ひなたでゆるり

読書のコトとちょっぴり日々のコトブログ

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『お好みの本、入荷しました』桜庭一樹

お好みの本、入荷しました (桜庭一樹読書日記)
お好みの本、入荷しました
桜庭一樹/東京創元社
作家サクラバカズキは、本と一緒にお風呂に入る。毎日毎日本を読みつつ、ラスベガスへ、アイルランドへ、そして鳥取へ、稀代の読書魔は世界をめぐる!そして突然の結婚に至るまで。『私の男』『赤朽葉家の伝説』『製鉄天使』の桜庭一樹が縦横無尽に読んで過ごした一年間。

またまた読みたい本がドカドカ増えそうです。嬉しい悲鳴。
WEBの「桜庭一樹読書日記」も毎月楽しみに読んでいますけど、こうして本になって何が楽しみかというと下段に書かれる註。これがすごく参考になるのです。桜庭さんや編集者さんのつぶやきもボソッと入っているところも面白い。

そしてそして今作もやっぱり良い。本好きの心をくすぐること!
本読みたいの気持ちをさらに高めてくれてついでに本も増えそうで、怖い。けど嬉しい。
読みながら気になった本、話題などに付箋をダダダッと貼って、2回目にメモしまくる。
チェック本がこれでもかとあって、それを古書店で探すか、図書館で探すことの行為がまた楽しいのですよねぇ。とにかく知らなかった古い作品を知ることが出来るのは幸せ。

それにしても桜庭さんも編集者の方々も知識の豊富さとそして記憶力!
読んだ作品のいちいちをちゃんと事細かに覚えて会話にさらりと入れることのカッコ良さ。
古い本のことだったら結構さらっと思い出して内容も言えるのですけど(読んだ時の環境や状況も思い出せることさえ)、ここ最近読んだ本については本当に思い出せるのは限られてきていて。
それはバタバタとした中で無理やり読んでいるから?じっくり本と向き合っていないから?
それでも桜庭さんや編集者さんたちの読書量は半端なく多いのですから、それはやっぱり記憶力の低下、なんでしょうかね。
年々脳が衰えて記憶のネジが壊れかけている私、その衰えぶりと比較して落ち込むのでした…。

本を読むことの楽しさを改めて実感させてくれる桜庭さん読書日記です。

読了日:2010年1月19日
かりさ | 著者別さ行(桜庭一樹) | comments(0) | trackbacks(0) | 

『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』桜庭一樹

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない―A Lollypop or A Bullet
砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない
桜庭一樹/富士見書房
どこにも行く場所がなく、そしてどこかに逃げたいと思っていた。そんな13歳の二人の少女が出会った。リアリストの山田なぎさと不思議系転校生の海野藻屑。すべては生きるために、生き残っていくために。
冒頭から衝撃を受けます。
この物語の行く末が分かってしまってからの始まりは痛く辛い。
海野藻屑の未来が決して明るくはないことを最初から突きつけているのだもの。
読み進めば進むほど、ただただ痛さが増して息苦しい。

箱のような小さな田舎町で生まれ育ち、早く大人になって戦う手段をこの手に持って、そう兵士になって実弾を。高校にいかず早く社会に出て大人になりたい。そんな山田なぎさと自らを人魚と言い張る転校生・海野藻屑。
藻屑も現状から逃げたかったんだろうか。助けを求めていたんだろうか。
でも「好きって絶望だよね」という言葉にはただただ父が好きでそばにいたくて、自分をちゃんと認めて欲しくて、でもきっと叶わない。諦めのようなそんな悲壮感が漂っていてもうそれがどんなにか胸を締めつけるか。

多感期の少女の世界。実弾。砂糖菓子の弾丸。強烈すぎる結末。
子は親を選べないのだよね。で、どんな場合であっても子は親の所有物じゃない。
子供は現状から逃げたくても逃げる術を持たない。この世にどれほどの悲しみを背負った子供がいるんだろう。大好きなお父さんやお母さんに打たれて体も心もズタズタにされてもなお彼らは親から逃れられない。いや、それでも好きだから、大好きだから逃げるという手段を知らない。
親も未熟、子をどう愛していいか分からない悲劇。

なぎさの母親もきっと未熟なんだろうな。息子をどう扱っていいかわからずおろおろするだけ。そんな母親を一喝する担任教師の涙が辛かった。頼りない彼が実は一番まともだったのかも。

「子供はみんな兵士で、この世は生き残りゲームで。」
まさに子供の世界は厳しく生きるのも楽じゃない。小さな心で懸命に考え、行動し、足掻く。
かつては少女だった私。今は子を産み親である私。私は子を所有物としていないか、子を冷たい風に吹きさらしていないか、でもぬくぬくぬるま湯に浸からせていないか。悶々と考えてしまう。

なぎさの最後の独白は棘のように突き刺さってきっと当分抜けそうにありません。

関連記事:『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』杉基イクラ

【追記】
すごく好きです。痛くて苦しいのだけど、少女のダークな部分が丁寧に描かれていて、素晴らしい。見事に自分のツボにはまってしまいました。傑作です。
この作品でさらに桜庭さんが好きになりました。彼女の作品も好きだけど、人間も好き。
話し方も、可愛らしい所作も、面白い一面も。
そして何よりもこれまで蓄積された膨大な読書の歴史。
桜庭さんの魅力の土台として非常に惹かれるものがあるのです。
かりさ | 著者別さ行(桜庭一樹) | comments(8) | trackbacks(4) | 

『私の男』桜庭一樹

私の男
私の男
桜庭一樹/文藝春秋
お父さんからは夜の匂いがした。
狂気にみちた愛のもとでは善と悪の境もない。暗い北の海から逃げてきた父と娘の過去を、美しく力強い筆致で抉りだす著者の真骨頂『私の男』。
凄かった。圧巻だった。読み進むごとに二人の過去を追ううちに言葉を失い沈みゆく。

見え隠れする大きな闇、あるいは怪物、その正体と謎が始めは曖昧にぼぅっと佇む。
次第にその正体が形相が暴かれていくうちに私の奥の何かがざわついて落ち着かなくなる。あり得ない、あり得ないけれどこの自然さは何だろう。ねっとりと絡みつくこの物体を見て静かに傍観している自分が怖かった。けれどここに在る女と男の営みはやがて明かされていく二人の過去によってその得体のしれない何かが怖さを増すというよりも哀しくて哀れな切ない気持ちでぎゅっと締め付けられる。何でだろう、何でなんだろう。否定よりも肯定している自分が不思議でならない。さっきから問い続けているけれど答えは闇に紛れていくばかりで、途方に暮れる。

ぽんっと始めに置かれる現在の花と淳悟の、娘と義父のそれは何やら秘密めいていて気持ちをざわつかせる。それは花と淳悟を取り囲む人たちも不安にさせる。この二人に関わったらまるで二人から漂ってくる闇をかぶってしまうかのように。
その心をざわつかせる原因であるだろう、二人の秘密だったりぽつんぽつんと置かれていく謎だったりが章を変えて、一人称で語られる。それは花の視点だったり、淳悟だったり、小町だったり。それぞれの開き始める箱を見てはいけない、暴いてはいけない、と嫌な予感を感じながらも突き進むしかない強力な吸引力。禁忌なものはどこまでも人間を捕らえて離さない。嫌だ、とその足を止めようとしても一方で見届けねば、と強く引っ張る好奇心もむくりと起き上がる。
特に小町の視点で書かれた花と淳悟の慈しみあうさまが、それまで二人の世界に慣れてしまった読者を客観的に戻しハッと目覚めさせる。そうしてどこか歪んだ二人の世界が狂気のものとして映し出される。

冬のオホーツク海の描写が圧巻。凍てつく寒さが心臓をきゅっと縮めて息苦しくなる。それは花の、淳悟の、互いを思う切ない気持ちや時折襲うであろう罪の恐れがこちらにまで伝わるからだろうか。私があまりにもこの二人に感情を入れ込んでしまったからだろうか。

現在から過去へ。そうして明かされていく謎。この構成が素晴らしい。各章で語らせる人物の選択も巧みである。最終章を読み、そうしてまた冒頭へ戻ってみる。そうしてみて初めて時間という抗いようのない切なさ、哀しみがひたひたと押し寄せてくる。
朽ちていくもの、奪うものを失った虚無感。それが所在無くそこに留まって澱となる。

読了日:2007年12月8日


桜庭さん作品のもしかしたら今まで読んだ中で、一番衝撃的なものであり、好きな作品かもしれません。かもしれません、と曖昧に書くのは「好き」と言ってしまうほどじゃぁ好きかと自分に問うてみると果たして声高らかに「好き!」と言ってしまっていいんだろうか、という戸惑いがあるからです。でも一番、です(今のところね)。
それほどまでに凄まじく狂気に満ちた愛がここにありました。狂おしく欲し、奪い合う愛。
私の男、と花は言います。私のおとうさん、と続けて言います。そこには決して越えてはならないものがあるはずで、でも彼らは軽々と何の疑問も躊躇もなく越えてしまいます。その自然さは何だろうか、と違和感を常に感じながら読んでいくと答えがぽつぽつと見え始めて「ああ、そうか。そうだったんだ」とこれは納得してはいけないのでしょうけど、納得してしまう、それだけの深い繋がりがぐっと迫ってきます。読み手は冷静に客観的に読んでいると思いながらも、知らずにこの狂気に満ちたものに魅せられてしまうのかもしれません。
桜庭さんの紡ぐ言葉ひとつひとつ、冬のオホーツク海の圧倒的な存在感、奥尻島の一夜、場面場面の描写に渾身がこめられてそれこそ桜庭さんの血の滲むような跡が感じられて、だからこそ凄みがひしひしと伝わってくるのかもしれない、と思うのです。
最終章はとにかく辛くて、胸が詰まって、花の憎しみが痛々しい。やがてそれを救った淳悟の絶対的な存在として君臨していく様は物凄いものがありました。

桜庭さんが『桜庭一樹読書日記』の中でこの作品を執筆している様子を書かれていますが、その様子を読んで一体どんな作品を、これほどまでの思いをして書かれているのだろうか、とずっと気になっていたのですが…なるほど、と思いました。
それだけの思いが込められた作品、この濃密な世界は強い印象を残していつまでも薄れることはないかもしれません。
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かりさ | 著者別さ行(桜庭一樹) | comments(32) | trackbacks(19) | 

『青年のための読書クラブ』桜庭一樹

青年のための読書クラブ
青年のための読書クラブ
桜庭一樹/新潮社
東京・山の手の伝統あるお嬢様学校、聖マリアナ学園。校内の異端者だけが集う「読書クラブ」には、長きにわたって語り継がれる秘密の〈クラブ誌〉があった。そこには学園史上抹消された数々の珍事件が、名もない女生徒たちによって脈々と記録され続けていた――。今もっとも注目の奇才が放つ、史上最強にアヴァンギャルドな“桜の園”の100年間。
ああ、ごめんなさい。読み始めてからちらちら見え隠れするものを払拭しようとすればするほどどうしても拭い去ることが出来なかった。したがって私のこの作品の印象はあるアニメのものに重なってしまった。
「少女革命ウテナ」。もう10年前になるんですなぁ、コレ。リアルタイムで見ていましたがかなりのインパクトな作品で未だにあの世界観はどっぷりと脳にこびりついております。…とこのままだらだらとウテナのことについて書いていても仕方あるまい。

さて、桜庭さんの新作『青年のための読書クラブ』である。装丁がまずうっとり綺麗〜。切り絵のようなデザインが目を惹く(ああ、この切り絵もねぇ、彷彿とさせるものが…分かる人だけ頷いていてくだされ)。そしてこの聖マリアナ学園の世界がもう!もう!ツボでございました。
私が桜庭さんの作品と出会ったのは『GOSICK』。ここに登場する聖マルグリット学園を思わせたりなんかして、そしてGOSICKの世界の雰囲気をどことなく漂わせていて(と私が勝手に思っているだけなのだが)そんなこんなでかなり心地良く堪能していた。とは言いながら『GOSICK』シリーズ、たった1冊しか読んでないのだが。いつか読もうと思いつつ時は無情にも流れるのであった。

聖マリアナ学園にひっそりと存在する「読書クラブ」。先輩から後輩へと語り受け継がれる秘密のクラブ誌。ここに書かれた聖マリアナ学園の100年とは。その歴史の始まりとは。
最も好きなのが第二章「聖マリアナ消失事件」なのだが、それは第五章を読むまでのこと。バロネス・オルツィの『 22/ref=nosim/" target="_blank">紅はこべ』が登場するこの章のそのラストに差し掛かる舞台がかなりの好みである。中野ブロードウェイにひっそり存在するある店。ここの店内の様子が第二章に登場するパリの「読書クラブ」を思わせてああ、素敵〜うっとり〜としばし思いに耽ってしまうのだ。
『紅はこべ』。幼き頃に児童用の本(たぶん世界名作文学全集だったかと)を読んだ覚えがあるものの、うろ覚え。本書を読んでああそういえばそんな話しだったけか、とうっすら思い出す程度。これは是非ともちゃんと読んでみたいわぁ。
他の引用文献、『シラノ・ド・ベルジュラック』や『緋文字』も興味をそそられる。

この古典文学が引用されていたり、土台になっていたりすることでクラシカルな雰囲気に仕上がっていて、古典もの好きにはかなりのツボなんではなかろうかと。懐かしさすら感じるのではないだろうかと。そこに耽美さも感じるのだからたまらない。
異形の少女たちが集う読書クラブ。私もいつの間にかちんまりとそこに座して紅茶片手に本を読む。そんな妄想をしてしまうくらいな没頭ぶりであった。


【追記】
そうそう、青年のための読書クラブ特設ページがあるのを書くの忘れました。
こちら
読み応え充分なページでございます。
桜庭さんと嶽本野ばらさんの対談が素敵で〜うっとり〜。で、笑える。プロレスラーって!いや、でも私も初めは桜庭さんのこと男性作家と間違えていたし。
それにしても桜庭さんはかなり古典ものを読んでおられるんではないかと推測いたします。その土台が独特な雰囲気ある世界を創り上げるのではないかなぁ、とこれまた勝手に書いているわけですが。まだ未読本積んでありますのでね、うっとり堪能いたしますわ。
かりさ | 著者別さ行(桜庭一樹) | comments(14) | trackbacks(10) | 

『少女七竈と七人の可愛そうな大人』桜庭一樹

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少女七竈と七人の可愛そうな大人
桜庭一樹/角川書店
わたし、川村七竈十七歳はたいへん遺憾ながら、美しく生まれてしまった。
鉄道を愛し、孤高に生きる七竈。淫乱な母は、すぐに新しい恋におちて旅に出る。親友の雪風との静かで完成された世界。だが可愛そうな大人たちの騒ぎはだんだんと七竈を巻き込んで。

アンソロジー『Sweet Blue Age』に収録されている「辻斬りのように」。ここでは優奈が私生児を宿すところで終えている。この作品では「辻斬りのように」を冒頭に収め、語りを優奈から娘七竈へ受け継がれる。そうして始まる七竈の物語。美しくも悲しい孤高の美少女・七竈の物語。

「辻斬りのように」はなかなかお気に入りの物語だった。出来るならばこの続きを読みたいと密かに思っていた。それが「少女七竈と七人の可愛そうな大人」としてこんなにも美しい装丁で刊行された。嬉しい。
「辻斬りのように」は次々と男を変え自分の欲望のままそれを達する優奈のまぁ言ってみれば一体何の話しなのだ?と首を傾げるようなものではあるのだが、実は深い深い根っこが隠されている。母と娘の確執である。その母娘の物語が七竈の物語にも受け継がれているのだ。その優奈の母親に対する思いもこの「少女七竈と七人の可愛そうな大人」のある語りで吐露されている。

平凡な顔の母親から絶世の美少女が生まれた。美しいかんばせを持つ七竈。父は誰だかわからない。が、やがてその父親が七竈にも理解出来るようになる。周りの大人にも、そしてあの人にも。読み手もハッとさせられる場面が用意されている。もしかして!だとしたらあまりにも残酷ではないか。淡く紅く色づいた感情はそのまま暗転するしかないのか…そう、七竈の紅い実が雪の白にまぶされ、やがて朽ちるように。あまりにも切ないことである。

七竈と同じくして美しいかんばせを持つ美少年がいる。七竈と同い年の親友・雪風。七竈と雪風は鉄道を愛している。鉄道という世界に拠り所を求め、孤独に生きる彼ら。共通の趣味を持ち互いの名を呼び合い、心を吹き荒らす不安をかき消す。それしか術がないとでもいうように。けれどもその不安はどうしようもないくらい事実なのだ。それは日に日に形となって表れる。逃れようのない事実。悲しい事実。一緒にいたいと願うことは叶わぬのか…。

やがて七竈は自ら生きる道を選び、生まれ育った場所を離れる。母の呪縛から解き放たれ自由の身になったのだ。そう、あの魑魅魍魎と化した母の部屋に囚われ身動き出来ずにいた精神がその呪縛を解かれたのだ。と同時に淫乱で奔放な旅人であったところの母もまた呪縛から解かれたのであろう。

この作品で面白いのは語り手を七竈一人にするのではなく、各章ごとに語り手が変わっていくこと。なんと、飼い犬にまで語らせてしまうんである。が、これが意外な効果を生み出す。クールに見える七竈の別の内面が引き出されて興味深い。視点を変える事で複雑に見える人間模様も分かりやすく露出され、さらに七竈のうつろいが見えやすくなるのだ。

ラストが悲しくも鮮やかな印象を心に刻み付けてくれる。狭い世界から羽ばたこうとする七竈のうつろいゆく成長が眩しい。
少女の内面を描くのが巧い桜庭さんであるが、今回は少女だけでなく母親というやっかいな女の内面も描いている。つまりライトノベルでは描ききれなかったものをレーベルを変える事で実現させたのであろう。見事である。
独特な言葉で紡がれた美しい世界。桜庭さんはまた新しい世界を築いた。これからさらに広がりを見せるであろう桜庭さんの作品が楽しみである。

関連記事
『Sweet Blue Age』感想(2006/4/20)

読了日:2006年7月28日


思っていた以上に上質な素敵な物語でした。少女の喪失感を本当に巧く描いてくれるんですよねぇ。
そういえば感想に書きませんでしたが、その喪失感への恐れを緒方みすずという少女が素直に表現していますよね。あの場面は痛いほどわかります。喪失だけでなく、田舎という狭い世界への恐れもあるんでしょう。誰もが抱えている不安です。
鉄道オタクな美少女なんて風変わりだなぁ、なんて思うのだけどそれすらも自然に受け止めてしまうような独特な世界を描いているんですね。昭和の匂いの漂うそんな文体もしっくりくるような。今回のこの作品はかなりお気に入りであります。「辻斬りのように」があまりお好きでなかった方も是非読んでみて欲しいな、なんて思います。
かりさ | 著者別さ行(桜庭一樹) | comments(12) | trackbacks(11) | 

『少女には向かない職業』桜庭一樹

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少女には向かない職業
桜庭一樹/東京創元社
島の夏を、美しい、とふいにあたしは思う―強くなりたいな。強くて優しい大人になりたい。力がほしい。でも、どうしたらいいのかな。これは、ふたりの少女の凄絶な“闘い”の記録。

ぽっかり空いた穴をどう埋めたらいいものか。あまりにも切な過ぎる少女たちの夏から冬にかけての記録。
中学二年生の一年間で、あたし、大西葵十三歳は、人をふたり殺した。夏休みにひとり。それと、冬休みにもうひとり。
読了後、もう一度冒頭の大西葵の言葉を読み返す。胸に空いた穴はさらにさらにえぐられもう救いようがない。何て読後感。思春期の少女にはあまりにも過酷な現実がこうさせたのだろうか。少女にはそれに耐える力がなかったのだろうか。あるはずがない。人は鬱屈したものをずっと抱えていられるはずはないのだから。まして壊れやすい十代の子供はなおさら…。

その凄絶な出来事は淡々と語られ、一見表面的なさらりとした印象を受ける。一回殺人を犯してしまったらその一線を越えてしまったら後は実は簡単なもんなんだ…と言えてしまう柔軟さに軽い恐怖感を覚える。さらっと描いているからこそ、読み手に委ねられるものは深いのだ。読者それぞれの環境によってその深さは浅いままかもしれないし、さらにずぶりと深さを増すかもしれない。私の場合は後者だった。
身近に中学生がいることも想像力を働かせてしまう要因なのだが、その薄暗い心がさらに色濃く真っ暗になってしまう前に救い出せない大人の無力さも読めてしまうのだ。

どうにかならなかったのかな、どうにもならなかったんだな。すみれ色に広がる夏の夕暮れ空…動き出した黒い渦。後は加速するだけだった。もう止まることが出来ないほどに動き始めてしまっていた。

強さを所望していた葵。実は誰よりも持っていた強さを、それを最後の最後で知ることになってしまった空しさ。ただただ救いようの無い二人の少女の物語。

読了日:2006年2月23日


桜庭さんのこの本はサイン本です。金文字のサインの横に桜のシールが貼ってあって華やか綺麗〜です。桜庭作品は『ブルースカイ』が積読。近々読みますー。
それと「GOSICK」シリーズも一気に揃えてじっくり楽しみたいです。
かりさ | 著者別さ行(桜庭一樹) | comments(19) | trackbacks(14) | 

『GOSICK-ゴシック』桜庭一樹

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GOSICK―ゴシック
桜庭一樹/富士見ミステリー文庫
豪華客船で怪現象? 世界の混沌を描くゴシック・ホラー。
西欧の小国・ソヴュール王国の聖マルグリッド学園に留学してきた九條一弥は、図書館の屋上で謎の少女・ヴィクトリカと出会う。パイプをくわえ、あらゆる書物を読みあさる彼女は世界の混沌を再構築することができた。
オススメして頂いた本。書店へ行き確認してそのイラストにまず可愛い〜と惚れ惚れ。ライトノベルといったらまずはイラスト重視ですからねぇ。現在4巻まで出ていますがとりあえず1巻だけを購入。これを読後に後悔することになるのです…全巻一気に買っておくべきだったーーと。

舞台は1924年、西欧の小国ソヴュール王国。由緒正しい名門学園聖マルグリット学園に留学した帝国軍人一家の末っ子一弥。そして学園の大図書館の迷宮階段をひたすら上った先にある空中植物園で一日書物を読んで過ごしている少女・ヴィクトリカ。この二人を主役に物語は怪奇じみた事件へと展開する…。
ホラーとミステリーの両方を兼ね備えていてかなり上質な作品。軽めなライトノベルだけあってトリックはすぐにわかってしまうのですが、それでもこの作品に漂う雰囲気、荘厳な舞台、キャラクターの愛らしさで充分補っています。そして先にも書いたイラストの美しさが額縁のように1作品として立派に成り立っている。眺めても読んでも楽しい作品なのです。
かなり好みの作品だったので、次はどんな事件が待っているのかもう気になって、気になって…やっぱり全巻買っておくべきでした…。

ライトノベルということでたぶん読者を選んでしまうのだと思うのですが、それではもったいない!気になった方是非読んでみてください。
ところで妙に長い後書きで驚いたこと!作者の性別がー。最近性別に騙されるなぁ。書き手が男か女かで読み方も変わってくるんだけど…それを狙っているのかどうか、それがわかった時点でまた読み返すと違った読後感を味わうんですよね。これは喜ぶべきなのか、悲しむべきなのか??

読了日:2005年7月2日
かりさ | 著者別さ行(桜庭一樹) | comments(4) | trackbacks(4) |