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『漱石先生の事件簿 猫の巻』柳広司

漱石先生の事件簿―猫の巻 (ミステリーYA!)
漱石先生の事件簿 猫の巻
柳広司/理論社
「吾輩は猫である」には、こんな謎が隠されていた! マイペースな人たちと名なしの猫が繰り広げるドタバタ喜劇。先生の家に居候する少年が語る6つの事件とは? 漱石の物語世界がよみがえる、連作ミステリー短編集。
このGW中、実家に帰省する際「さて、何をお供に連れて行こうか」と考えた。で、次に読む候補になっていた本書を持っていくことにした。次に読むって決めていたしね。の理由の他にもう一つ。実家には猫がいて、そのカレの気配を感じながら時々邪魔されながら読むのもいいかもなーなんて思ったからである。
で、ほくほくと帰省した。が、ヤツは外出中だった。なんと、また家出したのか。
赤ん坊の頃から家の中で飼いならされて外へ出ることはとんとなかったカレなのだが、数年前飼い主(両親)の隙を突いて玄関から逃げていった。それからとんと帰ってこなくなった。どこかで死んでしまったんではないかとさすがにそう考えざるを得ないくらい長い外出だった。ある日ひょっこり帰ってきた。傷だらけで血だらけでお腹すかせてボロボロになって。こんな思いをしたんだからもう外へ出たいなどと思わないだろう、やれやれと誰もがそっと胸を撫で下ろした。ところが。やはり外の空気は相当美味かったとみえる。カレはまた外出した。それが4月のこと。冬に膀胱炎になってだいぶ弱っていた体がようやく復活した頃である。病み上がりといえば病み上がりのそんな体でまだ寒さ厳しい4月の夜空を果たしてどう過ごしているのやら。もしかしたら今度こそ…と誰もが不安を感じ始めた頃カレはまたひょっこり帰ってきた。お腹すかせて。大体家の中でのほほんと育った猫に狩りが出来るわけがなく、結局「ヒャッホーッ♪」と飛び出したはいいが、餌は取れないわ、ケンカに巻き込まれるわ散々な目にあったわけで。なのに。そういえば帰ってきたのだろうか。うんともすんとも実家から言ってこない。ちょっと心配になってきたぞ。

…とまぁ、一体何の話しをしていたのだろうか。実家の猫の家出話しにこんなに長々と。
とにかく猫がいなかったのでちょっとばかり期待外れだったけれど、本書は期待外れなどということはなくむしろ充分堪能出来た。「これ!めちゃくちゃ面白い!」とか興奮するほどではないにしても面白い。
本書は夏目漱石のデビュー作『吾輩は猫である』を舞台に猫の視点を書生の「僕」に変えて、そこで起こる日常系ミステリを描く。これがまた漱石先生を始め、登場人物たちの可笑しなエピソード満載でついにんまりと。で、探偵役でも大活躍の書生くんがなかなかの観察眼の持ち主でいやはや面白いったら面白い。
だが、面白いと喜ぶばかりではないこの作品の時代背景にあるもの、その先の歴史、それを読者は知っているからこそにやにやと笑ってばかりはいられないのである。が、そんな不穏な空気が漂っていながらもそこは奇人漱石先生や迷亭氏や寒月さんなどへんてこりんな仲間たちのドタバタ喜劇が和らげてくれている。またイラストがこの雰囲気に実に良く合っていて、この漱石先生を見るだけでも「ぷぷぷ」と和んでしまうんである。

さて、夏目漱石である。何がきっかけだったかもう記憶の遠くの遠くのほう〜に放り込まれて今引っ張り出そうとしてもどこにあるかさっぱりなのだが、どうしてか中学生の頃漱石が好きで文庫を買ってはつらつら読んでいた。で、その頃から持っていた文庫が数冊ほどあったはずなのだが、引越しの時見かけたのは『門』と『草枕』の2冊だった。おかしい。どこへいったのやら。
十代の頃読んだきりなので内容をきちんと覚えているかといえば自信はなく、特にデビュー作である『吾輩は猫である』は読んだはずなのに内容はほとんど、いやもう正直に全部と言ってしまおう、覚えていなかったりする。なんとなんと。とても恥ずかしい告白だが。

実は柳さん初読みで、こんなに面白いのなら他の作品もさぞ面白かろうと早速読みたい病が出てきてしまったようである。その前に『吾輩は猫である』をもう一度きちんと読み直してみたい。それだけでなく夏目漱石の作品に久しぶりに触れてみたい。そうふつふつと思わせてくれる作品であった。

読了日:2007年5月4日

関連サイト:理論社ミステリーYA!


ちなみに。
夏目漱石が登場するミステリーで好きなのが島田荘司の『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』。
漱石から見たホームズ&ワトスンがあの御手洗と石岡を見ているような、そんな感じを受けたのを覚えています。ここに描かれる漱石がつかみどころ無くて、それがまた漱石という人を表しているような。神経質さが良く出ています。ミステリーのほうは、それは島田さんですからもう何ら心配することなく、大いに堪能出来ますぞ。
かりさ | 著者別や・ら・わ行(柳広司) | comments(6) | trackbacks(3) | 

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COMMENTS

Posted by す〜さん  at 2007/05/20 12:00 AM
物語り自体よりも
漱石先生とその周りに集う人たちの
ちょっと風変わりなところがかなりツボでした。
本家『吾輩は猫である』実は読んでいないので
読んでみようかな〜なんて気にさせてくれる本でした。
Posted by 木曽のあばら屋  at 2007/05/20 7:44 AM
こんにちは。
あ、これ読まなきゃ。面白そうですね。
柳広司さんは、「贋作『坊っちゃん』殺人事件」という作品も書いているし、
ダーウィンが探偵をつとめる「はじまりの島」
ほかにも「饗宴・ソクラテス最後の事件」、「聖フランシスコ・ザビエルの首」など
歴史好きにはたまらん作品を次々送り出してくれてますね。
最近ではマルコ・ポーロがホラ吹きまくる「百万のマルコ」、
軽い作品でしたが楽しかったです。
Posted by リサ  at 2007/05/20 8:50 PM
★す〜さんへ
こんばんは!コメント嬉しいです♪
そうなんですよね〜。登場人物たちの魅力さにくらくらでした(笑)
へんてこりんな人たちのへんてこりんな会話はかなりツボでして、
堪能しちゃいました。ええ。
『吾輩は猫である』、一度読んだのですが見事に忘れております。
これはいっちょ読んでみよう!と鼻息荒くしているところ。
す〜さんもご一緒にいかが?
Posted by リサ  at 2007/05/20 9:00 PM
★木曽さんへ
こんばんは!
面白かったです!へぇ〜柳さん文章にユーモアがあってなかなか読みやすいし、
結構好きだわ〜なんて思いながら読んでいました。
おぉ〜木曽さん、柳作品読まれていますね!さすがです!
私も読んでみますわ。まずは『贋作『坊っちゃん』殺人事件』からかな。
『百万のマルコ』は最近出てましたね。良く見かけます。これは面白そう。
ふふふ、またまた楽しみが増えました。
Posted by ロケット  at 2007/05/22 5:53 PM
そうそう、『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』。
これですわ、自分の書いた感想の中で言いたかったのは。

それはそうとこの本、ユーモアの部分より、ミステリーの部分より、登場人物たちが存在していた時代とか、空気とか、ニッポンが急激にある一点に向かって進み始めている不安とか、そっちの方がやたらと気になってしまうという、なんだか変な読み方してしまって、そういう意味で妙に気持ちに引っかかる本になってしまったのでした。

と、たまにはこんなコメントも書けるってところをお見せしておきましたよ。
Posted by リサ  at 2007/05/24 2:19 PM
★ロケットさんへ
『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』、漱石の出てくる中でも大好きな作品なので
つい思う浮かべながら読んでいましたです。

そうそう!ユーモアミステリなはずなんだけど、何故かその部分よりも
背景にある暗く不穏なもの、日本の向かう先なんかを思うと
どうしてももやもやしてしまって…。でもこれも作者の意図なんでしょうか。

…といつになく真面目なロケットさんのコメントにほうほうと思いながら
読みましたよ。めっちゃ失礼な書き方ですけど(笑)

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My Favorite Books  at 2007/05/19 11:59 PM
漱石先生の事件簿   〜柳 広司〜
訳あって英語の先生の家の書生となった僕。 その先生の家で起こるちょっとした事件を 僕が名探偵よろしく解決していく。 夏目漱石の『吾輩は猫である』をモチーフに 超変人の先生とその周りに集まる これまた変わった
rocketBooks  at 2007/05/22 5:43 PM
漱石先生の事件簿 猫の巻/柳広司
自慢じゃないが、夏目漱石をまともに読んだことがない。 自慢じゃないが、と言い出した時点で大概の場合は自慢してるのだが、こればかりはほんとに自慢にもならない。 この際だからついでに自慢しないが、夏目漱石どころか、芥川龍之介も直木三十五も谷崎潤一郎も三島
翻訳blog  at 2007/05/26 7:55 PM
座右の名文
 漱石の『坊ちゃん』を、「探偵」小説であり「恋愛」小説である、といったら、「えっ
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