図書館戦争 有川浩/メディアワークス
正義の味方、図書館を駆ける!―公序良俗を乱し人権を侵害する表現を取り締まる法律として『メディア良化法』が成立・施行された現代。超法規的検閲に対抗するため、立てよ図書館!狩られる本を、明日を守れ。
いや〜良かった!最高だった。手放しで褒めちぎってしまおう。これほど興奮しながら読めてしまう作品もそうそうあるまい。何というのだろう、自分の中ではかなり収縮して消えかかっていたんじゃないかと思われる「正義感」が溢れ出しそうになるのを自覚しながら読んでいたのだが、そんな感情が前面に押し出されるほど残っていたのか、とそのことにちょっと驚きながら読んでいた。感情を揺さぶられる作品だった。いろんな感情がごちゃまぜに押し寄せてきてもう溢れ出しそうになる感動の言葉を上手く書ききれないが、とりあえず書いてみる。
各章の目次5章
1 図書館は資料収集の自由を有する。
2 図書館は資料提供の自由を有する。
3 図書館は利用者の秘密を守る。
4 図書館はすべての不当な検閲に反対する。
図書館の自由が侵される時、我々は団結して、あくまで自由を守る。
これ、実際の「図書館の自由に関する宣言」に掲げられているものである。
昔どこかの図書館で見たことあったなぁー、どこの図書館だったかな、そういえば「我々は団結して〜」の部分に何やらすごいものを感じたっけ…という遠い記憶を手繰り寄せながら読み始めてみたら!これが何ともぶっ飛んだ設定なのだった。
まず「図書館戦争」と聞いて何をイメージするか。図書館が舞台だろうことは想像出来る、そして戦争は何を意味するか。「?」な頭で読み始めるとこれがまさに戦争なのだ。そして軍事訓練、図書基地、図書隊員、図書館防衛員なんて単語がずらずらと出てくる。なんじゃこりゃ?そうだ、著者は有川さんだった、普通の世界を描くわけないな、これは頭をまっさらにして有川ワールドに慣れなきゃ…と読み始めたらもう慣れるも何もすぐに引き込まれてしまった。図書館防衛隊なんて聞こえは固いがこの作品を染めているのはラブコメ。彼らのまっすぐに真摯な姿に時々うずうずしながらも見事に年甲斐なくはまってしまったのである。そして有川さん独特のパリッとした文体が実に心地良い。
キャラクター設定がお決まりなほど物語の流れがぐっと良くなり、読みやすくなるのだが、さらにキャラクターを丁寧に上手く描いているため、彼らの行動がいちいち読めるのも本書の場合は良い効果を出している。そして読めているオチがラスト綺麗にストーンと入ってこれまた悶絶並みに気持ち良い(笑)
ラブコメってことで無駄にテンションが高くなってしまう自分を抑えつつ、もう一つ書くと、この作品にはある意義がこめられている。それがメディア規制に対する警告なのではないかと。
ここでいう図書館隊の敵はメディア良化委員会である。昭和最後の年に公序良俗を乱し人権を侵害する表現を取り締まる法律として成立した「メディア良化法」、武力を振りかざしてまで出版物を検閲する委員会に対して作られた図書隊。武力には武力を持って防衛する図書館防衛隊の面々。その攻防戦はまさに戦争である。が、図書隊は「図書館の自由が侵される時、我々は団結して、あくまで自由を守る」に基づきあくまでも防衛として存在する。近未来を描いた世界ではあるが、これ今の社会もいずれ成りうるんじゃないか?まさか防衛隊が出来上がるほど大規模にまで至らないまでも「メディア規制法(言論統制法)」なんてものが審議され話題になった現在、これが加速しないとは言い切れない。例えば未成年者犯罪が増加する一方でその原因が出版物にあるとされ、それが規制されたら?検閲にかかり読みたい本も読めなくなってしまったら?ああ、恐ろしい。そんなこと絶対嫌だ。これは決して物語の中だけの話しではなくなるのかもしれない、そう考えると笑えない。
そんな読む自由に対する著者のメッセージを込めつつ、ラブコメでやんわり染め上げる。お見事である。
有川さんがあとがきに書いている「月9連ドラ風」や「行政戦隊図書レンジャー」はなるほど〜と頷ける言葉である。連ドラと戦隊もの…まるで真逆なようでいて本書では見事に混ざり合っている。そうそうこんな感じなのよ、この作品は。是非是非このまま連ドラで行って欲しい。切に切に願う。これはかなりオススメですぞ。
読了日:2006年4月11日
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Yahoo!ブックスインタビュー:
「図書館戦争」有川浩
上記の感想では書きませんでしたが(興奮気味になる恐れありのため)、本書は主人公である図書隊防衛員新人の笠原郁の成長物語でもあります。そして郁の同期や教官たちがみな揃いも揃って魅力的で、もう〜かなりはまりましたよ。特に郁の上官、堂上は私の好みに見事にピタリと当てはまっており、それはもう〜「堂上ーー♪」てな具合にいちいち彼の行動や会話に悶えておりました(笑)郁の同期、柴崎や手塚もそれぞれいい味しているし、教官コンビ堂上&小牧や玄田も存在感抜群。そして何故か玄田と折口の後半のやり取りにちょっと涙ぐんでしまったりと、思いっきり感情揺さぶられながら読んでました。
有川さんの世界設定には本当に驚くばかりです。これはもうシリーズ化してもらって(だってまだあれで終わっちゃいけないもの)、ついでに映像化にもしてもらいたい!映像化にしたらかなりいけるんじゃないかと思うのは私だけではないと思うのだけど…。
本書は図書館で借りたものですが、こんなに気に入ってしまったらもう手元に欲しい。有川さん作品は一応全部揃っているのでこれも本棚に一緒に並べよう。「塩の街」「海の底」がまだ未読なのでそれを楽しみにしつつ、もう少しこの作品に浸っていようと思います。
今度近所の図書館に「図書館の自由に関する宣言」プレートがあるか見てこよう。
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