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『新釈 走れメロス 他四篇』森見登美彦

新釈 走れメロス 他四篇
新釈 走れメロス 他四篇
森見登美彦/祥伝社
あの名作が、京の都に甦る!? 異様なテンションで突っ走る表題作をはじめ、先達への敬意が切なさと笑いをさそう、5つの傑作短編を収録。若き文士・森見登美彦の近代文学リミックス集。
ややや!これは面白い!めちゃくちゃ面白い!ハッハッハー!
…と森見作品ならばこんなテンションで始まるのが常なのだが。今回はいつもの森見節とは少し趣向を変えた作品になっている。
古典名作ものを森見風にリミックスした短編集。

いや、これが幻想ものあり、ドタバタあり、余韻を残すものあり、とさまざまな彩を持った作品になっていて、これが非常に楽しめる。原作を知っているならば尚更であろうか。秀逸なのは「走れメロス」と言いたいのだが、いや、これはなかなか素晴らしいのだが(だって!こんな友情もアリなんだよねぇ。そうだよねぇ。うんうん。と妙に納得させてしまう技はさすが!)、最も好きなのは実は「山月記」と「桜の森の満開の下」であった。実に原作に忠実に、さらにそこへ森見スパイスをふりかけて見事に調理してみせる。思わず「むむむ、すごい」と唸ってしまった。そうして久しぶりに原作を読み返してみてその忠実さ、森見さんならではの発想にまたまた唸るのであった。
原作「山月記」(中島敦)は原作を読んだ当初、これがなかなか難しく、一体何の話しなのだ?と頭ふりふり読んだものだが、後日その釈を読んでその意味を知り、哀れさと悲しさが入り混じった感覚が広がったのを覚えていて、その記憶がこの森見さんの「山月記」を読んでまざまざ蘇りどうにも切ない気持ちがあふれ出すのを抑えられずにいた。これまた非常にわかりやすく新釈したものである。お見事。

原作「桜の森の満開の下」(坂口安吾)はかなり血なまぐさい話しで、けれども桜という儚さと幻想さが妙に相まって好きな作品。桜満開の頃になると必ずこの話を思ってしまうほどである。
その桜の話を京都に場所を設定し、哲学の道の桜の木の下を舞台にする。残念ながら哲学の道は秋にしか訪れたことがなく、桜の頃の様子を思い浮かべることは出来ないのだけれど、それでもあの場所を桜満開にしその桜霞けぶるさまを思いながら読んだ。森見さんの溢れる才能をもひしひし感じながら。

そして。
原作「走れメロス」(太宰治)。太宰にしては珍しく健全な明るい作品である…とは個人的な感想なのだけれども、本書でもこれが異彩を放っている。森見さんおなじみの作風なのに、だ。当然面白い。京都を駆け巡るドタバタ、放埓さが楽しめる。「走れメロス」をこんな解釈で書くとは!でも友情である。これも友情なのだ。そうでなさそうでも二人にとってはそうなのだ。と半ば強引に、けれども読み手を納得させてしまうその手腕に惚れ惚れする。しかしやっぱりこの雰囲気はいい。文章から立体的に飛び出すようなそんなポップアップな文体がやはり好きである。

芥川龍之介「藪の中」、森鷗外「百物語」は未読であったため原作との比較は出来なかったものの、こちらもきっと忠実なる中に森見風にリミックスされていることだろう。

京都という場所はドタバタ喜劇だって幻想ものだってどんな雰囲気もしっくりと合わさってくれる。そして、この作品に共通する「孤独さ」という感情が何よりもこの古都に合うのだろう。だから一人でぶらっと訪れてみたくなる場所なのだろう。
本書は艶めいた美しさ、幻想さ、ときどきドタバタを堪能させてくれる秀逸な作品。移り変わる四季の気配を体感するような1編1編の彩りの変化がこれまた美しく素晴らしい。

読了日:2007年5月20日
かりさ | 著者別ま行(森見登美彦) | comments(10) | trackbacks(6) | 

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COMMENTS

Posted by 木曽のあばら屋  at 2007/05/22 6:29 PM
こんにちは。
森見登美彦さんの引き出しの多さを感じさせてくれる短編集でした。
もっとも私、「原作」は「走れメロス」しか読んでいませんが・・・。
Posted by リサ  at 2007/05/24 2:24 PM
★木曽さんへ
こんにちは!
森見さんといえばドタバタや妄想のオンパレード!と思いきや幻想的な美しさに
うっとりでした。新鮮な気持ちで読めました。
森見さんのこれからがますます楽しみです。
って!まだ未読作品が2冊もあるんです。早く読まねばー。
Posted by 藍色  at 2007/05/25 12:36 AM
リサさん、こんばんは。
それぞれの短編のテイストが異なっていて、バラエティ豊かな味わいの短編集でしたね。
「走れメロス」が森見さんらしい作品でしたけど、ほかのも新しい魅力発見でした。
「山月記」と「桜の森の満開の下」がお気に入りなのですね〜。
作品に共通する「孤独さ」、…ありましたね。読みの深さにびっくりしました。
トラバさせていただきました。
Posted by リサ  at 2007/05/28 1:41 PM
★藍色さんへ
こんにちは!お返事が遅れてすみませんでした…。
見事にカラーの違う作品を選ばれて、森見さんならではの作風に
仕上げていましたよね。堪能しました。
「走れメロス」がやっぱり森見さんらしい!面白い!と喜んでました。つい。
でも、幻想ものが好きなのでどうしても「桜の森の〜」にうっとり
してしまいます。
どれも「孤独」が共通していて。その物悲しさがこの作品を彩っていたように
思います。
Posted by す〜さん  at 2007/05/29 8:44 PM
いろんな顔の森見さんを見れたような気がします。
おばかな作品からしっとりとした感じの作品まで。
懐深いっす。
何よりも
斎藤さんって・・・。
Posted by リサ  at 2007/05/31 2:22 PM
★す〜さんへ
こんにちは!
森見さんのイメージがこれで新しい印象に変わりました。
なによりも幻想的なお話しが好きでもっと他にも書いて欲しいな、と
思ったくらいです。
『きつねのはなし』がまだ未読なのですがそんな感じなのかしら?
本当に懐深いですよねー。
で。
斎藤さんです。
実は彼に一番魅力を感じてしまった私です(笑)
Posted by 苗坊  at 2007/08/05 4:23 PM
こんにちは。TBさせていただきました。
森見さんの作品は、初めてでした。
なので、笑い転げるような作品をお書きになる方とは知らず^^;
違う作品も是非読んでみようと思います。
面白かったですね。
私が実際に読んだ事があるのは「山月記」「走れメロス」だけだったのですが、アレンジがまた面白かったです。
原作も読んでみたいですね。
Posted by リサ  at 2007/08/08 12:09 AM
★苗坊さんへ
こんばんは!コメント&TBありがとうございます♪
森見作品初だったのですね〜。
予備知識がないまんま読むと確かにこのシュールな(かな?)世界には
驚かれるかもしれませんね。で、きっと虜になってしまうんです。
この作品はわりと幻想的な部分が印象的で今までの森見作品とは
一風変わった感じがしました。
他の作品を読まれるとさらにさらに笑いが待っています!

森見さんならではの作風で古典ものを読むことが出来て嬉しいひとときでした。
Posted by S  at 2007/12/13 10:57 PM
初めまして!
「感想乱れ撃ち」というブログをやらさせてもらっている、Sと申します。
サイト名から察せられる通り、感想のジャンルは本当に脈絡無く、無駄に多く、阿呆みたいに風呂敷ばかりを広げ、現在なんとも言えないような自己満足中途半端ブログとなってしまっている感が否めない感じではありますが、そんなものはどこ吹く風と棚に上げ、今回TBさせていただきました。(でも実は二回目)

また、貴サイトの感想の質の良さに惚れたため、リンクさせていただきました。事後承諾で激しく申し訳ないです。もし何かありましたら一言お願いします。すぐに外させていただきますので。
Posted by リサ  at 2007/12/14 5:12 PM
★Sさんへ
初めまして!ご訪問とコメント&TBありがとうございます♪
とても嬉しいです〜(*^-^*)
このブログを読んでもらえるだけでも嬉しいのに、過分なお言葉までいただいて嬉しいやら照れるやら、でもやっぱり嬉しいです!ありがとうございます!

こちらからも是非リンクさせてくださいね。
これからどうぞよろしくお願いいたします♪
ブログへお伺いしますね〜。

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