ひなたでゆるり

読書のコトとちょっぴり日々のコトブログ

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『いちばんここに似合う人』ミランダ・ジュライ

いちばんここに似合う人 (新潮クレスト・ブックス)
いちばんここに似合う人
ミランダ・ジュライ/岸本佐知子訳/新潮社
No one belongs here more than you
水が一滴もない土地で、老人たちに洗面器一つで水泳を教える娘。英国のウィリアム王子をめぐる妄想で、頭がはちきれそうな中年女。会ったこともない友人の妹に、本気で恋焦がれる老人――。強烈な個性と奇妙な優しさに満ちた16の短篇を、物語の声にぴったりと寄り添う岸本佐知子訳で。フランク・オコナー国際短篇賞受賞。

黄色な装丁がもう素晴らしく素敵なのです。
この色とデザインにふらふら惹かれて手にとってすぐに読みました。

ああ好き、この感じ。
16のお話それぞれに孤独な人がいて、その孤独さはけれども決して特別なものなんかじゃなくて日々の暮らしにふっと過る誰しもが感じるものであって、でもとても奇妙なもの。
孤独を埋めるために誰かと一緒にいて寄り添っているのに、繋がることがより一層の孤独を生む。
寂しさがずっとずっと増していくばかりの何とも切ない感じ。
その感覚が自分の抱える冷たい部分と妙に合わさって心地良かった。
訳者の岸本さんの感性がもう素晴らしくて、とても感じ入って物語の世界に浸れました。

孤独だけど、孤独ゆえに誰かと繋がったという事実が仄かであっても光を生むのだなぁ。
「水泳チーム」「階段の男」「あざ」がお気に入りです。

読了日:2010年9月11日
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新潮クレスト・ブックス リスト

今とても気になっていて少しずつ読み始めている「新潮クレスト・ブックス」。
自分の覚書にとリスト作ってみました。ゆっくりペースで楽しもうと思います。

新潮クレスト・ブックス
新潮クレスト・ブックスとは?
新潮クレスト・ブックス8周年記念特集

■ 既刊リスト ■(2010.2 更新)
(タイトルリンク先はAmazonへ。(文庫)は文庫化)

シンメトリーの地図帳』マーカス・デュ・ソートイ(2010/2)
ボート』ナム・リー(2010/1)
初夜』イアン・マキューアン(2009/11)
通訳ダニエル・シュタイン(下)』リュドミラ・ウリツカヤ(2009/9)
通訳ダニエル・シュタイン(上)』リュドミラ・ウリツカヤ(2009/8)
リリアン』エイミー・ブルーム
最終目的地』ピーター・キャメロン(2009/4)
極北で』ジョージーナ・ハーディング(2009/2)
ディビザデロ通り』マイケル・オンダーチェ(2009/1)
帰郷者』ベルンハルト・シュリンク(2008/11)
時のかさなり』ナンシー・ヒューストン(2008/9)
見知らぬ場所』ジュンパ・ラヒリ(2008/8)
博物館の裏庭で』ケイト・アトキンソン(2008/8)
記憶に残っていること』短篇小説ベスト・コレクション(2008/8)
ふくろう女の美容室』テス・ギャラガー(2008/7)
バーデン・バーデンの夏』レオニード・ツィプキン(2008/5)
密会』ウィリアム・トレヴァー(2008/3)
ペット・サウンズ』ジム・フジーリ(2008/2)
土曜日』イアン・マキューアン(2007/12)
ガラスの宮殿』アミタヴ・ゴーシュ(2007/10)
海に帰る日』ジョン・バンヴィル(2007/8)
千年の祈り』イーユン・リー(2007/7)
林檎の木の下で』アリス・マンロー(2007/3)
ナンバー9ドリーム』デイヴィッド・ミッチェル(2007/2)
睡蓮の教室』ルル・ワン(2006/10)
大統領の最後の恋』アンドレイ・クルコフ(2006/8)
サフラン・キッチン』ヤスミン・クラウザー(2006/8)
空高く』チャンネ・リー(2006/5)
イラクサ』アリス・マンロー(2006/3)
世界の果てのビートルズ』ミカエル・ニエミ(2006/1)
ある秘密』フィリップ・グランベール(2005/11)
最後の注文』グレアム・スウィフト(2005/10)
遠い音』フランシス・イタニ(2005/8)
素数の音楽』マーカス・デュ・ソートイ(2005/8)
黄金の声の少女』ジャン=ジャック・シュル(2005/5)
ナターシャ』デイヴィッド・ベズモーズギス(2005/4)
彼方なる歌に耳を澄ませよ』アリステア・マクラウド(2005/2)
遺失物管理所』ジークフリート・レンツ(2005/1)
奇跡も語る者がいなければ』ジョン・マグレガー(2004/11)
いつか、どこかで』アニータ・シュリーヴ(2004/10)
ペンギンの憂鬱』アンドレイ・クルコフ(2004/9)【感想】
その名にちなんで』ジュンパ・ラヒリ(2004/7)(文庫)
あなたはひとりぼっちじゃない』アダム・ヘイズリット(2004/5)
直筆商の哀しみ』ゼイディー・スミス(2004/3)
冬の犬』アリステア・マクラウド(2004/1)
アンジェラの祈り』フランク・マコート(2003/11)
シェル・コレクター』アンソニー・ドーア(2003/6)
アルネの遺品』ジークフリート・レンツ(2003/2)
ソーネチカ』リュドミラ・ウリツカヤ(2002/12)
灰色の輝ける贈り物』アリステア・マクラウド(2002/11)
その腕のなかで』カミーユ・ロランス(2002/5)
石のハート』レナーテ・ドレスタイン(2002/4)
ウォーターランド』グレアム・スウィフト(2002/2)
最後の場所で』チャンネ・リー(2002/1)
逃げてゆく愛』ベルンハルト・シュリンク(2001/9)(文庫)
パリ左岸のピアノ工房』T・E・カーハート(2001/11)
パイロットの妻』アニータ・シュリーヴ(2001/8)(文庫)
ホワイト・ティース(上)』ゼイディー・スミス(2001/6)
ホワイト・ティース(下)』ゼイディー・スミス(2001/6)
最後の晩餐の作り方』ジョン・ランチェスター(2001/3)(文庫)
愛の続き』イアン・マキューアン(2000/11)(文庫)
天使の記憶』ナンシー・ヒューストン(2000/9)
停電の夜に』ジュンパ・ラヒリ/(2000/8)(文庫)
朗読者』ベルンハルト・シュリンク(2000/4)(文庫)
コールドマウンテン』チャールズ・フレイジャー(2000/2)(文庫)
ブルーミング』スーザン・アレントウス(1999/12)
地獄のコウモリ軍団』バリー・ハナ(1999/11)
グアヴァ園は大騒ぎ』キラン・デサイ(1999/9)
あなたが最後に父親と会ったのは?』ブレイク・モリソン(1999/9)
花粉の部屋』ゾエ・イェニー(1999/8)【感想】
ジャイアンツ・ハウス』エリザベス・マクラッケン(1999/7)
スコットランドの黒い王様』ジャイルズ・フォーデン(1999/6)
アムステルダム』イアン・マキューアン(1999/5)(文庫)
ネヴァーランドの女王』ケイト・サマースケイル(1999/4)
巡礼者たち』エリザベス・ギルバート(1999/2)(文庫)
穴掘り公爵』ミック・ジャクソン(1998/9)
ケンブリッジ・クインテット』ジョン・L・キャスティ(1998/9)
ハイウェイとゴミ溜め』ジュノ・ディアズ(1998/7)
アンジェラの灰』フランク・マコート(1998/7)(文庫)
キス』キャスリン・ハリソン(1998/5)(文庫)
旅の終わりの音楽』エリック・フォスネス・ハンセン(1998/5)(文庫)

↓以下、装丁画像。どれも装丁がとても綺麗なんですよ〜。
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『ペンギンの憂鬱』アンドレイ・クルコフ

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ペンギンの憂鬱
アンドレイ・クルコフ/新潮社
恋人に去られた孤独なヴィクトルは、憂鬱症のペンギンと暮らす売れない小説家。生活のために新聞の死亡記事を書く仕事を始めたが、そのうちまだ生きている大物政治家や財界人や軍人たちの「追悼記事」をあらかじめ書いておく仕事を頼まれ、やがてその大物たちが次々に死んでいく。舞台はソ連崩壊後の新生国家ウクライナの首都キエフ。ヴィクトルの身辺にも不穏な影がちらつく。そしてペンギンの運命は…。欧米各国で翻訳され絶大な賞賛と人気を得た、不条理で物語にみちた長編小説。

何だろう。この不気味さと不条理さが、淡々と綴られる日常生活に織り込まれるものを不快感よりもむしろ魅力的に読んでしまうものは。

ウクライナの首都キエフが舞台。売れない小説家ヴィクトルと憂鬱症の皇帝ペンギンミーシャの孤独な生活。ミーシャはヴィクトルのペットというよりは互いに干渉し合わない同居人のような存在である。経営難の動物園から譲り受けたペンギンは住む環境も変えられ、集団から引き離され憂鬱症を患い、常に孤独の中を生きている。ガールフレンドに去られたヴィクトルもまた孤独である。孤独と孤独が補い合って互いの孤独を埋めているような生活。そんな生活がこのまま続いていく物語でも充分良かったのであるが、物語の中ではヴィクトルがある仕事を引き受けてから不可解なことが次々と起き始める。
あまりにも謎が多すぎてこれらが一体どうやって収束していくのか早く見届けたい焦燥感と、ヴィクトルが巻き込まれているものの正体がつかめない不安感と、ここに漂う鬱々としたものがない交ぜになり落ち着かせなくさせる。

新聞の死亡記事…まだ生きている人間の追悼記事を書くという仕事を引き受けてからヴィクトルの生活も安定してゆく。けれども心の安定は得られずその孤独感は増すばかり。ペンギンじゃないミーシャから預かった4歳の少女ソーニャ、ペンギンがきっかけで友人になった警察官のセルゲイ、その姪であり、ソーニャのベビーシッターでもあるニーナ。彼らの存在がヴィクトルの心の隙間を埋めることはない。けれどもセルゲイだけは少し違ったのかな。セルゲイとの釣りのシーンが最も好きである。ミーシャが活き活きと氷穴に飛び込む場面など微笑ましい。こんな時ヴィクトルの心も温まっていたのではないかと思う。
さて、生活は安定するが、身の回りでは不穏な出来事が次々と起こる。鍵がかかっているはずの玄関から誰かが侵入していたり、追悼記事に書いた大物が次々と死んでいったり。その見えない何かが全く読めず薄ら寒さを感じる。そしてヴィクトルの身に何が起きているのか分かるときのゾクゾク感。それまでのほのぼのとした気分はここで一気に暗闇に突き落とされる。

やはりここでの主役はペンギンのミーシャであろう。ペタペタと足音を立てて歩くさま、キッチンの戸口をつついたり、鏡に映る自分の姿をじっと見つめていたり、仕事中のヴィクトルの膝に自分の体を押し付けてその顔をのっけてみたり。そんな仕草がいちいち愛らしい。ペンギンをさり気なく描き、変に擬人化していないところがまた良いのだ。ミーシャはただのペットとして描かれているのではなく、この不条理な物語になくてはならない重要なキャラクターでもある。数多く残される謎の中にミーシャのその後もあるのだが、なんと続編『カタツムリの法則』というのが刊行されているらしい。翻訳されているのならばすぐにでも飛びついて読みたいところであるが、残念ながら翻訳されていない。ここに散らばった謎が回収されているのかどうか定かではないが、それを見届けるためにも続編を是非とも読んでみたい。

読了日:2006年10月11日


クレスト・ブックス2冊目です。この物語に漂う温度の低さと鬱々したものによって読み手まで飲み込まれてしまうんではないかと思いきや、そんなことは全然なくむしろ面白く読めてしまった。ペンギンのミーシャの愛らしいこと。4歳の女の子ソーニャもとてもとても可愛らしい。
著者のアンドレイ・クルコフはウクライナのロシア語作家。不遇な作家生活を経てこの作品で一躍有名になったそうです。しかも欧米で人気を博したとか。確かにこれはミステリアスな部分でも秀逸。アンドレイは何でも小動物を良く登場させるのだそう。うわ〜どんな物語になっているのだろうか。気になって仕方ない。『ペンギンの憂鬱』の続編も是非読みたいなぁ。アンドレイの新作『大統領の最後の恋』もクレスト・ブックスから出ました。こちらも楽しみです(ただ今図書館に予約中)。
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『花粉の部屋』ゾエ・イェニー

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花粉の部屋
ゾエ・イェニー/新潮社
幼い頃、父と母は離婚した。母は新しい恋人と海外へ。父もやがて再婚し…。娘をかえりみない子供のような親。抵抗のすべを知らない子供。世界を静かに覆しつつある新しい家族像を、自らの体験をもとに、柔らかな声で描いた、21世紀文学の幕開けを予感させる長篇。ドイツ語圏の文学賞を独占した23歳の新人の、繊細、果敢な話題作。

切々と綴られるヨーの語り、思い、抗い、諦め、だが止む事はない儚き夢…。哀しみに満ち溢れたこの流れのままにヨーの語りは澱みなくすべらかに進行してゆく。時に回顧を交えながら。父も母もするりとヨーの手を振りほどき去ってしまう。その姿に追いすがっても彼らはヨーの姿をその瞳に映さない。それのどれだけ哀しいことか。深き哀しみの淵に佇むしかないヨーの健気な姿は静かに、しかし強烈に胸を打つ。

ああ、この胸に宿る感情をどう表現したものか。読み終えて幾度も幾度も適切な言葉を探せど、探し物は一向に見つからないのだ。どうすれば彼女の感情に与することが出来るのだろう。だが一方でその資格はお前にはないのだ、と頭の片隅でもう一人の自分が罵倒する。ヨーに仕向けられた事実はあまりにも酷であり、悲劇でもある。その哀しみに寄り添う資格が自分にはないこともちゃんと自覚している。ヨーの声なき悲痛の叫びに鬱々とし、ヨーの感情なき語りに胸を締め付けられる。その狭間の中で私はどっちつかずで立ち止まったままである。

静謐な文体、描写の美しさ、言葉紡ぎにハッとさせられる。時間に押し流されるかのように急ぎ足で読むのは非常に勿体無い気がして、この作品は丁寧に時間をかけて読んだ。そこに紡がれる言葉ひとつひとつをまるで硝子細工の脆いものを扱うかのように。そこから広がる新たな自身の感情を陽にかざして確かめるように丁寧に丁寧に。
そしてヨーのような哀しみに突き落とさぬよう、私は子らの手をしっかり握っていこう。そう固く誓ったのであった。

読了日:2006年10月3日
かりさ | 新潮クレスト・ブックス | comments(0) | trackbacks(0) |