としていながら実はやるときゃやるのだ。金髪に染めた長髪を黒短髪にする場面があるのだが(私ここできゃー!と頬染めてしまった。きっとカッコ良いに違いないのだから!)ここのお話しが実に感動的。涙ほろりである。我南人さんちゃんと考えているし、家族のことも愛しているんだよねぇ。LOVEだねぇ。

ここでは春〜冬にかけての東京バンドワゴンが、いや堀田家が語られる。四季折々にちょいと風変わりな事件や謎が持ち上がりそれを解決する堀田家の面々。そして店の常連客たち。日常系ミステリになるのかな、それらが人情を絡めて気持ち良く解決されていく。綺麗にまとめられていて心地良くひとつひとつが収まってゆく。意地悪く言えば面白みがないのかもしれない。ここには悪人が存在しないから。だがこれでいいのである。だって小路さんの描く世界はいつだってそうなのだから。そして私もそれが好きなのだから。

やはり古本にまつわる話しは良い。わくわくする。ああ、いいな古本屋。大好きな神保町界隈を懐かしく思い少ししんみりしてしまった。
読み終えておもむろに物置部屋の本棚の前に立つ。奥にしまわれた古本を手に取る。中井英夫の『幻想博物館』。函入りの初版である。神保町にある小宮山書店で購入したもの。数年前に寄ったところこの初版本を見つけ即買いしたものである。『幻想博物館』の初版本と知ってしまったらもう書架に戻せなかった。そのまま大事に抱えて奥のレジへ持って行った。オレンジの函に収められた黒い表紙に銀文字のタイトル。どこの誰がこの本とともに過ごし、手放すに至ったか…そんな想像が出来るのは古本ならでは。古書店はいつどんな本とどんな出会いが出来るか分からない冒険の場所である。宝探しに胸躍らせるあの何ともいえない高揚感は一度味わってしまったら何度となく懐かしさでいっぱいになり胸疼く。私はまたそんな日が訪れるのを心待ちにしているのだ。

読了日:2006年7月27日


とっても素敵な作品でした。どうやら続くような感じですね。ぜひぜひ続編書いてください!小路さん。この作品はとにかく珈琲が飲みたくなります。読みながら何度も珈琲を入れに立ちました。今度はどんな事件が待ちうけているんでしょう。今から楽しみです(←続編が出るつもりになっている)
かりさ | 著者別さ行(小路幸也) | comments(16) | trackbacks(11) | 

『そこへ届くのは僕たちの声』小路幸也

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そこへ届くのは僕たちの声
小路幸也/新潮社
仲間の声に導かれて僕らは強くなる−。植物人間を覚醒させる人の噂と、奇妙な誘拐事件を結ぶ「ハヤブサ」というキーワード…。「見えざる力」を駆使して試練を乗り越える子供達の友情と勇気を描くファンタジック・ミステリー。
小路さんといえば、先月読んだ『HEARTBEAT』でも驚かされたばかりだったので、これはこのままミステリーでは終わらないな、と構えていたらやっぱり!でした。SF?ファンタジー?ミステリーっぽく始まった物語が徐々にあり得ない方向に流れる。そしていつの間にかあり得ないことでもこういうことってこの世のどこかできっとあるのかも…と思えてしまうのだから小路さんの作品は不思議である。

キーワードは「ハヤブサ」。定年を間近にした刑事が追っている事件の被害者が植物状態になってしまう。犯人を目撃していたかもしれない。何とか目覚めてもらえないだろうか…そんな気持ちで植物状態の患者を持つネットワーク経由で不思議な話しを聞く。何でも植物状態になった患者からのメッセージを受け取ったり、覚醒させたり出来る人物がいるようなのだ。その人物の名は「ハヤブサ」。
真山は交通事故により植物状態になった妻が奇跡的に回復した経験を本にしていた。出版を勧めたのが幼なじみで新聞記者である辻谷。ある日辻谷が不可解な誘拐事件の謎を持ち込んでくる。そこに関わってくる人物の名も「ハヤブサ」。
「ハヤブサ」とは一体誰?この疑問を解明すべく各々が立ち上がる。
そして震災で母を亡くし、父が植物状態になってしまったかほりには、幼少の頃から空耳らしき声が聞こえる。空耳というよりも空から声が聞こえてくるみたいだから「そらこえ」さん、と彼女は名付ける。この声はどこから聞こえるんだろう。何故聞こえるんだろう。

最初はミステリーなのかな?とこの行方にかなり期待。ところが今度は子供の視点が加わり、かほりの「そらこえ」になってくると方向性が違ってきた。あれれ、SFっぽくなってきたぞ…この不思議な物語の行方にもう目が離せなくなり一気にページを繰っていました。
星好きな子供たち。宇宙飛行士を夢見る男の子たち。天文台で語り合う彼らは妙に大人びて眩しい。やがて明らかになってくる謎。「ハヤブサ」の正体は意外と早く解明します。そしてこの後ゆるやかに流れていた空気が一気に終結に向けて引き締まり速度を増す。
子供たちに託された決断と勇気には胸を揺さぶられました。子供たちの姿が健気でぐっときました。小路さん独特の優しさとノスタルジーが彼らを包んで読み手も優しくなれる。素敵な作品でした。

読み終えてもう一度プロローグを読む。そうしてまた感動を得る。
地球を飛び越え宇宙に夢を乗せる彼らの声が聞こえてきそう。私にはもう無理なのだけど。

読了日:2005年8月18日



余談ですが…作中である女性がパッチワークをするシーンが幾度が出てきます。パッチワークが好きな私にとってそのシーンが出てくるたびにんまり。どんな布で、どんな色合いで、何を作っているのだろう…いろいろと想像しながら読んでいました。

そして、パッチワークと言えば森博嗣さんの『すべてがFになる』にもあるシーンでパッチワークキルトが出てきます(ちょっと意外だったのだけど)。ほんの数行の描写だし重要な道具でもないので見落とされがちですが、私にとっては忘れられないシーン。この時もどんな配色で作っていたのかなーとか、どんな思いで作っていたんだろう…などと妄想しながら読んでいたのを覚えています。パッチワークって幾何学模様を組み立てて作っていくものですからそう考えるとその人物が作っていたという事実に意外性を感じながらも、ある意味納得もいくなぁと思ったものです。
ストーリーとは別のところでついつい妄想してしまう私なのでした。
かりさ | 著者別さ行(小路幸也) | comments(6) | trackbacks(5) | 

『HEARTBEAT』小路幸也

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HEARTBEAT
小路幸也/東京創元社
約束を果たすため、ニューヨークの<暗闇>から帰ってきた青年が巡り合う少年少女たち、そして最高の「相棒」。約束と再会の物語。
参った。まさかこういう流れになるとは思いもしなかった。それは決して唐突に訪れたわけじゃない。確かにいくつかの伏線はあった。あったけど…こんなことって!
読了後の私の叫び。もう叫びました。ビックリしました。そして一転、静かに咽びました。

初恋の相手と10年後の再会の約束をした主人公。約束を果たすため、ニューヨークから帰国したが、彼女・ヤオは現れなかった。ヤオの代わりにやってきた夫と名乗る人物。その人物から知らされるヤオの失踪。何故失踪したのか?何故彼女はやって来なかったのか?ヤオを探そうと決意するも当てがない。そんな時思い出したのは昔マッチブックのカッコ良い点け方を教えてくれたかつての同級生・巡矢。この巡矢が実に良い。主人公を真摯に受け止め、ヤオを探す相棒として頼りになってくれる。ニューヨークでの壮絶な過去から這い上がって帰国した主人公は果たして彼女と再会出来るのか。幸せは訪れるのか…。
一方、元男爵家で財閥の孫、小学生のユーリ。父と死に別れ、母も死んでしまったと聞かされている。ある時母の幽霊が出たとの噂やユーリ自身も実際に声を聞いてしまう。果たしてその幽霊騒動の真相を探るべく、親友のエミィとハンマが立ち上がる。
この2つの物語が交互に語られていきます。やがてどう関わってくるのか…。

高校時代の思い出を共有する男女3人の青春と恋愛、ちょっとミステリ仕立てと言えばそれで終わってしまうのだけど、そこに訪れるあるものが衝撃を与えてくれます。いくつか散らばっていたはずの伏線も、この物語の行方が一体どうなるのか後半に近づくにつれて気が急いてすっかり見逃してしまいました。それ故に衝撃度の大きかったこと。そして作品全体に溢れる優しさに気がついたとき、妙に清々しい気持ちになっている自分を感じました。

小路さんはこれが初めての作品なのですが、ノスタルジックなセピア色の作風にすっかり惹きこまれてしまいました。
読み終えて「HEARTBEAT」のタイトルの意味、そこに添えられた「Can't you hear my Heartbeat? Can't you hear my Heartbeat?」の言葉にぐっとくる。

読了日:2005年7月27日
かりさ | 著者別さ行(小路幸也) | comments(14) | trackbacks(11) |