凸凹デイズ 山本幸久/文藝春秋
恋愛じゃなく、友情じゃなく、仕事仲間。彼らがいつも、そばにいた。弱小デザイン事務所・凹組クロニクル。キュートでコミカル、ちょっと切ない、オシゴト系長編小説。
良かった!最高に楽しめた。読後感が気持ち良い。
そう、見上げれば眩しく広がる夏の青空のようなスッキリ感。
どろどろした恋愛があるわけでなく、純粋に仕事仲間としての関係。ああいいな〜こういうの。若かりし頃私も夢と希望を持って入社したものだ。その夢も希望も実際には打ち砕かれることになるくらい、過酷な労働が待っていたのだけれども。が、どんなに仕事が大変でも仲間に恵まれれば続けていける。仕事仲間って学生時代に築いた仲間とはまた違う結束力があるのだよね。私にもそんな頃があったんだよな…なんてことを作品を読みながら思い出していた。凪海の等身大の姿が作品の中で弾けていて、彼女と共に喜怒哀楽忙しく感情くるくるさせて文章を追っていた。不器用ながらも頑張っている凪海の姿に勇気付けられてもいた。
そして、同じデザイン会社(凹組という名前なのだ)の先輩、黒川と大滝がまたえらくいいキャラをしているのだ。そして黒川&大滝の元仕事仲間・醐宮純子との絡みも最高に良い。ちょっとやな女なんだけど、憎めない。どちらかというとこの醐宮に共感する女性が多いんではないかな。こういうさっぱりした女性、いいよね、好き。
物語は主人公・凪海の視点と、大滝の過去(凹組結成の頃)の視点で進んでいく。何故一緒に会社を立ち上げたはずの醐宮が今は独立し、別の会社を立ち上げたのか。その謎を大滝の視点で追いかけていく。今では苦い思い出だが、当時は確かに3人未来を夢見ていたのだ。良くも悪くも人は成長する。自分の野望のために仲間を踏み台にすることもあるかもしれない。それでもなお突き進む醐宮の力強さがすごい。その醐宮に比べ凪海はとっても可愛い女の子。青春真っ只中。でもだからといって凪海は弱いわけではない。ここが女の怖いところ。きっとあと数年もすれば醐宮に負けじと打たれ強く成長するはず。そんな凪海を見るのも楽しみかも。
いやいや、黒川・大滝・醐宮の3人だってまだまだ青春を謳歌中だろう。ああ!うらやましい。私はこうしてあの頃の自分を彼らに重ねて思い出を語ることくらいしか出来ないのだから。
そして…ちくわぶが好きな私は、醐宮のおでん占いに笑った。凪海が真っ先にちくわぶを頼んだのを見た醐宮がこう言うのだ。
「ちくわぶをいちばん先に頼む人間なんて、はじめて見た」
「おでん占いがあったら、あなた、ぜったい地味で積極性がないくせに変人ってでるわよ」
そこまで言うか。
そこまで言うか(笑)ハハハ、まぁ当たっているような気も…しなくはない、かな。
爽やかな読後感を味わえる素敵な作品であった。
読了日:2006年8月4日
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