ひなたでゆるり

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『開かせていただき光栄です』皆川博子

開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU― (ハヤカワ・ミステリワールド)
開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―
皆川博子/早川書房
18世紀ロンドン。外科医ダニエルの解剖教室から、あるはずのない屍体が発見された。四肢を切断された少年と顔を潰された男性。増える屍体に戸惑うダニエルと弟子たちに、治安判事は捜査協力を要請する。だが背後には、詩人志望の少年の辿った稀覯本をめぐる恐るべき運命が…解剖学が先端科学であると同時に偏見にも晒された時代。そんな時代の落とし子たちがときに可笑しくも哀しい不可能犯罪に挑む。

舞台は18世紀ロンドン。
外科医ダニエルの解剖教室で増殖する屍体。その屍体は異様な姿で発見された。
あるはずのない屍体の謎。18世紀という舞台もうっとりですが、解剖学教室の面々の魅力的なこと。
不可能犯罪の解明に挑むダニエルと弟子たち、そして盲目の判事の公正でかつ鮮やかな捜査と推理。
詩人を夢見る少年の運命。闇に挑む彼らが辿り着いた真相とは。

退廃的で妖しい雰囲気の中に醸しだされる耽美さに酔いました。
読み終えてなお深まる哀しみにしみじみ浸っています。装丁画がとても美しい。
皆川さん作品を読めることは至上の幸福と喜び。

読了日:2011年8月25日
かりさ | 著者別ま行(皆川博子) | comments(0) | trackbacks(0) | 

『倒立する塔の殺人』皆川博子

倒立する塔の殺人 (ミステリーYA!)
倒立する塔の殺人
皆川博子/理論社(ミステリーYA!)
戦時中のミッションスクール。図書館の本の中にまぎれて、ひっそり置かれた美しいノート。蔓薔薇模様の囲みの中には、タイトルだけが記されている。『倒立する塔の殺人』。少女たちの間では、小説の回し書きが流行していた。ノートに出会った者は続きを書き継ぐ。手から手へと、物語はめぐり、想いもめぐる。やがてひとりの少女の不思議な死をきっかけに、物語は驚くべき結末を迎える…。物語が物語を生み、秘められた思惑が絡み合う。万華鏡のように美しい幻想的な物語。
皆川さんの紡ぐ言葉、文体、なんでこんなにも魅了されてしまうのでしょうか。
装丁の美しさに惹かれつつ読み始めてみればその香り高き妖艶な調べにうっとりと魅せられてしまう。幻想物語にミステリが融合され、それだけでもわくわくするのですが魅惑的な美しさにもくらくらしてしまいました。

戦中から終戦の時代背景にあっても、いや、だからこそなのかもしれないけれど、乙女たちの凛とした強さと美しさにハッとさせられます。生死が隣り合わせになっているからこその儚さがこの物語と調和していたように思います。
ここに登場する少女たちのたくましい空想力は、培ってきた知識から成るものでその知識はさまざまな書物や絵画から得られた宝石です。その高貴なこと。
今の時代に生きる少女たちにはもうきっと望めないことなのかもしれません。
だからこそ皆川さんはこの作品を通して伝えたいことを描いたのかな、と思うのです。

さて、その少女たちの物語は謎めいていてこの謎解きも楽しめるのですが、果たしてその謎がどう明かされていくのかその過程も堪能出来ました。ひとつひとつ散りばめられた謎が結末に向けて結ばれていくさまでさえも色香漂うのです。
作中に引用されている作品たちにも興味を惹かれます。恥ずかしながらタイトルだけしか知らなかったり、作者だけしか知らないという作品ばかりで読んでいないことを恥じました。今からでも決して遅くはないですよね。

装丁の美しさは格別。いろんな意味で素晴らしい。

読了日:2009年1月23日
かりさ | 著者別ま行(皆川博子) | comments(0) | trackbacks(1) | 

『鳥少年』皆川博子

鳥少年
鳥少年
皆川博子/徳間書店
私の中に巣喰う狂気が、さまざまな夢を見させる―さらなる広がりと魅力を増した皆川博子の恐怖世界。妖しくも美しい、十三の不思議な物語。
「火焔樹の下で」「卵」「血浴み」「指」「黒蝶」「密室遊戯」「坩堝」「サイレント・ナイト」「魔女」「緑金譜」「滝姫」「ゆびきり」「鳥少年」13編の短編集。

う〜ん、やっぱりいい。皆川さんの世界は好き、大好き。

ここのところ読書が出来なくて、久方ぶりに少しの余裕が出来て本を読もうと自然に選んだのが皆川さんの『鳥少年』。
たぶん最も今欲していたのが皆川さんの作品だったんだろうな、時間を置くと本を読むペースだったりその世界に入り込む時間だったりが少し気持ちとずれてはがゆいこともあるのだけど、皆川さんの世界はあっという間に惹き込んでくれる。

まず最初の「火焔樹の下で」から一歩踏み出したらもう後戻り出来なくて、例えば恐怖館に入って怖い、怖い、と恐怖に震えながらも先に歩を進めずにいられないという、そしてその先を知ってさらなる渦にぐるぐるされてしまうという、この何とも言えない感覚がもう快感。
「火焔樹の下で」「卵」「指」「密室遊戯」「サイレント・ナイト」「ゆびきり」「鳥少年」がお気に入り。特に「火焔樹の下で」「卵」「密室遊戯」は読み終えても余韻が残る結末で(どの作品も余韻は色濃いのだけど)壮絶なリアル感を読み手に与えるものだからそこがもうたまらなくいい。

無駄のない言葉選び、その言葉が紡ぐ文章、そこから立ち上る妖艶な香り。妖しく艶やかなそれは時を経ても色褪せるどころかさらに色濃さを放っているんじゃないかと。
この『鳥少年』は70年代、80年代に発表された作品を中心とした、単行本未収録短編集で、これらの秀逸な作品たちが未収録だったということにまず信じがたい気持ちであると同時に『鳥少年』としてこうして読ませてもらえたことが本当に嬉しい。
ぼちぼちと皆川さんの作品に触れるたびに「好き、大好き」がさらにさらに増していってまだ未読の作品もどんなにか陶酔させてくれるんだろうか、とそれはもう楽しみ。

北見さんの装丁も皆川さんの雰囲気にぴたりと合っていて魅せられる。
かりさ | 著者別ま行(皆川博子) | comments(0) | trackbacks(0) | 

『猫舌男爵』皆川博子

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猫舌男爵
皆川博子/講談社
「猫舌男爵」とは、棘のある舌を持った残虐冷酷な男爵が清純な乙女を苛む物語…? 爆笑、幻惑、そして戦慄。小説の無限の可能性を示す、瞠目すべき作品世界。表題作ほか4編を収録した短編集。

「水葬楽」「猫舌男爵」「オムレツ少年の儀式」「睡蓮」「太陽馬」の短編5編。タイトルからしていろいろと妄想してしまいそう。

『たまご猫』以来の皆川作品はやはり心地良く誘ってくれた。幻想あり、ユーモアあり、皆川さんの紡ぎだす様々な手法が堪能出来る1冊。
特にお気に入りなのは「水葬楽」と「猫舌男爵」。「水葬楽」の何とも言えない喪失感はたまらない。そしてこの世界観もかなり好み。BGMとしている(Back Grand Poemと書かれているが)詩句がこの世界観に実に良く合っている。ヴィクトル・ユーゴーの「墓と薔薇」をもっともっと読んでみたい。そういえばレ・ミゼラブルも子供の頃に読んだきりだ。
哀しいのだけど、希望はある。喪失を埋める術はないのだけど。

「猫舌男爵」も幻想もの?と思いながら読んだらこれが面白いくらい笑えるものだった。ヤン・ジェロムスキが日本の短編集を翻訳した顛末を書いたものなのだが、まぁ詰まるところ翻訳って難しいよね…(笑)。

どちらかというと現実的なものよりは妄想を限りなく膨らませられる幻想ものが好きな私とっては、本書は隅々まで楽しめる。淡々と描かれた独自の世界…その静謐さがとても心地良い。

読了日:2006年2月8日

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『たまご猫』感想(2001/5/7)
かりさ | 著者別ま行(皆川博子) | comments(2) | trackbacks(2) | 

『たまご猫』皆川博子

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たまご猫
皆川博子/ハヤカワ文庫
遺書さえものこさずに自殺してしまった姉が、いたずらに鉛筆で紙に書き散らしていた"クライン・キャット"という謎めいた文字。この奇妙な言葉だけを頼りに、生前には知りえなかった姉の素顔をさぐろうとした妹を待ちうける、不可解な恐怖の正体とは?日常生活にぽっかりとひらいた陥穽を描いた表題作「たまご猫」をはじめとして、夢とうつつの狭間に生じる不条理を題材とした、妖しくも美しい、10篇の恐怖のかたち。(Amazon紹介文より)
『たまご猫』読了。
「たまご猫」「をぐり」「厨子王」「春の滅び」「朱の檻」「おもいで・ララバイ」「アズ・タイム・ゴーズ・バイ」「雪物語」「水の館」「骨董屋」の10編からなる短編集。幻想的な幽霊綺譚という感じでした。著者は「幽霊小説」と呼んでいるそうですが、なるほどそのほうがしっくりくるかも。さほどオドロオドロしい感じがしないことからホラーというよりも耽美、幻想、という言葉が浮かびます。静かな恐怖感というのでしょうか、すーっと背をなでられるような感覚です。歪んだ空間に交差された感情、異世界、そしてそこから生まれる錯覚。好きな世界です。

読了日:2001年5月7日
かりさ | 著者別ま行(皆川博子) | comments(0) | trackbacks(0) |