終わり、それとも始まり……神町を巡る物語。
「グランドフィナーレ」という名の終わりの始まり。
毎日出版文化賞、伊藤整賞W受賞作「シンセミア」に続く、
二人の少女と一人の男を巡る新たなる神町の物語。
表題作の「グランド・フィナーレ」は第132回芥川賞受賞作。この作品の内容は幼女誘拐殺人事件を持ち出すメディアや書評を見かけるのだけど、あくまでもこれは小説。現実と一緒に並べたがるのはわからなくもないけど、そうすると阿部氏の描く世界を知り得ることは難しい。オチを望む人にはたぶん物足りないかもしれません。確かに中途半端で一体何を伝えたいのか理解に苦しむから。ここで肯定派・否定派に分かれるのかも。
私は…ものすごく好きです。この文体。とろけそうな夢の世界と冷たく冷ややかな現実。この描き方が最高。阿部氏にしか描けない世界観なんだと思います。ただ…その終焉にあるものを勝手に想像していたことが見事に裏切られ、曖昧にオブラートに包まれてしまったのは少し残念。
他収録の作品「馬小屋の乙女」「新宿ヨドバシカメラ」「20世紀」もそれぞれ不思議な世界を漂わせていて楽しめました。特に「20世紀」は最後に救われた、という安堵感に包まれながら読了。
阿部氏の作品は今作が初めてでしたが、他の作品もぜひ手に取りたい。
読了日:2005年3月27日
⇒ ちづ (04/28)
⇒ 苗坊 (02/03)
⇒ かりさ (01/10)
⇒ タコ焼き (01/07)
⇒ かりさ (12/27)
⇒ みこ (12/25)
⇒ かりさ (12/09)
⇒ みこ (12/06)
⇒ みこ (12/05)
⇒ かりさ (12/01)