ひなたでゆるり

読書のコトとちょっぴり日々のコトブログ

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『瓦経』日和聡子

瓦経 (Coffee Books)
瓦経
日和聡子著・金井田英津子画/岩波書店
作為無作為の混濁に、彷徨い、眠り、目覚め、落ちる、掌編六編。

日和さんの紡ぐ世界と、金井田さんの描く世界がそれはそれは見事に融合された贅沢な1冊。
このシリーズはまだ2冊目なのですが早くも最高の1冊なんじゃないかと興奮気味。
短篇どれもが秀逸で1話1話堪能しました。
滑らかに流れる日本語を脳内でだけでなく声に出して読んでみたい。
静かにそこにある世界、幻想的な世界に迷い込んでいつまでもとろとろとこの夢から目覚めたくないような気持ち。

お気に入りは「摺墨」「裏白」「放生」「瓦経」。

読了日:2009年8月12日
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『水族』星野智幸

水族 (Coffee Books)
水族
星野智幸著・小野田維画/岩波書店
ぼくは水によく溶けていた。水がぼくそのものだった。鮮烈な世界イメージを泳ぐ目眩く小説体験。

不条理でちょっとシュールなお話しが、淡く儚げに(けれども存在感は充分に)描かれた挿画に非常に良く合っていて、贅沢な読書でした。
大人なビターな童話、と言っていいのかな。こういう雰囲気はすごく好き。
次第に明かされるこの世界の正体、そして残酷で悲しい事実。
まさに目くるめく世界でありました。

読了日:2009年8月12日
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『いつか王子駅で』堀江敏幸

いつか王子駅で (新潮文庫)
いつか王子駅で
堀江敏幸/新潮文庫
背中に昇り龍を背負う印鑑職人の正吉さんと、偶然に知り合った時間給講師の私。大切な人に印鑑を届けるといったきり姿を消した正吉さんと、私が最後に言葉を交わした居酒屋には、土産のカステラの箱が置き忘れたままになっていた…。古書、童話、そして昭和の名馬たち。時のはざまに埋もれた愛すべき光景を回想しながら、路面電車の走る下町の生活を情感込めて描く長編小説。

私、王子生まれの王子育ちなのです。
でも子供ながら王子独特の暗さというか華やかさのなさが好きでなくて。
独立して都電沿いに住むようになって何となく下町の人々の温かさみたいなものに触れてじんわりと好きになってきて。
その子供時代だったり若かりし時代だったりの自分の思い出と、この作品に漂う温かさや懐かしさが強い郷愁感を引き寄せて何だか感傷的になってしまいました。
帰りたい場所、でも帰れない場所。
懐かしい思い出は決して良いものばかりでないのであります…。

荒川遊園地や尾久の近くに住んでいたのが懐かしい。都電も良く利用していました。
ああ、帰りたいなぁ。

読了日:2009年4月28日
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『退出ゲーム』初野晴

退出ゲーム
退出ゲーム
初野晴/角川書店
化学部から盗まれた劇薬の行方を追う「結晶泥棒」、六面全部が白いルービックキューブの謎に迫る「クロスキューブ」、演劇部と吹奏学部の即興劇対決「退出ゲーム」など、高校生ならではの謎と解決が冴える、爽やかな青春ミステリの決定版。

学園もの&文化部主役、青春と日常系ミステリといったら古典部シリーズを思い浮かべてしまいますが、より謎解きの醍醐味を味わえます。
ほのぼの系?と思いきやひとつひとつの謎が次第に重厚さを増して重いテーマを抱えています。
その奥深さは読後にさまざまな思考を巡らせて読み応え充分。
謎が解明された時の悲しみと優しさ溢れる「クロスキューブ」、コミカルさの中にとある真実が凄味を持って迫る「エレファンツ・ブレス」が好き。
吹奏楽部、普門館という言葉が身近にある分、思い入れ強く読みました。
目指せ!吹奏楽の甲子園・普門館!

読了日:2009年2月7日
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『いやしい鳥』藤野可織

いやしい鳥
いやしい鳥
藤野可織/文藝春秋
鳥に変身した男をめぐる惨劇を描いた文學界新人賞受賞作「いやしい鳥」、絶滅したはずの恐竜に母親を飲み込まれた女性の内面へ踏み込んだ「溶けない」、愛とヴァイオレンスが奇妙に同居する「胡蝶蘭」の三作を収録。
「いやしい鳥」「溶けない」「胡蝶蘭」3篇の短編集。

異色の幻想文学との帯の言葉を頭の片隅に置いて読み始めてみましたらば、これは確かに異色な幻想ものであるけれど、たぶん私が最初に想像したものとはだいぶ異なってそれは予想というか想像以上の凄まじさでありました。いや〜この不快感さはなかなかのもの。これを声高らかに好きだ!と書いてしまっていいものかどうかなのだけど、これは恐怖というよりも愛を感じてしまう。だから好き。

表題作の「いやしい鳥」はごくごく普通に物語が始まってそこからまさかの世界が待ちうけるとは思わないものだからあれよあれよと引きずり込まれたらもう逃れられない壮絶な展開がそこにあるわけです。どこからが現実でどこからが非現実の世界なのかその境界線がぼんやり曖昧になって自分がどこに位置しているのか彷徨ってしまう不安感。そしてこのまさかの展開の不快感。不快感を感じつつ皮肉な笑いも混ざっていてちょっぴりホッと出来るような。いやいやホッと出来るとは到底言えないけれど、ちょっぴり、ね。

「溶けない」は「いやしい鳥」とはまた違う感情に襲われる。幼い自分と母親との過去の記憶。母は確かにあの時呑まれたのだ。そしてあの時同様それはまたやってくる。
果たして今いる場所はどこなのか、自分もまた母と同じく呑まれたのか。真剣に語る彼女の側でしか語られないものだから彼女が現実なのかはたまた非現実の中にいるのか、これは一体どうしたことなのかぐるぐるしてしまってぐるぐるはさらに回転を増して放られる。

「胡蝶蘭」はとても短い物語の中で作者の世界がより濃く凝縮されている。明らかに異質な胡蝶蘭が不気味なのだけど、さほど恐怖さは感じない。けれども明らかにここには狂気が漂っていてただならぬ空気がちくちくと突き刺す。
飛びぬけていないけれどしっとりとした狂気。ひたひたと静かに音立てる狂気。

いずれも彼らは至極真っ当なのだ。真面目に語られるものだから漂う不気味さはより一層濃さを増す。
この猛毒さはクセになりそう。早くも次作が待ち遠しいです。

読了日:2009年1月26日
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『私のスフレ』林真理子

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私のスフレ
林真理子/マガジンハウス livedoor BOOKSで購入 書評データ
まだ見ぬ恋人に思いを寄せていた自意識過剰な女の子・・・。甘酸っぱい記憶がよみがえる追憶のエッセイ集。

林真理子さんの作品でとにかく好きなのは『本を読む女』。何度も読み返し手垢がつき心なしか紙が磨り減って色褪せてもうとんでもなくボロっちいのだが、それでも手放せずにずっと手元に置いている(あ、でも今は段ボールをお布団に押入れでスヤスヤ)。『胡桃の家』も好きだったなぁ。そんな林真理子さんの作品を楽しんでいたのはもう今から10年以上も前?その間とんと読まなくなっていたのだ。何故か。

ということで縁あって本書を紐解くことになった。パステル調の可愛らしいイラスト。『私のスフレ』…タイトルまで可愛らしい。一体どんな物語なのか、と小さなわくわくを胸に秘めつつ読み始めた。あ、あれ?これエッセイだったのね。著者の少女時代を振り返るエッセイ。そこに描かれているのは装丁やタイトルの可愛らしさからは少し、いやかなり遠ざかった思い出たちだった。
とにかく林さんの書くものは潔い。潔すぎて気持ち良いくらいなのだが、居心地の良い気持ち良さではない。もちろん林さん自身もそんなものを読者に与えようとは思っていないだろう。林さんも書かれているがここにあるのはただ一言「卑屈」。それで成り立っている。その少女時代はきっと林さんも振り返りたくないであろうもので、読んでいても辛く哀しくなるばかりで、でもそれをあえて素のまんま、全く飾り立てずに書いてみせるのだからすごいなぁ、とひたすら感服する。

中学、高校生の頃って確かに男っ気のある女の子と全くない女の子とそれは見事に分かれたものだけど、だからといって彼がいるとか男の子にモテるとかいちいち気にしたことはなかった私なのでいまいちこのエッセイに入り込めなかったのが正直なところ。それは自分が男の子にモテていたとか、彼がいたとかそういうことでは残念ながら、ない。恋に恋焦がれるというよりもマンガや本を読んでいることのほうに忙しかったという何とも色気のない話しである(笑)

誰しもが通り過ぎる少女時代。それは甘酸っぱいというよりもむしろ酸っぱさに顔がきゅぅ〜っとしぼんでしまうようなそんな感覚なのが大半なのではないかなぁ。無知で恥ずかしいこといっぱいしてきたからあまり思い出したくないのが本音(私は)。それでもこうして本書を読むことであの頃の自分を呼び寄せて思い出してみるのもたまには悪くないかな。ちょっとそんな風に思ってみたりもした。そんなに昔の自分を毛嫌いすることもないか。あの頃の自分があっての今の自分。もっとあの頃の自分を愛してあげようか。そんな気持ちにさせてくれた『私のスフレ』である。

読了日:2007年2月2日
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『猫町』萩原朔太郎

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猫町
萩原朔太郎/パロル舎
猫、猫、猫。どこを見ても猫ばかり。いつもの角を曲がったら、そこは夢現・無限のめまい町。ノスタルジックでモダーンなイラスト紀行。猫の視線で描かれるイラストが不思議な旅の世界に誘う。
大好きな詩人、萩原朔太郎。高校生の頃やはり読書好きな父の書棚からこっそり拝借して読んだのが最初。その退廃的な言葉の連なりに魅了され以来、時々その詩や散文に触れることが何よりの癒しでした。朔太郎が癒しになるなんて今からしたらどうかと思いますが、当時はちょっと変わった女子でしたので…。もちろん今でもその片鱗は残っていて私の書棚にもこっそり朔太郎の詩集が眠っています。
(先日友人からオススメの詩集を教えて欲しいの依頼を受け、朔太郎の詩集を貸しました。これもどうかと思うけど。友人はどう思うだろうか、ドキドキ)

数少ない朔太郎の小説の中で最も好きな『猫町』。何とも不思議な話しです。旅先でふと迷い込んだ町はどこもかしこも猫、猫、猫だらけ。不気味です、怖いです、ここに現れる猫はちっとも可愛くありません(むしろこの不気味な猫たちに恐怖すら感じる)。でもそれを凝視してしまう不思議な魅力があります。そんな引力が朔太郎の文にはあります。ふと現れた町は何事もなくふいと消えてしまう。

このパロル舎の『猫町』は金井田英津子さんのイラストがその不気味さの中にも匂い立つ魅力を充分に表現しています(金井田さんのイラストの猫は愛らしい。これで少しは「猫町」の猫に対する恐怖が薄れたかも)。なんて豪華なのでしょうか(お値段も豪華です)。こういう本はちょびっとずつ楽しんでみたいものなのですが、久しぶりの朔太郎の世界にすっかり魅了され一気に読んでしまいました。夜中窓の外から流れくる、さわさわと葉のこすれるかすかな音を聞きながら読んでいたら、何だか自分もこの幻想なる世界へ誘われそうな錯覚を覚えます。悪夢でも見そうな不気味さは相変わらずなのだけど、読後は何故か心地良さが漂っている。相変わらず朔太郎は私にとって癒しなのでした。

読了日:2005年8月16日



このシリーズ、他にも2冊あります。
『冥途』内田百
『夢十夜』夏目漱石
是非是非手に取りたい作品です。

ちなみに私の大好きな「書物の王国」シリーズ(国書刊行会)"架空の町"にも「猫町」が収録されています。このシリーズは長年全て揃えたいと願っているものの未だ叶わず(こちらも何とも豪華なお値段だし)。ただ1冊"両性具有"だけ持っています(それって!笑)。

冥途 夢十夜 架空の町
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『密室は眠れないパズル』氷川透

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密室は眠れないパズル
氷川透/原書房
被害者はエレベーターの前で犯人を名指しして絶命。ところが「犯人」は、エレベーターの中で背中を刺され、血塗れで死んでいた。いったい誰が、いかなる方法で殺したのか。「密室」の内側で起こった「密室」の殺人。
「ロジックの魔術師、氷川透の7色の妙技!−島田荘司」
氷川透氏のデビュー作は『真っ暗な夜明け』(講談社ノベルス)ですが、本来はこちらが一番最初の作品になるようです。鮎川哲也賞最終候補作に残り、その際は『眠れない夜のために』だったのを改稿改題。島田荘司氏の熱い評価を受けた作品でもあります。
何たって読みやすく、人物描写が上手い。違和感なくスーッと入り込めました。が、この読みやすさ、人物描写の上手さが逆にミステリィとしての醍醐味を薄くさせてしまっている感あり。でもかなり好きです。ラストの1行なんていいなぁ。そうか、そうだよね、 そうだったんだもんね。とちょっぴりしみじみしたりして。主人公を「氷川透」にするあたりもいい感じ。今までに出会ったことのない爽快さを文章に感じます。血なまぐさい描写もそれらしく見えない、感じないのはこの爽快さゆえでしょうか。ミステリィ談義も面白い!

読了日:2000年10月25日
かりさ | 著者別は行(その他) | comments(0) | trackbacks(0) | 

『亡国のイージス』福井晴敏

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亡国のイージス
福井晴敏/講談社
日本推理作家協会賞・日本冒険小説協会大賞・大藪春彦賞受賞作
現在、本艦の全ミサイルの照準は東京首都圏に設定されている。海上自衛隊護衛艦「いそかぜ」。その弾頭、通常に非ず。(帯より)
凄い!とりあえずこう叫びたい。読了後ほぅっとため息と共に本を閉じました。購入時、その分厚さと存在感の圧力に尻込みしそうになりましたが、読み進むにつれてそれはおびただしい数の付箋を配され、何度も読み返されたページは手垢によって染められ、いつしかこれまでにない、興奮と高揚と切なさをひしひしと感じていました。

冒険小説だそうです。なるほど、男のロマン溢れる冒険小説というジャンルに分類されるのでしょう。けれども本書はその枠を完全に越えています。冒険小説という枠だけに留まらないくらいスケールが大きすぎて最初こそ戸惑いましたが、 読み進むにつれそんな戸惑いはすぐに消え去っていました。心を根底から揺さぶる何か、切っ先でえぐられるような胸の痛み、 鳴り止まない大音響、心の波のさざめき。全速で物語は進んでいるかのようですが、時々フッと息抜きが出来る間も忘れない。素晴らしい筆力です。

国家、組織、そしてそれによって動かされる個人の思惑。それぞれの葛藤とぶつかり合い、 個々が持つ傷の深さ…。 ラストへ導く灯火が滲んで、溢れ出て仕方ありませんでした。読み終えるのがもったいなくて、何回か読み返した部分もあったために、 読了までにかなり時間がかかってしまいました。素晴らしい作品に出会えたことを感謝いたします。

読了日:2000年7月25日
かりさ | 著者別は行(その他) | comments(0) | trackbacks(1) |