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『遮光』中村文則

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遮光
中村文則/新潮社
愛する者を失った「私」は、他人が知れば驚愕する、ある物を持ち歩いている。しかし、それは狂気なのか…。陰影濃く描き上げた喪失と愛の物語。第129回芥川賞候補作。
ただただ暗く苦痛。病的ともとれる主人公の行動と胸の内を淡々と描く。愛する人を失ったとき、その愛する人の一部分を所有したい衝動は誰しもとは言わないが、きっとあるのだろうと思う。彼女のそのモノを持ち歩くことで失ったことを認めずにいられる。悲しみを押し殺し、嘘の自分を演じる。主人公の場合それは幼少の時に培われた術だった。

例えば主人公のような嘘で自分を作り上げる癖(この場合主人公はある意味狂気)、虚言癖とまではいかないが、自分の都合の良いように周りを動かすためにつく嘘。そして(主人公の場合)自分を押し殺し取り繕うことによって生き延びることを知ったとき、それはもう本来の自分を出すことは出来なくなったのだろう。けれども彼女の前では本当の自分を出せたのだ。生きる意味を見つけたのかもしれない。けれどもその彼女はあっけなく目の前から消えてしまった。もう抱きしめることも、将来を語り合うことも、出来ない。せめて彼女のものを手元におきたい。そうすることによって自分を制することが出来るのかもしれない。主人公の強い悲しみが伝わって苦しく悲しい。

このどうしようもなく救いがたい暗さも病的な表現も抗いたい不快感は特に感じず、むしろ好意的に読んだ。しかし、読みながら絶えず思ったのは「もう少し違う描き方があるはず」ということ。わざと主人公をこのように描くことによって、読者にもこの男の気持ちに同調させようとしているように感じてならない。無理に足さなくても充分その雰囲気はかもし出している。それだけのほうがもしかしたら自然に同調出来たかもしれないのに。

「遮光」というタイトル、この物語を語るに充分な言葉である。いつも明るさばかりを求めては生きていけない人間はたまにはこんな暗さも必要なのだと思う。私にはこの暗さの度合いがなかなか心地良かった。ただし、どうしようもなく暗い。それを求めている方は是非。

読了日:2005年9月21日
かりさ | 著者別な行(中村文則) | comments(4) | trackbacks(4) | 

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COMMENTS

Posted by ましろ  at 2005/10/09 9:26 PM
リサさん、こんばんは。
この作品、私も心地良く読みました。
“悲しみ”というのをあまり感じなかったので、
記事を読んでなるほどそうかぁ…とかあれこれ思いつつ。
とても的確で勉強させていただきました。
TBさせてくださいませ。
Posted by リサ  at 2005/10/09 11:18 PM
★ましろさんへ
ましろさん、こんばんは!
ちょっとご無沙汰してしまいました…。
ましろさんの1周年お祝いのコメントをしたいと
思いつつ、読み逃げしちゃっていました。
また改めてお伺いしますね♪

「遮光」読まれたんですね。ましろさんの感想が、
何となく私と似ていて嬉しく読みました。
私も結構心地良く読んだので、この主人公の男の
気持ちにきっと近いものがあるのだろう、と解釈しました。
もともとこのような雰囲気の暗さやちょっと病的なあるいは
狂気じみた話しは好きなほうなので、不快感はありませんでした。
中村さんの作品にまた触れてみたいです。
そういう作品に寄り添いたい時がたまにあるんですよね。

後ほどましろさんのところへ伺いますね〜。

Posted by chiekoa  at 2006/08/03 11:28 AM
幼少期の話が出てきたところでぐっときてしまいました…。そういう悲しい理由があったのか…って。苦しい本ですよね。「こんなにたくさん人がいるんだから一人くらい狂ったとしてもたいしたことない」みたいなところにもぐっときました。どうしようもないことって、ほんとうにどうしようもなくて、つらいです。他人事ながら…。これで芥川賞とってくれたらうれしかったのになぁ…。
Posted by リサ  at 2006/08/03 8:25 PM
★chiekoaさんへ
この主人公の心の内を知れば知るほど苦しくなり、
そして何故か共感してしまう。決して共感出来るような行為では
ないはずなのに、何でしょうね。
でもいざとなったら自分も同じ事してしまうかもーと思うのです。
そういうのって誰かしら持っているものですよね、きっと。
ああ!確かにこれで芥川賞だったら納得ですー。
…って『土の中の子供』未読なので偉そうなこと言えませんが(^-^;)

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