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『切羽へ』井上荒野

切羽へ
切羽へ
井上荒野/新潮社
静かな島で、夫と穏やかで幸福な日々を送るセイの前に、ある日、一人の男が現れる。夫を深く愛していながら、どうしようもなく惹かれてゆくセイ。やがて二人は、これ以上は進めない場所へと向かってゆく。「切羽」とはそれ以上先へは進めない場所のこと。宿命の出会いに揺れる女と男を、緻密な筆に描ききった美しい切なさに満ちた恋愛小説。

8月に読んで感想も書いていたのを今頃アップです…。

紹介文を読んでから本作を読んでいくと、何かを期待している自分がいて、でも期待は一向に訪れなくて戸惑うのだけど、読み終えて改めてこの作品の持つ雰囲気や流れを考えると、セイが夫以外の男性に惹かれるという感情は燃えるような熱いものではなく、もっとこう慎ましやかな感情という印象。
ほんのりと芽生えていてそれを自覚しているのかいないのか定かでないゆるやかな感情、そして静かにかき乱される様、その揺らめきを掬い取って感じ入る。そんな丁寧な読み方が一番相応しいのかも。

島の独特な方言がリズム良く読ませてくれて、濃密な人間関係も井上さんの小気味良い文体でさらさらと読ませてくれる。
移りゆく季節とともにセイの感情も移ろって、その淡い彩りが心の機微が見事に描かれていてその絶妙さに唸った。

セイと対照的な月江という女性がなかなか重要な役どころ。
彼女の奔放さがセイに少なからず心にさざ波を立てる。

「切羽」とは"それ以上先へは進めない場所"のことであり、"トンネルを掘る一番先端の場所"でもあります。この微妙な意味合いにセイの心の揺れを描く、この何ともいえない妙なるものに、静かな感動を覚えました。

井上荒野さんの作品は初めてでしたが、他の作品も是非とも読んでみたいと、切望させる読書でありました。

読了:2008年8月
かりさ | 著者別あ行(井上荒野) | comments(4) | trackbacks(2) | 

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COMMENTS

Posted by はぴ  at 2008/11/17 11:32 PM
リサさん、こんばんは♪

こちらには初めてお邪魔させていただきました。
井上荒野さんの作品は『ヌルイコイ』を読んだきりなんですが
この『切羽へ』はかなり話題になったのでチェックしてました。

リサさんの感想を読ませていただいて俄然興味が出てきました。
私も機会を見つけて丁寧にじっくり味わって読みたいです。
Posted by リサ  at 2008/11/18 4:46 PM
★はぴさんへ
はぴさん〜こんにちは♪
わぁ〜コメントありがとうございます!
嬉しいです(*^-^*)

私はこの作品が井上さん初だったのですが、とてもよかったので他の作品も機会があったら〜と思っています。
はぴさんも『切羽へ』ぜひぜひ読んでみて!
感想が楽しみです。
これからもいろいろとお話ししましょうね〜。
よろしくお願いいたします!
Posted by トラキチ  at 2009/03/06 2:37 AM
リサさん、こんばんは♪
TBさせていただきました。
とっても良かったんだけど、それは展開が気になった部分であって、もっと奥深い部分は読解できてなくてなかなか感想が書けませんでした(2週間ぐらい)
リサさんほどでもないけどね(笑)

男性の登場人物が頼りないように思えましたけど、ただ文章はリサさん同様、素敵で他の作品も読みたくなりましたね。

某所でのクレストブックスの件、また始りましたらよろしくお願いします。
Posted by リサ  at 2009/03/07 10:00 AM
★トラキチさんへ
トラキチさん〜こんにちは!コメント&TBありがとうございます♪
『切羽へ』は確かに感想難しかったですよねー。
なかなか奥底に漂うものを掬うのに苦労するというか、ちゃんと読解していないと自分自身の言葉が紡げませんもの。
私はもう感覚的にとらえて感想を書いてしまいました…ふふ。

井上さんの作品、これから読んでみたい!と思いながらまだ果たせていないのですがちょっとずつ追いかけようと思っています。

クレストブックスの件、ぜひ参加させてくださいね!楽しみにしています♪

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粋な提案  at 2008/11/27 12:46 PM
切羽へ 井上荒野
切羽へ(2008/05)井上 荒野商品詳細を見る 装画は根本有華。装幀は新潮社装幀室。初出小説新潮。第139回直木賞受賞作。 語り手の麻生セイは、...
続 活字中毒日記  at 2009/03/06 2:14 AM
『切羽へ』 井上荒野 (新潮社)
<女性の凄さを知らしめてくれた恋愛小説。> 第139回直木賞受賞作。 いやあ、読解し辛いよねこの本。 いろんなとらえ方というか意見があってもおかしくないでしょう。 正直、こんなに読み応えのある作品だとは思ってなかった。 でも感想は本当に書きづらい
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