一人の編集者さんの手によって完成した「Story Seller」。
編集者さんの独断と偏愛によって生まれた本です(と、前書きに書いてある)。
豪華執筆陣に惹かれて購入しましたが、いや〜素敵な雑誌です。すっかり堪能しました。
これは是非とも次を作って欲しいです!切望いたします!
以下、感想。
「首折り男の周辺」伊坂幸太郎
まさに伊坂節全開のストーリー。
これだけの短い話で伊坂さん特有の(ここでいうと「疑う夫婦」「間違われた男」「いじめられている少年」の三部構成)交互に展開するストーリー、伏線、登場人物の関連性が見事に構成されていて、さすがです。巧いです。
連続殺人事件の犯人が隣人の男ではないか、と疑う夫婦の間の抜けたやりとりが可笑しい。タイトルが物騒なのだけど、何故かふっと笑みがこぼれる温かな感じ。
「プロトンの中の孤独」近藤史恵
『サクリファイス』の外伝。
本作を読み終えてすぐにこちらを読んでもう切ないったら!でも嬉しく読みました。本作とはちょっと違ってこう人間関係の複雑な部分は軽めだし、ミステリ度はほとんどゼロに近いので純粋にスポーツものとして楽しめました。
近藤さんがロードレースをリアル観戦したことがない、って告白にビックリ。なんと!それでこれだけの臨場感。す、素晴らしい。
続編はリアル観戦?されるようなこと書かれていたのでこりゃぁもっともっとすごいことになりそう!?と今から期待であります!
「ストーリー・セラー」有川浩
さすが有川さん、すごいですストレートです。
読んでいて恥ずかしがりながらも、でも今回はちょっと趣が違っていていつもよりも読むトーンを抑えて読んでました。ここでは一番の長編ながらもそんなもの一切感じさせないくらいぐいぐい引かれていました。
運命の出会いがあって結ばれてこの先の未来を共に歩こうって一緒に歩き出すけど…それっていつまでなのかな。
どっかでぶった切られることがそれが近いのか遠いのか。
ちゃんとこんな風にして相手に言えるかな。言える人生でありたいな。
悲しいけれど素敵な話。でも悲しい。深い深い愛の物語。
「玉野五十鈴の誉れ」米澤穂信
米澤さんのまた違う一面を見せてもらった作品でした。
いや、これ好き。この濃密なけれど冷ややかな雰囲気はたまらない。
人間の狂気がどれほどの不幸を生むか。ゾッとする怖さも帯びる。
旧家小栗家の跡取り純香と使用人五十鈴の物語は古典文学の香り高く大変に美しい。
美しいながらそこに潜む黒いものが恐怖を生む。
背負ったものを全うする使命。それがどんな立場であり、どんな形であれ、使命に純粋であればあるほどやがて壊れていくものなのか。
「身内に不幸がありまして」「北の館の罪人」「山荘秘聞」「玉野五十鈴の誉れ」とバベルの会シリーズになるわけですね。
「333のテッペン」佐藤友哉
どんなダークな物語が展開されていくのかと身構えてましたけど、意外にサラッとしてました。奇想天外なのは相変わらずですが、もっとこうグロさがあるのかと勝手に思ってましたから。見え隠れしているのがここでは逆に良かったのかな。
是非土江田の過去の仕事の話を読みたいです。かなり黒そう。
「光の箱」道尾秀介
いや〜やられた。すっかりやられた。
実は道尾さん初読。気になる作家さんなのですが縁がなくてなかなか読めずにいました。
全体に暗さをまとっていたのでそこに到達するものも期待ができなかったのですが…こんなにも温かな光に満ちた物語。道尾さん、巧すぎです!惚れました。
「ここじゃない場所」本多孝好
普通の家庭に生まれ育ち、姿も能力も取り柄のないごくごく普通の少女と、複雑な生い立ちであり、特異な能力を持つ少年との出会い。ラスト、ちょっと切なかったな。
アゲハの存在や謎の4人組のこと、もっと教えて〜とジタバタしているうちに終わってしまったので肩透かしだったんですが、あとがきに4人組とアゲハの話を書いているってあって、「おおおー」と。は、早く読みたい。
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