ひなたでゆるり

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『イン・ザ・プール』奥田英朗

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イン・ザ・プール
奥田英朗/文春文庫
「いらっしゃーい」。伊良部総合病院地下にある神経科を訪ねた患者たちは、甲高い声に迎えられる。色白で太ったその精神科医の名は伊良部一郎。そしてそこで待ち受ける前代未聞の体験。プール依存症、陰茎強直症、妄想癖…訪れる人々も変だが、治療する医者のほうがもっと変。こいつは利口か、馬鹿か?名医か、ヤブ医者か。
「こいつ何なんだ?ホントに医者か?」伊良部を目の前にした患者が必ず思うセリフ。本書に出てくる患者みな変なのだが、神経科医師の伊良部がさらにさらに変なのだ。だが、訝しがる患者はしだいに伊良部に心を解きほぐしていく。

「イン・ザ・プール」「勃ちっ放し」「コンパニオン」「フレンズ」「いてもたっても」5編の連作短編集。
変な人間ばかり描かれていて面白いったらない。へぇ〜こんな病気があるんだな〜なんて人事のように笑える自分。…いやまてよ。人間完璧な人なんていないはずで何かしら癖みたいなのを持っているはずである。ただそれが常軌を逸していないか、その一線を越えるか超えないかで普通か病気か分けられてしまう。ここでいう患者は自覚して来るもの、親や周りに指摘されてしだいに疑いを持って来るもの、様々であるがここで描かれる携帯依存症とか強迫神経症(確認行為の習慣化)とかまさにニュースなどで特集されることもある現代病。あれ?もしかして自分も?なんて思い当たる人少なからずいるんじゃないだろうか。

携帯依存症はここに描かれるほどではないにせよ、携帯がないと不安で仕方のない人はたぶんかなりの数を占めるだろう。メールの返事がないと不安、友達がいないと恥ずかしい、孤独感に耐えられない、いつも自分は誰かに頼られていたい、誰がどこで何をしているのかそこに自分がいないことへの不安…等々実におかしな心理状態である。だがそこに重きを置く人は精神をその材料で保っているようなものだから、それのどれか一つでも欠けてしまうと不安でたまらないのだろうな。携帯を良く家に置き忘れたり、一人でいるほうが気楽な私には良く理解出来ないことであるのだが。

が!強迫神経症。たぶんこれかる〜くあると思う。私の場合はガスの元栓(笑)出掛ける前、何を一番確認するかというと「ガスの元栓閉めたっけ?」なのだ。家の鍵も気になるがやっぱり何はなくても元栓。昔は気になりすぎて出掛けてまた戻ったこともあったほど。昔、と書いたのは今はさほどひどくなくなった。だって、2歳児抱えてやっと5階から降りて車のエンジンかけて、そこからまた戻るなんてもう体力ありませんもん(笑)でもこの病気、今増えているのだそうだ。先日ニュース番組の特集に取り上げられていてとても笑えなかった。エスカレートすることの怖さがひしひしと伝わって自分もこうなってしまうと嫌だなーなんて真剣に考えてしまった。

女の私には全く実感の湧かない陰茎強直症。さぞ男性読者は痛々しい思いをしながら読んだに違いない。私はただ想像するしかないが、それにしてもこれは痛いだろうし辛そう。そうだなーえっと女に例えるとあれですかね、授乳期のお母さんがおっぱいあげる前のお乳が張って張って痛くてしょうがなくて「早く飲んでくれ〜。何でこんな時に限って熟睡してるのよー(泣)」って時な感じかな?どうだろうか?(笑)これはかなり痛い。けど、一時だからまだ我慢できるのだけど…。この患者は長期間なのだからそれはそれは辛かろう。男性読者がどう感じたのかちょっと気になるところ。

何にしても人間、伊良部みたいなのが一番楽なのかもしれない。あんな人間そうそういないけど、周りにいたら自分の悩みとか馬鹿馬鹿しくなってくるものね。のん気が一番なのかなー。いやいやあれはのん気すぎるだろう。もしかして確信犯?なんて疑ってしまうほど。
すっかりこの伊良部がお気に入りな私、是非次作『空中ブランコ』も読みたい!と息巻いているのである。

読了日:2006年4月2日


いつもよりもかなり長め(いや、いつも長いか)の感想です。面白かったので感想もすらすら〜と書けちゃいました。いいよね、こういう楽しいものって。前向きになれますわ。
ところで以前ドラマ化したものを録画していまして、これで見られる〜と思って喜んでいたのですが、あのドラマって「空中ブランコ」だったのですね。てことは『空中ブランコ』を読まなきゃ見られないってことでー。これは早く図書館で借りねば。
そしてシリーズ3作目『町長選挙』が4月上旬に刊行されるとのこと。楽しみ〜。
かりさ | 著者別あ行(奥田英朗) | comments(8) | trackbacks(10) |