嫌われ松子の一生 山田宗樹/幻冬舎
三十年前、松子二十四歳。教職を追われ、故郷から失踪した夏。その時から最期まで転落し続けた彼女が求めたものとは?一人の女性の生涯を通して炙り出される愛と人生の光と影。
こんなに重たく救いようのない話しとは思わなかった。さっきからどんよりした気持ちを抱えてこれをどうすれば良いのか途方に暮れている。
「嫌われ松子の一生」。まさしく松子の一生そのものであった。松子の最期から始まる物語。なぜ彼女はこんな最期を遂げたのか。彼女の人生はどんなだったのか。松子の甥である川尻笙と共に、松子の人生をたどっていく。松子自身の視点を差し挟みながら。その手法がまた効を成し、どんどん物語に引き込まれていくのだ。ただ松子のその後を知りたいために。そして松子がどうなってしまうのか見届けたいために。松子の最期を知っているからこそ、その最期の「何故?」を知りたい好奇心がさらに頭をもたげて忙しなく文字を追ってしまうのだ。追えば追うほど気持ちは沈み、どうすれば彼女は救われるのか、こんどこそ幸せになれるのか、もう半ば祈るような気持ちで読むことになる。だからこそ読後は強烈な絶望感が襲い、このやるせない気持ちをどうしたものかと悶々としているのである。
こんなにも深く松子に感情移入してしまうとはなぁ。松子のやることやること全て裏目に出て幸薄い女だよなぁ…と哀れに思ったり、時に呆れたり、あまりの不幸さに苦笑してしまったり、何ともまぁ私も感情をくるくる変えながら揺さぶられながら読んだこともあって、どっと疲労感に襲われてしまったではないか。おまけにあの松子の最期だもの。
しかしだ、こんな松子なのに何故か惹き付けられるのだ。短絡的で計画性がなく、すぐ人を信じてしまう。ろくな男としか付き合えず、その男たちによって翻弄されていってしまう。反面、頭が良く、どんな仕事もこなしてしまう器用さを持っている。純粋で情が深い女。ここまで知ってしまったらもう憎めない。だって、松子は松子なりに必死に生きている。その時その時、いや、一瞬一瞬の刹那の中で生きている。だからこそ人よりも色濃い人生だったのかもしれない。数奇な運命を生きた松子の一生は他人からみたら不幸かもしれないが、本人は必死に夢見て生きていたのだ。
ことり、と想像で鳴らす乾いた音がずっと響いてやまない。それは幸せそうに微笑む松子の鳴らす優しい音。そう自分なりに想像してみた。どんよりした気持ちは残るものの少し晴れやかになった。読んで良かった。心からそう思う。
読了日:2006年6月9日
映画化になりましたね。原作を読む前に映画予告編を見ていたことから、あのポップな仕上がりに勝手におもしろおかしい松子の一生♪なんてのを想像していたのですけど…全然違いました。違いすぎです!原作は何とまぁ救いようのない話しなのか、と正直滅入りました。けど、読み終えてしばらく悶々と考えて、でも形は違っても人間平坦に生きているやつなんて少ないし、誰だって山あり谷あり(その高みや深さは人それぞれ違えど)の人生を生きているものね。私だっていろいろあったさ。ちょっと言いよどんでしまう過去だって背負っているさ(あ、なんか誤解されそうだな〜(笑))。そんなことを思ったら松子が愛おしくなってしまって彼女の人生もう一回思い返してみたりした。
そして読み終えて初めて映画のキャストを確認してみました(それまで頑なに見ようとしなかった。だってそのキャスティングで読んじゃうもの)。中谷美紀以外は配役を知らずに読んだのが良かったみたいです。配役を見てやたらイメージに合う俳優さんを配しているのに驚きました。ははぁ〜劇団ひとりはあの役ね。龍洋一カッコ良いわぁ〜。明日香はちょっと年上過ぎかな?BONNIE PINKはソープ嬢役とは聞いていたからちょっと想像していた。小野寺も合っているし、何よりもイメージ通りだったのは島津賢治。ああ〜そうそうそう!ちょっと若いけどこんな感じよね〜、なんて夜中に一人でひゃーひゃー言っている私。映画も是非見たい。劇場では見られないからもう少し先になるだろうけど。
映画:
嫌われ松子の一生
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