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『ゆれる』西川美和

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ゆれる
西川美和/ポプラ社
東京でカメラマンとして活躍する弟。実家に残り、家業と父親の世話に明け暮れる兄。対照的な兄弟。だがふたりは互いを尊敬していた。あの事件が起こるまでは…。
読む前に感じた不安定さ、不穏な雰囲気。本から発せられる信号は間違っていなかった。表紙の吊り橋と緑鮮やかな森の風景はとても美しい。と同時に吊り橋の先にあるぽっかりと開いた森の入り口は訪れる者を飲み込むようにそこにある。だが渡らずにはいられない、入り込まずにはいられない、そんなものに呼ばれて本を開く。ある兄弟の物語。一度踏み入れたらもう戻れない。

映画「ゆれる」の監督自身がノベライズ化。さすがである。文章に説得力がある。映像が浮かぶ、そして登場人物達の心理描写が実に巧い。各々が語る(独白する)兄のこと、弟のこと、父のこと、家庭のこと、そして智恵子のこと。
成功の道をつかんだ弟と、田舎で父の家業を継ぎつつましく生活する兄のその日常はその性格と同じく対照的である。都会で羽広げて飛び行く弟を兄は一体どんな気持ちで、どんな瞳で見ていたのだろうか。そこに羨望のかけらはあっただろう。だが、それは弟の生活に対してではなかった。それがある事件として表れた。兄を守ろうと奔走する弟。だがその心は揺れ動く。兄を救うのかそれとも…弟の選択した行為とは。ここで人間の本質が見えてきてぞくぞくする。背筋を何かが這うような寒さを感じる。

兄弟というものは複雑である。その関係は難しい。同じ環境で育ちながらもその性格も考える事も赤の他人と何ら変わらない。赤の他人ならばまだ良い。やっかいなことにその絆は断ち切ろうにもすんなりと断つことは出来ない。いがみ合いながらなおそれは繋がり続ける。やっかいである、実にやっかいである。

真実はどこにあるのか。その探り合いの描写がページを繰る手を止めない。その展開に目を離せずにいる。田舎という閉鎖的な空間は鬱屈したものを生み、積み重ねる。それは人を得体の知れない何かに変える事もある。一番まっとうな兄がそれに絡め取られていたら?兄・稔の独白がただただ悲しい。
ここで一番安定感があり、人間らしさを感じられたのが皮肉にも第三者であり、赤の他人の岡島洋平のかたりである。安堵感からなのか、彼の気持ちが流れ込んでしまったのか、ある場面で涙をはらはら流してしまった。緊迫したものが一気に溶け出したためでもあろう。

ゆらゆらとゆれる不安定なものは苦手である。いつ足元が崩れるかもしれない恐怖心を抑えながら渡る吊り橋はだから苦手だ。兄の思惑、弟の思惑、暗闇で見えないそれはざわざわとしていてその音はやむ事はない。ずっと。

読了日:2006年7月25日


面白かった〜。想像以上に楽しめました。映画ではどうなっているか非常に興味があります。配役が決まっている中で読んでいましたが、それはジャマにはなりませんでした。猛のオダギリ ジョーも、稔の香川照之さんもはまり役でしょう。
このざらざらした感覚を映像ではどのように表現しているのか…是非体感してみたい。出来るならばDVDではなく映画館で。ん〜でも無理なのよねぇ(涙)
それにしても西川美和さん、とっても可愛らしい方で驚きました。こんなにキュートな人がこれを作ったのかーと逆に新鮮でした。

映画「ゆれる」公式サイト
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COMMENTS

Posted by ざれこ  at 2006/07/25 11:19 PM
土曜日に映画を観てきたんです。すごい今もざわざわとしています。いろんな意味ですごい映画だった・・・。映画のブログの方に感想を書いてみたのですが、うまく書けずに2日かけたけどやっぱりうまく書けなかった・・。とにかく、DVDでいいから観てみてください。
原作も読もうと思っています。映画で語りつくされていたはずなんだけど、でもなんかもやもやするので・・。弟の決断までの揺れを、原作で追体験してみます。
Posted by 莉絵  at 2006/07/25 11:55 PM
リサさんこんばんは♪
西川監督、わたしは大好きなのですが第一作の「蛇イチゴ」いいですよ。機会があったら観てみて下さい。
わたしはちょっとカッコ良く書きすぎちゃったので、リサさんの的確な感想に安心しました。

ざれこさんの↑のコメント読んでますますみたくなちゃいました。DVDも買うと思いますが。
Posted by リサ  at 2006/07/26 4:26 PM
★ざれこさんへ
そうそう映画観たーって感想にコメントしようと思っていたのです。
やっぱり映画でもざわざわしますか?
小説でもざわざわざらざらしていてどうにも居心地が悪くて。
でも不快感ではないんですよね、不思議と。
DVDたぶん買ってしまうかも!是非映画館で観たいのですけど、
こっちで上映しているのがたった1館。しかも9月〜ですって!ムキーッ。
ぜひぜひ小説も読んでみてください。
もやもやは払拭されませんけどね…きっと。
Posted by リサ  at 2006/07/26 4:28 PM
★莉絵さんへ
こんにちは♪コメント嬉しいですー。
「蛇イチゴ」も是非観てみようと思います。
今度DVD借りてきますわ(*^-^*)
いや〜莉絵さんの感想、私とは全く違う視点で書かれていたので
うわ〜すごいっ!と思ってました。
これは映画観なければなりませんね。私もDVD買っちゃうかもです。
Posted by BEE  at 2006/07/31 5:50 PM
TBをありがとうございました。
書店で手に取り、一度は戻した
この本、やはり映像の宣伝をTVで
見てしまって、読まずにいられません
でした。
香川照之さんもオダギリジョーさんも
個性的な俳優さんなので、
きっと息をのむような作品に
仕上がっているのだろうなぁ。
あぁ、見てみたい・・・。
Posted by リサ  at 2006/07/31 9:32 PM
★BEEさんへ
こんばんは!こちらこそコメント&TBありがとうございます。
やはり気になりますよね、コレは。
装丁見た時から気になってしまってとうとう買ってしまいました。
ぜひぜひ映画観てみたい!
こちらでも県内では1館でしか上映していないので観に行けそうにないです。
DVD化を待ちます〜。
Posted by しんちゃん  at 2007/08/02 4:59 PM
やっと読みました。
色々考えることがありましたが、今はまだ疲れがとれません。
こんなにしんどい本だとは思わなかったです。
教訓。美人さんの描く心の闇は恐るべし。
Posted by リサ  at 2007/08/02 8:22 PM
★しんちゃんへ
しんどいというのはかなり的確かもしれないですね。
私も読んでいてゆらゆら揺れっぱなしでした。
この不安定感がさらに読み手を不安にさせて暗澹たる思いでした。
映画ご覧になりました?
私、いずれDVDで、と思っているんですが…未だ観てません。

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