ひなたでゆるり

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『きことわ』朝吹真理子

きことわ
きことわ
朝吹真理子/新潮社
永遠子は夢をみる。貴子は夢をみない。葉山の高台にある別荘で、幼い日をともに過ごした貴子と永遠子。ある夏、突然断ち切られたふたりの親密な時間が、25年後、別荘の解体を前にして、ふたたび流れはじめる―。第144回芥川賞受賞。

貴子と永遠子、共に過ごしたあの日の記憶が現在と過去をふわふわ浮遊しているような、こちらも夢見ているような感覚。
甘噛みの肌の感触、からがる髪、無音の雨滴、語られる少女の記憶か夢か、乳白色の中を迷う夢幻のような心許なさ。
ぽつぽつと浮かんでは消える凝っていた記憶のかけらが流れた時、想い出の奥底に仕舞われたふたりの記憶の些細な相違が色濃くたちのぼる。
背中合わせの少女の髪はからがり離れたがらないけれど、互いの瞳に映す風景は交わらない。
人間の記憶の曖昧さ、夢か現かの揺らめき、撫でるように優しく流れ、全てが心地良い。

「きことわ」のタイトル、装丁の色合い、とても好き。
朝吹さん独特の言葉選び、描写がとても相性良く心地良く読めたのだけど、ひらがなで表現する箇所がところどころで見受けられ、これは自然なのか意図的なのかしばし立ち止まることも。
それもまた好きなところ。
この本の中で揺らぎながら自分の中で浮かぶ言葉をまとめ綴るのがとても難しかったです。

読了日:2011年1月27日
かりさ | 著者別あ行(朝吹真理子) | comments(0) | trackbacks(0) | 

『流跡』朝吹真理子

流跡
流跡
朝吹真理子/新潮社
闇夜の川で「よからぬもの」を運ぶ舟頭。雨あがりを家路につく会社員。波止場にたちつくし船を待つ女。――定まらずに揺れつづける生のかたちを、揺らぎのままに描きだす、鮮烈なデビュー作。

言葉をひとつ、またひとつ、紡いだ文字の連なりの意味は求めず、
ただ身を任せたゆたうように流れゆく。
理解しようと読むというよりも、脳内に流れ来る感覚を咀嚼せず有りのまま受け入れる。
流れるように、けれども時に静謐な美しい言葉の佇まいにハッと立ち止まり、見惚れる。

存在する言葉の心許なさと不確かさ。
目で追い、脳内に流し込み、体内に留めようにもはらはらと落ちてゆく文字の欠片。
四方に拡散し留まらぬ文字の流跡。

此処にたゆたうことの何と豊潤で幸福なひととき。

とてもとても好きな世界でした。輪廻転生の世界のような夢のような、淡い夢幻の中をゆらゆら揺られて流されてゆく感覚がとても心地良かった。
とにかく朝吹さんの紡ぐ言葉、文章、表現が美しくハッとさせられます。

闇に目が馴れる頃、雲間からとろとろとした月も映じ、木立、古木立、
落葉樹があわあわともみじしてそのぴんと張った一葉一葉があからむ。
だがあと一刷毛たりない。

「だがあと一刷毛たりない」と書かれれば、赤らみ始めた葉の今の色合いが見えてきます。
そこにさっと一刷毛色をのせれば鮮やかさが増すことも想像出来ます。
言葉にこれだけの活力があり、それによって想像力が豊かに湧きおこるという感覚。
ずっと漂っていたくて読み終えては行きつ戻りつしていました。
朝吹さんの描く世界、これからがますます楽しみです。

読了日:2011年1月25日
かりさ | 著者別あ行(朝吹真理子) | comments(1) | trackbacks(0) |