彼女は存在しない 浦賀和宏/幻冬舎
たったひとりの妹が多重人格なんて!その事実に気づいた「私」の周囲に起こる連続殺人。事件と妹の関係は…。ミステリー界注目の若き天才が到達した衝撃の新境地。「本作は浦賀の最高傑作である」森博嗣氏、絶賛!
繊細な硝子を思わせる装丁。そこに溶け込む森博嗣氏の帯の言葉。
この扉を開けた先に続くもの―。
読後、このあまりにもどうもし難い戦慄が時間を経るごとに大きくなり徐々にこの作品を理解する処理へとすりかわってゆく。一言、すごいです。作品の内容自体は参考文献でも想像できました。実際に多重人格(=解離性同一性障害)を扱っています。そして場面は香奈子サイドと根本サイド、交互に進んでいきます。この作者が用意した流れに素直に乗っかっていくと…その先に待ち受ける衝撃があまりにも唐突すぎて言葉を失くす。その衝撃の前の「あ、やっぱり…」から間をおかず、いきなり突きつけられたものとは。
このタイトルの持つ重さ、一番最初の香奈子が貴治に向けた言葉。ゆっくりゆっくり道案内されていきます。一定の流れに沿って向かっていくと、ハッキリとは感じないまでも確かにその流れが一瞬澱むような感覚がしました。それが素直に流されまい、と抵抗する意識が芽生えたきっかけ。芽生えて自信持ち始めてきたところへいきなり摘み取られたような読後感。
久しぶりに夢中になってページを繰りました。浦賀和宏という作家の世界は私には心地良い。彼の紡ぎだす他の世界に誘われたい。一刻も早く。
読了日:2002年4月8日
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