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『太陽の塔』森見登美彦

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太陽の塔
森見登美彦/新潮社
私の大学生活には華がない。特に女性とは絶望的に縁がない。三回生の時、水尾さんという恋人ができた。毎日が愉快だった。しかし水尾さんはあろうことか、この私を振ったのであった!クリスマスの嵐が吹き荒れる京の都、巨大な妄想力の他に何も持たぬ男が無闇に疾走する。失恋を経験したすべての男たちとこれから失恋する予定の人に捧ぐ、日本ファンタジーノベル大賞受賞作。

正直この『太陽の塔』を読むのは怖かったのだ。何故かというと、読了後の感想が賛否両論真っ二つに分かれているからである。それは見事に。否定派はけちょんけちょんにけなし(京大生に恨みでもあるのかというかの如く)、肯定派はこれぞファンタジー!妄想爆裂さが最高!バカバカしくも面白おかしいそして最後ほろりとさせてくれる傑作!…と書いてあるかどうかは分からぬが、つまりその賞賛の言葉はそのまんま実は私の感想である。

いやいや始めはどうなるかと思った。主人公・森本は京都大学農学部5回生である(だが休学中)男子学生。生まれて初めて出来た彼女・水尾さんを研究する「水尾さん研究」の大論文をまとめていた。彼によると
研究内容は多岐に亘り、そのどれもが緻密な観察と奔放な思索、および華麗な文章で記されており、文学的価値も高い。
だそうだが、ある日彼女から一方的に「研究停止」の宣告を受けてしまう。ようするにフラれたわけだが、一度手をつけた研究を途中で放棄するわけにはいかないと研究を続ける。「彼女はなぜ私のような人間を拒否したのか」この疑問の解明が研究の副次的な目標になったわけである。…だが客観的に見てみよう。研究などと称して元彼女を未練がましく追い回す。これストーカーじゃん。研究とかこつけて思いっきりストーカーじゃん。これがこのまま続いていくのか?果たして最後まで読めるのか?と思いっきり不安の中に放り込まれそうになっていたのである。

頭の中で膨れ上がりつつあるその不安をとりあえず別の場所へ隠しておいて、本書に没頭することにした。というか読んでいるうちに抱腹絶倒なバカバカしい話し(褒めてます)にみるみる引き込まれ気がついたら没頭し、不安なんぞすっかり忘れてしまったというのが正確な順番である。
主人公森本と遠藤のプレゼント合戦が最高。背筋をアレが這い回るような錯覚を感じつつぞわぞわしながら読む可笑しさ。太陽の塔の話し、水尾さんの夢の中、叡山電車、水尾さんとのクリスマスイブの思い出、クリスマス打倒計画、ええじゃないか騒動等々…最初に感じた危機感はどこへやら最後はしみじみとさせてくれたのである。
まぁ全体的にバカバカしいが(もちろん褒めてます)、妄想することは決して悪くはない。大いに結構。どんどんやってくれたまえ。他人に迷惑をかけなければ良いのだ。
森本の妄想も相当なものだがそれをさらに超えるのが孤高の法学部生・飾磨である。
我々は二人で頭をつき合わせては、容赦なく膨らみ続ける自分たちの妄想に傷つき続けて幾星霜、すでに満身創痍であった。
彼らの自虐的妄想がたまらない。傷ついた心を己の妄想でさらにズタズタにするところなんぞほとんどマゾヒストである。

水尾さんとの甘い思い出にひたひたと浸かり、その幸福感に満ちた温かな日々からどうしても去り難くいる。振られた事実を時間をかけて少しずつ受け入れていくさまとその日常と妄想(夢想)を面白く可笑しく描く。最後切々と語る彼の思いがこちらにも伝染し、切なさでいっぱいになりついホロリ。そうして彼の最後の肯定である。何だか哀しいではないか。
バカバカしくも愛らしい彼らに幸あれ、とつい願ってしまいたくなる。

読了日:2007年1月18日


木曽さんにオススメいただきました。ありがとうございました。面白かったです!
森見登美彦さんの独特な世界がここからもう生まれており、それからぐんぐんと育まれていたのですね。このバカバカしさが本当に笑えます。とにかく男臭い!これでもかという男臭さ。森本の友達というのがまた曲者揃い。中でもお気に入りなのは湯島。彼はどこにいってしまっているんだろうか?森本のアパートのドアの前でぶつぶつ唱えている姿は気味悪いながらも何故か気になる存在なのです。飾磨の妹もなかなかお茶目です(笑)
森本の誕生日に「人間臨終図巻」をプレゼントする水尾さんも素敵。彼女はやっぱりアノ人なのかなぁ。不思議ちゃんぶりはまさにそのものなのだけれども…。

京都の地理に詳しかったらもっともっと楽しめるんでしょうね。『太陽の塔』や『夜は短し歩けよ乙女』などのマップなんかがあったらまた違った京都観光が出来るはず。その足取りを辿ってみたいなぁ、なんて思ったりします。
2作目『四畳半神話大系』も京大生の話しらしい。こちらも楽しみです。
かりさ | 著者別ま行(森見登美彦) | comments(16) | trackbacks(13) | 

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COMMENTS

Posted by 小葉  at 2007/01/19 4:23 PM
これ、クリスマス前(12/20頃)という絶好のタイミングで読みました。娘たちにもイブまでに読むようにと厳命し、イブの夜には母娘でええじゃないかと唱和しました。どういう家庭なのやら。
『四畳半神話大系』が図書館にはなくて、文庫になるのを待つかハードカバーを買うか、思案中です。
Posted by 木曽のあばら屋  at 2007/01/20 3:27 PM
こんにちは。
私は「雀を食べた男」です。
「妄想もファンタジーの一亜型である」と考え
この作品に「日本ファンタジーノベル大賞」を与えた審査員は偉いですね。

高薮の押しかけ彼女に激しく興味が湧きます。
どんなヒトだろう。
Posted by リサ  at 2007/01/21 10:07 PM
★小葉さんへ
こんばんは♪
おお〜グッドタイミングで読まれたのですね。
なんとなんと素敵な小葉さん家族♪
ええじゃないか唱和楽しそう〜。
『四畳半神話大系』図書館にないのですか…(>_<)
リクエストしてもダメかしら?
『太陽の塔』が文庫になったばかりなので、文庫化は
まだ先かもしれないでしすし、確かに悩みますね(笑)
私は図書館で探してみますー。
Posted by リサ  at 2007/01/21 10:20 PM
★木曽さんへ
こんばんは!
なんとなんと木曽さん「雀を食べた男」だったとは!ビックリ!!
す、雀って美味しいんですか??

審査員大絶賛だったようですが、ものすごく同感です。
そうそう!感想に書き忘れましたが、高薮の押しかけ彼女が
気になりますー。あの高薮を好きになった人ってどんな人なのでしょうね(笑)
Posted by 弥勒  at 2007/02/01 3:50 PM
さっき読み終わりました〜
なんつーんでしょうか
可もなく不可もなく
どちらかと言えば可かなぁとゆう
曖昧な感じです(笑)
水尾さんを研究する様はヤバいよ…ってなったけど
プレゼント合戦からのってきて
最後はシミジミしました(笑)
Posted by リサ  at 2007/02/02 10:38 PM
★弥勒さんへ
読まれたのですねー♪
ハハハ、確かに可もなく不可もなくというのは
上手いと思います(笑)
私結構好きです。こういうバカバカしいの。
水尾さん研究はちょっと引いてしまっていたのですが、
プレゼント合戦から俄然面白くなってのりのり〜。
そしてあのラスト。しみじみしますよねぇ。
素敵でした(と言っちゃっていいのかしらん)。
Posted by shiba_moto  at 2007/02/06 6:33 PM
こんばんは。
なんじゃこりゃあって感じです。
美しくないのに美しくて、読み出したときと読み終えたときの印象がすごく違いますね。

とりあえず『夜は短し歩けよ乙女』の前に読めてよかったのかな。
Posted by リサ  at 2007/02/07 3:09 PM
★shiba_motoさんへ
こんにちはー♪
ホントに「なんじゃこりゃぁ!」でしたね(笑)
私結構好きです、こういうの(*^-^*)
ぜーんぜん美しくないのにあのラストは…思わずしんみり。

うんうん、『夜は短し歩けよ乙女』よりも前に読めて
良かったかもしれません。この後だとちょっといろいろと
考えてしまい悶えますから〜。
感想楽しみにしていますね。
Posted by june  at 2007/02/16 11:30 PM
リサさん、こんばんわ!
この世界いいですね。大好きと言い切ってしまいます。
プレゼント合戦に笑って、ええじゃないかに盛り上がって・・
抱腹絶倒のうちに、あのラストです。やられました。
彼の友人たちもよかったです。
彼らのシャイで純情なところが愛らしくさえ思えてしまいました。

でも京都の地理がよくわからないのが辛かったです。
マップがあるといいですよね。この世界に無性に行きたくなってしまいました。
Posted by リサ  at 2007/02/17 5:56 PM
★juneさんへ
juneさん、こんにちは!
もう〜いいですよね!この世界観!大好きです♪
彼らの妄想に大笑い!バカバカしいのに何故か愛しい。
あのラストでさらに愛おしくなってしまいました。

京都の地理に詳しかったらもっともっと楽しめたんでしょうねぇ。
それがちょっと残念でした。
森見作品マップみたいなの、どなたか作ってくれないかしら〜。
本気でそう思います!
Posted by 板栗香  at 2007/02/28 10:52 AM
はじめまして〜♪実はだいぶ前からこっそりお邪魔していました。(^^ゞ
この本いいですよね〜女性がこの本を好きって言っちゃっていいものか悩みましたけど、面白いんですもん!(笑)
関西に住んでいた時にもっと京都へ行っておけばよかったなぁと森見さんの本を読んでからはよく思います。(苦笑)
また時々、足跡を残しにきま〜す。よろしくお願いします♪
Posted by リサ  at 2007/02/28 8:11 PM
★板栗香さんへ
板栗香さん、はじめまして!
コメント嬉しいです♪ありがとうございます!
こっそり見てくださっていたなんて〜感激です。
この作品すっごく好きです。ゲラゲラ笑いました。
賛否両論だったので、自分がどう感じるか不安だったのですが、
些末な心配でした。
た、たしかに女がコレ好き〜なんて言うとちょっと
どうなのかしら?って思いますけど、そうですよね!
面白いんですもん!
私も三重にいるうちに行っておけばよかったな、って今になって
(3月関東へお引越しなのです)思います。後悔だらけです。
森見さんの作品読むと京都の路地とか迷い込みたくなりますね。

ぜひぜひまたいらしてください!お待ちしています♪
Posted by 藍色  at 2007/04/03 2:29 AM
リサさん、こんばんは。
お引越し、お疲れ様でした。これからもよろしくお願いします。
遅くなりましたが、森見さん、やっと読みました。
引き込まれて、私もいっぱい笑いました。
こんなに男臭いのに笑えた不安、こちらにうかがって解消しました(笑)。
トラバさせていただきました。
Posted by リサ  at 2007/04/04 5:35 PM
★藍色さんへ
こんばんは!
温かいお言葉ありがとうございます♪
こちらこそこれからもよろしくです(*^-^*)
森見さん読まれましたね〜。面白いでしょう!笑えるでしょう!
最高ですよね。なんじゃこりゃ!?てなお話しなんですがツボでした。
ふふふ、この男臭さを受け入れてしまう女って…って思いますけど
でもいいの、面白いものは面白い!ですよね〜(笑)
大いに応援いたしましょう〜。
Posted by chiro  at 2007/07/29 3:21 PM
こんにちは。
私はどちらかと言えば、否定派かもしれません。
でも、面白いとは思ったし、この妄想加減には引き込まれました。
でも、やっぱりあのラストは残念というか、物足りないというか(笑)。
Posted by リサ  at 2007/07/30 2:25 PM
★chiroさんへ
こんにちは!コメントありがとうございます。
そうなんですよね。どちらかに分かれる作品なのですよね。
こう受け入れ難いと拒否反応出てしまうとどうしてもダメですね。
妄想ぶりはぶっとんでいて、かえって清々しさを感じました(笑)
ラストは…悲しくて寂しくてどうにもやりきれませんでした。

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