ひなたでゆるり

読書のコトとちょっぴり日々のコトブログ

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『赤い指』東野圭吾

赤い指 (講談社文庫)
赤い指
東野圭吾/講談社
少女の遺体が住宅街で発見された。捜査上に浮かんだ平凡な家族。一体どんな悪夢が彼等を狂わせたのか。「この家には、隠されている真実がある。それはこの家の中で、彼等自身の手によって明かされなければならない」。刑事・加賀恭一郎の謎めいた言葉の意味は?家族のあり方を問う直木賞受賞後第一作。

憤りと虚しさと哀れさが入り混じった感情がどうしようもない。
家庭の家族の崩壊を目の当たりにしていく祖母の思いは如何ほどか。
そして「赤い指」に込められた思いに胸が痛く、締め付けられました。

家族って親子って形作っていくのは難しいです。
私にも親があって子がいて、けれども完璧だなんて思えない。
必要以上に密でなくてもいいから相手を思いやったり、目を見て存在を確認して会話することの大切さを思いました。
子供は親にとって永遠に子供で親の存在は限りなく大きいのだ、ということも。
親が子を思う形のあまりにも身勝手さ。けれどもこれは物語だけでなく実際に起こりうることなのですよね。

修復不可能な家族にほんのわずかでも光を、との加賀の思いが優しく沁みます。
この冷たく重たい空気に温かさを与え、ここから結末にかけてじんわりと温度が増し流れるのです。
親子のさまざまな形にしみじみ考えさせられます。
もうひとつの親子の絆に哀しく切ないけれど救われました。

読了日:2010年12月31日
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『新参者』東野圭吾

新参者
新参者
東野圭吾/講談社
日本橋。江戸の匂いも残るこの町の一角で発見された、ひとり暮らしの四十代女性の絞殺死体。「どうして、あんなにいい人が…」周囲がこう声を重ねる彼女の身に何が起きていたのか。着任したばかりの刑事・加賀恭一郎は、事件の謎を解き明かすため、未知の土地を歩き回る。

加賀恭一郎シリーズを全て読んでないので(短編「嘘をもうひとつだけ」1冊)、まだ読む予定はなかったのですがたまたま見たドラマがですね、すごく良くて(いや〜うるうるきちゃったんです、2話とか3話とか)これは原作読んでからドラマを楽しみたいということで読みました。
良かった!人形町で起きた事件を巡ってさまざまな人間模様が情緒溢れる筆致で描かれていて素晴らしかった。
殺人事件から始まる物語ですが、各章で登場する人物のそれぞれの生きざまがとても素敵に描かれていて、1章1章じ〜んと。人情溢れる町ならではの人々の暮らしが殊のほか温かくて。
じんわり温かさと苦々しさが灯る読後感でした。

人形町といえば私は水天宮。
4人の子たちみんな出産前に水天宮へお参りに行って安産祈願をしました。
仔犬もその都度なでてきて。
1歳になったチビ息子のお礼参りにまだ行っていないので近々行こうと思っているところ。もうちょっと早めに行っていればもしかしたらドラマロケに出会えたかしら、なんて。

加賀がこれまでどんな事件と関わってきたのか、俄然興味が湧きましたのでシリーズを追いかけてみます。

読了日:2010年4月29日

【加賀恭一郎シリーズ】
『卒業』
『眠りの森』
『どちらかが彼女を殺した』
『悪意』
『私が彼を殺した』
『嘘をもうひとつだけ』
『赤い指』
『新参者』
卒業 (講談社文庫)眠りの森 (講談社文庫)どちらかが彼女を殺した (講談社文庫)悪意 (講談社文庫)私が彼を殺した (講談社文庫)嘘をもうひとつだけ (講談社文庫)赤い指 (講談社文庫)新参者
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『さまよう刃』東野圭吾

さまよう刃 (角川文庫)
さまよう刃
東野圭吾/角川文庫
自分の子供が殺されたら、あなたは復讐しますか?
長峰重樹の娘、絵摩の死体が荒川の下流で発見される。犯人を告げる一本の密告電話が長峰の元に入った。それを聞いた長峰は半信半疑のまま、娘の復讐に動き出す――。遺族の復讐と少年犯罪をテーマにした問題作。

7月始めに購入し、ぱらぱらと読み始めたら思いのほかどっぷりと入り込んでどどどっと一気読み。ものすごい不快感を感じながらも引き付けられてしまいました。
内容の濃さと、理不尽さと、あの結末。ああ、重い。

これは小説の中のことだから、とは割り切れないリアルなことですよね。
私は子供を産むたびに、実は嬉しいばかりでなく不安も大いに感じていて、そのない交ぜな気持ちで子育てを始めるのですけど、いくら何事もなく順調に育って成長してくれますようにと願っても、あるいはそう育ててもいつ何時被害者になるかわからないし、逆にいつ加害者になることもあるかもしれないし、それは子供がどんどん成長するごとに迫ってきて時々深く考えてしまうテーマであります。

もしも息子や娘の身に何かあったら、それが他人の手で命を奪われるようなことになったら、そうしたら私はどうするだろう。やっぱり犯人をこの手で同じ目にあわせてやりたい衝動に駆られるに違いないと思う。
でもそれが正義のための復讐であっても人を殺めることはどんな理由があるにせよ犯罪であり、罪を増やすだけであり。でもね、実際になったらそんなこと冷静には考えられないと思う、きっと。
なんだかそんな悶々とした気持ちで読んで、それは深くなるばかりで晴れることはなくて、で、あの結末。

未成年の犯罪を絡めてよりテーマを重たく複雑にし、読者に問題提起する。
いやはや見事にその東野さんの手中にはまってしまったのかも。
読後はどんより重たくて、しばらく思考が堂々巡りでした。

読了日:2008年7月2日
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『幻夜』東野圭吾

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幻夜
東野圭吾/集英社
1995年、西宮。父の通夜の翌朝起きた未曾有の大地震。狂騒の中、男と女は出会った。美しく冷徹なヒロインと、彼女の意のままに動く男。女の過去に疑念を持つ刑事。彼女は一体誰なのだ…。

圧巻、としか言いようがない。美冬の徹底振りには天晴れとも思う。
ため息をつくがそれは『白夜行』を読み終えた時についたものとは種類が異なる。やり切れない…そんな思いが広がり憂鬱にさせる。

『白夜行』に関連性があるということでなるほどな、と納得。と同時に『幻夜』を読んでしまったために『白夜行』への印象が少し変わってしまったのは残念。それは美冬のあまりにも残酷な面が描かれ過ぎているせいでもある。逆にそこがこの作品の醍醐味なのだろうけれども。もしかしたら『白夜行』と『幻夜』読む順番を逆にしたら先入観なしに読めたのかもしれない、とふと思った。読む順番により作品の印象はかなり変わってくるはずである。もちろん『幻夜』も楽しめたには違いないが、もしかしたらこれを読まなかったら『白夜行』に感じた虚しさの中にも静かに広がる感動が薄れることはなかったかもしれないのに。…これはあくまでも私の感想であるが。

もう一つ、思うこと。この作品の冒頭に描かれる阪神淡路大震災のこと。女である私にとって見過ごせない箇所がある。公にされてはいないけれど当時女性にとってはかなり過酷な現状であったことは確かなようである。そこから芽生える嫌悪感を引きずって読んでしまったこと、その嫌悪感が常に付きまとったために美冬のやり方にも同じように嫌悪感を感じてしまったこと、結果読後はその思いを拭い去れずにいることは否めない。

女であることの悲しさが根底にあるのだけど、美冬はそれを武器にしてのし上がっていく。強かな彼女でも一人思うことはあるのだろうか。彼女の内情をもっと知りたい。そしてここまで来たらどこまで突き進んで行くのか見届けてやりたいと思う。

それにしても一番の犠牲者であるあの人物のことを思うと何ともやり切れない。ただただ暗く重たい空気が立ち込めるばかりである。
不気味なラストがざわざわと気味悪く音を立てる。

読了日:2006年1月23日

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『白夜行』感想(2006/1/16)
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『白夜行』東野圭吾

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白夜行
東野圭吾/集英社文庫
19年前の大阪の質屋殺し。迷宮入りしたこの事件に関係した少年と少女が歩んだ道は…。絶望の白い光の中、魂の荒野を行く男と女を、叙事詩的スケールで描く傑作ミステリー長篇。

本を閉じてついたため息が思いのほか深く長いことに驚く。そしてまた無意識にため息をつく。さっきから何度繰り返したことだろう。薄ぼんやりとした暗がりの中をずっと歩いているような感覚を味わいながら読んでいた。真相が分かってもなお釈然とせずむしろ広がった霧はさらに濃くなっていく。虚無感に襲われ抜け殻のようになってしまっている。

亮司と雪穂を思うと切なく悲しい思いがいっぱいに広がるばかり。こんな読後感を味わったことあっただろうか。それは彼らの胸の内が一切語られないことにある。彼らがどんな思いをしながらその人生を歩んできたか読み手には想像するしかない。彼らの目に映るものを理解出来ても、彼らの思考は全く伝わってこない。事件の真相が明かされてもそれが彼らによって語られない限り、真実とは決して言えない。根底に漂う澱はずっと沈んだままなのだ。
この作品に対してはずっと霞がかったまんまで晴れることはないのだろうけど、こういう描き方もあるのかと開眼させられた意味でも素晴らしい作品に出会えて感謝している。ずっと手元に置き、折にふれ再読したいと思わせる作品である。

白夜行…ただただ虚しい。これに尽きる。

読了日:2006年1月16日

先週からドラマが始まりました。その触りを宣伝で見てしまったのですが、原作を読んで始めて「あーここから始まるのか…」と意外な感想を持ちました。読んでいる最中は一体どんな風に映像化されるのか、非常に楽しみだったのですが(現時点で先週分は録画していますし)いざ読み終えてみると何となくこのままそっとしておいて欲しいような、それでも映像を見てみたいような複雑な思いがしています。自分の中で完成されたものが崩される恐怖感が沸々と湧いているのです。でも…見てしまうんだろうなぁ。
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『予知夢』東野圭吾

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予知夢
東野圭吾/文藝春秋
深夜、16歳の少女の部屋に男が侵入し、気がついた母親が猟銃を発砲した。とりおさえられた男は、17年前に少女と結ばれる夢を見たと主張。その証拠は、男が小学四年生の時に書いた作文。果たして偶然か、妄想か…。常識ではありえない事件を、天才物理学者・湯川が解明する、人気連作ミステリー第二弾。

ガリレオシリーズ2作目。
「夢想る」「霊視る」「騒霊ぐ」「絞殺る」「予知る」5編の連作短編集。
1作目の『探偵ガリレオ』より好きかもしれない。それはきっと湯川と草薙コンビに愛着を持ち始めたからかもしれませんが、今作はオカルト色が前作よりも強く、また登場人物達の内面がかなり良く描かれていたから、と思う。読みやすくなったということかな。でも湯川の理系な解釈云々も好きだったのでそれが薄れてしまっていたのは残念。

今回は5編のうちどれが好きとかの突出したものはなかったものの、ラストが好きなのは「予知る」。「騒霊ぐ」「絞殺る」は予想外の展開。特に「絞殺る」はあまりに悲しくどうしてそんな選択を…と思わずにはいられない。

物理学者+オカルト漂う事件+科学的に解明する…読んでいるうちにこれって「トリック」(ドラマや映画になった)に似ているなぁ、なんて思ってました。ただし、物理学者の性格が全く違いますけど。ガリレオシリーズのドラマなんてのも是非見てみたい。
もちろん湯川はあの人でしょう(佐野史郎さん)。
さて、この後『容疑者Xの献身』に続くわけです。私はこの初の長編を先に読んでしまいましたが、1作目、2作目を読み終えてまた3作目を読むと違った視点で湯川や草薙を見ることが出来るかもしれません。折を見て再読してみようと思います。

読了日:2005年12月26日

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『探偵ガリレオ』東野圭吾

4167110075探偵ガリレオ
東野 圭吾
文藝春秋
2002-02

by G-Tools


突然、燃え上がった若者の頭、心臓だけ腐った男の死体、池に浮んだデスマスク、幽体離脱した少年…警視庁捜査一課の草薙俊平が、説明のつかない難事件にぶつかったとき、必ず訪ねる友人がいる。帝都大学理工学部物理学科助教授・湯川学。常識を超えた謎に天才科学者が挑む、連作ミステリーのシリーズ第一作。

「燃える」「転写る」「壊死る」「爆ぜる」「離脱る」5編の連作短編集。
警視庁捜査一課の草薙が解明しにくい事件に直面した時、訪ねるのが友人である帝都大学理工学部物理学科助教授の湯川学・ガリレオ先生。不思議な事件を科学で解明する様は実にお見事!草薙と同じく理系でない私でも分かりやすく面白く読める。しかもへぇ〜なんて感心すること然り。予想以上に面白いです、これ。
どの事件も摩訶不思議な現象であり、時にはオカルトチックな雰囲気さえ漂わせている。果たしてどう湯川が解明していくのか…。そして湯川と草薙、また彼らの他に登場する魅力的なキャラたち。短編ながらも充分楽しめました。以下各編の感想を〜。

「燃える」 湯川と草薙が再会し、初めて湯川が事件解明をする事件。動機と犯行は同情するものがあり、ラストも物悲しい。
「転写る」 オチが一番好きな話し。ちょっと不気味さを感じる事件でも湯川にかかれば…。池の中から見つかった金属マスクは一体どうやって出来上がったのか、その湯川の説明になるほどー、とひたすら感心でした。
「壊死る」 これ怖いですよ。簡単に殺害出来ちゃうじゃないですか。それにしてもちょっとしたキーワードで殺害方法を当ててしまう湯川に驚き。
「爆ぜる」 冒頭から一体どうなったの!?とドキドキ。動機はちょっとあれですが(同情も出来ない)、その殺害方法がすごい。一般人には到底思いつかない方法。それにしてもこんな理由で狙われるなんて最悪だな。
「離脱る」 ここで登場する弓削刑事が面白くて好き。もっともっと彼の思いつきをしゃべって欲しいくらい。ここでは幽体離脱か?の謎に挑む湯川ですが、果たして謎は解明出来るのか!なかなか面白い実験が読めて興味深いです。
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短編ということで、事件解明や犯人逮捕が唐突なのだけど、それでも魅力的に感じるのは天才物理学者・湯川の存在があるからなのだろう。
そして、湯川学のモデルとなった佐野史郎さんが文庫で解説を書かれています。これがまた読み応えあり、です。

読了日:2005年12月22日
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『容疑者Xの献身』東野圭吾

4163238603容疑者Xの献身
東野 圭吾
文藝春秋
2005-08-25

by G-Tools


数学だけが生きがいだった男の純愛ミステリ
天才数学者でありながらさえない高校教師に甘んじる石神は愛した女を守るため完全犯罪を目論む。湯川は果たして真実に迫れるか

まさに献身−純愛とはこういうもののことを言うんだな、としみじみ。ミステリーを読みながら泣くということはここ最近なかったが(たぶん。しょっちゅう泣いているので記憶は定かではないが)もう〜ラストははらはらと涙が零れ落ちた。頬を伝う涙ではない、大粒の涙が零れるように。タイトルに全てが刻まれている。深い深いある数学者の愛。

本書を読み始めてすぐ"湯川学"の名前を見つけたとき、「しまったー、これガリレオシリーズだったかー(>_<)」と躊躇したものの(湯川シリーズは未読。シリーズものは順番に制覇したいので)、のっけからぐいぐい惹きつけられていたため気にせず読み進んだ。ああ、でもやっぱり湯川というキャラクター、友人である刑事・草薙との関係など熟知してから本書を読んでいたらまた違ったのだろうな、と悔やまれる。湯川の苦悩がより迫ってきたと思うのだ。もちろん本書から読んでも何ら差し障りはない(と、思う)。

殺人事件が起き、冒頭から犯人がわかっているとそのトリックやアリバイをどう崩していくのかが醍醐味であるのだが、今回は数学という個人的に未知な世界が加わり(ええ、苦手です)、さらに物理学者が事件を解決するという数学者と物理学者の対決が面白くさせる。犯人がわかっていることでそれぞれの思いや苦悩が浮き彫りになり、読み応えもある。そして驚愕のトリック!そうまでして人を愛することが出来るのか、と自問自答しながらもその愛の深さに、彼の不器用な思いに涙せずにはいられなかった。ただ、一方で冷めた見方をすると第三者から見ればこの思いというのは異常さを孕んでもいる。深さも重さに変わったら純愛といえども違う形に変わってしまう。そんな紙一重の愛情は描き方によって大きく変わることだろう。切ないけれどあのラストを描いたことを私は賞賛する。

先日このミス2006年版の1位に輝いた。「堂々の1位」という言葉には大いに納得。
これはすごかった!という熱い思いよりも、波紋のように広がる静かな感動。そうして今これを書きながら数学者・石神の無償の愛を切なく思うのである。

読了日:2005年12月11日

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