ひなたでゆるり

読書のコトとちょっぴり日々のコトブログ

スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

スポンサードリンク | - | - | - | 

『眠る石―綺譚十五夜』中野美代子


眠る石―綺譚十五夜
眠る石―綺譚十五夜
中野美代子/日本文芸社
1000番目の石像と化した王女、韃靼人の文字が密から描き込まれた聖画、最前景に異形の物体が浮遊する肖像画、“死の塔”の最初の受難者…など、7世紀のタクラマンカ砂漠から20世紀のカンボジアまでの時空間に、寺院、礼拝堂・回廊・草庵の建築・絵画縁起を基軸にして、該博の知識と豊かな想像力が編みあげた、奇妙で不思議な、15の夢幻の物語。

眠る石の記憶、夢を見続ける石たち。
礼拝堂、寺院、回廊などの建築を綺譚十五夜として幻想的に綴る石の物語。
栄光の時から歴史を見つめ続け、今なお時代の生き死を刻み続ける。
奇妙で夢幻な物語の一編一編が鮮やかに迫り来る。

圧巻な筆力にただただ魅了されました。
石像と化した王女(第一夜)、時空超え己の乾屍体と出会う玄奘法師(第三夜)、
踊る髑髏、密かに絵に秘めたホルバイン「大使たち」を題材にした物語(第七夜、第八夜)、
ザナドゥー夢幻閣(第十四夜)など印象的でした。

読了日:2011年9月11日
かりさ | 著者別な行(その他) | comments(0) | trackbacks(0) | 

『蕃東国年代記』西崎憲

蕃東国年代記
蕃東国年代記
西崎憲/新潮社
吸い寄せられて、蕃東へ。うららかで懐かしい時空を超えた異世界に心解き放たれる…。「ずっと読み続けていたくなる」普遍にして新しい物語。

読み終えるのがとても惜しくてゆっくりゆっくりこの世界を味わいました。
読み終えて再び物語に浸りたくてぐるぐる戻ってみたりして。
蕃東という国は実在したのか?と惑わされる程、細部にわたり徹底して創られた世界。
当時の史料文献もとても読み応えがあってこれが実在すればもっと読んでみたいのに、なんて思ってしまうほど蕃東国という異世界に心奪われておりました。
どのお話も幻想的で美しい。

静かに落とされた毒の苦さと、棘の痛みの刺激が程良く心地良い味わい。
煌びやかで美しい都、景京を舞台にした「雨竜見物」がお気に入り。

大好きな「虫と歌」の市川春子さんの装丁が嬉しい。

読了日:2011年1月19日
かりさ | 著者別な行(その他) | comments(0) | trackbacks(0) | 

『神様のカルテ2』夏川草介

神様のカルテ 2
神様のカルテ2
夏川草介/小学館
信州にある「24時間、365日対応」の病院では、今日も奇蹟が起きる。「一止とハルさん」の新たな物語。

過酷で厳しい地域医療の現実の中で、美しい長野の自然描写や真摯に生きるそれぞれの登場人物たちの姿が、今作も素晴らしく胸に迫ります。

春間近の季節から初夏への移ろいの中で相変わらず多忙な先生方。
医師とはなんぞや?との問いがそれぞれの中に燻ります。
仕事を優先するか家族を優先するのか、それは職業関係なく誰彼ともがぶつかる問題です。
男だから女だからとかの隔たりはないはずなのですが、やはりどちらか一方で不自由を強いられる世の中です。
そこに苦悩するタツ先生の姿が痛々しい。

とかく重たくなりがちなテーマですが、やっぱり今作もイチ先生とハルさんの醸し出す雰囲気が空気を和らげ優しい気持ちに包まれます。ひたすら優しいのです。だからじわっときちゃうのです。
そして特筆すべきは松本の自然描写。美しい季節の折々を多忙ながらしっかり瞳に移すイチ先生の大きな気持ちが読み手を包んでくれるようです。

医師である前に人間であるのだ、というイチ先生の深く重たい言葉が作品全体に響き渡る時、辛く悲しい別れの場面も救われる思いがしました。
過酷な仕事の合間に季節の折々を瞳に映すイチ先生の、ゆるやかな時間の流れを感じながら優しく温かな読後でした。

読了日:2010年10月4日
かりさ | 著者別な行(その他) | comments(2) | trackbacks(2) | 

『星空放送局』中村航

星空放送局
星空放送局
中村航 著/宮尾和孝 イラスト/小学館
手紙・月・星をそれぞれモチーフにした3話構成のイラスト+ショートストーリーです。共通している部分は、「祈り」=「願い」をこちら側から向こう側へ届ける、というピュアな思いです。

可愛らしいタイトルと表紙に惹かれて本を開いたら…何とも愛らしいお話たち。
一杯の牛乳から一日が始まるという女の子の最初の1ページから温かな気持ちに。
じんわり広がる優しい時間に身を寄せながらゆっくり楽しみました。

中村さんのどこまでも優しい文章と、中村さんの紡ぐ文章にピタリと寄り添うような宮尾さんのあったかなイラスト。
見上げる星空はずっとずっとどこまでも果てしなく続いていて、同じく星空を見上げている誰かと繋がっている。
届かぬ思いもきっと伝わる。
モノクロに広がるカラスとうさぎと月の話にじんわり。

読了日:2010年10月1日
かりさ | 著者別な行(その他) | comments(0) | trackbacks(0) | 

『小さいおうち』中島京子

小さいおうち
小さいおうち
中島京子/文藝春秋
赤い三角屋根の家で美しい奥様と過ごした女中奉公の日々を振り返るタキ。そして60年以上の時を超えて、語られなかった想いは現代によみがえる。

とても、とても素晴らしかったです!
昭和初期のとある女中の回想録。美しい奥さまと可愛い坊ちゃん、優しい旦那さまとの日々。
静かに語られる想い出の記録はしかしやがて日本の大きな歴史へと突入していきます。

歴史の外側で見るのと、そのただ中で生きていた人々の生活感覚の違いが、タキと健史の会話でメリハリ良く綴られ大変読み応えがありました。
あの頃の今の時代よりも穏やかで伸びやかで明るく丁寧に営む人々の姿を読めたことは大変貴重なもの。
タキの悲痛なまでの後悔、とある秘密、最終章で明かされさらなる謎に放り込まれる感覚はミステリを読んでいるかのようでした。

読み終えてタイトルとレトロな装丁を眺めると、あらゆる思いが押し寄せてもう胸いっぱいになってしまうのです。

読了日:2010年7月6日

中島京子さん作品初です。
あまりにも素晴らしくて中島さんの作品もっと読みたい!と気持ち高めています。
次は何を読もうかしら?

FUTON (講談社文庫) イトウの恋 (講談社文庫) さようなら、コタツ (集英社文庫) ツアー1989 (集英社文庫) 均ちゃんの失踪 (講談社文庫) 桐畑家の縁談 (集英社文庫) 冠・婚・葬・祭 平成大家族 ハブテトル ハブテトラン エ/ン/ジ/ン 女中譚
かりさ | 著者別な行(その他) | comments(2) | trackbacks(3) | 

『神様のカルテ』夏川草介

神様のカルテ
神様のカルテ
夏川草介/小学館
神の手を持つ医者はいなくても、この病院では奇蹟が起きる。夏目漱石を敬愛し、ハルさんを愛する青年は、信州にある「24時間、365日対応」の病院で、今日も勤務中。読んだ人すべての心を温かくする、新たなベストセラー。第十回小学館文庫小説賞受賞。
カスヤナガトさんの装丁イラストがとてもキュートで思わず惹かれて読みました。
とっても素敵なお話し。人と人との触れ合いの温かさにうるうる。
信州の地方病院で働く若き医師・栗原の飄々とした姿に見え隠れする現在の医療事情や大学病院と中小病院との明らかな違い、その小さな地方病院で働くことの限界さ。
ユーモアでやわらかな文体の中でそれは辛辣をもって読者に訴えかけているようでした。
そして患者の死に立ち会うこと、どんなに尽くしても果たしてそれが最善の方法だったのかと考える場面、苦しさが切々と伝わりました。

表紙のキュートさに負けず、栗原先生とその細君ハルさんのやりとりが可愛らしいのです。
悩める若き医師を見守るハルさんや御嶽荘の面々、病院の同僚たちの温かさが心地良く包んでいて素敵。
患者の安曇さんとの場面場面もとても良かった。温かい分悲しみは倍で辛さも。

男爵や学士殿と呑み交わす場面がとーっても好き!
彼らが絡んでくる2話の「門出の桜」は特に素晴らしく感動的でした。

シビアになりがちな医療を扱った作品をこんなに優しく和やかに読ませてもらえて幸せな読書でした。

読了日:2009年9月16日
かりさ | 著者別な行(その他) | comments(4) | trackbacks(2) | 

『百瀬、こっちを向いて。』中田永一

百瀬、こっちを向いて。
百瀬、こっちを向いて。
中田永一/祥伝社
「百瀬、こっちを向いて。」「なみうちぎわ」「キャベツ畑に彼の声」「小梅が通る」4編の短編集。

これは純粋な恋愛。ピュアと書くとちょっと綺麗すぎる。
訥々と語られる静謐さ、素朴な中にもハッと思わせるキラキラしたもの。
文章に初々しさを感じるものの、それが逆にいい効果を成しているみたい。

実は「百瀬、こっちを向いて。」はこれはもう本当に勝手なことなのですけど、もっと色濃く物語が彩られていくんじゃないかと、もっともっと恋愛の色が鮮やかになっていくんじゃないかと想像してました。で、読み終えて気がついた…うっすらと芽生え始めたものを愛しむ、そういう気持ちで読むべきだったのかも。
その後「なみうちぎわ」「キャベツ畑に彼の声」と読んでいって、これは自分が想像するよりももっと初々しく純粋な物語なんだ、と思い直して、気持ち穏やかにここに流れる静謐さと呼応して読んでみたら、それは心沁みる恋愛小説でありました。

「なみうちぎわ」「キャベツ畑に彼の声」は傑作。
ほんのりと芽生える恋の感情がいきなり突出するでなく、ゆるりとその感情に寄り添う。
大人になりかけの思春期の頃の恋や愛が早急でなくゆるゆると育っていくさまがとても懐かしくくすぐったくその初々しさが絶妙。
大人になると愛だの恋だのって粗末になっていくよなぁ、と純粋さを失った自分を嘆きつつ、純粋だったあの頃をどこに置いてきたんだったか、などと遠い昔をたどってみたりなんかしてすっかり繊細な心持ちになってしまったのでありました。

そうしてラストの「小梅が通る」。
柚木の縮こまった心がとても痛々しくて、彼女の外見と気持ちが遠い所にある戸惑いが、もうぎゅっとしてあげたいくらい切なくて。切なくてもどかしいながらもコメディータッチな物語がふっと笑みを誘ってくれて。で、それがほろりと涙も誘ってくれちゃうのだ。
素敵で可愛くて柚木だけじゃなくてみんなぎゅっとしたくなるくらい愛おしかった。

装丁のようにまっさらな純粋な恋愛小説でありました。

読了日:2008年8月3日
かりさ | 著者別な行(その他) | comments(6) | trackbacks(4) | 

『漢方小説』中島たい子

漢方小説 (集英社文庫 な 45-1) (集英社文庫 な 45-1)
漢方小説
中島たい子/集英社文庫
川波みのり、31歳、脚本家、独身。胃がひっくり返ったようになるのに、眠れないのに、病院に行って検査をすると『特に異状なし』。あのつらさは何? 昔の男が結婚したショックのせい? それとも仕事のストレス? 最終的にたどりついた東洋医学で、生薬の香りに包まれながら、みのりが得たものは。心と体、そして人間関係のバランスを、軽妙なテンポで書き綴る、第28回すばる文学賞受賞作品。

31歳、独身。
そんな主人公みのりにある日襲った病魔。その原因は?病名は?西洋医学ならばまず原因と病名を調べてそれに合う薬を処方されて。患者のほうもそれを当たり前に受け入れて処方された薬をきちんきちんと服用する。
そんな当たり前が出来なくなったのが私にとっては妊娠中。つわりがひどくて水も飲めなくなって即入院。断食のうえ重湯続きの日々。それは時間が解決するもののその最中はやっぱり苦しいし、精神的にもまいってしまう。
いくらか軽くなって退院出来てもつわりは完全には去ってくれない。そこで処方されたのが漢方だったのでした。
漢方自体その当時は疑心暗鬼でそんなもの効くの?と疑いながらも、でもほんのちょっとでもいいからこの苦しみを取り払ってくれるのならば、と藁にもすがる思いで漢方のお世話に。はてさて効果はあったのか?という問題ですけど、まぁ完全に効いたわけではなかったものの気持ち的にはずいぶんと楽になったかもしれません。気休め、と言ってしまえばそれまでですが体調も精神もまいってしまった時に助けられました。

…と、本作と全く関係のない自分の思い出なんぞをだらだらと書いてしまいましたけど、この小説を読んでそんなことを思い出していたのです。

この作品の主人公・みのりの場合はもっともっと深刻。私のそんな思い出なんかよりもずっとずっと深刻。体は異変を訴えているのに原因がわからない。病名も不明。それはもう不安になるでしょう。自分の体なのにそのSOSを聞いてやれないもどかしさは相当のものでしょう。
そんな時漢方に出会うのですが、ここからはみのり自身もゆるゆると快方に向っていて自分の生活も見つめなおして自分の体の声を聞いてやって、そんなちょっとのことなんだけど読んでいる私も体が解されていくようなゆったりした気分になれました。

そうして自分自身を見つめなおし、優しくなれると自然と他人にも優しくなれるような気がしてそれまで見えていなかった友達の抱えている問題などにもちゃんと対応してあげられる。余裕がないと自分のことばかりしか視野に入らなくて、そのうち「こんなに苦しいのに誰もわかってくれない」なんてマイナス面ばかりになってしまうもの。
みのりの場合はまだまだ自分のことで精一杯だけどいずれはもっと楽になれるんじゃないだろうか。

この主人公の場合は独身であるけれど、30代、既婚でもそれはそれはさまざまな山波がありまして、みのりのような状態になってもおかしくはない爆弾を抱えているものです。
私の場合は、登場人物の茜ちゃん同様手芸!なのであります。ユザワヤは残念ながら近くにはないので、手芸店やネットで生地買ってチョキチョキカットして針でちくちくする。これが実に良い効果なのだなぁ。作っている過程が一番良くて完成しちゃうと寂しいのだが。

陰陽五行説などとても興味深い。もしもいつかまた漢方のお世話になるようなことがあったらちょっと勉強してみようかな。

読了日:2008年7月17日
かりさ | 著者別な行(その他) | comments(6) | trackbacks(5) | 

『ゆれる』西川美和

4591093034
ゆれる
西川美和/ポプラ社
東京でカメラマンとして活躍する弟。実家に残り、家業と父親の世話に明け暮れる兄。対照的な兄弟。だがふたりは互いを尊敬していた。あの事件が起こるまでは…。
読む前に感じた不安定さ、不穏な雰囲気。本から発せられる信号は間違っていなかった。表紙の吊り橋と緑鮮やかな森の風景はとても美しい。と同時に吊り橋の先にあるぽっかりと開いた森の入り口は訪れる者を飲み込むようにそこにある。だが渡らずにはいられない、入り込まずにはいられない、そんなものに呼ばれて本を開く。ある兄弟の物語。一度踏み入れたらもう戻れない。

映画「ゆれる」の監督自身がノベライズ化。さすがである。文章に説得力がある。映像が浮かぶ、そして登場人物達の心理描写が実に巧い。各々が語る(独白する)兄のこと、弟のこと、父のこと、家庭のこと、そして智恵子のこと。
成功の道をつかんだ弟と、田舎で父の家業を継ぎつつましく生活する兄のその日常はその性格と同じく対照的である。都会で羽広げて飛び行く弟を兄は一体どんな気持ちで、どんな瞳で見ていたのだろうか。そこに羨望のかけらはあっただろう。だが、それは弟の生活に対してではなかった。それがある事件として表れた。兄を守ろうと奔走する弟。だがその心は揺れ動く。兄を救うのかそれとも…弟の選択した行為とは。ここで人間の本質が見えてきてぞくぞくする。背筋を何かが這うような寒さを感じる。

兄弟というものは複雑である。その関係は難しい。同じ環境で育ちながらもその性格も考える事も赤の他人と何ら変わらない。赤の他人ならばまだ良い。やっかいなことにその絆は断ち切ろうにもすんなりと断つことは出来ない。いがみ合いながらなおそれは繋がり続ける。やっかいである、実にやっかいである。

真実はどこにあるのか。その探り合いの描写がページを繰る手を止めない。その展開に目を離せずにいる。田舎という閉鎖的な空間は鬱屈したものを生み、積み重ねる。それは人を得体の知れない何かに変える事もある。一番まっとうな兄がそれに絡め取られていたら?兄・稔の独白がただただ悲しい。
ここで一番安定感があり、人間らしさを感じられたのが皮肉にも第三者であり、赤の他人の岡島洋平のかたりである。安堵感からなのか、彼の気持ちが流れ込んでしまったのか、ある場面で涙をはらはら流してしまった。緊迫したものが一気に溶け出したためでもあろう。

ゆらゆらとゆれる不安定なものは苦手である。いつ足元が崩れるかもしれない恐怖心を抑えながら渡る吊り橋はだから苦手だ。兄の思惑、弟の思惑、暗闇で見えないそれはざわざわとしていてその音はやむ事はない。ずっと。

読了日:2006年7月25日


面白かった〜。想像以上に楽しめました。映画ではどうなっているか非常に興味があります。配役が決まっている中で読んでいましたが、それはジャマにはなりませんでした。猛のオダギリ ジョーも、稔の香川照之さんもはまり役でしょう。
このざらざらした感覚を映像ではどのように表現しているのか…是非体感してみたい。出来るならばDVDではなく映画館で。ん〜でも無理なのよねぇ(涙)
それにしても西川美和さん、とっても可愛らしい方で驚きました。こんなにキュートな人がこれを作ったのかーと逆に新鮮でした。

映画「ゆれる」公式サイト
かりさ | 著者別な行(その他) | comments(8) | trackbacks(14) | 

『夢十夜』夏目漱石/金井田英津子

夢十夜
夢十夜
夏目漱石/パロル舎
「こんな夢を見た」で始まる、夏目漱石の幻想的文学「夢十夜」。作品の世界をさらに盛り上げるモノトーンの版画入りで収録する。

大概見る夢はぐにゃりと曲がった歩行の困難な世界。そうして私は誰かに追いかけられている。急がねばつかまってしまう!走っても走っても足はもつれ一向に進む気配はない。焦る私の背にいつの間にか生える羽。飛び方さえしらない私は羽を持て余す。いざつかまろうという時、不思議と羽広げて飛んでいる。間一髪、ホッとした途端目覚める…。
これが時々見る私の夢。

最初に「夢十夜」を読んだのは14歳だったか、15歳だったか。思春期の頃は好んで文学を読んでいた。文学少女なんてのを気取ってみたりして(当時はそんな自覚はなかったが)。この匂い立つようなある意味エロチックさえ感じる作品を果たしてどれほど理解していただろうか。こうして今読み返してみてほとんど理解していなかったことに気がつく。ただ文字を追っただけだろう、そして幾ばくかそこから感じ取るだけだったのだろう。だからほとんど内容に覚えが、ない。
その中でも強烈に記憶にとどめていたのが「第一夜」と「第三夜」である。死んだ女と百年後に再会するという幻想さ。女は何と美しく咲いたのだろう。夢の話しとして語られることがことさら憎い。

さて、「第一夜」は相変わらず好きな夢の話しであるが、今こうして読んでみると「第五夜」の話しなどはとても切なく妄想は激しく膨らむ。その世界を彩るのが金井田さんの画。不思議な夢の世界を見事に再現。独特なトーンの色彩にさらに世界は幻想的になる。良質の絵本。

夢は怖い。出来るならば見たくないものである。けれども容赦なく今夜もどこかの世界に放り込まれるのだろう。

読了日:2006年2月17日

関連記事
『猫町』萩原朔太郎(2005/8/16)
かりさ | 著者別な行(その他) | comments(4) | trackbacks(1) |