ひなたでゆるり

読書のコトとちょっぴり日々のコトブログ

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『ふりむく』江國香織 松尾たいこ

ふりむく (講談社文庫)
ふりむく
江國香織・文/松尾たいこ・絵/講談社文庫
さようなら。私はもうあなたのものではありません。たぶんもともとあなたのものではなかったのです―空港、波、木漏れ日、女性…「ふりむく」というテーマで描いた松尾たいこの絵から、江國香織が文章を紡いだ21の物語。繰り返し読めば読むほど、自分だけのストーリーまで動き出す、不思議な一冊。

ハッと惹かれる煌びやかな松尾たいこさんのイラスト。
その絵に添えられた江國香織さんの短いながらも印象深い文。
いつまでも寄り添っているようで、でも相反するような不思議な感覚。
ゆらゆらと心に波紋を広げて静まることがありません。
なので読み終えてもまた最初から辿ってしまう。
一日の終わりに開いてほわんとさせられながらも漲るものを宿しながら眠りについて、
一日の始まりにぱらりとまた開いて。
ここ最近の私はすっかり『ふりむく』に魅了されてしまっているのです。

表紙イラストの文章が特に好き。
幼き子のはちはちとした甘さにキュンと切なくなる。

読了日:2010年10月25日
かりさ | 著者別あ行(江國香織) | comments(0) | trackbacks(0) | 

『真昼なのに昏い部屋』江國香織

真昼なのに昏い部屋
真昼なのに昏い部屋
江國香織/講談社
会社社長の夫・浩さんと、まるで軍艦のような広い家に暮らす美弥子さんは、家事もしっかりこなし、「自分がきちんとしていると思えることが好き」な主婦。大学の先生でアメリカ人のジョーンズさんは、純粋な美弥子さんに心ひかれ、二人は一緒に近所のフィールドワークに出かけるようになる。時を忘れる楽しいおしゃべり、名残惜しい別れ際に始まり、ふと気がつくとジョーンズさんのことばかり考えている美弥子さんがいた―。

名久井さんの装丁があまりに素敵でしばらく表紙を眺めてしまいました。
まるで子供に読み聞かせしたくなるような童話調のお話には、男女の綺麗事にはゆかない毒が仕込まれていてこれがなかなかぐっと引き寄せられ読ませます。
きちんと、が大好きな美弥子さんの不器用さがよりリアルに響いてドロドロしそうなのに、でも爽快さがある。
籠の中の小鳥が外の世界を知ってしまったらどうなるか。
怯えるどころか魅了されて羽ばたいてしまう。
そして手に入るはずのないものを手に入れてしまったら…毒々しさは物語の隅々にまで染まっていたのでした。

読了日:2010年4月22日
かりさ | 著者別あ行(江國香織) | comments(4) | trackbacks(2) | 

『すきまのおともだちたち』江國香織

すきまのおともだちたち (集英社文庫)
すきまのおともだちたち
江國香織 こみねゆら・絵/集英社文庫
庭で育てたレモンの木からレモネードを作り、針仕事で暮らしている「おんなのこ」。両親は最初からなく、車も運転できる古びた「お皿」と住んでいる―。仕事で訪れた街で道に迷い、帰れなくなった新聞記者の「私」は、客として彼女たちにもてなされることになるのだが…。けっして変わらないものが存在し続ける、そんな場所で出会った、小さな女の子との、いっぷう変わった長い長い友情の物語。

江國香織さんと山本容子さんの素敵なお話『雪だるまの雪子ちゃん』を読んで、その愛らしさ、不思議だけどどこか懐かしくて温かな世界に夢中になってしまいました。
江國さんの描く童話にまた浸りたい、とそれはもう渇きを潤すかのように欲して選んだのが『すきまのおともだちたち』。
タイトルとこみねさんの描く女の子にぐぐぐっと惹かれて手にとりました。

ん〜っ!もうもうなんて可愛いのでしょうか!雪子ちゃんも愛らしかったけれど、すきまの世界に住む小さな女の子の可愛らしさといったら!女の子のいちいちにキュンとしてしまいました。
こみねさんの挿絵もそれはそれは素敵なのです。ほんわりとやわらかであったかな彩りが心地よく包んでくれます。そう、小さな女の子がお客さまをおもてなししてくれるように居心地の良いどこか懐かしい気持ちにさせてくれるように、このお話もそんな心地で読んだのです。物語の終わりがとても惜しくていつまでもここにいたい、ような。そんな感じ。

新聞記者である「私」は取材で訪れたとある街ですきまの異世界に迷い込んでしまいます。途方に暮れていた私が出会った小さな女の子。私は出会った女の子にお客さまとしておもてなしされます。
小さな女の子ですが、てきぱきと働くその姿は無駄のない動きを見せます。ちょっとお澄ましの態度も凛としていて清々しいほどです。
一緒に暮らしているお皿は自動車の運転をします。お皿の歴史はとても由緒あるもので彼女はその思い出を支えに日々を生きています。
彼女たちに名前はありません。小さな女の子はあくまでも女の子ですし、お皿はあくまでもお皿なのです。
すきまの世界の住人たちもちょっと風変わりです。でも風変わりなのは迷い込んだ私。私にとって不思議なことでもこの世界では当たり前なのですから仕方ありません。私はおもてなしをされるということに少しずつ慣れ、この世界にいることがとても心地良く何故だか懐かしささえ感じ始めます。すっかり楽しくなってきた頃、それは突然やってきます。すきまの世界に突然迷いこんだのと同じく、現実の世界に戻るのも突然なのです。
戻った私は月日の経過と共に生活を変え、年を重ねていきます。年を重ねて老いていくことは私たちの世界では当たり前のこと。それは抗えないことです。

私はまた何回かすきまの世界に来ることになるのですが、この世界では何一つ変わることなくあの頃と同じまんまの風が流れているのです。なつかしい場所に帰ったような気持ちになった私が「ここは変わらないわね」と言うと、女の子は「そりゃあそうよ」と。そして「世界だもの。世界は確固たるものでなきゃあ」と言うのです。
きっと、「当たり前のことよ、何を言っているの?」と凛とした声と姿で言うのです。
私がその時感じる「確固たる世界に、足にぴったりの靴をはいて立っていることの安心と幸福!」がすきまの世界をとても良く表わしていてすごく好きなシーンでもあります。
確固たるもの。ゆるぎない凛としたもの。そういう世界が確実にあるのだ、ということがどんなに支えになることか。生きる上での心配だったり不安だったりがそれでもちゃんと救われてまた立ち向かえるよ、と背中を押してくれると思うのです。
それはいつまでも変わりなく寄り添ってくれるかけがえのないもの、友人ともいえる存在なのです。

そして東直子さんの解説がとても素晴らしいのです。解説のタイトル、「「すきま」に生きる永遠の女の子」はまさしくそうですし、
主人公の現実の世界がどんどん過ぎていっても「すきま」の世界の人は、変わらない。それは、本を開いて別世界へ誘われることと同じだ
というところにとても共感しました。まさにそうなの!と大きく頷いていました。

「すきま」の世界は懐かしく温かでありながら、どこか淋しく切ない気持ちがふわっと広がるのです。

読了日:2010年2月7日
かりさ | 著者別あ行(江國香織) | comments(4) | trackbacks(0) | 

『雪だるまの雪子ちゃん』江國香織

雪だるまの雪子ちゃん
雪だるまの雪子ちゃん
江國香織 山本容子/偕成社
あいらしく、りりしい野生の雪だるまの女の子雪子ちゃんの毎日には生きることのよろこびがあふれています。著者が長年あたためてきた初めての長編童話にオールカラーの銅版画を添えた宝物のような1冊。

山本容子さんの装丁が素晴らしく綺麗〜。
美しい雪の結晶と雪子ちゃんのイラストがぎゅっとしたくなるくらいの愛らしさ。
野生の雪だるまの雪子ちゃんのお話しと挿画がそれはもう素敵でほわわ〜んとした気持ちで読みました。
悲しい物語だったらどうしようと物語の行く先をドキドキしながら追いましたが、初めから終わりまでぽかぽかした陽だまりのような温かさに包まれていました。ん〜素敵!

冷えたバターをひと欠片食べたり、百合子さんとの夜の時間だったり、子供たちとの楽しいやりとりだったり、全てが愛おしさに溢れていました。
大人の絵本として最高の1冊。ぽわぽわあったかな読後感でした。

読了日:2010年1月21日
かりさ | 著者別あ行(江國香織) | comments(2) | trackbacks(0) | 

『がらくた』江國香織

がらくた
がらくた
江國香織/新潮社
誰にもとどめることはできない――愛の歓びと怖さ、その光と影を描き尽くす完璧な恋愛小説。

帯を見るとどうやら45歳の柊子と15歳の美海、二人の女性が登場する物語らしい。
この二人の関係性やこの二人がどう物語の中で息づくのか。
江國さんの独特な感性で紡がれるであろう恋愛小説に胸ときめかせながら読み始めた。

柊子と美海、二人の視点から語られる物語が交互に進んでいく。二人の出会い、二人をとりまく人間模様、これらが江國さんのたおやかな言葉で紡がれていく。柊子とその母・桐子との関係、柊子の夫・原との夫婦関係。
どれもが私にはリアリティーがなく、現実離れしたもので、だからこそ気持ちに余裕を持って読むことが出来た。でなければ柊子の焦がれるような夫への愛だったり、その愛ゆえの背徳だったり、また原の自由な女性関係だったり、またラストにも描かれる原の行為だったりは到底理解できないものであり、嫌悪感に支配されるだろうから。
嫌悪感をさほど感じないのは江國さんの丁寧に紡ぐ言葉選びにあるからだろう。
湿気を帯びた行為自体も江國さんが表現すると、からからと乾いて硬質でひややかな印象を受ける。

柊子の夫への愛も愛しすぎていると書けば可愛いが、どこかしら狂気に満ちていてそれが柊子自身を壊し始めていることにきっと本人は気がついていない。
あまりにも夫を愛しすぎて、所有したいがゆえの行為はやっぱり私には受け入れ難いものではあるけれど、彼女は至極真剣だ。
柊子の行為は夫の愛人への嫉妬を摩り替えるように成されていて、それがとてもとても切ない。でも、この夫婦は愛し合っていて、その愛をあからさまに互いで表現し合うのだ。

15歳の少女、美海。
リゾート地で偶然出会った桐子、柊子母娘と東京に戻ってから交流を始め、それが彼女自身にも多大な影響を受けることになる。
まさかそんな展開になろうとは露ほども思っていなかったのだけど、次第にミミがある男性に惹かれ始めるそのさまは非常に危うく、読み手が想像し難いその先をいとも容易く引き寄せて乗り越えてしまう。男性もそれを難なく受け入れてしまうのにはいくら非現実的と思ってはいても、やはり戸惑いは隠せなかった。
ドキドキする感情を抑える間を与えず物語は唐突な印象で終わりを告げる。

とても印象的な言葉。
生きている相手に対して、感情を不変のまま保存することはできない

生きている人の心は常に移ろい変動していくもの。それをずっと縛り付けておくことも自分の所有物とすることも出来ない。
寄り添いたい相手の心が自分に向いておらず、どこか遠くのほうへ向かれていたら、それは愛する人がそばにいても肌と肌が触れ合い密着していたとしても独りだ。

結局のところ、みんな孤独なんだろう。
孤独を埋めるため人は人を求めるんだもの。
そんな刹那さを江國さんの世界観で紡がれた、とある形の恋愛小説。

読了日:2008年8月4日
かりさ | 著者別あ行(江國香織) | comments(2) | trackbacks(2) | 

『号泣する準備はできていた』江國香織

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号泣する準備はできていた
江國香織/新潮社
体も心も満ち足りていた激しい恋に突然訪れた破局。その哀しみを乗り越えてゆくよすがを甘美に伝える表題作など、詩のように美しく、光を帯びた文章が描く、繊細で透明な12の物語。

『号泣する準備はできていた』読了。第130回直木賞受賞作品です。
12編の短編がそれぞれ全く異なるストーリーなのだけど、全体に似た雰囲気。なので、流れるようにスイスイと読み進みました。ここに登場する人物たちは酸いも甘いもかみ分けた大人の男女。その彼らの日常を詩集のように紡いでゆく。決して思い通りにはゆかないけれど救われないわけじゃない、
先を見つめ前向きに生きていく力強さを感じながら読みました。

12編の中では「じゃこじゃこのビスケット」「こまつま」「住宅地」「そこなう」が好き。「じゃこじゃこ」「こまつま」はタイトルが良いですねぇ。
「こまつま」なんぞはきっと夫も私をそう名付けたくなるんじゃないかと
ふと思った。「住宅地」はやや、ミステリ?なんて期待してしまうくらい膨らませてしまうお話し。もちろんミステリなんかじゃないのですが、実に良く描かれています。「そこなう」はどうして?と女性に問いかけたくなってしまうけど、それがそうなるのならば仕方ないよね、とついついつぶやきながら読み終えました。達観しているとまではいかないけど、私も30過ぎの女。いろいろあった分、諦め方も悲しいけど知っている。でもどうしてもこれは!というものにはとことん突き進む強さも情熱もまだまだある。ここに生きている彼らに何かを教えられたような気がする。うまく言えないけど、そう思う。

読了日:2005年1月15日
かりさ | 著者別あ行(江國香織) | comments(0) | trackbacks(1) | 

『ウエハースの椅子』江國香織

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ウエハースの椅子
江國香織/角川春樹事務所
私を訪ねてくるのは、やさしい恋人(妻と息子と娘がいる)とのら猫、そして、記憶と孤独。恋人の身体は、信じられないほど私を幸福にする-。とても切なく危険な恋愛長篇。
眠る前に『ウエハースの椅子』読了。読後の感触を噛みしめながら眠りにつく。クラシックと香り高いハーブティー、ワインに酔える作品です。ともすると主人公のこの女と恋人の甘やかな居心地の良さにズルズルと引きずられそうだけど、本質を見誤ってはならない。その甘やかさこそ危険なのだ。今の状況を考えれば考えるほど現実逃避したくなる。そうじゃない、自分は違う、と目をそらしてしまう。見据える勇気がない。潔くない。だからこそ登場人物に共感するのだろうし、目が離せない。自分に似ているとさえ思えてしまう。やはりワタシも現実逃避を欲しているのだろうか。江國香織さんのお話はいつも残酷です。心に傷を負わせます。ザックリとえぐられます。けれども心地よい。癒しさえある。なぜだろう?反したものを感じるのは。もっと漂っていたいと思う。だから早く読み終わらないようにゆっくり丁寧に読みました。じっとりと浸透していくように。毒々しさの中に美しさを感じる表紙も好きです。中年の女か…。そろそろやばいな(笑)。(日記より抜粋)

読了日:2001年2月15日
かりさ | 著者別あ行(江國香織) | comments(0) | trackbacks(1) |