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『明日の記憶』荻原浩

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明日の記憶
荻原浩/光文社
知っているはずの言葉がとっさに出てこない。物忘れ、頭痛、不眠、目眩――告げられた病名は若年性アルツハイマー。どんなにメモでポケットを膨らませても確実に失われていく記憶。そして悲しくもほのかな光が見える感動の結末。
ぽっかり空いた穴に忍び入るこの虚無感をどうする術もなく、ただただやるせなさだけが漂う読後感。決してこの中の話しは他人事ではなく、いずれ我が身にも家族にも襲ってくるかもしれないのだ。その恐怖感は読むごとに増し、主人公佐伯とその妻・枝実子の計り知れない苦悩は痛々しく辛い。
若年性アルツハイマー。物忘れが激しくなった、と自覚し始めた佐伯に診断された病名。物忘れどころではない、いずれ人格破壊が起き、死に至る。
広告マンとして一線で働く佐伯に襲う記憶障害。人の名前を忘れる、顔を忘れる、重要な会議、先方の約束、相手企業の場所等々…当たり前にあるはずの記憶が曖昧になり、その記憶が果たして本当なのかどうかさえ自信を失う。それでも病気を受け入れることが出来ず、周囲に悟られないよう必死の努力をする。忘れないよう逐一メモを取り、その増え続ける膨大なメモをポケットに隠す。無駄な努力と分かっていても認めることが出来ない。この辺りの葛藤は読んでいて辛い。
年をとってくれば「あの人の名前、ほら、何だっけ?」「あの映画に出ていたあの俳優の名前何だっけ?」まず人の名前が出てこない。それでも必死に手繰り寄せていけばちゃんと解答に結びつく。それでも昔はすらすら出てきた海外スターの名前がスッと出てこなくなった時のショックは忘れられない。今では悲しいかな、そんなこと日常茶飯事ですっかり慣れっこになってしまった。以前の職業柄、人の名前はすぐに覚え決して忘れないことが自慢だったのに、今では自慢にもならないくらい覚えづらく忘れやすい。しかしこれは単に物忘れなのだ。アルツハイマーはもっと深刻でたった2、3分前に話した事柄を忘れてしまう。忘れるというよりも記憶に残していない。だから同じ質問をする。同じ話しをする。この話ししたっけ?などのレベルではなく、全く覚えていないのだ。これは怖い。これを自分に置き換えてみたり、夫に置き換えてみたりして読むともう身につまされて読むのが辛くなる。

昨日投票所へ向かう際、夫と並んで歩きながら考えた。これから先どちらかが先に逝き、どちらかが残されるのだな。もしかしたらその前にどちらかが痴呆症になって相手を忘れてしまうかもしれない。そういう将来を覚悟しなくてはならないのだ、と。今こうして若々しく元気にいられることの何と幸せなことか。平凡でも互いに健康でいるということ、それだけでも贅沢なことなのかもしれない。

黄金色に包まれる二人の姿は神々しく美しい。ただその先にあるものの壮絶な戦いの幕開けでもある。本を閉じ表紙の後姿の写真に胸が痛んだ。広がるばかりの虚無感はしばらくこの胸に留まり続けるだろう。

読了日:2005年9月12日
かりさ | 著者別あ行(荻原浩) | comments(18) | trackbacks(11) | 

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COMMENTS

Posted by ゆこりん  at 2005/09/14 9:18 AM
おはようございます。
衝撃的な作品でした。自分がもしそうなったらと
思うと正直、怖かったです。
Posted by ゆうき  at 2005/09/14 10:28 AM
こんにちは。TBさせてもらいました。
そうですよねー。
この本は、あそこで終わっているから、たまらない余韻があるんですよね。
続きを想像すると、つらいですね。
Posted by とも  at 2005/09/14 6:22 PM
こんばんは
私もこの本を読んでから、リサさんと同じことをたまに考えます。
夫婦お互い健康でいられたらそれだけで、しあわせだと思います。そういう意味でも以前紹介した、『さいごの約束』読んでみて下さい。
Posted by リサ  at 2005/09/15 12:07 AM
★ゆこりんさんへ
ゆこりんさん、こんばんは!
コメントありがとうございます。嬉しいです♪
いつものユーモアな荻原さん作品とは全く違う作風に
驚きながら身につまされながら読みました。
自分にも起こりうるかもしれない恐怖がありますよね。
でも出会えて良かった作品です。
Posted by リサ  at 2005/09/15 12:10 AM
★ゆうきさんへ
ゆうきさん、こんばんは♪
コメントとトラックバックありがとうございます。
希望の光に包まれたラストだったかもしれませんが、
その先にあるもののことを考えずにはいられませんでした。
読み終えた後、いろいろと考えてしまいます…。
Posted by リサ  at 2005/09/15 12:14 AM
★ともさんへ
ともさん、こんばんは!
当たり前の日々を送っているとその当たり前であることの
幸せを忘れてしまうんですよね…。
それがいかに幸せであるか、を教えられた作品でした。

ともさんからオススメして頂いた『さいごの約束』、探してみますね。
是非読んでみたいです。
Posted by ノカノカ  at 2006/03/13 3:36 PM
リサさん、こんにちは。

そうですね。
うちの旦那さんがこの主人公と同じ広告マンで
何度も姿がダブってしまいました。
怖かったです。

TBさせていただきました。

Posted by リサ  at 2006/03/14 3:16 PM
★ノカノカさんへ
こんにちは!コメントありがとうございます(*^-^*)
ご主人が同じ職業であったら余計だぶってしまって
辛くなったでしょうね…。
本当に怖さも感じた作品でした。
Posted by ビンゴ  at 2006/03/29 9:01 PM
忘れていく過程、病気がすすんでいく過程、辛いです。せめて、今を、大切にしたいです。
Posted by リサ  at 2006/03/30 8:12 AM
★ビンゴさんへ
こんにちは!
病状が悪化し、家族のことも忘れ、自分の身の回りのことも
出来なくなる…恐ろしい病気ですよね。
若いからなおさらです。
決して他人事でない切実な問題、今という時間を一日一日
大切に過ごさねば、と思わされますね。
Posted by 苗坊  at 2006/07/26 9:37 PM
こんばんわ。
気になっていた話題作、ようやく読みました。
怖かったです。
読んでいて、怖いけど止まらなかったですね。
どうしても自分に置き換えてしまいました。
ラストシーンは感動でしたね。
Posted by リサ  at 2006/07/27 5:20 PM
★苗坊さんへ
こんにちは!
読まれたのですね〜。すごく怖いし身につまされますね。
いずれ自分もなってしまったら…夫が…と思ってしまったら
辛くて仕方ありませんでした。
あえてあのラストにしたのは良かったですね。

荻原さん最近読んでいないのでまた何か読んでみたいですー(*^-^*)
Posted by す〜さん  at 2006/07/27 11:21 PM
初めまして
TBさせていただきました。
すべてを忘れていく、そしてそれを止められない恐怖。
切なくてそして怖いそんな話しでした。
だからこそ今を大切に生きて生きたいなぁ〜とも
感じさせてくれた一冊でしたね。
Posted by リサ  at 2006/07/28 2:11 PM
★す〜さんへ
はじめまして!コメントありがとうございます♪
ただのお話しではなく、現実感をひしひし感じる作品でした。
す〜さんのおっしゃるとおり、だからこそ今を大切に…なのですよね。
いろんな意味で自分のこと、周りのことを考えさせられました。

TBしていただいたとのことですが、反映されていないようなのです。
もしこれをご覧になってらっしゃいましたらまた是非
TBしていってくださいませ。
それとリンクのほうも切れてしまっているようなので
よろしかったらまたブログのリンクも記入して下さいね。
是非伺わせていただきたいと思っております。
Posted by sonatine  at 2006/08/04 9:03 PM
こんにちは。TBさせてもらいました。
この本を読んでものすごく考えさせられました。
とても他人とは思えなくて。
仕事柄、認知症を何人も見ていて
どうしてまじめにやってきた人たちがこんなに苦しまなければならないのか、と人生の残酷さを感じます。
わからない恐怖をもって生きていくのは、とても苦しいことだけど、他人事ではない、誰にでも起こりうること、ということをこの本を読んで強く感じました。
Posted by リサ  at 2006/08/06 12:35 AM
★sonatineさんへ
こんばんは!
コメント&TBありがとうございます♪
決してお話しの中のことではなく、自分の身に、あるいは家族に
襲い掛かるかもしれない病気で、その恐怖を常に感じながら
読んでいました。何と残酷なのだろう、と憤りながら…。
何気に過ぎ行く今をもっと噛み締めながら生きていかねば、と
強く思いました。
Posted by ここね  at 2007/07/01 11:47 PM
中学三年生のここねです。
ずっとこの作品のことが気になっていて、私は映画で見ました。
なんだか分からないんですけど涙がとまりませんでした。
毎日が本当に幸せで、当たり前のことって言うのがどれだけ大切なものかって言うのが改めて分かりました。
アルツハイマーって言うのはなりたくてなるんじゃないから何が悪いとかって言えることじゃないってわかってる。
その事を承知の上で人を支えれるってすごいことですよね。
私は今できることを精一杯やりたいって思いました。
Posted by リサ  at 2007/07/02 11:24 PM
★ここねさんへ
はじめまして!ご訪問とコメントをありがとうございます♪
私は原作のみで映画は観ていないのですが渡辺謙さんが若年性アルツハイマーの
患者さんやその家族の方々と対談するという番組を見たことがありました。
やはり涙しながら見ました。
映画は先日TVで放映されていたんですよね…タイミングを失って結局
見ることが出来ませんでした。今度DVDで見てみたいと思います。

毎日何事もなく穏やかに過ごせること、平凡だけどそれがいかに幸せなことか、
改めて実感しますね。
病気と闘っているご本人とそのご家族。その思いは如何ばかりかと思います。
この作品での妻の強さが果たして私にはあるのか、いろいろと考えさせられました。
中学3年生とのこと、とてもしっかりされていてコメント何度も読みました。
素敵な方なのだろうな、と思います。
ここねさんからのコメント、嬉しかったです。ありがとうございました。

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