びっくり館の殺人 綾辻行人/講談社ミステリーランド
クリスマスの夜、「びっくり館」に招待された三知也たちは、「リリカの部屋」で発生した奇怪な密室殺人の第一発見者に! あれから10年以上がすぎた今もなお、事件の犯人はつかまっていないというのだが…。
読み終えてまず気になったこと。この作品を一体どれ程の(今の)少年少女たちが手に取るのだろう、ということ。彼らに果たしてどれだけ理解出来るのだろうか。これを読んでミステリ好きに育つのかどうか…ううむ、と考えてしまう。
のっけからあまり良い感想を書いてないが、それでも思い入れのある(詳細の記事は
こちら)館シリーズの最新刊は大いに楽しめた。
綾辻さん生き生きと書いているなぁ、と感じながら読むのは何とも嬉しく楽しかった。ちゃんと館シリーズ好きへのサービスを忘れていないことにもにんまり。おなじみ鹿谷門実や中村青司の名前もちゃんと登場するのだから。ある作品の登場も嬉しい(私はこの作品は一番お気に入り)。そしてラストの余韻が何とも言えずいい。このもやもやをどうにかして!というのが好きなのだ(笑)ほんのりホラーな彩りもなかなか好感的。
が、一方で複雑な心境と共に読んだことも事実。
びっくり館に仕掛けられたトリックもかなり楽しめたし、その時の私は子どものようにわくわくドキドキと心躍っていた。犯人の目星がついても別段それで期待を削がれたわけではない。だが中盤までの高揚感が終盤に向けて一気に冷め切ってしまった感は否めない。これが通常の講談社ノベルスから出されていれば何ら思うことはなかったのだが…。レーベルが子ども向けミステリということに引っ掛かりを感じてしまうのだ。それは先に何とも言えずいい、と書いた幻想性を含んだ終え方や、罪に関する疑問もある。え?これでいいの?という戸惑いも共に感じてしまったのだ。ホラー的な部分もかなり怖さを植えつけてしまうんじゃないか、と心配になる。普段ならば絶対気にならないものなのに。それは私が少年を子に持つ親だからなのだろうか。親の目線でこの作品を読んでしまったのならば大変損をしてしまったかもしれない。純粋に楽しむことが出来なかった悔しさがただただ波紋のように広がってしまう。
いろいろと書いてしまった後だけれども、館シリーズ読んでみようかな、という方にもシリーズを追いかけている方にも充分楽しめる1冊。豪華な装丁と雰囲気にあったイラストも素晴らしい。それに何よりも「暗黒館」からこんなに早く新作を読めたのは嬉しい。次はどんな館を楽しませてくれるのか早くも思いは馳せる。
読了日:2006年3月22日
この作品が子ども達に受け入れられるかどうかというのは、大人が決めることではないのだけど、上記のような感想になってしまいました(思いのたけをものすごい量書いて、読み返すこと数十回。半分ほど削ることになりました…)。でも中学生の息子はどんな反応を示すのか、彼の感想を聞きたい!という思いもあったりします。矛盾していますが、それだけ複雑な心境で読みました、これ。読まれたみなさんはどう感じるでしょうか。他の方の感想も是非読んでみたいです。きっと頭でっかちなこと書いているのは私くらいなのかな…とちょっと消極的な自分がいたりするので。
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